皆さま、こんにちは。

医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

最近は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでもレジ袋が有料化され、ゴミのリサイクルシステムも定着し、日常のプラスチックを減らしたり、リサイクルすることに貢献していると自負している人も多いはずです。

ところが、全く盲点になっているのが、日常使う化粧品などに含まれるマイクロプラスチックです。

「え?そんなものにプラスチックが入っているの!?」と驚きますよね。

実は、多くのメイクアップアイテムにはマイクロプラスチックが含まれていますし、これこそが、洗い流して直接海に流れ込むことで海洋汚染の大きな問題になっているのですが、一般消費者には、まだほとんど知られていません。

EUや中国を中心に、世界的に規制強化の流れになっている化粧品業界のマイクロプラスチック問題と、その解決策となり得ることで注目したい新素材、木材由来の生分解性プラスチック「セルロースアセテート(酢酸セルロース)」についてご紹介します。

1.プラスチック問題と日本の実態

1-1.世界では「クール」日本では「うるさい」環境問題

コスメ

環境問題への意識やアクションが、先進国で最も低いとされている日本では、この問題について口にすると、「口うるさい」と言われてしまいがちです。

でも、最近では、「ELLE」や「VOGUE」などのファッション誌でも、エシカルファッションやエコを意識した持続可能なライフスタイルの特集が組まれるようになるほどに発展しています。

日本以外の先進国の多くでは、商品を選ぶときに、自分の美容や健康のためという視点はもちろんですが、同時に、私たちが暮らす地球環境への視点を持つことは当たり前だし、その方が「クールでお洒落」というイメージになっています。

ですから、煩わしいと思わずに、自らも当事者であるプラスチック問題にちょっとだけ、耳を傾けて頂きたいと思います。

1-2.プラスチックだらけの世界

プラスチックと言えば、どんなものを思い浮かべるでしょうか?

レジ袋、ペットボトルに、テイクアウトドリンクやデリの容器、加工食品や様々な日用品のパッケージ、小物、家電、さらには化学繊維の衣類などから建築資材に、自転車や自動車など…あげればキリがありません。

私たちの暮らしは、プラスチックに囲まれています。

プラスチックがなければ、私たちの生活は成り立たないと言っても過言ではありません。

手軽に使える分、手軽に捨てられるプラスチックの多くは、使い捨てされており、ゴミとして処理されればまだ良いのですが、環境中に投棄されたプラスチックが河川などから流れ流れて行き着く先が、海洋です。

1-3.世界の海はプラスチックのスープ

プラスチックの廃棄物

世界の海にプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン(※1)。そこへ少なくとも年間800万トンが、新たに流入していると推定されています(※2)。

海に流れ着いた全てのプラスチックごみの大半は、最終的に「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる北太平洋の大きな海域へと運ばれます。

「太平洋ゴミベルト」は、日本の4倍以上もの面積を占めているとされています。

世界経済フォーラムは海へ流入している海洋プラスチックごみは、アジア諸国からのものが全体の82%を占めるとしています(※2)。

(※1) McKinsey & Company and Ocean Conservancy (2015)
(※2) Neufeld, L., et al. (2016)

1-4.日本の海は世界の27倍の汚染

ビーチ

九州大学の調査では、日本海からは、世界平均の27倍多い量のマイクロプラスチックが検出されたとのことです。

東京農工大学の調査では、東京湾のカタクチイワシの約8割から、マイクロプラスチックが検出されたと報告されています。
それは、ポリエチレンやポリプロピレン、マイクロビーズや衣服由来の化学繊維などだったそうです。

日本の河川、海洋は、世界平均と比べても致命的に汚染されています。

私たちが無意識に垂れ流しているマイクロプラスチックが、世界の海の生物だけでなく、自分たちの首を絞めています。

1-5.プラスチックが海を傷つける

プラスチックゴミは、なかなか自然分解されません。

大きなプラスチックゴミを誤って食べてしまったたり、投棄された網に絡まったりすることで、海洋生物を直接的に傷つけます。

さらに、紫外線や波の影響で劣化していったプラスチックのうち、5mm以下のサイズになったプラスチックのことを「マイクロプラスチック」といいます。

マイクロプラスチックの影響は、まだ十分に明らかになっていませんが、化学物質を吸着するため、それを取り込んだ生物の中で化学物質が濃縮され、最終的に、魚を食べる人体にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。

1-6.マイクロプラスチックの種類

大きなプラスチック製品が分解されてできたものを「2次マイクロプラスチック」といいます。

プラスチックゴミを川や海に投棄せず、ゴミ箱に捨てたり、リサイクル処理していれば、海洋での2次マイクロプラスチックの発生には加担していないはずです。

しかし、化学繊維を使った衣服を洗濯した排水やナイロン素材のスポンジの劣化などによって、家庭からの排水として、2次マイクロプラスチックを垂れ流している可能性があります。

さらに、日々、無意識に流している可能性が高いのが、「1次マイクロプラスチック」と呼ばれる化粧品類の基材に含まれるマイクロプラスチックです。主には、スクラブ入りの洗顔料等に含まれるマイクロビーズや、メイクアップアイテムの基材に含まれています。

これらを洗面所から流すと、下水処理のフィルターを通り抜け、河川から海洋に流れ出てしまうことになります。

1-7.洗浄剤のマイクロビーズは廃止の流れ

洗浄剤

スクラブ剤などのマイクロビーズは、洗浄力を高めるために、洗顔料やボディソープ、歯磨き粉などに含まれているマイクロプラスチックです。

最近は、マイクロビーズを配合したスクラブ洗顔などは、店頭で見かけなくなったのではないでしょうか?スクラブ剤ですと、シュガーやソルトなど天然由来のものが主流になってきた印象です。

マイクロビーズ規制の動きは、世界中で進んでいます。
先駆けたのは、アメリカで、2015年12月に「マイクロビーズ除去海域法」を設立しました。それに続いて、2016年にはイギリスとフランスが、2018年には台湾がアジア圏で初となる使用規制を。さらに、2020年には中国が全面的な使用禁止、2025年前後にはEU全体で使用規制の見込みとなっています。

実は、日本にはマイクロプラスチック廃止を定める法案はなく、規制はゆるいものの、美容業界の努力によって、洗浄剤に含まれるスクラブ剤としてのマイクロビーズの自主規制が進んでいます。

大手化粧品メーカーは、軒並み、マイクロビーズの使用を控え、生分解性の高い原料や天然成分に切り替えを行っています。

1-8.メイクアップアイテムのマイクロプラスチック

メイク用品

一方で、盲点になっているのが、メイクアップアイテムなどの基材として使われるマイクロプラスチックです。

化粧下地や日焼け止め、ファンデーション(パウダー、リキッドいずれも)、おしろいなどのパウダー、アイシャドーにチーク、口紅と、あらゆるメイクアップアイテムには、基材としてマイクロプラスチックが含まれています。

ちょっと、びっくりしますよね。

・ナイロン
・アクリル
・シリコン

などが、主に使用されています。

これらは、何の目的で含まれているかというと、

・滑り効果:伸びを良くする
・光拡散効果:ブライトニングや紫外線撹乱目的

などです。

これらが配合されていないと、つけた際にムラやダマになったり、テクスチャーがゴワゴワしたり、上手く紫外線をブロックしない部分ができたりと、化粧品の機能性がかなり落ちてしまいます。

1-9.エコと使用感の両立が可能に

 

多くの市販の化粧品の使用感が良く効果が高いのは、マイクロプラスチックが配合されているおかげとも言えます。

従来、マイクロプラスチックの代わりになる生分解性のある天然成分として、セルロースを使った代替品がありましたが、マイクロプラスチックで叶えられる程の良い使用感を再現することが難しく課題となっていました。

私自身は、とても肌が弱いため、プラスチック基材無添加の天然原料由来の化粧品しか使えないのですが、伸びは悪く、機能性は犠牲にして使用しています。

環境や生態系への配慮と、使用感や機能性は、これまで二者択一で、どちらかを犠牲にするしかなかったのですが、今後、世界の潮流は化粧品基剤のマイクロプラスチックも排除する流れになっています。
そうすると、使用感や機能性は犠牲にせざるを得なくなるのも悩みどころです。

特にEU圏内では、2026年までに、基礎化粧品やメイク用品などすべての化粧品で、マイクロプラスチックを含む商品を販売禁止にするとしています。

日本の動きは、海外と比べて遅い傾向がありますが、いずれは世界に同調する形で禁止されていくと見込まれます。

そこで、生分解性が高い天然由来の素材でありながら、ナイロンなどのマイクロプラスチックと遜色ない使用感と機能性を実現する新しい原料が開発され、今、大変注目されています。

2.注目の生分解性素材「セルロースアセテート」

2-1.セルロースアセテート(酢酸セルロース)とは?

株式会社ダイセル(本社:大阪市北区)が開発した注目の素材、セルロースアセテート(酢酸セルロース:商品名 BELLOCEA®︎)とは、自然の木材由来の繊維・セルロースに、お酢の酸っぱい成分である酢酸という、安全な成分が結合した成分です。

いわば、木とお酢の合体です。

お酢と聞くとびっくりするかも知れませんが、そもそも、皮膚表面は、常在細菌が作り出す酢酸に常にさらされています。
といっても皮膚の上で酢酸がリリースされることもありませんから、皮膚への刺激もお酢特有の酸っぱい臭いもほとんどありません。

お酢

2-2.自然由来で自然に還る素材

自然由来で自然に帰る素材

伐採しすぎないよう環境に配慮して管理された植林地から採れるパルプからセルロースを取り出し、そこに酢酸を結合させ、微粒子化したもので、水に触れると加水分解して、セルロースと酢酸に分解され、その後さらにセルロースが細かく分解されます。

セルロースとは、天然の植物に含まれる細胞壁や植物繊維の主成分で、海に生息する藻類、海藻や微細藻類にも含まれます。

海にとって、セルロースは、至って当たり前に存在する安全な物質です。

セルロースアセテートは、セルロース単体と違い、二段階の分解プロセスが必要のため、ややゆっくりとした分解速度ではありますが、最終的には200日程度でセルロース同様に分解されてしまうことが分かっています。

2-3.使用感や機能性は同等かそれ以上

1.伸びは最高レベル

伸びは最高レベル

こちらは、セルロースアセテート(BELLOCEA®︎)と、ナイロン、アクリル、シリコンなどのマイクロプラスチック基材と天然ミネラル成分であり基材に使用されるシリカの伸びを比較したものです。

パウダータイプであっても、リキッドファンデーションタイプであっても、伸びは他の基材と比較して同等かそれ以上であることがわかります。

2.ムラなく均一に

surface-roughness

こちらは、樹脂製の皮膚モデルの上に、各素材を配合した日焼け止めを伸ばした3Dイメージです。

色ムラが少ないほどに、凹凸が少なく、均一に伸びているということを示しています。

下段のマイクロプラスチック素材である、アクリル、シリコン、ナイロンと比較し、上段右のセルロースアセテート(BELLOCEA®︎)は、より均一に伸びていることがわかります。

ムラが生まれるということは、紫外線を通しやすい部分ができてしまうことを意味します。より均一に塗り広げることで、均一に紫外線をブロックできることができるセルロースアセテートは、この点でも優秀です。

アクリル、シリコン、ナイロンなどのマイクロプラスチック素材を配合した日焼け止めと、セルロースアセテートを配合した日焼け止めの比較でも、高いSPF(紫外線B波をブロックする指数)を実現できることが基礎研究で明らかになっています。

2-4.敏感肌かつエコ視点の化粧品選択の悩み

私自身、先にお話ししたように、大変な敏感肌です。
小さい頃は、全身のひどいアトピー性皮膚炎だったのですが、大人になっても顔の皮膚だけは極端に弱く、デパートの化粧品コーナーに並ぶ化粧品類の多くは、刺激を感じたり、炎症が起きたりして、使うことができません。

そのくせ、趣味で海に行くものですから、日焼け止めは必須なのですが、肌への負担の大きさや、サンゴ礁にダメージを与えるとしてハワイなどでは2021年から禁止されることもあり、オキシベンゾンやオクチノキサートなどの紫外線吸収剤を配合しないものを選んでいます。

その代わりとなるのが、酸化亜鉛などの紫外線撹乱剤なのですが、自然由来の負担の少ない素材を中心とした日焼け止めは、白浮きする上に伸びが悪く、使用感が大変悪いのです。

それでも我慢して使っていたのですが、もし、セルロースアセテートのおかげで、これらが全て解決するのであれば、とても嬉しいと感じています。

2-5.欧米先行の展開、国内は?

そうなると早く使いたいところですが、私たちが実際にセルロースアセテートを配合した化粧品を使うことができるのは、早くとも来年あたりからになるようです。

マイクロプラスチックについての規制の動きは、EUや中国、アメリカなどが先駆けて進んでいますが、日本では、国が主導する規制はなく、美容業界の自主努力による規制にとどまっているのが現状です。

食品の規制など、その他の分野もそうですが、日本は、世界が動いたら、遅れてそれに追随するのが常です。

セルロースアセテートについては、2020年10月にリリースされる見込みですが、現状、導入に前向きなのは、欧米のメーカーで、国内メーカーは、慎重に検討しているところのようです。

私自身の悩みの種でもありますし、WELLMETHODブランドとして、国内市場の動きに先駆けて、セルロースアセテートを使ったナチュラルな化粧品を開発したいという思いも沸いてきました。

2-6.一人一人の選択が大切に

美しい海

業界を動かすことができるのは、私たち消費者の声です。

私たち、大人しい日本の消費者と違い、欧米や中国のように厳しい目を持ち、大々的に意見する消費者は、市場を積極的に動かす力を持っています。

私たちが、積極的に求めれば、ニーズに応じて、市場は動くものです。

人にも地球にも優しい商品が当たり前になる世の中を作るのは、私たち一人一人の選択がとても大切です。

これをきっかけに、私たちが日常的に使うあらゆる商品がどんなものから作られて、自分だけでなく環境にどんな影響を与えるのかをよく考えて、アクションを選択していきたいですね。

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詳しくは→ https://wellmethod.jp/present/

医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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