適応障害の症状とは? 心が悲鳴をあげる前に知っておきたい3つの習慣
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
みなさまは、適応障害という疾病をご存じでしょうか。
聞いたことはあるけれど、どういった症状が出るのか、何が原因でなるのか知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
適応障害とストレスには深い関わりがあるため、ストレス社会の現代において誰でもかかる可能性があるといえます。
とくに長引くコロナ禍において新生活様式への適応・感染に対する不安など、さまざまなストレスに晒されています。
また40代以降になると更年期による体調の変化により心も不安定になりがちです。
だからこそ40代以降の女性にこそ、知っていただきたい病気といえます。
「適応障害って治らないの?」
「日常生活に支障があるの?」
適応障害について正しい知識があればこうした不安を抱えることなく、万が一に備えることができますよね。
今回は、コロナ禍だからこそ知っておきたい適応障害の症状と予防のために心がけたい3つの習慣についてご紹介します。
目次
1.適応障害とは
適応障害とは日常生活の中で何かのストレスが原因となり心身のバランスが崩れ、社会生活に支障が生じるストレス障害の一つです。
ストレスの原因がはっきりしており、それに対して過剰な反応が起こった状態のことをいいます。
日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処することができず、心身にさまざまな症状が出現し社会生活に支障をきたすことも少なくありません。
一般的にはストレスになっている原因が解消されれば、その症状は速やかに改善すると考えられています。
ただしストレスの原因が解消されずにストレスを抱えたままでいると症状が慢性化してしまうことがあります。
2.適応障害の原因
適応障害は過度なストレスによって発症します。
適応障害の場合、他者からするとストレスと感じないことでも本人はストレスとして感じており、また本人は何に対してストレスを感じているのか明確であるのが特徴です。
適応障害で一般的によく見られるストレスの原因は環境の変化です。
・引っ越し
・転職
・異動
・昇格
・仕事内容
・入学
・転校
・結婚
・離婚
・出産
・家事
・人間関係
本人にとって嫌なことやつらいと感じることだけがストレスの原因になるのではなく、うれしいことや喜ばしいことでもストレスを感じ、適応障害を発症することがあります。
3.適応障害の症状
適応障害の症状はとても多く、その症状も人によって異なります。
適応障害の特徴の一つとして、ストレスの要因となる状態から離れるとその症状は軽減されるということがあげられます。
例えば仕事がストレスとなっている場合、出勤日や仕事中はさまざまな症状が出現しますが、休日になるとそれらの症状が治まります。
他人から見ると「ちょっとしたこと」でも、本人が強いストレスと感じていることがある上、そのストレスから離れると元気にしているなどギャップがあるため、周りから「サボっている」などと見られる場合がありますが、本人にとっては確かにストレス源があるため、それを周囲が理解することが大切です。
職場や学校では具合が悪くなるが、自分の趣味やリラックスできる環境では元気にしているなどは典型例です。
適応障害の症状は気分の落ち込みなどの情緒的な症状だけではなく、その他にも身体面や行動にも現れることがあります。
3-1.情緒的な症状
・気分の落ち込み
・涙もろさ
・不安
・怒り
・焦り
・意欲低下
・緊張による汗
・手の震え
これらの情緒的な症状がすべて現れるわけではなく、人によって異なります。
また上記の症状以外にも喪失感や絶望感など感じることがあるため、周りの人が注意をして様子を見る必要があります。
3-2.身体症状
ストレスが身体面に現れることもあります。
一般的に多く見られる症状は以下のものです。
・不眠
・食欲不振
・胃の痛みやむかつき、下痢や腹痛など
・全身倦怠感
・疲れやすい
・頭痛
・肩こり
・腹痛
・めまい
3-3.社会的問題行動
ストレスを解消するために一時的に暴飲暴食をすることは一般的にもよく見られることですが、適応障害の場合はその度を越す位の暴飲暴食や社会的に問題といわれるような行動を起こしてしまうことがあります。
・会社や学校を無断欠勤・遅刻・早退する
・暴飲暴食
・ギャンブル
・物を壊す
・喧嘩などのトラブル
・無謀な車の運転
4.適応障害の診断
一般的に適応障害の診断を行う際は、アメリカの精神医学会が定めた診断基準「DSM-5」をもとに診断されることが多く、問診により症状を聞き取りします。
適応障害ははっきりと確認できるストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情動面や行動面における症状が出現し、ストレス因子が解消されると症状が6ヶ月以内に改善するとされています。
診断の際は、他の精神疾患の基準を満たしていないことも診断基準として重要です。
4-1.うつ病との違いとは?
うつ病とは1日中気分が落ち込んでいたり、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、不眠や食欲低下・疲労感などの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたす気分障害の一つです。
適応障害とうつ病の症状が似ていることから、同じ病気かと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし適応障害とうつ病には大きな違いが二つあります。
一つ目は行動面です。
適応障害は3章でご紹介したように喧嘩や物を壊すなどの社会的に問題とされる行動をとることがあります。
うつ病は欠勤や遅刻などは見られることはありますが、他者に攻撃的になるような行動はあまり見られません。(適応障害の人の全てに、このような攻撃性が現れるわけではありません)
二つ目は、適応障害はストレス要因から離れると症状は軽減されますが、うつ病の場合は常に気分が落ち込み、気力がわかない状態といえます。
また自分を責めたり、不安や憂うつな気分が継続して見られます。
5.適応障害を予防するためにできる3つのこと
現代社会においてストレスがまったくない環境を作ることは難しいですよね。
ストレスがかかり続ける状況で、心身のバランスを保つために心がけたい3つのポイントがあります。
▼五月病を防ぐ|コロナうつや更年期うつを悪化させない対策とは
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5-1.食生活・栄養バランスを見直す
ストレスとうまく付き合っていくためには、食生活を見直すことが大切です。
ストレスに対応するといわれる副腎皮質ホルモンはその名のとおり、副腎皮質で作られています。
そのため、副腎のホルモン代謝を活発にするために必要な栄養素を積極的にとるよう心がけましょう。
1.タンパク質
40代になると更年期によるホルモンバランスの乱れによって、よりストレスを受けやすい状態になります。
ストレスに対応する副腎皮質ホルモンや女性ホルモンなどはコレステロールを原材料として作られており、コレステロールを肝臓から副腎に運搬するにはタンパク質が必要です。
タンパク質を多く含む食材は肉・魚・卵・豆製品です。
毎日の食事に取り入れやすいものであるため、ストレスを抱えている方には、ぜひ積極的にとってほしい栄養素です。
2.ビタミンC
副腎でホルモンの生産や代謝をするには、ビタミンCは欠かせない栄養素です。
柑橘類・キウイフルーツ・キャベツ・ブロッコリー・大根・パプリカなどに多く含まれています。
3.ビタミンB群
心身の疲労を回復させるためにはビタミンB群が大切です。
またビタミンB群と鉄などのミネラルは「幸せホルモン」とよばれるセロトニンや「やる気ホルモン」と呼ばれるドーパミンなどの神経伝達物質の分泌に欠かせない栄養素です。
ビタミンB群に属する栄養素には、ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ナイアシン・パントテン酸・ビオチン・ビタミンB12・葉酸などがあります。
ビタミンB群は食品だけでは不足しやすい栄養素ですが、動物性食品や発酵食品などに含まれています。
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4.マグネシウム
副腎のホルモン代謝を促すのに欠かせないのがマグネシウムです。
カルシウムとともに働くためカルシウムもとることが大切です。海藻類にはどちらも含まれているためおすすめの食材です。
5.亜鉛
亜鉛は、脳神経情報伝達系の調節に不可欠です。脳機能の維持に不可欠であるため、不足すると、学習記憶障害や精神機能の低下などを引き起こす可能性があります。不足すると疲労、倦怠感も起こりやすくなります。
牡蠣には亜鉛が豊富に含まれています。
またナッツ類やハイカカオチョコレート・納豆にも多く含まれているため、手軽に摂取することができます。
5-2.生活習慣を見直す
ストレスと自律神経には大きな関わりがあります。
過度なストレスによって自律神経が乱れてしまうと、体にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
ストレスを受け続けている状況では、交感神経を休めて副交感神経を高めることが体調に安定を図る効果があると考えられています。
自律神経を整えるためには睡眠をしっかりとることが大切です。
ただ睡眠時間を確保すればよいのではなく、昼夜逆転しないように早寝・早起きを心がけるようにしましょう。
また質の良い睡眠を心がけることが大切です。寝る直前のスマートフォンやパソコンの使用は控えましょう。
5-3.無理をしない
「新しい環境に早く慣れなければいけない」
「仕事も育児も完璧にこなさなければいけない」
「昇進したのだからしっかり成果を出さなければいけない」
真面目で完璧主義な方は、「~しなければいけない」と思うことが多いのではないでしょうか。
人は誰でもすべてのことを完璧にこなそうと思うと心身ともに大きな負担となります。
自分の体や心は正直です。
無理がかかり続けると、体にさまざまな症状が現れます。これは体や心のSOSです。
ときには人に甘えてのんびり・ゆっくり自分を労わり、頑張っているねと褒めてあげる時間を持つようにしましょう。
6.自分を大切にして豊かな人生を送りましょう
40代~50代は仕事・育児・家事・介護などに忙しい毎日を送る上に、更年期の症状によって体の変化が起きてくる年代です。
忙しさに追われつい自分のことは後回しにしたり、完璧に自分の役割をこなさなければいけないと思うと、心も体も悲鳴をあげてしまいます。
毎日の生活の中で上手に手抜きをしたり、何も考えずにぼーっとする時間も大切ではないでしょうか?
あなたを頼りにしてくれる人がいるからこそ、頑張ってしまう。
もちろん周りの大切な人のために一生懸命になることも素敵ですが、それだけ頑張る自分のことを労わってあげる時間は、今後より豊かな人生送るためには欠かせません。
毎日30分、自分のための時間を作ってストレスを解消してみませんか?
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか