夏バテと思ったらクーラー病(冷房病)!?体調不良を改善する9つの対策【医師実践】
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
我が家では、夫とのクーラー争いが勃発しています。
クーラーが嫌いな冷え性のわたしと、クーラーがないと暑くて眠れないぽっちゃり暑がりな夫。
「ドライ」の設定にしてつけっぱなしで数日寝たところ、「だるい!」「重い!」「起き上がれない!」と、クーラー病(冷房病)の症状が出てしまいました。
なんと、夫も「寒かった、腰が痛いし、怠い」と言い出す始末です。
冷房がキンキンに効いた室内は、時に、冬よりも寒い!と感じる冷え性の方も多いはず。
この時期、不調の原因となるクーラー病(冷房病)を何とかしたいですよね?
今日は、傾向と対策をお伝えします。
目次
1.クーラー病(冷房病)の傾向と対策
1-1.クーラー病(冷房病)とは?
夏場に、冷房が効いた環境に長時間いたり、その後に、暑い屋外に出るなど、気温差の激しい場所の出入りを繰り返すことなどによる体調不良のことを、クーラ―病、または冷房病と称します。
1-2.自律神経の失調や血流低下が原因に
人は、外気に適応するために、自律神経によって体温を調整しています。
寒い環境にいる場合、毛細血管など末梢の細い血管や筋肉を縮めて、体温を保とうとします。これが、交感神経の働き。
一方で、暑い環境にいる場合は、血管や筋肉を緩めて、汗をかき、体温を下げようとします。
こちらは、副交感神経の働きです。
冷房が効いた部屋に長時間いて「寒い」と感じると、血管、筋肉がキューっと縮まり、血流が低下します。
この状態が継続すると、全身に筋肉のコリが発生してしまいます。
睡眠中にクーラーをつけっぱなしにして、体温が下がると、血流低下とコリが発生します。
これが、全身の倦怠感につながります。
1-3.クーラー病(冷房病)の主な症状は?
クーラー病(冷房病)の主な症状は、以下の通りです。
基本的には、自律神経の乱れに伴う症状と似ています。
特に、更年期の女性で、自律神経失調症状がある方は、それらが悪化する可能性もありますので、より注意が必要ですね。
・足腰の冷え
・疲労感、だるさ
・肩こり
・頭痛
・腰痛
・神経痛
・食欲不振、下痢、便秘、腹痛など消化器症状
・不眠
・むくみ
・頻尿・排尿障害など泌尿器症状
・月経不順
他
「不調」と呼ばれる類の症状ですが、日常生活に大いに支障をきたしてしまいます。
わたし自身も、怠過ぎて頭も体も重く、仕事が捗りません。
2.クーラー病(冷房病)の対策
クーラー病にやられないためには、日常生活において注意するしかありません。
わたし自身は、毎年のシーズン入りには、学ばずに同じことを繰り返してしまうわけですが、まだ、夏本番はこれからです。
今から、対策して備えましょう!
2-1.エアコンの設定温度に注意する
エアコンの設定温度を28度未満にはしないようにしましょう。
自律神経の乱れを引き起こさないために、エアコンの設定温度は室内と屋外の温度差が「5℃以内」にするようにとされています。
ドライであっても、「±( )度」と温度設定ができる場合は、高めの温度から設定しましょう。
2-2.扇風機であっても冷やし過ぎに注意
エアコンは使わず、扇風機で過ごしている方もいらっしゃると思います。
しかし、扇風機をつけっぱなしで寝て低体温で亡くなる方もいるくらい、扇風機も使い方によっては危険です。
風が当たることで、汗が乾き、体表面から熱が奪われて体温が下がります。
位置を固定して体に風が当りっぱなしになると、体温が下がりすぎる可能性があります。
「微風」「そよ風」などのモードにして、首を振って、風を動かすようにしましょう。
2-3.大血管がある場所、お腹を温める
暑いからと、タンクトップと短パンで寝ると、体温が下がりすぎる可能性があります。
特に、首元とお腹、また、膝下の露出をすると、大きな血管やお腹が冷えて、内臓が冷えてしまいます。
襟つきや首のあるパジャマにしたり、レッグウォーマーで膝下から足元を温める。
そして、パジャマのトップスは、ズボンにインして、寝ているうちにお腹が出ないように。
腹巻きをしてもいいでしょう。
2-4.温め食材を食べる
夏の食べ物は、概ね体を冷やします。
冷たい食べ物や飲み物だけでなく、夏野菜やフルーツ類、砂糖たっぷりのかき氷やアイスクリームなど、また暑いからと麺類ばかり食べていては、ビタミン・ミネラルも不足して夏バテの原因にも。
夏場であっても、冷え性予防の「温め食材」を食べることをお勧めします。
冷やす食材は、
・砂糖(甘味は冷やす)
・夏野菜、生野菜
・フルーツ類
・精製された穀物類
・コーヒーなどカフェイン入りの飲料
温め食材は、
・塩や味噌など発酵調味料(塩味は温める)
・未精製の穀物
・根菜類
・豆類
・ニンニク・生姜(加熱)・ネギ
・肉や魚などタンパク質
発汗で塩分を失うため、夏は減塩しすぎるのもリスクです。
温かい味噌汁を毎日の定番にすると良いですね。
2-5.適度な運動
普段から運動不足であることも、自律神経の乱れを引き起こしやすくなります。
適度に体を動かして、血流を改善しましょう。
同じ姿勢でいることもよくありません。
エアコンの効いた部屋での作業中、1時間に1回は休んでストレッチをする。
足首を上下に動かして、足にある第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉「ヒラメ筋」を動かすと、血流が改善します。
2-6.夏場であっても入浴を
夏場はシャワーですませる方が多いと思いますが、冷えをとるためには、しっかりと入浴を。
40度程度の温度に設定し、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)を入れるのがおすすめです。マグネシウムには血管を広げる作用があるため、迅速に温まりますし、コリが改善します。
水分補給しながら、のぼせに注意して15分程度はつかりたいですね。
2-7.睡眠を十分に、規則正しい生活を
自律神経の乱れは、生活習慣の乱れによって引き起こされます。
毎日、同じ時間に起き、体を動かし、規則正しく食べ、夜更かしをせず、同じ時間に寝る。
夏場こそ、規則正しい生活で、自律神経のリズムを整えることが特に重要です。
2-8.家族別室で寝ることも
人それぞれに、適温は違います。
暑がりの夫と冷え性のわたしでは、快適に眠れる温度が違います。
普段は、同じ部屋で寝ていますが、毎年、これくらいの時期になると、段々とそれが辛くなり、結局「別室で寝ましょう」となります。
健康のために、快適な環境を整えるのはとても大切ですから、持続可能な家庭生活のために、お互いにとっての快適さを尊重することも大切かと思います。
2-9.ストレスは大敵!リリースを
自律神経を乱す要因といえば、ストレスです。
クーラー病の場合は、室温や温度差がストレスになっている状態ですから、まずは環境的ストレスを排除すべく、エアコンの温度設定などに配慮しましょう。
その上で、精神的なストレス要因も解決したいところです。
・人間関係や仕事の取捨選択をしたり、優先順位をつける。
・一人で仕事や悩みを抱え込まないようにする。
・オン・オフをしっかり切り分けて、休養する時間をつくる。
・部屋の掃除・整理整頓をして、環境を快適にする。
・自分の体の声を聞き、不調があれば無理せず休む。
・楽しいと思うことを思う存分やる。
・感情を抑制せず、発散する。
など、色々とできることがあるはずです。
こうしたストレスの蓄積が、自律神経のアンバランスを引き起こしてしまいますので、日々、ため込まずにリリースすることが大切です。
3.まとめ
気温と湿度の高い日が続くこの時期、エアコンを使い始めることで体調を崩してしまう人も多いと思います。
まだまだ、夏本番はこれからです。
毎日の少しの工夫で、元気に乗り切っていきましょう。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか