【医師解説】接触皮膚炎とは?かぶれやすい部位別の原因と対処法
皆さま、こんにちは。
医師で予防スペシャリストの桐村里紗です。
皮膚科医時代に、多くの「湿疹が出ました」の訴えがある患者さんを診療していました。
その中でも多いのが、「接触皮膚炎」です。
いわゆる「かぶれ」ですが、その原因は様々です。
でも、原因がわかれば、根治できる疾患です。
顔に出ると、化粧ノリも悪くなり、慢性化すると色素沈着して黒ずんでしまうのでできるだけ早く治したいものです。
目次
1.接触皮膚炎
1-1. 接触皮膚炎の定義
接触皮膚炎とは、物理的に皮膚に直接何かの物質に触れることにより、炎症が起きる皮膚疾患です。
湿疹がある場所は、痒みを伴い、炎症により赤みが出て、皮膚表面もざらざらゴワゴワします。
重症化すると、水疱が起きたり、強い腫れやただれが起きたりして、痛みを伴うこともあります。
湿疹とは、皮膚に炎症を起こす病気の総称です。
その中でも、外部からの刺激によることがはっきりしている場合を接触皮膚炎といい、一般的には「かぶれ」にあたります。
2. かぶれが起きやすい部位と原因
かぶれは、接触するものによって、起きやすい部位があります。
特に、化粧をする女性の場合は、顔まわりが気になりますね。皮膚も弱いため、注意が必要です。
頭部:毛染め、シャンプー、育毛剤、ヘアピンなど
顔:基礎化粧品、メイク用品、日焼け止め、医薬品、メガネ
目周り:アイシャドー、アイライン、マスカラ、ビューラー、点眼液、花粉など
口周り:食べ物(醤油、柑橘類の汁、マンゴーなど)、歯磨き粉、リップクリーム、口紅
耳:ピアス、イヤリング、メガネ
首:ネックレス、衣料品、香水
ワキ:制汗剤、除毛剤
手:ゴム、手袋、皮革製品、マニキュア、洗剤、金属、植物、医薬品など
腕:時計、ブレスレット、植物など
脚:靴下、靴、抗真菌剤
体幹部:肌着・衣服、ベルトのバックル、洗剤、ボディソープ、医薬品など
デリケートゾーン:肌着、洗剤、生理用品、コンドーム、おむつなど
全身:金属・薬剤・外用剤・湿布薬・食物・衣類
3. 4つの分類
接触皮膚炎は、4つに分類されます。
・刺激性接触皮膚炎:刺激物質が原因に
・アレルギー性接触皮膚炎:アレルゲンとなる抗原が原因に
・光接触皮膚炎
・全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群
3-1. 刺激性接触皮膚炎とは
刺激物質により皮膚が直接損傷されることで生じます。
化学物質やかぶれやすい植物などに接触することで起こります。
接触皮膚炎の約8割は、刺激性で起こります。
原因となるのは、そもそも刺激性を持っている物質ですので、アレルギー体質でなくても誰にでも起こる可能性があります。
刺激が強い物質だけでなく、健常な皮膚では問題のない物質であっても、皮膚のバリア機能が壊れている場合に起こることがあります。
・有機溶剤:マニキュアの除光液など
・酸やアルカリ:家庭用洗剤など
・植物:イラクサ・センニンソウ・ポインセチアなど
・体液:唾液・糞尿
3-2. アレルギー性接触皮膚炎とは
アレルゲンとなる、物質が皮膚を守る免疫細胞に触れ、免疫細胞がその物質を「外敵」とみなして炎症を起こすことで発症します。
その物質に対して、アレルギーを持っていない人では起きません。
繰り返し皮膚に原因となる物質が触れることで起こる場合もありますし、1回触れただけで、「外敵」とみなし、2回目から免疫が暴れて接触皮膚炎が起こることがあります。
アレルギーがある人が、アレルゲンとなる物質に触れてから、数時間から1日以内に皮膚症状が出るのが一般的ですが、場合によっては3〜4日経ってから反応が起きることもあります。
先にあげた化粧品やシャンプー、金属など日常で皮膚に接触する様々なものが、原因になります。
3-3. 光接触皮膚炎とは
光接触皮膚炎は、日光が関係して起こる接触皮膚炎です。
原因となる物質が皮膚に接触し、それに日光が加わることで起こります。
光接触皮膚炎にも2つのタイプがあり、それぞれ、「光毒性接触皮膚炎」、「光アレルギー性接触皮膚炎」と呼ばれていますが、多くは後者です。
1. 光毒性接触皮膚炎
光毒性とは物質に紫外線が当たり、それによって活性酸素が発生して、組織や細胞にダメージを与えるものです。
原因となる物質は、柑橘類に多く含まれるソラレンやベルガプテン、コールタールなどがあります。
精油の中でも、柑橘系のベルガモットは、ベルガプテンを多く含むので、化粧品など肌につけて日光に当たるものには配合しないよう、注意喚起されています。
精油の性質を知らずに自作の化粧水にベルガモットの精油を使ってしまい、かぶれるケースはよくあります。
症状は主に日焼け症状となります。
赤みを伴い、そのうち皮がむけて、色素沈着となってしまいます。
2. 光アレルギー性接触皮膚炎
光アレルギー性接触皮膚炎は、ある成分に日光が加わることで、免疫が働き、アレルギーを起こすことでかぶれるものです。
内服薬である、クロルプラマジン、サイアザイド薬、経口糖尿病薬、また、湿布薬や痛み止めの外用剤に配合されたケトプロフェンなどが原因になります。
3-4. 全身性接触皮膚炎とは
原因となる成分に接触してアレルギーとなった後で、そのアレルゲンとなる成分が繰り返し皮膚に接触したり、口や吸入などで体内に侵入することで、強いかゆみを伴う皮膚症状が接触範囲を超えて全身に出現します。
水銀・ニッケル・コバルト・クロムなど、金属が原因になりやすく、注意が必要です。
特に、歯科金属の中でも、昔ながらの歯科治療によく使われていたアマルガムは、水銀を含んでいます。
水銀は体温で揮発するので、アマルガムが入っていると、常に揮発しているものを吸入することになります。
1. 歯科金属に要注意
全身に皮膚炎が起きている人に、私は必ず「歯科金属入ってませんか?」と聞き、口の中を見せてもらいます。
特に、アレルギー反応が起こりやすいアトピー性皮膚炎がベースにある場合、歯科金属を除去することで劇的に改善することがあります。
汗をかいて皮膚炎が悪化するのが典型症状です。
汗として出た金属によって皮膚炎が起きるので、発汗することで悪化します。
歯科金属を除去する場合、アマルガムのように水銀が揮発しやすいい金属は除去する際に被曝します。除去することで逆に悪化することもありますし、解毒力が弱いと体に蓄積して、疲労や倦怠感など様々な不定愁訴を起こすこともあります。長年のアマルガムからの水銀の揮発で体への蓄積は必須ですから、その後にデトックスを意識したケアも不可欠です。
この場合、ホームページなどを確認して「アマルガム」とそのデトックスについて十分に説明がある歯科クリニックを受診してください。
4. 接触皮膚炎の対処法
4-1. 疑わしい原因物質の特定
接触皮膚炎には、明らかに原因となる物質があります。
自分の生活歴から、疑わしいものを推測して、やめてみなければ、始まりません。
例えば、目の周りがかぶれた場合、アイシャドーを変えたり、点眼液を使い始めたりしたのであれば、まず、それを止めることです。
接触皮膚炎の原因がわからないままだと、慢性化して、重症化してしまうこともあります。
意外な食べ物や医師から処方された薬剤が原因になることもありますので、詳しい問診によって原因を探っていく必要があります。
その場合は、皮膚科専門医にかかりましょう。
4-2. 確定診断にはパッチテスト
確定診断をする場合、皮膚科で「パッチテスト」を行います。
疑わしい物質を皮膚に直接貼り付けてみて、48時間後に皮膚の反応を確認します。
酷い場合は、水疱が出るなどの反応があります。
金属アレルギーの場合は、数日〜1週間程度から陽性反応があらわれることもあります。
4-3. 血液検査では特定できない
ちなみに、よく勘違いされますが、血液検査では、接触皮膚炎の原因は特定できません。
アレルギーの原因物質を血液検査で特定することがありますが、こちらは、IgEという即時型の反応を起こす抗体を測っています。
蕁麻疹・喘息・花粉症などのアレルギーは、原因を特定するためにIgE抗体を測定します。
接触皮膚炎は、遅延型アレルギーという別の機序のアレルギー反応ですから、IgEを測定しても意味がありません。
基本的には、パッチテストが必要になります。
4-4. 接触皮膚炎の治療
接触皮膚炎の治療は、まず、原因物質の特定と除去。
これだけで治らない慢性化した湿疹には、外用薬が必要になります。
外用薬で皮膚の炎症をしっかり落ち着けることで、繰り返すことを避けられます。
1. ステロイド剤の外用についての考え方
外用薬は、基本的には、ステロイド剤になります。
ステロイド剤については、私自身もなるべく使用したくないと考えていますが、慢性化している場合は使用しないと落ち着けることが難しく長期化します。
慢性化した炎症の根を断ち切るには、一時的にしっかりと外用することが必要です。
恐々と少量短期間使用し、炎症が治らないうちにやめてしまうと、ぶり返してしまい、慢性化して治らなくなります。
例え原因物質を絶っても、一度湿疹が慢性化すると同じ場所に炎症がぶり返しやすくなります。
また、ステロイド剤には、部位や程度によって適切な強さや外用期間があります。皮膚科の専門でなければ、この辺りのさじ加減は判断できません。
強過ぎるものを顔や陰部に塗ると、副作用が出ることがあります。
また、弱過ぎるものを選ぶと、ダラダラと塗り続けることになり治療期間が長引く割に治らないということにもなり兼ねません。
ステロイド剤は、通常、最も強力なタイプを全身塗布し続けるようなことがない限り、体内に入って内服のステロイド剤のような副作用を起こすことはありません。
通常皮膚科医が使う種類であれば、体内の副作用を起こすことはありません。
使い方を守って、賢明に使用することが必要です。
必ず他の科を受診したついでに相談するのではなく、皮膚科を受診しましょう。
5. まとめ
接触皮膚炎には、必ず原因があります。
原因が特定できれば、完全に治すことができる皮膚疾患です。
ただし、慢性化してしまうと湿疹が長期化して治りにくくなります。
すると、治った後も皮膚が黒ずんでしまい、化粧ノリが悪いなど悩みの種になります。
炎症が起きている場合は、まず原因を探りましょう。
化粧で隠すなどは持っての他。刺激を避けて、原因を断つことがまず大切です。
刺激を受けにくい皮膚状態を保つことで防御力が高まります。
毎日のスキンケアで健全な皮膚を保ちましょう。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
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- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか