【医師解説】コラーゲンを増やすためにコラーゲン鍋よりも食べたい最も大切な栄養素
皆さま、こんにちは。
医師で予防スペシャリストの桐村里紗です。
寒い季節になりました。
鍋が恋しい季節、「コラーゲン鍋」や「コラーゲンボウル」を追加できるサービスが女子会でも人気かもしれません。
でも、これだけでは肌の中のコラーゲンにとっては不十分です。
コラーゲンの合成に不可欠な栄養素が不足していたら、コラーゲンは作られません。
日常の食事でしっかり栄養素をとることで、コラーゲンの合成を維持していきましょう。
目次
1.コラーゲンを増やす食べ方
肌の弾力に必須のコラーゲン。
不足するとシワやたるみの原因になりますから、維持したいものです。
1-1.コラーゲンは肌のためだけにあらず
そもそも、コラーゲンとは何でしょう?
コラーゲンとは、肌や血管、腱、軟骨・骨などを構成する繊維状のたんぱく質です。
線維芽細胞という線維を作る細胞から合成されます。
実に、人体のたんぱく質の約30%を占めているとされていますから、かなり重要です。
コラーゲンの約40%は肌に、20%は骨や軟骨に、残りは、血管や内臓など全身の組織を構成しています。
コラーゲンは、肌の構造を支えるハリとしての役割にとどまらず、全身の構造のために不可欠です。
コラーゲンには弾力性があります。
それが、全身の組織の柔軟性にとって不可欠です。
肌・・・ハリや弾力をもたらす
関節・・・関節を保護し、関節痛や炎症を予防する
骨・・・骨をしなやかに、丈夫にする
血管・・・柔軟性を保ち、動脈硬化を防ぐ
など、これらの組織でコラーゲンが不足すると、シワやたるみだけでなく、関節炎や関節痛、骨粗しょう症、動脈硬化が起きてしまいます。
1-2.コラーゲンの加齢による劣化
コラーゲンも、その他の構造と同じく、新陳代謝されます。
線維芽細胞から新しく作られ、役割を果たし、古くなったら壊れてまた新しいコラーゲンが作られる。
そのバランスが上手くいっていたら、常に新しく高機能なコラーゲンで体が支えられるわけですが、年齢と共に新陳代謝が悪くなり、劣化したコラーゲンの割合が増えてきます。
経年劣化はある程度仕方ない部分がありますが、この時に、コラーゲンの合成を促す原料や触媒となる栄養素をしっかりと補っておくことでコラーゲンの合成を保つことが予防のカギとなります。
1-3.コラーゲン特有のアミノ酸の働き
コラーゲンは、かなり分子構造の大きいタンパク質です。
そのまま吸収されることはありません。
胃でペプチドという状態に分解され、さらにはアミノ酸にまで分解されます。
半消化体のコラーゲンペプチド、もしくは、アミノ酸に分解されて、吸収されます。
全身の様々な働きをするタンパク質の原料になりますので、必ずしもコラーゲンになるわけではありません。
ただし、コラーゲンを含む食材に含まれるコラーゲン特有のアミノ酸(ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン)があります。
これらは、他のタンパク質にはあまり含まれないアミノ酸です。
これらのコラーゲン特有のアミノ酸を食品から摂取することで、体内のコラーゲンに再合成されやすいことがわかってきました。
また、コラーゲンペプチドとして吸収されたものも、コラーゲン特有のアミノ酸を含み、血流にのって身体の各部位に運ばれ、肌や骨、関節、血管などのコラーゲンの再合成などを働きかけます。
1-4.コラーゲンを多く含む食材
コラーゲンタンパク質を多く含む食材を食べることで、口からコラーゲンの原料を補うことができます。
コラーゲンは、牛すじ、鳥の皮、鳥なんこつ、豚足などの肉類、うなぎ、カレイ、アンコウ、フカヒレ、魚の皮などの魚類、動物の骨(ボーンブロス)など数多くの食品に含まれています。
100gあたりのコラーゲン含有量(mg)は、
・牛すじ:4980
・鶏軟骨:4000
・豚白もつ:3080
・鶏砂肝:2320
・フカヒレ(戻し):9920
・うなぎ蒲焼:5530
・はも皮あり:3560
・鮭皮あり:2410
※栄養学雑誌:2012,vol70,2
コラーゲンを多く含む手軽な食材は、肉類ですが、これらには飽和脂肪酸も多く、全体としてたくさん食べて良いわけではありません。
その代わり、皮を含む天然の魚は、含まれる油もオメガ3系脂肪酸(DHA ,EPA))であり、積極的に食べることで動脈硬化を防いでくれます。
皮を食べやすい調理法として、焼き魚や煮魚がおすすめです。
養殖の場合は、オメガ3系脂肪酸(DHA ,EPA)の含有が少なく、炎症を起こしやすい脂肪酸組成になっているため、おすすめしていません。
また、骨を煮出して作るスープであるボーンブロススープは、吸収の良い形でコラーゲンを摂取することができておすすめです。
こちらも、健康に育った平飼いの鶏のガラや、天然の魚の骨、またインターネットで鹿など野生動物の骨を購入することで質の良いボーンブロススープができます。
https://wellmethod.jp/bone-broth/
コラーゲン由来のプロテインを摂取するのもお手軽です。
魚由来のフィッシュコラーゲンは吸収も良くおすすめです。
2.コラーゲンだけでは不足!合成に必要な栄養素
コラーゲンだけ摂取していれば良いというわけではありません。
コラーゲンの合成には、原料となるタンパク質、ペプチド、アミノ酸だけでなく、鉄とビタミンCが不可欠です。
コラーゲンはタンパク質が集まって、酵素の働きでらせん状になって合成されます。
酵素の働きに、鉄とビタミンCが不可欠になります。鉄とビタミンCが不足すると、せっかくタンパク質を摂取してもコラーゲンに合成されません。
2-1.かくれ貧血は必須でなおす
月経のある女性は、多くがかくれ貧血であるとお伝えしました。
かくれ貧血があるとコラーゲンの合成が悪くなります。
その結果、皮膚のシワやたるみだけでなく、血管が弱くなりぶつけた覚えがないのにアザができやすくなったり、関節のクッション性が悪くなり関節痛や炎症が起こりやすくなったりします。
かくれ貧血やセルフチェック、鉄の摂取方法については、こちらの記事をご参照ください。
▼もしかして「隠れ貧血」?医師が教えるセルフチェックで不調の意味を考えよう
https://wellmethod.jp/indefinitecomplaint_hiddenanemia/
2-2.ビタミンCはこまめに
ビタミンCは比較的摂取しやすいビタミンですが、ちょっとストレスがかかったり、運動をしたり、喫煙や飲酒をしたりすることですぐに消費されます。
ビタミンCは水に溶けやすく尿からも出ていきやすいので、こまめに摂取することが大切です。
ビタミンCが豊富な食材は以下の通りです。
赤ピーマン:170mg
ブロッコリー:120mg
キウイフルーツ(黄):140mg
菜の花:110mg
キウイフルーツ(緑):69mg
イチゴ:62mg
ネーブル:60mg
レモン果汁:50mg
キャベツ:41mg
ジャガイモ:35mg
サツマイモ:29mg
※:日本食品成分表(文部科学省)
ビタミンCの抽出物を摂取すれば、ビタミンCは大量に摂取できますが、農作物にはビタミンCだけでなくビタミンCの働きをサポートする様々な生理活性物質も含んでいます。
そうした食品の持つ全体性は、ビタミンCの含有量以上に多くの恩恵を与えてくれます。
ただし、ビタミンCが豊富だから大量に食べれば健康だという単純な話でもありません。
食品は質を重視し、持続可能な農法に配慮した農作物があれば優先的に選択するなど、トータルなバランスで考えて選んでいきたいものです。
3.肌のためになるセラミドも
コラーゲンだけで美肌が保たれるわけではありません。
コラーゲンは、真皮層で働きますが、肌の潤いを保つためには、表皮の角層が大切です。
角層の細胞間には、細胞間脂質と呼ばれる脂質があります。
セラミドは、スフィンゴ脂質と呼ばれる特殊な脂質で、脂質でありながら水となじむ「親水基」という構造を持っています。
そのため、角層の中で水の分子と共に、ラメラ構造という層をつくり、潤いを保ちます。ラメラ構造が保たれた角層は、バリア機能や保湿機能が高くなります。
セラミドの減少によってラメラ構造が崩れると、バリア機能が弱まり、アレルゲンや細菌などが侵入しやすい状態になります。すると、かゆみや炎症などを引き起こします。
アトピー性皮膚炎では、体質的にセラミドの量が少なく、バリア機能の低下があることがわかっています。
セラミドは食品にも含まれています。
セラミドを多く含む食べ物は、
生芋こんにゃく
米
豆類
海藻類
これらの食品の中のセラミドは、グルコシルセラミドという形で存在しますが、食品中のグルコシルセラミドは、体内に吸収されにくく多くは排泄されてしまいます。
セラミドを体内に吸収させるには、セラミドの抽出物の方が効率が良いと言えます。
セラミドを経口摂取することで、腸内でスフィンゴシンや糖、脂肪酸などに分解され、それが全身に運ばれてセラミドの合成に役立つと考えられています。
セラミドの場合は、ターゲットが角層なので、化粧品として肌から塗布することで角層に潤いを与えることもできます。
塗布する場合は、直接、潤いが欲しい部分に届けることもできます。
内側から、外側から、ダブルで肌を潤わせてくれるセラミドも、美肌には欠かせない成分です。
4.まとめ
「年齢のせい」と嘆く前に、日常の食事の工夫で美肌を保つことができますよ。
肌に良い食べ物のまとめはこちらも参照下さい。
▼肌にとって良い食べ物とは? 美肌をサポートする食べ物と日常生活で大切な意識
https://wellmethod.jp/beautiful-skin-food/
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか