アガベシロップは肥満の元?砂糖よりも危険な果糖を控えるべき理由【医師解説】
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
最近とても気になることがあります。
「ヘルシー」を謳ったドリンクやおやつに、「果糖」を含む不健康な甘味料が平気で使われていることです。
「砂糖」は不健康なイメージがあっても「果糖」にはないと思います。
いやいや、果糖こそ、肥満と老化の原因とも言われています。
「GI値が低い」から「血糖値が上がらない」ヘルシーな甘味料として、ダイエットやビューティーに高感度な女性に人気の「アガベシロップ」も実は、かなりの高果糖です。
また、日本のスーパーに並ぶたくさんの加工食品に含まれる高果糖の甘味料「異性化糖」は、アメリカでは「肥満の原因」と論争の種になり、使用制限が広がっています。
消費者が甘みを求めて高糖度になった最近流行の果物にも要注意です。
食品の罠に惑わされずに、安全に「甘み」を楽しむには?
目次
1.実はヤバい!果糖の摂りすぎ
1-1.果糖とブドウ糖、砂糖は何が違う?
果糖は、糖の最小単位である「単糖類」の一種です。
同じく、血糖値の元となるブドウ糖も「単糖類」。
これらは、分解する必要がなく、そのまま体内に取り込まれて利用されます。
ブドウ糖が血糖値の元になるため、果糖はどれだけとっても血糖値を上げません。
「だから、健康的な糖!」という考えが、間違いの元!
ここに罠が潜んでいることは後でご説明しましょう。
いわゆる、砂糖は、ショ糖と呼ばれ、ブドウ糖と果糖が1分子ずつくっついた「二糖類」。
砂糖は、体内で分解されて、ブドウ糖と果糖になるのですね。
ですから、血糖値もあげるし、果糖の害も出るということで、もちろん、従来通りの「健康に悪い」イメージを持っていて正解です。
2.果糖は肥満と老化の原因になる
果糖は、ブドウ糖と同じく単糖類なので、速攻で体内に吸収されます。
しかし、血糖値が上がらない。
じゃあ、健康に良いのか?と言われたら、全くそうではありません。
2-1.脂肪を増やし肥満の原因に
果糖は、ブドウ糖のようにエネルギーとして利用されることなく、そのまま吸収されて血液に入り、ほとんどが肝臓で代謝され、中性脂肪に転換され、余った分が、肝脂肪、内臓脂肪として蓄積されます。一部は、ブドウ糖に転換されます。
つまり、脂肪に変わりやすく、肥満の原因に!
さらに、エネルギーにならない分、ブドウ糖よりも果糖の方が、満腹感も得づらく、食欲を増してしまうことになります。
2-2.老化の原因、糖化はブドウ糖の10倍以上
さらにさらに、老化の大きな原因とされる「糖化」。
果糖の糖化しやすさは、ブドウ糖の10倍以上とされます。
糖化とは、体の中であらゆる仕事をするタンパク質に、糖がキャラメルのようにくっついて、タンパク質の働きを疎外してしまうこと。
AGEs(最終糖化産物)が多いと、老化スピードが速いとされています。
血糖値を上げないことが大切ですが、血糖値を上げなくても果糖の摂りすぎは、糖化を引き起こします。
3.日常には果糖を含む食べ物に溢れている
果糖を多く含む甘味料は、日常に溢れています。
スーパーマーケットの加工食品は、果糖だらけです。
3-1.悪名高い「異性化糖」日本では日常に
原材料を見る習慣のない方には聞き慣れない名前かも知れませんが、「異性化糖」は、多くの加工食品に使われています。
これは、主にコーンを原料に作られた安価な果糖入りの甘味料です。
異性化糖は、果糖の含有量によって、以下の3つに分類されます。
・ブドウ糖果糖液糖:含まれる果糖が50%未満のもの
・果糖ブドウ糖液糖:50%以上90%未満のもの
・高果糖液糖:90%以上のもの
原材料表記には、「異性化糖」と書いてある場合、「ブドウ糖果糖液糖」「果糖ブドウ糖液糖」「高果糖液糖」のどれかが書いてある場合、または「コーンシロップ」と表記されていることもあります。
原材料となる安価なコーンは、大量生産型の農薬や化学肥料を大量に使う農業で、環境に負担をかける穀物の代表でもあります。
ぜひ、スーパーで加工食品の裏、なんでもチェックしてみてください。
・清涼飲料水
・お菓子
・パン
・甘いヨーグルトやプリンなどのスイーツ
・タレ、醤油などの調味料。
・練り製品、肉製品
・レトルト食品
さらにショッキングなことには、
・栄養ドリンク・美容ドリンク
・栄養補助食品
など、健康に良さそうなイメージがある商品にも、平気で使われています。
私自身、高級デパートの美容・健康コーナーで、1本1000円程度する美容ドリンクにも含まれていることを確認して、ゲンナリしたことがあります。
「嘘つき!」とそんなものを販売している企業もお店も責めたい気持ちになりますが、そんな嘘が多い、日本の美容・健康、食品業界です。
知っておかないと、健康に良いつもりが、知らず知らずに生活習慣病になり、被害者になります。
でも、自分で選んでいるのですから、自分の責任と言われても仕方ありません。
「知識は身を助ける!」です。
3-2.アガベシロップは高果糖甘味料なのです
アガベシロップは、GI値が21と血糖値が上がりにくい上に、甘みは砂糖の1.5倍。
ブルーアガベと呼ばれる多肉植物の樹液由来の甘味料です。
味のクセもなく、使いやすく、オーガニックショップやライフスタイルショップ、ヘルシー志向のカフェなどでもよく販売、使用されています。
なんとなく「ヘルシー」なイメージが健康意識の高い人たちの間で広まったようです。
が、残念ながら、その甘みの由来はほとんどが、果糖。
成分の70~90%は果糖なのです。
その事実から、アメリカでは販売されてはいるものの「ヘルシーな甘味料」のカテゴリーからは外れてしまった印象があります。
アメリカで、天然のゼロカロリー甘味料として根強く人気なのは、「ステビア」や「モンクフルーツ(羅漢果糖)」ですね。
3-3.「甘さ」が売りの果物はスイーツだと思うべし
「果糖といえば、果物」というイメージがあるかも知れません。
現代の果物は、とにかく「甘い」が売り。
果物だけでなく、野菜も「甘い」を売りにしたものも増えていますね。
元々、野生的に自生していた果物は、そこまで甘みが強くなかったものの、人間が美味しさを求めすぎて、品種改良した結果、どんどんと高糖度になっていったのです。
特に、日本人は「高糖度」が好きで、世界と比較しても甘く品種改良された果物が多いですね。
海外旅行に行って、現地のフルーツを食べると「あれ!酸っぱい!甘くない!」と感じることもあるはずです。
本来、加工食品と違い、フルーツには、果糖以外にも、ブドウ糖、ショ糖、オリゴ糖など複数の糖類に加え、食物繊維、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカルなど様々な栄養素が総合的に含まれます。
ですから、昔ながらの品種を少量食べるにあたっては、果糖が緩和されます。
それを、甘味料として抽出し、さらに、精製度が高まるほどに、様々な栄養素が減り、糖類のみが残るため、それを摂りすぎることで体に害が出やすくなります。
アガベシロップも、樹液だけでは甘くなく、それを濾過して、煮詰めていくことでどんどん濃縮されていきます。
その過程で、様々な栄養素が省かれ、活性を失ってしまうことになります。
3-4.蜂蜜はどうなのか?
この点で、蜂蜜の方がまだ、非加熱で様々な生理活性物質が生きた状態であるといえますね。
蜂蜜も80%ほどが、糖類です。
花の蜜のショ糖を、蜂が酵素によって分解することで、ブドウ糖と果糖になります。
ほとんどが、ブドウ糖と果糖。これを1:1程度に含み、少量の麦芽糖とショ糖、オリゴ糖を含むといった組成になります。
ビタミン・ミネラル、有機酸、酵素なども含み、生理活性物質を含むことで、健康にも良い作用があるとされています。
精製度の高い甘味料よりはマシであっても、ブドウ糖と果糖が多いことには変わりありませんから、食べ過ぎると害になることには変わりありません。
3-5.我が家にはこの甘味料を常備
私自身が家に常備してある甘味料は、人のエネルギーになる代わりに、腸まで届き有用菌のエサとなる「難消化性オリゴ糖」と有機栽培のゼロカロリー天然甘味料「羅漢果糖」をメインに、たまに蜂蜜を使う程度です。
砂糖はありません。
オリゴ糖は、半分消化されて人のエネルギーとなる「イソマルトオリゴ糖」以外の種類であれば、ほとんどが難消化性です。
原材料表記を確認ないと、その他の人工甘味料や異性化糖が含まれている「オリゴ糖甘味料」もありますので、注意してください。
ピュアなものを選びましょう。
3-6.果糖は持久力維持には向いている
果糖が高い食品の過剰摂取は避けたいところですが、一方で、適度な果糖は、脂肪の利用を高め、運動時の持久力を高めることもわかっています。
さらに、運動時のエネルギー源や筋肉の増強に欠かせない、筋肉へのグリコーゲンの蓄積も高めます。
長距離マラソンやトライアスロンなど、過酷な長時間の運動が趣味な方にはうまく使えば良いエネルギー源と言えます。
ブドウ糖はどちらかと言えば、短距離走型のエネルギーで瞬発力のためのエネルギーというイメージです。
適度な果糖は、適度なブドウ糖を補いつつ、脂肪をエネルギー源とする代謝への切り替えを促し、持久力が維持されるとされています。
とは言え、運動しないことには、余分な脂肪蓄積となるだけです。
食べ過ぎなのに動かなさ過ぎなのがよくありません。
家に引きこもりがちで運動不足になっている方も、家の中での筋トレや、人と距離をとった上での屋外での有酸素運動はむしろ推奨されています。
「食べたら運動する!」これが一番です。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか