こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

コロナ終息宣言には、先が長そうな状況が続いています。
閉塞的な社会情勢に、ストレスを抱える人が増えています。

調査によると、コロナ禍に更年期症状が重くなったように感じるメノ期の女性が50%であったとのこと。更年期症状の原因となる自律神経の乱れは、ストレスが加わることで悪化する可能性があります。

ウィズコロナ時代に、更年期症状を軽く乗り切るにはどうしたら良いのでしょうか?

1.コロナ禍で更年期症状が重くなった女性が50%

コロナ禍更年期ストレス

20~60代の女性681名を対象に(40〜50代のメノ期にあたる女性は75.6%)、コロナ禍の更年期症状に関して行われたアンケート調査(株式会社協和)によると、更年期による継続した不快症状があると回答した人は、71.5%で、そのうち 2 人に 1 人が「コロナ禍により更年期による不快症状が重くなった」と答えたと報告されています。

更年期症状に、ストレスは大敵とされていますが、コロナ禍はストレス状況が持続し先が見えない状況となっています。

2.メノ期に現れる様々な症状

更年期の肩こり

メノ期の女性は、女性ホルモンの乱高下や減少、またそれに伴う自律神経の失調により、不快な症状が心身に現れやすくなります。

2-1.精神神経系の症状

・抑うつ
・不安感
・イライラ感
・不眠

2-2.主な身体症状

・ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
・動悸・息切れ
・寝汗・発汗
・むくみ
・めまい
・頭痛
・肩こり、腰痛、背部痛
・関節痛、関節の変形

2-3.皮膚・粘膜の症状

・口や喉の渇き、味覚障害
・ドライアイ
・膣の渇きや痒み

2-4.消化器系の症状

・吐き気
・下痢・便秘
・胃もたれ・胸やけ

2-5.泌尿器・生殖器系の症状

・月経の乱れ
・尿もれ
・性交痛

全身の多岐にわたる症状が現れます。

3.メノ期の幸福度はこうして低下する

幸福イメージ

仕事や家事、場合によっては育児や介護の現役世代で、体が資本であるメノ期の女性にこうした心身の不調が押し寄せることで、QOLが低下し、幸福度が一気に低下します。
また、周囲の家族や友人、職場の仲間の理解が不十分であれば、なおさら孤独感が募り、メノ期の女性は追い込まれていきます。

様々な臓器の機能が低下し、皮膚の萎縮も起こり、身体の衰えや見た目の衰えを感じることで、心までネガティブになってしまうことも少なくありません。

膣の萎縮も起こると、女性としての潤いも低下します。
パートナーとの性生活においても、潤いづらくなることで、これまで感じなかった痛みを感じるようになり、上手くいかなくなったり、痛みからこれまでのように悦べなくなったりします。

その上に、コロナ禍のストレスが加わると、そうでなくとも乱れていた自律神経にプレッシャーをかけてしまいます。

4.危機的状況で自律神経が乱れる理由

警報 回転灯

自律神経とは、人を今いる環境に適応させ、健康を保つために必須の神経です。
全身を調節して、その環境で生きぬくことができるようにコントロールしています。
自律神経が上手く働かないと、人は健康を保つことができません。

自律神経は、これまで活動モードの交感神経とリラックスモードの副交感神経の2つがシーソーのようにスイッチしていると考えられていました。
主に、自律神経が危機を感じると、交感神経が過剰反応するストレスモードとなって、それが不調の原因になると考えられてきました。

ですが、新しい自律神経の理論には、もう1つの危機回避モードであるフリーズモードがあることがわかってきました。
今、コロナ禍は、多くの人々にとって大いなる危機と認識されていますので、自律神経は無意識に、ストレスモードかフリーズモードのどちらかの危機回避モードになっている可能性があります。

ストレスモードとフリーズモードは、それぞれどのような状態になってしまうのでしょう。

4-1.危機回避モード①ストレスモード

交感神経が過剰に反応する危機回避モードです。
いわゆる、ストレスモードで、副腎のストレスホルモンが多く分泌されている状態です。
心に余裕がなく、カリカリ、イライラ、頭はクルクル。
呼吸は浅く、身体は緊張して、頭痛や肩こり、また不眠があるかもしれません。

この状態では、ストレスホルモンが多く分泌される代わりに、女性ホルモンの分泌が低下します。ストレスモードでは、月経が乱れ、場合によっては月経が来なくなることもあります。

4-2.危機回避モード②フリーズモード

ストレス状況が持続し、いよいよ逃げられないと体が判断することで、最終手段としてフリーズモードになります。
これは、副交感神経の一種である背側迷走神経複合体が過剰に反応することで起こります。

心身が膠着して、動かなくなります。
気力がなくなり、抑うつ傾向となり、これまで楽しかったことにも心が動かなくなります。
身体も動かなくなり、外出や仕事がこれまで通りできなくなり、何もしたくなくなります。

ストレスホルモンを分泌して頑張ってくれていた副腎の機能が低下し、いわゆる「副腎疲労」と呼ばれる状態もこのモードにあたります。
この神経は消化器をコントロールする神経なので、お腹の調子が悪くなり下痢や便秘、またはそれを繰り返したり、腸内環境も悪化します。

この状態は、ストレスが過剰に蓄積し過ぎることで最終的に起こる状態です。

5.メノ期にストレスは大敵

女性ホルモン

月経とは、毎月子宮が妊娠に備えて準備することで起こるものです。
ストレスがかかっている状況では、身体はまずストレスを回避することを優先にしますから、妊娠に備えた準備を後回しにします。

ストレスホルモンと女性ホルモンは、同じコレステロールを原料に作られますが、ストレスがかかったら、ストレスホルモンの分泌を優先します。
ですから、ストレス状況下では、女性ホルモンの分泌は抑制されてしまいます。

強いストレスがかかると月経が停止してしまうことがありますが、それは女性ホルモンの分泌が抑制されてしまうからです。

ストレスモードでも、それがこうじて起こるトラウマモードでも、女性ホルモンの分泌は上手くいきません。

更年期には、そもそもが女性ホルモンの分泌がアンバランスになり、自律神経が乱れますが、これにストレスが加わり、長引くことでさらに悪化させる可能性があります。

6.メノ期に自律神経を整える

自律神経には2つの危機回避モードがあることをお伝えしました。

6-1.ストレスモードの場合

ストレスモードの場合には、交感神経が過剰になっています。
緊張し過ぎている状態ですから、緊張を緩めることが大切です。
一般的なストレスリリースのための方法が適しています。

・パソコンやスマホを遠ざける

パソコンとスマートホン

パソコンやスマホのように、情報が多く刺激が多いものを遠ざけましょう。
ブルーライトなどの光が目から交感神経を刺激します。
集中して見続けて目や頭を働かせると、覚醒してしまい眠りにつくことができません。
夜暗くなってからは、なるべくスマホやパソコンを遠ざけましょう。

・ゆったりと入浴をする

入浴の際は、熱いと感じるお湯は覚醒を促すのでNG。
40℃ほどのぬるめに設定して、体が温まるまで15分程度はつかりましょう。
緊張すると末梢血管が締まり、手足が冷えます。温浴効果を高めるために、エプソムソルトを加えるとポカポカになります。
また、ラベンダーやメリッサなど、リラクゼーション効果のあるアロマオイルを5滴ほど加えるのも良いでしょう。

特に、ストレスがかかると後頭部から首の筋肉が緊張して、肩こりや頭痛、不眠の原因になります。ぬるめのお湯に首までつかりましょう。首には太い血管が通っているので、全身の血流を改善するのに役立ちます。

6-2.フリーズモードの場合

フリーズモードの場合には、むしろ力が入らなくなります。
心身が膠着して動かず、気力も体力もなくなり、何もしたくない、外にも出たくないという状態になり、不活発になります。
いわゆる「副腎疲労」と呼ばれる状態もこのモードになります。

ここでは、十分に気力体力が戻るまで、無理は禁物です。

・朝日を浴びる

朝日を浴びる女性

無理なく自律神経を整えるために、体内時計を整えましょう。
気力がなくても、朝は同じ時間に起きるようにしましょう。

体内時計の周期は、24時間よりも少し長いため、放置すると体内時計のリズムがどんどんずれていきます。
朝同じ時間に日光を浴びるようにすると、体内時計がリセットされ規則正しいリズムに戻ります。

遮光カーテンではなく、朝日が昇ったのを感じられるように、薄いカーテンにするのもおすすめです。自然に朝日が昇るのを身体が感知して、身体が徐々に覚醒していきます。本来の日が昇ったら起きて、日が沈んだら眠るというリズムに戻すことができます。

・必要な栄養を摂る

フリーズモードでは、ストレスホルモンも女性ホルモンもいずれもが上手く分泌できない状態になります。
ホルモンの原料が枯渇しないようにしっかりと栄養素をとることが大切です。

いずれのホルモンも、肝臓から原料であるコレステロールが運ばれるときに、タンパク質が必要です。
肉や魚、卵、豆類などのタンパク質が不足しないようにしっかりとることですが、消化の働きが低下して上手く吸収されない可能性があります。
消化に負担のかかる肉類はミンチにしたりしっかりよく噛んで食べること。
消化力を超えた過剰な量は食べないこと。
タンパク質がお腹に入らないならば、プロテインなど吸収のよい形で補うこと、など工夫をしてみてください。

また、ストレスがこうじて疲れ切った副腎には、ビタミンCやマグネシウムが必要です。
ビタミンCは柑橘類などの果物や大根、キャベツなどの野菜などに含まれますが、疲れ切っている際にはサプリメントで補給するのも効果的です。
マグネシウムは、海藻類などに含まれます。エプソムソルトを加えた入浴で、経皮から補うこともできます。

・胃腸を整える

フリーズモードでは、胃腸をコントロールする自律神経が過剰反応しています。
そのため、下痢や便秘、またそれを繰り返したりしやすくなります。
お腹を冷やす冷たいものを控えて、温かいものを中心に食べましょう。

負担のかかる動物性のタンパク質や脂っぽいものを控え、一汁一菜の和食やボーンブロススープ(骨だしスープ)などを中心に食べ、消化力に応じて食事量を増やしていきましょう。

食事が十分にできないほど胃腸が弱っている時には、サプリメントの力を借りることも必要です。栄養素が枯渇してしまうと、ホルモンの分泌も整いません。

7.ストレスのあるメノ期に使える漢方薬

漢方薬

メノ期に使える漢方薬の中でも、特にストレスがある時に効果的なものをご紹介しましょう。

7-1.加味逍遙散(かみしょうようさん)

のぼせやホットフラッシュがある人で、イライラと精神不安がある場合に。
乱れた気を整え、過剰な熱を抑えます。
血を補い、水の巡りもよくする、東洋医学で大切なめぐり「気・血・水」のいずれものバランスを整えます。不眠がある人にも。

7-2.加味帰脾湯(かみきひとう)

心身ともに疲れてしまい、気力体力が低下している状態、つまり、フリーズしている状態に効果的です。顔色が悪く、貧血気味の人、虚弱で胃腸機能が元々弱い人、低下している人に向いており、気・血を補って回復力を高めてくれます。
不眠にも効果的です。

7-3.柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

特に、不安神経症など精神が不安定な際にによく使われる漢方薬です。
比較的体格が良い人向け。
不安感や恐怖感、動悸や不眠に効果的です。

8.メノ期に使えるエクオール

大豆 豆乳

メノ期に女性ホルモンの分泌が不安定になる時期に、その働きをサポートしてくれるのが、エクオールです。

エクオールは、腸内細菌の一種が、豆類に含まれるイソフラボンを代謝することでできる成分です。
昔から大豆をよく食べる日本人の腸内には、エクオールを作る腸内細菌が他国より多いとされていました。

ところが、豆類を食べなくなってきたこと、また腸内環境の悪化、生活習慣の乱れなどによって、エクオールを作る腸内細菌が十分にその機能を発揮できていない現状があります。

メノ期の女性にとって豆類はエクオールの原料として大切な食べ物ですから、日常の食卓に豆類を取り入れてください。
豆腐、納豆、味噌などの大豆だけでなく、小豆、えんどう豆、ひよこ豆、レンズ豆など色々な豆製品があります。

また、エクオールが十分に分泌できない人、エクオールを作る腸内細菌がいない人は、エクオールを直接補う方法もあります。

9.まとめ

ストレス状況が続く中、ストレスが大敵であるメノ期の女性にとっては、ストレスをためないこと、ストレスを長引かせないでしっかりリリースすることが大切です。
長引いてこじらせてしまうと、フリーズモードになり、心身がこう着状態になり、気力体力が低下して、日常生活すらままならなくなる可能性があります。

その日のストレスはその日のうちに解消して、ストレス負債を溜めないようにしましょうね。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか