夏を乗り切る!カレースパイスの驚くべき9つの効果
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
屋外の暑さと家庭内のクーラー戦争によって夏バテ気味でシーズンインした今年の夏です。
何を隠そう、私は死ぬ前に1週間毎食カレーを食べ続けても良いほどにカレー好きです。
欧風ではなく、南インドやネパール、タイカレー、それから大阪で独自に進化したスパイシーカレー。
スパイスが効いたカレーが好物です。
何より、スパイスは、夏の弱った胃腸を活性化し、気力を回復する不思議な力があります。
ご自宅では、スーパーで販売されているカレー粉(パウダー状のもの)を1つ持っておけば、カレーだけでなく、炒め物やサラダなどにもアレンジ可能です。
カレーパウダーに含まれるスパイスの効果を見ていきましょう。
目次
1.カレースパイスの驚くべき9つの効果
カレー粉は、鮮やかな黄金色と複雑な味わいのスパイスミックスです。
ターメリック、コリアンダー、クミン、フェヌグリーク、チリペッパーなど、さまざまなスパイスで作られています。
その他の、生姜、黒胡椒、マスタードシード、フェンネルシードなどが混ざっているものもあります。
カレー粉には多くのスパイスが含まれているため、さまざまな効果が発揮されます
1-1.高い抗炎症作用
カレー粉に含まれる、ターメリック、コリアンダー、チリペッパーなどのスパイスには、抗炎症作用があります。
炎症は、全身の病気に繋がります。
特に重要なのは、ターメリックです。
炎症、痛み、関節リウマチの治療に役立つとして、アーユルヴェーダ医学で何世紀にもわたって使用されてきました。
カレー粉の黄色の元になるスパイスの1つであるターメリックには、クルクミンと呼ばれる色素が含まれています。
クルクミンは、体内で炎症を起こす物質であるインターロイキン-6(IL-6)や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などを調節することによって炎症を抑える働きがあることが知られています 。
実際、人間と動物の両方の研究で、ターメリックとクルクミンが関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患などの炎症性疾患の症状を緩和することが示されています。
※Nutrients. 2018 Oct; 10(10): 1553.
特に、ターメリックは、アメリカのスーパーマーケットのヘルスケアコーナーに必ず並んでいるほど、人気の伝統的なスパイスです。
また、唐辛子やコリアンダーなど、カレー粉によく見られる他のスパイスも抗炎症効果を発揮します。
唐辛子には、強力な抗炎症力として作用するカプサイシンと呼ばれるファイトケミカルが含まれています。
コリアンダーは、古くから伝統医学・アーユルヴェーダの抗炎症剤として使用されており、人では、研究が必要ですが、アーユルヴェーダでは伝統的に使われてきたハーブであるため、症例はたくさんあると言えます。
コリアンダーによる治療が炎症性腸疾患の症状を軽減する可能性があることがマウスにおいては示唆されています。
※Avicenna J Phytomed. 2016 Mar-Apr; 6(2): 205–214.
1-2.血圧を下げる
カルダモンとスイートバジルは、血管拡張剤として知られています。
つまり、血圧を下げる働きです。
たとえば、研究によると、スパイスミックスは血流を促進し、血管機能を改善し、それによって心臓病のリスクを低下させる可能性があることが示されています。
14人の男性を対象とした研究では、カレー粉を含む180グラムの食事を食べると、対照の食事と比較して、上腕動脈の血流が改善されることが示されました。これは、カレーの抗酸化物質の含有量が高いためと考えられています。
※Nutr J. 2014; 13: 67.
1-3.脂質を改善する
10万人以上を対象とした研究では、カレー粉を使った料理を月に2〜3回から週に1回摂取した人は、月に1回未満のカレーを摂取した人と比較してトリグリセリドレベルが大幅に低いことがわかりました。
※Nutr Res Pract. 2016 Apr; 10(2): 212–220.
さらに、サプリメントとして高容量摂取した場合、ターメリックとクルクミンが、コレステロール値を下げる可能性があることがわかりました。
(これはカレー粉に含まれる量を超える摂取の場合です)
※Nutr J. 2017 Oct 11;16(1):68.
高血圧と中性脂肪、コレステロールの上昇は心臓病の危険因子です。
カレー粉に含まれるスパイスによって、心臓の健康を改善するのに役立つ可能性があります。
1-4.高い抗酸化作用
カレー粉に含まれるスパイスには、いずれも活性酸素を抑える働きがあるファイトケミカルが多く含まれています。
クルクミン、ケルセチン、ピネン、ルテイン、ゼアキサンチン、クミナルなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。
抗酸化物質は、体内で発生するフリーラジカルと言う悪玉の酸素によって引き起こされる細胞の損傷を防ぐのに役立つ化合物です。
体内のフリーラジカルが多すぎると、様々な生活習慣病、慢性疾患、老化を引き起こす酸化ストレスにつながります。
抗酸化物質が豊富な食品を食べることで、酸化ストレスの影響を減らし、病気のリスクを減らすことができます。
17人の男性の研究では、6〜12グラムのカレー粉を含む食事を食べると、カレーを含まない食事を食べる場合と比較して、酸化ストレスのマーカーが大幅に減少することが示されました。
※Front Physiol. 2018; 9: 1899.
抗酸化物質が豊富なカレー粉を使った食事によって、酸化ストレスを減らすことができる可能性があります。
1-5.抗がん作用を発揮する可能性
カレー粉に含まれる香辛料の多くには、動物や試験管レベルの研究、また一部の人での研究においても抗がん作用があることが示唆されています。
人ではより多くの研究が必要ですし、普段カレー粉として使う量で「がんが治る」と言うものではありません。
でも、細胞ががん化する原因の1つには炎症があり、炎症を抑えることで、がん化しにくい体づくりをするためには多少なりとも役立つ可能性があると考えられています。
ターメリックの主な生理活性物質であるクルクミンは、強力にがんと戦う作用を持っていることが知られています。体内の特定のシグナル伝達経路を抑制することにより、がん細胞死を誘発し、がん細胞の転移を抑制する可能性が報告されています。
また、クルクミンは、前立腺、乳房、結腸、脳のがんを含むさまざまながんと戦う可能性がありますが、これらはまだ動物と試験管レベルの研究です。
※Int J Mol Sci. 2019 Mar; 20(5): 1033.
人においても、大腸がんの126人を対象とした研究で、1日あたり1,080mgのクルクミンを30日間補給すると、がん細胞死が増加し、炎症が減少することが明らかになっています。
※Cancer Invest. 2011 Mar;29(3):208-13.
同様に、唐辛子、コリアンダー、クミンなどの他のカレー粉スパイスも強力な抗がん効果をもたらす可能性があることが研究によって示されています。
※Nutrients. 2016 Aug; 8(8): 495.
1-6.血糖値を改善する
カレー粉は、血糖値を下げるのに役立つ可能性もあります。
当然、ご飯やナンをたくさん食べると血糖値は上がりますから、血糖値が気になる方は、カレー粉を使った炒め物やサラダ、スープなどとして活用する方が良いですね。
10万人以上を対象にした大規模な研究で、カレーを適度な頻度で摂取している人は、月に1回未満のカレーを摂取している人よりも血糖値が大幅に低いと報告されています。
※Nutr Res Pract. 2016 Apr; 10(2): 212–220.
1-7.脳機能を改善する
多くの脳の病気にも酸化ストレスが関連しています。
クルクミンの強力な抗酸化作用により、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症などの病気の予防と治療に役立つと考えられています。
さらに、ターメリックに含まれるターメロンと言う別の化合物は、幹細胞を刺激して新しい脳細胞を作ることにより、この種の神経変性状態を助ける可能性があるとされています。
人と動物のいずれもの研究によって、ターメリックの主な化合物であるクルクミンが精神的衰退のマーカーを大幅に改善し、アルツハイマー病を発症するリスクを減らす可能性があることを示しています。
※Neural Regen Res. 2018 Apr; 13(4): 742–752.
※GeroScience. 2018 Apr; 40(2): 73–95.
1-8.消化を助ける
カレー粉に含まれる様々なスパイスは、消化機能を改善します。
代表的には、クルクミンは、肝臓の働きを助け、消化機能をサポートします。ベイリーフやクミンは、消化機能を促進します。黒コショウは、ガスを和らげ、胃酸分泌を促進します。シナモンは、下痢と嘔吐を和らげます。
ただし、あまり唐辛子を利かせすぎると胃腸の粘膜の刺激になる可能性がありますから、辛さは控えめに。
カレー粉は、辛さ選べるものもありますし、そもそも唐辛子はそこまで効いていないものが一般的です。
1-9.食欲を適正化する
カレー粉は、適正な満腹感を与え、食欲を適正化します。
6グラム、12グラムのカレー粉を含む食事を食べた人は、対称群の男性と比較して、空腹感と食べたいという欲求が大幅に減少したと報告しました。
※Foods. 2018 Apr; 7(4): 47.
消化が促される一方で、食欲が適正化されるのは不思議ですが、これは体感するところかと思います。食べ過ぎも防ぐことができますね。
2.カレー粉をもっと活用しよう
2-1.様々な料理にアレンジ
カレー粉は、スパイスのブレンドです。
カレーのルーを買ったことはあるけど、カレー粉はないと言う方も多いかもしれませんが、我が家はむしろルーを使いません。
ルーの半分は、脂肪分。しかも、オメガ6系脂肪酸や動物性脂質である飽和脂肪酸、それに加え強力に酸化を促進するトランス脂肪酸が多く含まれているものもあります。
ルーを使ったカレーは、カレー粉のメリットを帳消しにすると考えた方が良いと思います。
カレー粉は、さまざまな料理の味付けに活用できます。
メーカーによってスパイスのブレンドが違いますから、いろいろトライして、好きなブレンドを見つけるのも楽しいですね。
サラダ、マリネ、スープ、肉や魚のロースト、スープなどの料理に加えてみてください。
ちょい足しするだけで、グッと料理に複雑みが生まれ、美味しさが増します。
2-2.スパイスの沼にハマると
さらに、元々あるカレー粉だけでは物足りなくなったら、好きなスパイスを際立たせるために、ブレンドされていないスパイスを買い足してみましょう。
お勧めは、クミンシードです。
油を熱してからクミンを加え、キャベツをさっと炒め、塩をふる。
これだけで「無限スパイスキャベツ」の出来上がりです。
プチプチした食感が楽しいマスタードシードも、炒め物やサラダなどに活用できます。
我が家では、夏は、スパイスカレーを作るだけでなく、いろいろな料理にちょい足ししています。
夏を乗り切るために是非活用してみてください。
スパイスの沼にハマると、二度と出られないことも申し添えておきますね。
そのうち、「自分でブレンドしてみようかな…」と虚な目で呟きながら、インドマーケットに足を運び、すり鉢を用意して、自らスパイスを調合し始めたら、もう後戻りはできません…。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか