【新型コロナ】春の旅行はどうする?米国の審査は緩かった|空港出入国事情
皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。
新型コロナウイルスの流行が国内でも拡大する中、仕事でアメリカ渡航をすることになりました。
行くか行かないか、ギリギリの判断でしたが、現在臨床現場で診療を行なっていない身の上。渡航前はなるべく家に引きこもり、イベントや人混みは避け、マスク着用、手洗い励行、ビタミンD大量内服、快眠快食快便!など、できる予防策を行い万全の態勢で臨み、渡航を決行するに至りました。
春休みを迎え、「旅行の予定どうする!?」「どうやって情報を得たらいいの?」と悩んでおられる方も多いと思いますので、現在のアメリカ渡航時の出入国の実際をレポートしてみたいと思います。
※この記事は2月28日時点での内容です。
新型コロナウイルス についての情報は、日々アップデートされています。
詳しい最新情報や対処法などは、厚生労働省のHPをご参照下さい。
目次
1.日本出国の実際
2月28日、「ユナイテッド航空ホールディングスが、東京・大阪・シンガポール・ソウル発着便の運航停止を発表した」との報道があった同日、日本航空でサンフランシスコへ向かうべく羽田空港へ。
2.閑散とした中国系航空カウンター
かつて、こんなに閑散とした羽田空港国際ターミナルを見たことがあったでしょうか。
人が行き交い、どこのカウンターも長蛇の列であることが平常であるかと思います。
各航空会社では、新型コロナウイルス の影響による需要の減少などに伴い、2月以降、中国〜日本路線の一部を運休・減便しており、クローズしている中国系航空会社カウンターは人っ子一人おらず閑散としています。
日系・中国系の各航空会社の日中間運行状況は、中国大使館のHPへ。
3.日系航空会社カウンター「クルーズ船への乗船歴は?」
一部運休している中国便の代わりを担っている日系航空会社のカウンターにも、人はまばらな状況です。
日系航空会社の中国以外の路線便は、現状欠航や運休などにはなっていないものの、チェックインは並ばずに即終了。
席にも随分と空きが出ている模様です。
「中国への渡航歴はないですか?」
「ダイヤモンド・プリンセスへの乗船歴はないですか?」
と質問を受けたのが印象的でした。
4.保安検査場は待ち時間ゼロ
保安検査場も全く行列がしていません。
待ち時間ゼロですぐに順番が来て、たった3分でセキュリティを通過、いや、私が荷物整理にモタモタしていなければ、1分で通過できたかも知れません。
航空会社のチェックインカウンターに行ってから、所要時間10分弱で保安検査場を通過して空港内に入ることができました。
空港内も都内の繁華街よりも圧倒的に人口密度は低め。
誰もがマスクを着用している上に、距離も2m以上離れてすれ違うことができるので、混み合う満員電車や密室での会議よりもリスクが低いかも知れないと感じました。
5.「白い恋人」に恋人がいない!
海外観光客に人気のお土産である石屋製菓「白い恋人」。新型コロナウイルス の流行に伴い、観光客への売り上げの大幅な減少が見込まれるとして約1ヵ月の生産停止を発表したことで「白い恋人」ファンにショックを与えたものです。
空港でも、やはりお土産コーナーに人はおらず、箱が山積みになっている光景が印象的でした。
6.密室の機内の実際
搭乗時に再度、
「中国への渡航歴はないですか?」
「ダイヤモンド・プリンセスへの乗船歴はないですか?」
と確認を受けた事以外は、取り立てて厳しさを感じる事はありませんでしたが、機内では、客室乗務員は「お客様の安心のために」と全員マスク着用でしたし、乗客の多くもマスクを着用して密室での感染に配慮している様子でした。
咳き込んだりしている人はいないものの、この中にもし感染者がいた場合、感染が広がってもおかしくはない環境だと感じました。
化粧室には、常備しているソープ以外、アルコール消毒などの設置はありませんでしたが、化粧室のドアノブや蛇口などを触ることでウイルスは伝搬します。配布されるスナック類は手でつまむことになりますし、もし隣席者がウイルスを持っていた場合、機内食を隣で食べる際に飛沫を通して感染するリスクも無きにしもあらずです。
特に乾燥し、ウイルスが飛散しやすい機内の環境で、しっかり防御するには、自分自身が配慮する必要がありそうです。
7.しかしアメリカ入国審査は緩かった
さて、無事にサンフランシスコに着陸はできましたが、アメリカ入国時には厳しい審査が待ち構えているだろうと気を張っていたものです。
ところが、ところがですよ。
サンフランシスコ国際空港の入国審査は、私が経験したあらゆる海外旅行史上、最も緩い審査でありました。
そもそも、アメリカの入国審査は厳しく長い!という印象でしたが、こちらも通過時間、わずか10分でした。
APC(Automated Passport Control)の装置で、パスポート情報と指紋、顔写真を入力してから、有人の入国審査場に行きますが、ここで詰問されるに決まっていると考えていたのです。
ところが、旅の目的と日数以外の質問は一切なし。
拍子抜けしながら手荷物を受け取り、きっとここから、検疫が厳しいのだろうと考えていましたら、サーモカメラの設置もなく検疫的な機能は一切見当たらず、なぜか税関申告書を渡すタイミングもなく、あっという間にExit(出口)を通過してしまったのです!
「やる気あるんかい!?」
と、思わずエセ関西弁で突っ込みたくなるほどの緩さ!
出入国時には自己申告以外のスクリーニング機能は無さそうでしたので、これではむしろ感染者がいても行き来し放題ではないかと逆に心配になるほどでした。
ユナイテッド航空の運行停止決定も急な発表でしたし、この状況もいつ変化するとも限りません。
時事刻々と自体は変化していますので、感染の拡大に伴いリアルタイムに情報を得て、懸命な判断の下に行動する、しないを判断することをお勧めします。
8.リアルタイムの世界の感染情報をチェック
リアルタイムの世界の感染者数などの流行状況が確認できるサイトもあります。
[ジョン・ホプキンス大学CSSE Coronavirus COVID-19 Global Cases]
各国の流行状況では、中国に次いで、韓国、またイタリア、イランで流行しており、日本はそれに次いで5番目の流行国です。
中国を除いては日本もこれらの流行国も同じような状況であり、公共の場で無防備に過ごしたり、ウイルスを持った人と密接に過ごしたりすることで感染するリスクがあります。
日本国内にいる場合と同様に、万全の予防策を講じておくことをお勧めします。
9.渡航国へ入国できるのか?情報はどこに?
そもそも、行ったところで、「日本からの入国お断り」と言われるのではないかという懸念があります。
渡航の前に、外務省海外安全ホームページを確認しておきましょう。
現時点では、医療設備が整っていないために感染拡大をすると致命的になる国が中心ですが、日本人の入国制限や渡航後の行動制限がある国もあるため、随時更新される情報をチェックしてください。
外務省の海外旅行安全情報配信サービス「たびレジ」への登録もお勧めです。
2月27日の発表時点では
1. 感染者確認国(注:日本を含む)からの入国制限が行われている国
ミクロネシア ・サモア ・キリバス ・ツバル・ソロモン諸島・コモロ・イスラエル・イラク・クウェート・サウジアラビア・モンゴル
医療制度が整っていないために、もしも新型コロナウイルス 感染者が出たら対処ができない為に安全策をとっている国と、中東諸国が中心です。
2. 入国後の行動制限措置が行われている国・地域
カザフスタン・リベリア・インド(ケララ)・タイ・オマーン・英領ジブラルタル・台湾 ・マルタ・セントビンセント・セントルシア・中国・トルクメニスタン・キルギス・仏領ポリネシア・シエラレオネ
この他、日本人が入国制限の対象になっていない場合でも、フィリピンや台湾などには、中国大陸・香港・マカオに14日以内に旅行して入国する場合、現地の居住者でない限り入国ができません。乗り継ぎのみの経由便も対象になる場合があるので要注意です。
10.渡航できる国も検疫で隔離のリスクも
入国制限がない地域であっても、検疫を強化している国が多いのが現状です。
発熱がある場合は、検疫で引っかかり、14日間の観察処置がとられる可能性もあり、その場合は、旅先で隔離されることになります。
元々、寒気や喉の痛み、咳、鼻水、発熱などの上気道症状がある場合、ギリギリであっても無理せず渡航は中止した方が無難と言えましょう。
実際にはそれが単なる風邪であったとしても、現時点で確定診断に至るにはPCR検査で陰性を確認する必要がある上に、陰性であったとしても「偽陰性」である懸念もある為に、「安全」と判断することが難しい状況です。
もしも、新型コロナウイルス感染を世界に拡大することになると、自分の問題だけではすまなくなりますので、慎重な判断が必要です。
11.それでももし発熱などの症状が出たら?
健康状態に注意しながら渡航したとして、万が一、発熱などの症状が出た場合のことも考えておく必要があります。
事前に外務省の情報サイトで、滞在地の問い合わせ先を確認し、必要な場合には随時連絡できるように準備をしておくと安心です。
発熱などの症状が出た場合、マスクをして医療機関を受診し、医師の指示に従って行動しましょう。
海外旅行保険に加入された方は、「疾病費用」という補償が付いている場合に、コロナウイルスで治療を受けた場合に保険がおりる可能性があります。受け取れる要件などは各保険会社によって異なりますので、事前に提携病院の情報、利用方法などを確認しておくことをお勧めします。
12.WHO危険度「非常に高い」と最高レベルに
2月28日、世界保健機構(WHO)は、新型コロナウイルスについて国境を超えた感染者の増加に歯止めがかからない状況から、世界全体での危険度を4段階のうち最高レベルの「非常に高い」に引き上げました。
国内でも、新型コロナウイルスの世界的な拡大に伴って、就業制限やイベントの中止、休校などで萎縮ムードとなっている現在、国内の移動はもとより、海外の渡航計画の決行、中止の判断はなかなか難しいと思います。
現在、メジャーな渡航先においてはほとんど渡航制限はない為、「正解」はない状況ではないかと思います。
この記事をまさに書いている3月1日、アメリカは韓国の大邱(テグ)とイタリア北部のロンバルディア、ベネトに対して、自国民の渡航注意情報を4段階のうち最も高い「渡航中止」に引き上げると発表しました。
日本においても今後感染が拡大した場合に、同様の措置がとられる可能性は十分にあります。
ご自分自身とご家族の安全と健康、そして他者と他国への配慮も行った上で、リスクとベネフィットを踏まえて検討する必要がありそうです。
※この記事は2月28日時点での内容です。
新型コロナウイルス についての情報は、日々アップデートされています。
詳しい最新情報や対処法などは、厚生労働省のHPをご参照下さい。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか