心筋梗塞を招く「狭心症」症状チェック|日常に取り入れるべき心臓疾患の予防策
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
みなさまは、狭心症という病気をご存知でしょうか。
狭心症は心臓疾患の一つです。
狭心症を放置しておくと、死亡率の高い心臓疾患である心筋梗塞につながってしまいます。
狭心症は、自覚症状として少し胸が痛かったり、息切れしたりするのですが、数分経つと治まってしまうのが厄介なところ。
そのため胸に違和感があっても「気のせいかな」と済ませてしまうことも多く、自分が狭心症になっている自覚がない場合もあります。
今回はゆらぎ世代が気をつけるべき、狭心症とはどのような症状なのか、そして自分でできるチェック方法と予防策、治療法について詳しく解説します。
1.狭心症とはどのような病気なのか
狭心症とは、心臓に血液を送る冠動脈に異常が生じ、血流が流れにくくなり心臓の筋肉が弱ってしまう病気です。
私たちの体は、通常1日に約10万回心臓ポンプが拍動しており、これにより血液が体中に循環しています。
心臓ポンプを動かすエネルギー源を供給する血管を冠動脈といいます。
加齢や不摂生な生活習慣によって冠動脈が動脈硬化を起こすと、これにより冠動脈の内部が狭くなり、心臓からの血流を十分に送ることができなくなります。
この状態を心筋虚血といい、心臓から異常を発する状態となって胸痛や胸の圧迫感、息切れなどが引き起こされます。
また、血管が痙攣して、血流が悪くなる場合もあります。
これが狭心症です。ただ、このような痛みを中心とした症状の多くは、通常は数分以内、長くとも15分以内に消えることが多いです。
▼「動脈硬化」を予防するための今日からはじめる新たな生活習慣
https://wellmethod.jp/prevention-of-arteriosclerosis/
1-1.狭心症は何が原因で起こる?
狭心症には「血管けいれん型」と「動脈硬化型」の2つのタイプがあり、それぞれ原因が異なります。
まず「血管けいれん型」と呼ばれる狭心症は、喫煙や過度のアルコール摂取、ストレスなどが原因で起こります。
正式には、「冠れん縮性狭心症(異形狭心症)」と呼ばれます。
そしてほとんどの狭心症は「動脈硬化型」と呼ばれており、生活習慣病である糖尿病・高血圧・コレステロール高値・肥満などが原因です。
現代的な生活習慣や食習慣の継続によって、今や、子供の頃から動脈硬化が進行するとされています。
狭心症を防ぐためにも、日頃の生活習慣を見直す必要があるでしょう。
1.症状が出る2つのケース
そして狭心症を発症する状況にも2つのケースがあります。
・労作性狭心症:重い荷物を持ったり、坂道を上ったりしたときに発生しやすい
・安静時狭心症:安静時や睡眠時に突然発症する
労作性狭心症は、重いものを持った時に発症するなど、心臓に負担がかかったときに症状がでるものです。
そして安静時狭心症は睡眠中や安静時に突然発作がでるケースであり、「血管けいれん型」が多く、日本人に多いのが特徴です。
1-2.狭心症によって死ぬ確率は
狭心症を発症したからといって、亡くなるわけではありません。
ただ放置しておくと、死亡率が高い心筋梗塞につながる可能性も高いです。
そして突然大きな発作に見舞われる急性心筋梗塞を引き起こしてしまうと、心臓の機能低下や心室細動と呼ばれる致死的な不整脈を引き起こし、適切な処置を速やかに行わないと死に至ることも稀ではありません。
急性心筋梗塞を引き起こさないためにも、狭心症状を見逃さず、この段階で治療することが大切です。
普段から自分が狭心症かどうか、チェックするにはどうしたらよいのでしょうか?
▼心筋梗塞を予防するには? 日常からできる生活習慣の改善法4つ
https://wellmethod.jp/myocardial-infarction/
2.自分でできる狭心症セルフチェック
ここからは、自分でできる狭心症のセルフチェックを紹介します。
狭心症の多くはなんらかの前兆があります。代表的なものが胸の痛みですが、その他にも階段を上ったときに息切れがひどいなどの特徴があります。
重度の糖尿病の場合は、胸の痛みを伴わないことがあるため、注意が必要です。
そして狭心症かどうかを判断するには、痛みの場所や特徴、持続時間やどのシーンによって引き起こされるかがポイントになります。
2-1.日常生活におけるセルフチェック
まずは、日常生活において以下のような症状がないか確認してみましょう。
・同年代の人と一緒に歩いていると、息切れがして遅れてしまう ・坂道では途中で立ち止まることが多く、息切れがする。数分休まないと登れない ・これまでできていた動作で、急に息切れや胸の締め付け感が起こるようになった ・気持ちが高ぶると胸が締め付けられる感じがする ・通勤時など、焦って歩くと胸が締め付けられる ・重いものを持つと胸が締め付けられる ・寝ているときに胸の真ん中がギューッと締め付けられることがあるが、数分経つと治る |
狭心症でなかったとしても、坂道や早歩きで動悸や息切れすることはあるでしょう。
しかしその際に、動悸がなかなか収まらなかったり、胸が苦しかったりする場合は要注意です。
特に、ベースに生活習慣病がある人はハイリスクです。
また、上記に当てはまる項目が一つでもある場合は、主治医に相談するか、循環器科を受診しましょう。
2-2.胸を中心とした痛み
狭心症の症状として多いのが、胸部の痛みです。さらに、痛みが放散して、胸以外の場所で起こることもあります。
とくに以下の場所に痛みがよく起きる場合は狭心症のリスクがあります。
主な痛み ・前胸部 ・胸骨後部 放散する痛み ・下あご ・首周り ・両肩、左肩 ・みぞおち |
また、痛みだけでなくそれに伴う呼吸困難やめまい、意識障害や吐き気などがある場合は、狭心症が重篤化している可能性があります。
重度の糖尿病の場合、痛みはなく、その他の症状のみの可能性もありますので、動脈硬化の程度に応じて循環器科での精密検査も必要になります。
(まずは主治医に相談を)
以前は問題のなかった安静時や、軽い運動時にも頻繁に痛みが起きる場合は、心筋梗塞に移行しやすい不安定狭心症の可能性もありますので、すぐに病院を受診しましょう。
そして狭心症の痛みは肩こりと混同されることもあります。
・肩こりを突然感じたが突然消えた ・肩こりと同時に胸の締めつけ感がある ・体操をしたり整体などを受けたりしても、肩こりがなかなか治らない |
このような症状の場合は、一度心筋梗塞や狭心症を疑ってみても良いでしょう。
2-3.痛みの時間が長いほど要注意
狭心症による胸部の痛みは、数分程度から、長くても15分程度続くことが一般的です。
階段を上っているときなど、体に負担が掛かるときに痛みや息苦しさを感じる人が多いでしょう。
しかしそのような状況で痛みが30分以上続くような場合は、狭心症ではなく心筋梗塞になっている可能性があります。
すぐに救急車を呼ぶべき状況です。
痛む時間が長く、頻繁に起きるケース程、状況は深刻化しているといえます。
3.狭心症の診断と治療方法
狭心症かどうかを判断するには、病院で心電図などによる診察が必要です。
例えば通勤時に胸の違和感が起こりやすい人の場合、ホルター心電図を装着し、発作時の心電図を記録して病院で診断するという方法があります。
労作時に胸痛を起こすことが多い場合は、検査室で運動をしながら心電図を記録する「運動負荷心電図」という検査法もあります。
ただ心電図だけで治療方針を決めるのは難しいこともあります。
その場合は心臓カテーテル検査を実施し、冠動脈がどの程度狭くなっているかを計測して重症度に応じた治療方針を決定します。
3-1.症状を軽減させるための舌下錠
狭心症の症状が軽い場合は「ニトログリセリン」の舌下錠やスプレーの薬が処方されます。
狭心症の症状が出たときにこれらの錠剤やスプレーを舌の下に含むと、薬の成分が体内に吸収され、痛みなどの症状が通常1~2分で改善されます。
舌下錠を外出時に携帯しておけば、いざ発作がでたときにも焦らずに対処できます。
治療的診断として、症状にニトログリセリンが効く場合には、狭心症の可能性を疑って精密検査で確定診断をすることもあります。
3-2.薬物治療
ニトログリセリンの舌下錠やスプレーは、主に救急薬として使用します。
継続的に使用するのは以下のような薬剤です。
血液を固まりにくくする治療として、代表的なのは、抗血小板薬であるアスピリンや抗凝固薬を使用します。
狭心症状を改善させるための薬として「血管拡張薬」があります。
血管拡張薬は、飲むことで全身の血管を同時に広げ、心臓の負担を軽減させます。
硝酸薬やカルシウム拮抗剤、冠血管拡張剤などがあります。
また冠動脈を広げて血流をサポートする働きもあり、異形狭心症の薬として多く用いられています。
そしてベータ遮断薬には、交感神経の活動を抑える役割があります。
交感神経は興奮すると活発になる神経細胞であるため、ベータ遮断薬でその活動を抑えることにより、血圧を下げ脈拍数も落とし心臓の負担を軽くします。
3-3.冠動脈形成術や冠動脈バイパス術
心筋梗塞を併発しそうな重篤な狭心症の場合、手術を行うこともあります。
心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術:PCI)や冠動脈ステント留置術など、血管経由でカテーテルを入れる方法と、開胸して外科的手術をする方法があります。
カテーテルは足の付け根やひじの動脈から挿入します。風船で拡張するバルーン治療、ステントの留置などの方法があります。
動脈硬化で狭くなった冠動脈を広げる手術(冠動脈形成術)は、「バルーン(風船)療法」とも呼ばれています。
カテーテルの先にバルーン(風船)をつけ、詰まっている冠動脈の箇所で風船を膨らませ、動脈を広げて治療をします。
バルーン療法が難しい場所の狭窄や、リスクが大きい場合は「冠動脈バイパス術」がおこなわれます。
また、バルーン療法では、再び狭窄が起こることもあり、このリスクがない金属製の薬剤溶出性ステント留置で血管を広げる治療法もあります。
冠動脈バイパス術は、複数の場所で冠動脈が詰まっているなど、よりリスクの高い症状に対しておこなわれる外科手術です。
足の静脈をバイパスとして使う他、胸、腕、胃の動脈を使うケースもあります。
4.狭心症の予防方法とは
狭心症は、軽度であれば直接命を脅かすものではないものの、放置しておくと心筋梗塞も引き起こす恐ろしい病気です。
狭心症を予防するためには、まずはその原因となる動脈硬化を防ぐことが大切です。
4-1.喫煙は最大のリスクをもたらす
たばこには多くの有害物質が含まれており、動脈硬化を引き起こすことで有名です。
ニコチンや一酸化炭素を含むタバコを吸うことで、血管の内皮に影響を及ぼし、血管収縮、血液凝固、動脈硬化を引き起こします。
また、自分がタバコを吸わなくても、身近に喫煙者がいる場合は要注意です。
タバコの副流煙も循環器病に悪影響を及ぼす物質が多く含まれています。
自分はもちろん、家族も含めて禁煙することが、狭心症の大きな予防になります。
4-2.和食を中心とした食生活にする
和食は血糖値の上昇を抑え、脂質や糖質も洋食に比べると少ないことから、動脈硬化を防ぎ、狭心症の予防に役立ちます。
狭心症を防ぐための食生活
・肉中心から魚中心の食生活にする
・食物繊維やカリウム、カルシウム、マグネシウムを豊富に含む食材を食べる
・野菜・海藻・きのこ類・豆類・ナッツ類などを積極的にとる
魚にはEPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸が多く含まれ、血栓を溶かし動脈硬化を改善します。
そして食物繊維の多い食品は、腸内環境を改善して動脈硬化の予防につながるでしょう。
また塩分は、1日にあたり男性7.5g未満、女性6.5g未満に抑え(※)、タンパク質の豊富な大豆製品(納豆、豆腐、豆乳)なども積極的に取ることも大切です。
(※)厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
1.狭心症を引き起こしやすい食べ物とは?
反対に動脈硬化を引き起こす原因となるのが、塩分、糖質、脂質の多い食事です。これらが当てはまる悪い食事例として、次のようなものがあります。
・インスタント食品
・ファストフード
・加工食品
・糖分の多い飲料や菓子類、パン類など
このような塩分や質の悪い脂質、糖分の多い食事ばかりとってしまうと、高血圧・肥満・糖尿病・脂質異常症などのリスクが高まり、動脈硬化を発症しやすくなります。
狭心症を予防するためには、これらの食事をなるべく避け、和食を中心とした食生活を意識することが大切です。
4-3.ストレスをためない
狭心症をはじめとした心臓疾患は、ストレスをためやすい人に発症しやすいといわれています。
人はストレスがたまると、活性酸素や炎症などによって動脈硬化が進行しやすくなります。
またストレスにより交感神経が活発になると、血圧が上昇して冠動脈内皮の傷害が生じやすくなるのです。
ストレスをためないようにするには「イライラしたら深呼吸をする」「明日できることは今日しない」など、自分に対するやさしい気配りが大切です。
また、ゆっくりとお風呂の湯船に浸かり、しっかりと睡眠時間を確保するなど、ホッとできる時間を増やすことも大切です。
4-4.適度な運動を取り入れる
狭心発作がある際には、運動は禁忌です。
しかし、狭心症を予防するには、適度な運動も大切です。おすすめは、ストレス軽減にも役立つ軽い有酸素運動です。
・ウォーキング
・水中ウォーキング
・軽い水泳
・ゆっくりとしたジョギング など
急に全速力で走るといった運動は、心臓に負担がかかるため、狭心症を予防する点ではおすすめできません。
反対にゆっくりと持続できる有酸素運動は、内臓脂肪を減らし、血液の循環を良くする効果があるので、狭心症の予防には効果的です。
有酸素運動は週3~4回を目安に30分以上行うようにしましょう。
5.日常生活でセルフチェック! ストレスを軽減して狭心症を予防していこう
狭心症の多くは、胸に違和感があったり、階段で息切れがしたりと、自覚症状が出やすいです。
まずは今回紹介したセルフチェックを確認し、狭心症のリスクがないか確認してみましょう。
少しでも不安なことがあれば、一度循環器内科を受診することが大切です。
また、人は加齢とともに動脈硬化のリスクが高まり、狭心症をはじめとした心臓疾患も引き起こしやすくなります。
狭心症の先にある心筋梗塞を引き起こさないためにも、和食を中心とした食生活を心がけ、適度な運動を実践し、ストレスをためない生活を意識していきましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。