医師推奨|身体が喜ぶ癒しのスープ「ボーンブロス」
皆さま、こんにちは。
医師で腸のスペシャリストの城谷昌彦です。
私のクリニックでは腸のトラブルを抱えている方が多いということもあり、腸内環境の改善目的で「ボーンブロス」を勧めることがよくあります。
ボーンブロスとは牛や豚、鳥などの骨からとったスープのことで、ちょうど鶏がらスープをイメージされる方が多いかと思いますが、これをさらに時間をかけてコトコト煮込み、その出汁(だし)に十分なビタミンやミネラル、アミノ酸が染み出したものこそが本物の「ボーンブロス」と言えます。
最近では既にボーンブロスをご家庭で実践されている方の受診も徐々に増えてきましたが、まだまだ「ボーンブロスって何ですか?」とか「ボーンブロスは知っているけどどうやって作れば良いのですか?」という質問をいただくことも多いので、今回はボーンブロスについてご紹介と、私のクリニックのナースが考案したレシピをご紹介します。
1.「ボーンブロス」って何?
1-1.骨を煮出してとる「だし」
ボーンブロス(Bone Broth)の”Bone”は骨、”Broth”は濃厚な「だし(出汁)」の出たスープという意味です。日本にも古くから「だし」をとる文化があるので、「骨だしスープ」と呼ぶ方がわかりやすいかもしれません。
海外では牛や豚、鶏などの動物の骨を使うことが一般的ですが、それら以外では、例えば鯛のアラ汁をはじめ、煮干しだしやあごだしなどのように魚を骨ごと煮出すのもボーンブロスと言えます。
1-2.手間暇かけることで栄養素の吸収効率が上がる
ボーンブロスでは長時間骨を煮出すことが推奨されています。そうすることで骨から染み出したコラーゲンが加水分解されて吸収されやすいゼラチンに変わります。ゼラチンはさらに加熱すると低分子化されてコラーゲンペプチドの手前まで分解されます。
胃腸が丈夫な場合は、自身の消化能力で食物の大きな分子も吸収しやすい状態に分解・消化できますが、消化機能が落ちた胃腸の場合には効率よく分解・消化ができないため、このプロセスが省略できるボーンブロスの方が負担なく吸収できます。
レシピによっては48時間のように長時間煮込むことが推奨されていますが、まずは1-2時間程度でも良いので沸騰しない程度の温度でコトコト煮込んでみましょう。
2.ボーンブロスの歴史を振り返ってみると
2-1.太古の時代から好まれたボーンブロス
イスラエルのケセム洞窟には、約20万年前に古代の人たちが生活していた痕跡が残っています。テルアビブ大学の調査チームによると、当時の人たちが動物の骨を食料としていた痕跡がこの洞窟で見つかっています。特に動物の骨を皮つきのまま保存し、栄養価の高い骨髄を食べていたということは注目すべき事実です。当時の人々にとっても栄養価の高い骨髄はとても貴重な栄養源だったことがうかがえます。
2-2.世界各地でのボーンブロス
古代ギリシアの医学の父と呼ばれるヒポクラテスは、消化機能に問題を持つ患者にボーンブロスを飲ませたことが知られています。
また、ユダヤ人の間では鶏肉の煮汁で風邪を癒す風習がありますし、カリブ海周辺諸国では病気の子どもに子牛の足を煮込んだスープをよく飲ませると言います。
一方、海に囲まれた日本では、昔から日常的に煮干しや鯛のアラ、鰹節などから出汁を取る習慣がありますが、魚には動物の骨には少ないヨウ素が豊富に含まれており、甲状腺の健康維持にも役立つとされています。
さらに、お隣の韓国では鶏の骨から出汁をとった「サムゲタン(参鶏湯)」、同様のものを中国では「ジータン(鶏湯)」と呼び、古くから薬膳料理として広く飲まれてきた歴史があります。
このように骨付き肉、あるいは魚を骨ごと煮込んでスープにする食文化は世界各地にあり、ボーンブロス(骨だしスープ )は、古くから活用されてきたことがわかります。
2-3.にわかに脚光を浴びたボーンブロス
近年、アメリカでは自然療法医たちがボーンブロスが美容やダイエットのみならず、腸内環境を改善し、アトピー性皮膚炎や生活習慣病など様々な不調の改善に役立つということで治療に取り入れるようになり、その影響もありセレブたちがこぞってボーンブロスを飲むようになりました。
そこに目をつけたニューヨークのボーンブロス専門店「brodo」が2014年にオープンし、そのファッション性も相まって世界が改めて注目するようになります。
brodoは今ではマンハッタンに複数のお店を構えるまでの人気店となり、行列が絶えない店となっています。
3.ボーンブロスの効果
古くから親しまれてきたボーンブロスには、様々な効能があることが確認されています。
3-1.傷んだ腸を修復する
腸の粘膜に何らかの原因で慢性的に炎症が起こるとリーキーガット(腸漏れ)が引き起こされます。リーキーガットの状態では、本来吸収されない毒素や未消化の食物が弱った腸粘膜から吸収されることで、全身の炎症の原因となります。
ボーンブロスに含まれるゼラチンには、抗炎症作用、免疫の調整、細胞を保護する作用などがあり、リーキーガットを改善させる効果があります。
3-2.体に蓄積した毒素を排出する
細胞を活性化して体内に蓄積した毒素を排出し、細胞外マトリックスを浄化してくれます。
3-3.シワを減らす
ボーンブロスに含まれるゼラチンは、皮膚の健康に欠かせないコラーゲンの構成要素です。コラーゲンはシワを伸ばす効果があり、天然のボトックス注射とも言えます。
3-4.脂肪を燃焼させる
ボーンブロスにはインスリンの作用を強めて血糖を安定させ、脂肪を燃焼させる効果があることに加え、炭水化物はほとんど含まれておらずカロリーも低いため、ダイエットの際に飲むように勧める治療家も少なくありません。
3-5.関節を保護する
ボーンブロスにはコンドロイチン、グルコサミン、ヒアルロン酸といった関節の健康を維持するための栄養素が含まれています。
3-6.炎症を抑える
ボーンブロスのゼラチンに含まれるグリシンは抗酸化作用のほか、肝臓の解毒機能をサポートしたり急性炎症、慢性炎症を共に抑制することがわかっています。炎症は自己免疫疾患や肥満の原因でもあり、慢性の炎症を持っている人にとってボーンブロスはぜひ取り入れたいメニューの一つです。
4.ボーンブロスの作り方
4-1.骨の選び方
ボーンブロスの主役は、なんと言っても健康な動物の骨です。
欧米の自然療法医たちは「グラスフェッド(grass fed)」と呼ばれる、牧草を食べて育つ放牧牛の骨を推奨しますが、国土の狭い日本では、まだまだグラスフェッド牛の骨は入手が難しいのが現状です。
抗生物質を多く使って育った動物の骨は、私たちの腸内細菌のバランスを乱すリスクもありますので、継続する場合は特に注意が必要です。
日本では比較的入手しやすい鶏ガラや手羽先を使ったレシピがよく紹介されていますが、できれば平飼いで健康に飼育された鶏を選びたいところです。
私のクリニックでは、できるだけ健康な動物の骨を使って欲しいとの思いから、主に地元兵庫県~京都府で獲れる野生の鹿の骨を活用したボーンブロスをお勧めしています。
日本国内でも少しずつではありますが、グラスフェッド牛や野生の動物(ジビエ)の骨や肉を扱う店も増えてきているので、ぜひ活用したいですね。
4-2.水に関して
ボーンブロスでは長時間煮込むために、水分が蒸発し濃縮されます。もし有害な物質が入っているとこれも濃縮されてしまいますから、できれば水質の担保されている天然水や、浄水器を利用したいものです。
4-3.野菜
骨だけで作る方もいますが、野菜を加えることで風味だけでなく、ビタミン・ミネラルが補給できたり、消化吸収を助けてくれる効果も期待できます。
ボーンブロスによく使われる野菜は、玉ねぎ・長ネギ・人参・セロリ・生姜・パセリなどです。もちろんオーガニックな食材が推奨されますが、継続することを考えると、できる範囲で農薬の少ないものを選ぶなどしてストレスのあまりない方法で選ぶことも大切です。
4-4. 調味料
主にお酢と塩を加えて味を引き締めます。お酢を加えることで骨のカルシウムをはじめとするミネラル成分が抽出しやすくなるほか、脂肪燃焼効果も期待できます。塩は天然塩などの様々なミネラルの多い塩を選びましょう。
4-5.ボーンブロスを煮込む時間
ボーンブロスは元々は沸騰させない程度の温度で数日にわたりコトコトと煮込んだ料理ですので、レシピによっては36時間とか48時間煮込むことが推奨されています。なかなかそんなに時間を取れない場合でも、ある程度の栄養素を煮出すためには最低1-2時間は確保したいところです。
私のクリニックではもう少し時間を割いて6時間は煮込むようにお勧めしています。今はスロークッカーと呼ばれる電気調理鍋がありますので、どうしても忙しい人はこの便利な調理器具を使うのも一つでしょう。
5.「体に染みわたる」ボーンブロス
多くの方がボーンブロスを初めて飲んだ時に「体に染みわたる」と表現します。私たちは味覚を感じるのは舌だけと考えがちですが、実は消化管全体に味を感じる受容体があることがわかっています。つまり私たちには、もともと体に必要な食べ物を消化管全体で選択する能力が備わっています。
この古くて新しいボーンブロスを飲むことを通して、ご自身の「はら」の感覚とつながり、ご自身の体のメッセージと向き合ってみてはいかがでしょう。
<ボーンブロスレシピ紹介>
私のクリニックのナースが考案した鹿の骨を使った基本的なボーンブロスのレシピを紹介します。
鹿が簡単に手に入らない!という方も大丈夫。入手しやすい鹿の骨以外でも作れます。
NOTE「ジビエで作る究極の骨だしスープ(ボーンブロス)星くらジビエ 基本の鹿肉ボーンブロス(一般食用)」より
https://note.com/bonebroth/n/n44a5c080a01b
(これ以外のレシピも今後紹介していきます。)
【※レシピの転用・転載は固くお断りいたします】
●基本の鹿ボーンブロスレシピ材料【2L分】
※鹿以外の骨・肉でも使用可能です。ex. 牛の骨・鶏ガラ・魚など)
・カット済み鹿骨 400g ※
・鹿スジ肉 250g※
※牛の場合も同量の骨・肉、鶏ガラの場合:1匹分、鯛などの魚のアラの場合:1匹分
・ローリエ 1枚(香りを出すために手で半分に割る)
・オレガノ・タイム・クミン 各ひとつまみ
・生姜 1片(微塵切り又は千切り・生姜パウダーでも可)
・水 2L(茹でこぼし、継ぎ足し分を除く)
・セロリ 1本(輪切り)
※イタリアンパセリでも代用可、その場合は煮込み終了直前に刻んで入れる。
・人参 2本 (いちょう切り)
・長ネギ 3本(3センチ程度の斜め切り)
・玉ねぎ 2個(クシ切り)
・リンゴ酢 大さじ2
・天然塩 適宜
●作り方
① 冷凍鹿骨とスジ肉(または牛骨・肉、鶏ガラ、魚のアラ)は、鍋に入れる前に軽く水で洗い、野菜を切る間流水にさらしておく。
② レタスとパセリ以外の野菜を切る。
③ 鍋に2Lの水、鹿骨とスジ肉(または牛骨・肉、鶏ガラ、魚のアラ)を入れ、沸騰寸前まで加熱する。
④ 湧き上がって来た灰汁をお玉(レードル)ですくい取ってから、煮汁を全部捨てる。
⑤ 鹿骨とスジ肉を(または牛骨・肉、鶏ガラ、魚のアラ)入れた鍋に、再び2Lの水と酢大さじ2を入れて30分程度放置する(夏場は念のため、冷蔵庫に入れて放置してください)。
⑥ ⑤にローリエを入れて火にかける。灰汁は適宜すくい取りながら、沸騰直前まで加熱する。
⑦野菜と生姜を投入して再度沸騰直前まで加熱。灰汁を取り、その後火を弱めて、水を注ぎ足しながら75℃以上98℃以下で36~48時間煮込む。
★スロークッカーを使用する場合は、ここでスロークッカーに移す。スロークッカーは温度が上がるまでに時間がかかるので、最初のみ「強」に設定。フツフツと気泡が上がって来たら、「弱」に設定する。長時間放置する場合は、必ず蓋をして水分の蒸発を防ぐ。
◎煮込み1~2時間後からは蓋をして水分の蒸発を防ぐと良い。火加減に注意。
◎レタスは煮込み24時間後に、ざく切りにして投入する。
◎ローリエ以外のハーブ・スパイスは、食べる直前か30分位前に入れる。香りがお好みでない場合は野菜投入時に入れてください。
◎パセリ(イタリアンパセリ)を使う場合は、煮込み終了直前に刻んで入れる。
⑧ 器に盛りつけ、天然塩を入れる。
⑨3日以上ストックする場合は、ザルで濾して粗熱を取り、小分けして冷凍する。3日以内に食べ切る場合は、濾さずに蓋付き容器に入れて冷蔵庫で保管。毎日加熱してから食べる。
★油をとりたい場合は、MCTオイル/ココナッツオイル/ギー又はグラスフェッドバターを、飲む直前に加えます。
このレシピの動画(https://youtu.be/cWN4oXETcbQ )
この記事の執筆は 医師 城谷 昌彦先生

城谷 昌彦
監修医
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・認定内科医・認定産業医
ルークス芦屋クリニック院長
腸内フローラ移植臨床研究会専務理事
NPOサイモントン療法協会理事
ヒュッゲ・ラボ株式会社代表取締役
主な所属学会
日本内科学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本抗加齢医学会・日本統合医
療学会・日本先制臨床医学会 など
東京医科歯科大学医学部卒業。
神戸大学病院内科、京都大学病院病理部、兵庫県立塚口病院(現・尼崎総合医療センター)消化器科医長、城谷医院院長などを経て、2016年ルークス芦屋クリニック開設。
消化器病専門医でありながら、自ら潰瘍性大腸炎発症によって大腸全摘術を経験。
西洋医学はもとより、東洋医学、心理学、分子栄養学、自然療法等の見地からも腸内環境を健全に保つことの大切さを改めて痛感し、腸内環境改善を柱とした根本治療を目指している。
2017年からは腸内フローラ移植(便移植)による治療を開始。腸内細菌が人体に及ぼす多大な機能改善力に着目し、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患だけでなく、うつ、自閉症、自己免疫疾患、がんなど多岐にわたる疾患の治療を行なっている。
- ルークス芦屋クリニックHP
https://lukesashiya.com - 城谷 昌彦の記事一覧
- facebook
https://m.facebook.com/drmasahiko/
著作・監修一覧
- ・『腸内細菌が喜ぶ生き方』(海竜社)
- ・『骨スープで楽々やせる!病気が治る!』(マキノ出版)
- ・『専門医伝授「アミノ酸豊富!骨だしスープで腸内フローラを再生」』(WEB女性自身)