皆さま、こんにちは。
医師で予防スペシャリストの桐村里紗です。

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コロナ禍が続きますが、残念ながらアフターコロナになることは見込みが薄く、ウィズコロナが継続していくだろうと思われます。

ウイルスについての見解は、専門家も議論しているところですが、日常的なストレスについても上手く対処しながらこの状況を乗り切らなければなりません。

書籍にも詳しく説明した新しい自律神経の理論・ポリヴェーガル理論から、この状況においてストレスを乗り切る秘訣を探ってみたいと思います。

1.コロナとストレス

まずは、調査を見てみましょう。

1-1.厚労省によるメンタルヘルス調査

コロナ禍のストレス調査

厚生労働省による令和2年に10,981人を対象に行われた「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」によると、2月から調査時点(9月11日〜14日の間に調査)までで、半数程度が「神経過敏に感じた」「そわそわ、落ち着かなく感じた」「気分が落ち込んで、何が起こっても気が晴れないように感じた」と回答しています。

その不安の原因として、いずれの時期も「自分や家族の感染への不安」が6割以上と最も多く、「生活用品の不足」「自粛等による生活の変化」「自分や家族の仕事や収入」が次点となっています。

不安解消のための行動としては、1位が「手洗いやマスク着用等の予防行動 」73.5%、そして2位が、「スマートフォンやインターネットを使って情報を検索」35.7%、3位が「家族や友人に話をする」21%、4位が「運動などで身体を動かす」20.3%と続いています。

1-2.変化した生活様式によるストレス

一方で、TVをつけると、不安な情報が流れ込んできますし、インターネットなどで情報を検索すればするほど、全く違う見解を専門家や専門家でない人が様々に論じている状況で、ますます混乱の極みだという声も多く聞きます。

さらに、インテージのネットリサーチによる15~79歳の2,572人を対象にした男女自主調査によると、男女平均64.1%が「外出や旅行が自由にできない」ことと、50%が「自分や家族の感染リスク」で、それぞれ5割を超える人がストレスの要因として挙げています。次に43.2%は「感染予防対策(マスク着用・消毒など)」、42.1%は「行動自粛で友人・知人との関わりが薄れている」と、感染症対策や行動規制による人との関わりが希薄になっていることがストレスになっているとしています。

PCR陽性者数の増加がTVで毎日報道されていますが、この状況は、これからも持続すると予測されますから、上手くストレスに対処することが心身の健康のために必須になります。

2.ストレスとは何か?

コロナ禍のストレス

ストレスとは、外部から何らかの刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。

2-1.ストレスの要因

外部からの刺激には、

環境的要因・・・天候や気温、騒音、など五感からの刺激
身体的要因・・・痛みや病気による症状、睡眠不足など
心理的な要因・・・不安や悩みなど
社会的な要因・・・人間関係や仕事など

2-2.コロナ禍におけるストレス要因

コロナ禍には、環境的要因、身体を脅かす要因、心理的な不安を煽る要因、仕事の変化など社会的な要因と、全てのストレス要因が関連します。

ニュースやネットメディアにあふれる不安なニュースや、マスクを着用しなければならない物理的なストレス、学校や職場が休みとなり在宅時間が増えることによる社会的な変化や人間関係の変化、コミュニケーションの希薄化など、様々なストレス要因が考えられます。

コロナ禍のストレス スマホニュース

2-3.ストレスの感じ方や反応は人それぞれ

ストレスは、外的な刺激をきっかけに、自分の内側で起こる自律神経を通した内分泌系、内臓、筋肉など全身の反応です。

「自律神経」は、生命維持にとって最重要なシステムの1つです。
今いる環境において「自己」を最適化し、生存させるためのシステムです。

今いる環境が安全か危険か、という判断によって、モードが切り替わります。その判断の違いに、個人差があります。

1.交感神経による「闘争・逃走モード」

コロナ禍のストレス 逃走モード

野生動物で考えると、ライオンやチーターが突然襲ってくる状況こそがストレスで、危機回避のために、戦うか逃げるか(=闘争・逃走モード)となり、交感神経が活発になります。

人にとっては、「コロナという病原性のウイルスは危険だ」「回避しなければ生命が危険だ」「人との接触は危険だ」「消毒しなければ危険だ」といった「危険」アラートが、生命を脅かすストレス要因となり、交感神経モードとなりがちなのが、コロナ禍です。

交感神経モードが続くと、消化器や生殖器、泌尿器などの働きは抑制され、呼吸は浅く早くなり、筋肉は緊張します。体は炎症モードになり、酸化ストレスも増え、血糖値も上がりやすくなります。

不眠や慢性的な肩こり、疲労感、胃腸機能の低下による食欲不振や消化不良などに悩まされるようになります。

2.副交感神経による「凍りつきモード」

さらに、新しい自律神経の理論「ポリヴェーガル理論」によると、これが慢性化して昂じると、もう1つの危機回避モードである「トラウマモード」が発動し、心身膠着状態となり、フリーズしてしまいます。
脅かすと死んだふりをするオポッサムという動物や、カエルなどを動物番組で観たことがないでしょうか?

交感神経による「闘争・逃走モード」は、環境と闘い、環境から逃げ、環境を変化させる力がありますが、こちらの「凍りつき(フリーズ)モード」は、環境から逃げられない中で生命を維持するには?という苦肉の策で発動します。

つまりは、コロナ禍によるストレスが長引き常態化するほどに、この「凍りつきモード」にシフトしていくリスクがあります。

腹部の内臓を支配する背側迷走神経複合体という副交感神経が過剰に働いて、心身が凍りつき、解離した状況になります。

このモードの代表的な疾患は、過敏性腸症候群で、消化管を支配するこの副交感神経の過敏性によりストレス状況下に急にお腹が痛くなりトイレに駆け込むことになります。
過敏性腸症候群を代表とする機能性身体障害は、特に器質的(物理的)な原因がないのに、身体に不調や症状を引き起こしますが、主には自律神経のアンバランスによると考えられています。

副腎機能が低下し、やる気がない、活気がない、体力がない、気力がない、外出する気がしない。普段は楽しいと思っていたことにも心が動かなくなります。

3-3.安心感と安全の欠如

コロナ禍のストレス

この2つの危機回避モードの背景にあるのは、自律神経による「生命の危機」という判断です。
つまり、「今いるこの環境は危険だ!」と自律神経が判断している訳ですが、安心感の欠如により安全が脅かされているために、この反応が起こっています。

新しい自律神経の理論・ポリヴェーガル理論によると、安心・安全な状況では、自律神経のうち、胸から上を支配する副交感神経(正確には、腹側迷走神経複合体)が、指揮者の役割をします。

その指揮者が振るタクトによって、環境に応じて交感神経と、お腹の内臓を支配する副交感神経が適度なバランスをとりながら働いているのが、健康的な状態とされます。

この指揮者役の副交感神経は、胸、つまり心臓や肺を支配しています。
安心安全な環境では、呼吸は深く長く、鼓動は呼吸に応じてリズムを変化させながらゆっくりと打ちます。

他者や環境との信頼感のある安全な繋がりが保たれることで、この指揮者役が上手く働きます。
コロナ禍の人と人とのコミュニケーションの希薄化や不安なニュースや感染リスクを意識しながらの外出は、まさに、脅威となります。

4.安心安全な状況をいかに作るか

この状況のなかで、何とか「今いる環境は安全である」という認識を持ちながら、人と人との心のつながりを持つことが大切です。

4-1.自分のテリトリーを快適にする

コロナ禍のストレス回避 リラックスできる空間

人は、動物的な本能から、自分のテリトリーにいると安心します。

自分のニオイ、家庭のニオイの染み付いた、自分のベッドや部屋、家。
この自分の「巣」とも言える場所の安全を確保し、快適に保ち、安心感の中で時間を過ごすことをまず第一に行うことです。

適度に散らかっていた方が安心するという人もいますが、自分が心地よいと感じられないほどに散らかっっていたら、不要なものを断捨離し、整理整頓をする。

自分が好きなリラックスできる香りや心地よいBGMで空間を満たす。
安心できる光の色や量を調整する。
寝具や寝巻き、部屋着を肌触りの良いものにする。

観葉植物や愛するペットとの時間を過ごすのも良いですね。コロナ禍のおうち時間もペットがいる家庭はリラックス感が高いようです。

4-2.人混みより自然の中に身を置く

コロナ禍のストレス回避 自然の中で深呼吸

人混みの中に身を置くと、マスクによる配慮や防御も強いられて息苦しいですし、様々なノイズが五感から入ってきます。

私自身も都心の地下鉄に乗っているときに、「電車広告などを含めて360度ノイズに囲まれている!」と気付いて愕然としました。
この状況で、安心して深呼吸できるわけがありません。

全国的に緊急事態宣言やマンボウ(まん延防止等重点措置)の最中ですから、エリアを超えた外出が難しい場合もありますが、可能であれば、人気の無い海や人気の無い山や川など、リスクのない自然の中に身を置き、マスクを外してしっかりと深呼吸してください。

様々な情報に不安感が高まっていると感じたら、意図的にメディアやSNSから離れる期間を持つことも一考です。

4-3.深呼吸により自律神経をコントロール

呼吸は、唯一、自分の意思によって自律神経をコントロールできる方法です。
しかも、ゆっくりとした呼吸は、自律神経の指揮者役をしっかりと働かせてくれます。

腹式呼吸による、吸気:呼気=1:2の長さが理想的です。
普段呼吸が浅い人は、3秒吸い、3秒止めて、6秒で吐く。これを段々4秒吸い、4秒止めて、8秒で吐く。5秒吸い、5秒止めて、10秒で吐く。
と、延ばしていきましょう。

ストレス状況下で、しかもマスクをしていると、気づかずに胸を上下させて浅い呼吸になりがちです。
普段から、人と距離が保たれている環境や安全な環境ではマスクを外し、しっかりと深く深呼吸をしましょう。

5.まとめ

コロナ禍のストレス回避 海で深呼吸

コロナ禍は、まだまだ長期化する可能性が大いにあります。
社会的なプレッシャーがかかる状況下で、いかに安心・安全と自律神経が感じられる環境に長く身を置くことができるかが、ストレスを回避するために重要になります。

何とか、乗り越えていきましょう。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか