医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

免疫力の維持・向上のために日常からできることを色々とやっておきたいこの時期です。

感染症への抵抗力を高めるためには、食事やライフスタイルを整えて、心身を健康に保つことが基本になります。
それでも、「怠い」「しんどい」「元気がない」「気力がわかない」などの不調がある人も多いのではないでしょうか?

東洋医学的には、「気虚(ききょ)」と呼ばれる気が不足している状態の際には、これらの症状が現れると同時に、免疫力が低下します。

今日は、免疫力を維持・向上するために役立つ漢方薬についてお伝えしたいと思います。
気虚を補う「補気剤(ほきざい)」は、比較的万人に使いやすく、薬局などで購入して気軽に試すことができます。

1.免疫力を維持・向上する漢方薬

漢方薬

「病は気から」という言葉があるように、東洋医学的には、「気虚(ききょ)」である気の不足は、体のあらゆる機能が低下している状態で、万病を引き起こす元であると考えられています。

1-1.気虚タイプはこんな人

1.疲れやすい
2.常にだる重い
3.体が冷えやすい
4.体力がない
5.顔色が悪い
6.胃腸が弱い
7.食欲がない、もたれやすい
8.下痢をしやすい
9.気力がわかない
10.うつうつとしやすい

「あら私だわ!」と思った方も多いのではないでしょうか?

どの年齢であっても起こりうる症状ですが、特に全身の機能が年齢と共に低下するため、年齢を重ねるほど多くの人が当てはまるようになってきます。

特に病院で病気の診断はされないのにこうした症状がある人は、いわゆる病気になる手前の「未病」の状態と考えられます。
未病の段階は、病気になる手前の状態ですが、体のあらゆる機能が低下しているために本来働くはずの自然治癒力・抵抗力が発揮されません。

特に、気虚の人は、免疫機能も弱り、感染症への抵抗力も低い状態です。

1-2.胃腸の弱さがベースにある

気虚タイプで胃腸が弱い女性

気虚の人のベースには、胃腸の弱さがあります。

人間は、主に食事からエネルギーを得ていますが、胃腸が弱く、消化・吸収力が低下していては、それが十分に得られません。
それが、気のエネルギーの低下に繋がり、全身の機能低下に繋がると考えられています。

気虚の際に使う漢方薬は、主に胃腸をサポートし、全身のエネルギーを充実させるものになります。

1-3.気虚の人は真っ先に風邪をひく

特に、気虚の人は、風邪のシーズンになると、誰よりも先に風邪をひきがちです。
同じウイルス疾患であるインフルエンザやコロナウイルスについても違いはありません。

本格的に感染症にかかってしまったら、漢方薬を切り替える必要がありますが、かからないようにするための予防に、また病後の回復に、医療現場でもしばしば補気剤を処方します。

1-4.気虚に使う三大漢方薬とその効果

漢方薬

気虚に使う三大漢方薬があります。
漢方薬にも作用が強過ぎるものもありますが、補気剤は、虚弱な人、高齢者にでも使える比較的使いやすい漢方薬です。

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
・十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
・人参養栄湯(にんじんようえいとう)

1.補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

最もよく使用される補気剤で、風邪予防や風邪が長引いてグズグズ治らない時、病後の回復にもしばしば処方します。

体の内側、外側からエネルギーを補います。
冷えや寝汗を伴う場合。また、更年期や産後の子宮の下垂にも。

2.十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

10種類の生薬が含まれる補気剤で、特に貧血傾向がある場合に使います。
気だけでなく、血(けつ)と呼ばれる血液が不足している人に向いています。
要するに、WELLMETHODでもしばしばご紹介している隠れ貧血がある人の日常的な諸症状に向いている漢方薬ということです。

皮膚の乾燥を伴い、冷えがあるタイプに、慢性疾患がある人の体力の低下に対してしばしば処方します。

風邪を引いた際の倦怠感には、どちらかといえば、補中益気湯が向いています。

3.人参養栄湯(にんじんようえいとう)

特に、呼吸器が弱い人、呼吸器症状がある場合の倦怠感に使います。

十全大補湯に加え、鎮静作用のある茯苓(ブクリョウ)、鎮咳作用の五味子(ゴミシ)を含んでおり、呼吸器の慢性的な病気(喘息、肺気腫、肺癌など)を有している場合に有効です。
十全大補湯と同じ生薬も含まれているので、隠れ貧血がベースにある人で特に呼吸器が弱い人に向いています。

嚥下障害がある場合にも有効と考えられるので、高齢者で嚥下機能が悪い人にもよく使用します。

1-5.補気剤の免疫への効果

免疫細胞活性化

補気剤は、免疫細胞の減少を食い止め、免疫のバランスを調整し、ウイルスが感染した細胞や腫瘍細胞を駆除する免疫細胞・NK細胞を活性化する働きがあることがわかっています。

1.白血球の減少を回復させる

補中益気湯や人参養栄湯は、白血球を作る 造血幹細胞の増殖を促進して,白血球減少症を回復させることがわかっています。人参養栄湯は、それに加えて赤血球を作る元になる前駆細胞に働きかけて、赤血球を増加させる働きがあります。

※日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)132,276~279(2008

2.腸の周りの免疫細胞に働きかける

昨今、「免疫は腸から」と言われていますが、補中益気湯は、主に腸管にいる腸管上皮間リンパ球に作用することがわかっています。
補中益気湯は、腸管上皮間リンパ球からのインターフェロンγの産生を促し、マクロファージを活性化して細菌感染に対抗します。

また、戦う一方で、アレルギー反応を引き起こす免疫細胞の働き(インターロイキン4の産生細胞)を抑制し、アレルギーを引き起こす抗体の産生を抑制し、アレルギーを抑制します。
このため、アトピー性皮膚炎などにも有効性が確認されています。

※「補中益気湯の免疫調整作用(三原医学社)」

3.NK細胞を活性化する

補中益気湯は、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、感染症やがんに対抗するために重要な免疫細胞です。
ウイルスが感染した細胞やがんの腫瘍細胞を食べて駆逐します。

補中益気湯服用前のNK細胞活性24.6±13.7%だったところ、服用後には30.4±14.4%となったと報告されています。

※アレルギー37(2),107-114

2.薬局薬店や漢方外来で相談を

漢方薬煎じ薬

これらの漢方薬は、漢方薬をあつかう薬局薬店でも販売されていますので、気軽に試してみることができます。
本格的に相談をしようと思えば、漢方薬剤師が常駐する薬局での相談がおすすめです。

また、漢方薬を扱う内科や漢方外来のある病院では、保険適応でも処方することが可能です。
薬局薬店で気軽に購入できる漢方薬や保険適応で処方できる漢方薬は、基本的にエキスを顆粒化した顆粒剤になります。

本来の漢方薬は、生薬を煮出す煎じ薬であり、顆粒剤には、本格的な効果は煎じ薬に含まれる全ての成分が含まれるわけではありません。

気軽に試せるのは、顆粒剤。本格的に相談したいのであれば、漢方薬局や漢方専門医によるう漢方外来で、自分の体質を判断してもらいながら適切な剤形の漢方薬を処方してもらうと良いですね。

3.気虚の人へのライフスタイルの処方箋

3-1.生活についての処方箋

散歩

気虚の人にとっては、とにかく無理は禁物です。
ストレス要因をなるべく排除し、ゆったり規則正しいライフスタイルを送るのが一番です。

ゆっくり休養、睡眠をとり、無理な運動はせず、ヨガやストレッチ、ごく軽い散歩などをして自分のペースで生活をしましょう。
筋トレやジョギングなどを無理してしないようにしましょう。

また、気が向かない人付き合いや外出も控えて、自分の趣味のこと、好きなことをやりたければやり、やりたくなければ、ただただ家でゆったりと過ごしましょう。

3-2.食事についての処方箋

気虚の人は、消化が悪い傾向にありますから、消化に負担がかかるもの、また胃腸を冷やす冷たいものを避けることが重要です。
また、食べ過ぎも禁物です。

避けるべきは、

・冷たいもの
・カフェイン入りの飲料
・生もの、生野菜
・果物
・砂糖を使った甘いもの
・脂っこい肉や揚げ物など

体を温めて消化機能を高める食材を選び、ゆっくりと咀嚼した後で飲み込むことです。

消化の良い煮物

気を補う食材は、

・うなぎ
・卵
・肉類
・山芋
・生姜(加熱したものが温める、非加熱は冷やす)
・サツマイモ
・カボチャ
・ねぎ
・豆類

などですが、タンパク質の消化には胃の働きが不可欠ですので、肉類は特によく噛んで胃腸の様子を見ながら食べましょう。

漢方で未病を解決

日常生活をしっかり整えた上で、なお、倦怠感や冷えが続く場合に、補気剤を試してみてください。

漢方薬は時間がかかるというイメージがあるかも知れませんが、私の処方感覚では、ぴったりハマると1週間もすれば体感してくる人が多いです。
調子が良さそうであれば、しばらく続けてみてください。

この冬を元気に乗り切りましょう

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか