こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

「寝ても寝ても眠たい」
「仕事中、眠気に襲われて意識が飛んだ」
「昼間に耐えられないほどの眠気に襲われる」

みなさまはこのような経験はありませんか?
日中の強い眠気に悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

筆者も寝てはいけないと思いながらも、仕事中にウトウトしてしまうことがあります。

40~50代の女性は仕事や家事に大忙しの日々を送っています。
毎日の疲れや寝不足が日中の眠気の原因となっているのかもしれません。

しかし日中に起こる眠気の原因は疲れや寝不足だけではないことも多くあります。

今回は日中の眠気の原因と、眠気を改善するために心がけたい生活習慣について解説します。

1.睡眠のメカニズム

時計で睡眠のリズムを考える

人には生命を維持するために不可欠とされる3大欲求があります。それは食欲・性欲・睡眠欲です。

睡眠をとることは人が生きていくためにとても大切です。

睡眠不足が続くと日中活動に支障をきたしてしまいます。

イライラしたり思考力が低下するなどのメンタル面での不調や、頭痛・めまい・吐き気や肩凝りなど身体的な不調が現れてきます。

1-1.睡眠ホルモンの役割

睡眠ホルモンとよばれる「メラトニン」は、睡眠を調整し、睡眠中に体を修復する働きがあります。

メラトニンは脳の中の松果体(しょうかたい)から分泌され、自律神経やホルモン分泌を調整する役割を担っています。

人には全身の各臓器や各細胞の一つひとつに「体内時計」が備わっています。

各臓器や各細胞はそれぞれの環境に合わせて活動しているため、放っておくと全身の体内時計は少しずつズレが生じることとなります。

そのズレを調整し、1日のリズムを合わせるのが、メラトニンの役割です。                                     

2.日中の眠気の原因

日中の眠気に耐えられず居眠りする女性

日中に眠気が起こる原因はさまざまあります。

睡眠環境に問題があったり夜更かしなどの生活リズムの乱れが原因であったり、睡眠に関する病気が原因ということもあります。

2-1.生活習慣によるもの

毎日のように寝不足が続いていると、睡眠不足を取り戻すため日中に強い眠気が生じます。

またしっかり睡眠時間を確保していても、寝る直前までスマートフォンやパソコンを使用していると、睡眠の質が悪くなりその結果、熟眠感を得ることができず日中に眠くなってしまうことがあります。

2-2.過眠を引き起こす病気によるもの

「寝つきが悪い」「夜中に目が覚めてしまう」といった睡眠を妨げるような症状を不眠症といいます。

一方、「寝ても寝ても眠い」「日中眠り込んでしまう」といった、日中に過度な眠気が生じる症状を過眠症といいます。

睡眠時間を確保できているにもかかわらず、毎日のように日中強い眠気に襲われ、仕事や家事など日中活動に支障をきたす場合は、過眠症が原因となっている可能性も考えられます。

2-3.更年期によるもの

昼と夜の自律神経の乱れ

更年期障害により自律神経のバランスが乱れることで、日中に眠気が生じることがあります。

自律神経は日中に活発になる「交感神経」と夜間に活発になる「副交感神経」に分けることができます。

自律神経が乱れてしまうと夜間に交感神経が優位になったり、逆に日中に副交感神経が優位になってしまったりして、うまく睡眠をとることができなくなることがあります。

3.食後の血糖値の急上昇と急降下による「血糖値スパイク」

おにぎりで炭水化物だけのランチ

食後の血糖値の乱高下により、耐え難い眠気が引き起こされます。糖尿病などの病気がなくても、急激に血糖値が上げる糖質を多く取ることで誰にでも起こりうる現象です。

とくに炭水化物の多い食事(菓子パンやおにぎり)などで済ませている人は注意が必要です。

通常食後の血糖値は、3〜4時間かけてなだらかに上がりなだらかに元に戻ります。

ところが、糖質の多い食事を取ると食後30分程度で急激に血糖値が上昇します。
これを「血糖値スパイク」といいます。

急激に増えた血糖値を下げるために膵臓から大量のインスリンが分泌されると、今度は急激に血糖値が下がります。
低血糖により脳の栄養であるブドウ糖の供給が低下するため、脳の活動が低下し眠気が引き起こされます。

なお、食後の眠気を避けるための方法については5章で解説していきます。

4.日中に眠気をもたらす過眠症

日中の眠気に耐えられず居眠りする女性

誰もが一度は午後になると眠気に襲われたという経験があるのではないでしょうか。

健康な人であっても体内時計の働きにより、お昼過ぎから眠くなるといったことはよくあることです。

しかしこの場合、眠ってはいけないと意識することで眠らずにいることができます。

しかし過眠症の場合は、自分の意志にかかわらず居眠りをしてしまいます。

過眠を引き起こす病気はいくつかありますが、大きく2つに分けることができます。

・睡眠中の身体の症状のために深く眠ることができず、慢性の睡眠不足になってしまうもの
・脳の中の睡眠を調節する機能がうまく働かず、日中に強い眠気が出現するもの

この2種類の代表的な病気について解説します。

4-1.睡眠時無呼吸症候群

先にご紹介した身体症状により慢性の睡眠不足になるタイプの代表的なものが、睡眠時無呼吸症候群です。

「SAS(サス)」と呼ばれることもあります。

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に空気の通り道となる上気道が狭くなり、呼吸が止まる「無呼吸」と、呼吸が止まりかける「低呼吸」を繰り返す病気です。

1.症状

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、日中の耐えがたい眠気と大きないびきです。

眠りはじめると呼吸が止まり酸欠状態になるため、睡眠の質が低下します。場合によっては覚醒し、睡眠が中断してしまいます。

再度眠りはじめても再び呼吸が止まり眠りが中断してしまうため、深い眠りにつくことができず慢性の睡眠不足の状態となってしまい、昼間に強い眠気が生じます。

狭い気道を空気が通ることで気道壁が振動し、生じる音がいびきです。

体調などによっていびきをかく方もいますが、睡眠時無呼吸症候群の場合はいびきの音が大きいことと、いびきといびきの間に呼吸が止まることが普通のいびきとの大きな違いとなります。

その他にも呼吸が停止することで長時間酸欠状態となるため、高血圧や動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなったり、糖尿病が悪化したりすることがあります。

こうしたことから、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、10年後には3~4割の方が亡くなるといわれています。

早期治療が大切な病気といえます。

参考)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-002.html

2.チェック表

無呼吸症候群の自覚症状を評価する方法に日本呼吸器学会が作製した日本語版エプワース眠気尺度(ESS)があります。

8つの質問において、以下の状況になったとしたら、どのくらいうとうととする(数秒~数分眠ってしまう)と思うかを答えていきます。

最近の日常生活を思い浮かべながら、8つの項目すべてをチェックしていきましょう。

  うとうとする可能性はほとんどない うとうとする可能性は少しある うとうとする可能性は半々くらい うとうとする可能性が高い
すわって何かを読んでいるとき
(新聞、雑誌、本、書籍など)
0 1 2 3
すわってテレビを見ているとき 0 1 2 3
会議、映画館、劇場などで静かにすわっているとき 0 1 2 3
乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき 0 1 2 3
午後、横になって、休息をとっているとき 0 1 2 3
すわって人と話をしているとき 0 1 2 3
昼食をとった後(飲酒なし)、静かにすわっているとき 0 1 2 3
すわって手紙や書類を書いているとき 0 1 2 3

 

参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/3/2/3_2_96/_pdf

チェックした数字の合計が6点以上の場合は無呼吸症候群が疑われるため、医療機関を受診することをおすすめします。

3.治療法

睡眠時無呼吸症候群を完全に治す治療法はいまのところありませんが、もっとも有効な治療法は「経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)」です。

経鼻的持続陽圧呼吸療法とは、鼻にマスクをつけて就寝する方法です。

睡眠時無呼吸症候群の治療器具

マスクから持続的に空気を流して圧力をかけることで気道を広げ閉塞を防ぐことで、無呼吸を取り除くという治療法です。

また睡眠時無呼吸症候群の方は、肥満や高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病であることも多いため、ダイエットや生活習慣を見直すことも大切です。

4-2.ナルコレプシー

ナルコレプシーは、脳にある睡眠を調節する機能がうまく働かないことで、日中に強い眠気が出現する代表的な病気です。

ナルコレプシーは、目を覚まし続ける役割を持つオレキシンというタンパク質を作り出すことができなくなることで発症すると考えられています。

1.症状

ナルコレプシーの主な症状は、夜間十分に睡眠をとっていても日中耐えられないほどの強い眠気に襲われ居眠りをしてしまう「睡眠発作」です。

居眠りは10~20分と短時間ですが、その数時間後には強い眠気が出現します。

睡眠発作の他にも、大笑いやびっくりするなどの急激な感情の高まりが誘因となり、膝や腰、首など全身の筋肉が突然緩んで力が入らなくなる「情動脱力発作」が起こることもあります。

また、眠ったままの状態で起きているかのように自動的に動く「自動症」や、眠っているときに体が動かなくなる「睡眠麻痺」、入眠直後に夢を見ている状態となり人の声や気配を感じる「入眠時幻覚」などの症状が現れることもあります。

時計

2.検査方法

ナルコレプシーを確定する検査は、夜間から翌日夕方頃にかけて検査を行うため、最低1泊の入院が必要です。

日中の眠気を評価する「反復睡眠潜時検査(MSLT)」と、夜間の睡眠状態を評価する「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」を用いて検査を行ないます。

・反復睡眠潜時検査

反復睡眠潜時検査とは身体的な疲労と日中の過度の眠気を区別することで、ナルコレプシーの有無を確認します。

1日睡眠検査室で過ごし、2時間おきに4〜5回仮眠をとります。

この反復睡眠潜時検査の一環として終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、睡眠に入るまでの時間と眠りについた時刻を記録し、睡眠段階をモニタリングします。

・終夜睡眠ポリグラフ検査

終夜睡眠ポリグラフ検査は、睡眠時無呼吸症候群の診断にも用いられます。

その他、睡眠中の異常な動きや行動・けいれん性疾患・周期性四肢運動障害・ナルコレプシーなどを発見するために、一晩かけて睡眠検査室で行います。

電極を体や顔・頭皮に付け、睡眠中の眼球の動きや脳波・心電図・筋電図・血液中の酸素レベルなどを測定します。取り付けるセンサー類は多いですが、痛みを伴うものではありません。

また、終夜睡眠ポリグラフ検査を自宅で行うことも可能ですが、その場合は脈拍(心電図)・酸素飽和度・呼吸の記録のみとなります。

・覚醒維持検査

その他にも「覚醒維持検査」を行うこともあります。

この検査は静かな部屋で座ったまま過ごし、どれくらいの間起きたままでいられるかを調べる検査です。

この検査は日中の眠気の程度を測定し、車の運転など日常的な活動に支障がないかを判断する上で有用です。

健康な人の場合、眠りにつくまでの時間は平均8分以上ですが、ナルコレプシー患者の場合は数分以下と早いのが特徴です。

また、健康な人の場合は、入眠直後には眠りの浅いレム睡眠は観察されませんが、ナルコレプシー患者の場合は現れやすく、眠っている間もレム睡眠が多く、途中で目が覚める「中途覚醒」が起こりやすいことも特徴です。

3.治療法

ナルコレプシーを完全に治す方法は現時点ではありません。

しかし、服薬や生活習慣の見直しなどによって、症状を改善することはできます。

5.食後の眠気を避けるための克服法

日中の強い眠気は夜更かしや生活習慣の乱れから起こる場合もあれば、血糖値の乱高下や睡眠に関する病気が原因である場合もあります。

5-1.規則正しくマインドフルな食事を

マインドフルな食事をする女性

睡眠と覚醒・食欲に関わる脳内の神経伝達物「オレキシン」が食事中にも十分に分泌されると、血糖値スパイクが抑えられ食後の急激な眠気も抑えられます。

そのためには、まず、味覚を刺激すること。目の前を食事に集中し五感をフル活用しマインドフルに食べることが大切です。

また、規則正しく同じ時間帯に食事を取り、ながら食いや早食いなどしないようにしましょう。

5-2.腹八分目以下に抑える

オレキシンは、空腹で分泌が増し、腹八分目程度になると低下してきます。

満腹になるとおやすみモードになってしまいますので、「少し物足りないな…」と感じる食事量に抑えると、食後の眠気をある程度回避できます。

5-3.糖質を控えめにする

血糖値スパイクを抑えるためには糖質の摂取を減らしましょう。
菓子パンや麺類、おにぎりだけなど炭水化物オンリーの食事はNGです。

5-4.白い穀物より黒い穀物

精製度の高い白米や白い小麦は、血糖値の上昇をゆっくりにする食物繊維が不足しています。

白米よりは雑穀米、うどんよりはそば、小麦よりは全粒粉を選ぶなど意識してみましょう。
ただし、未精製でも糖質は含みますので取りすぎには注意です。

5-5.砂糖を控える

砂糖が多いパンやお菓子、清涼飲料水などは眠気の敵です。人工甘味料もインスリンを刺激することから血糖値スパイクを引き起こすと問題になっています。

甘いものが欲しい時は、血糖値上昇に関与しない「オリゴ糖」がおすすめです。消化されず腸に届き腸内細菌のエサになるので、腸活におすすめです。

5-6.朝食に食物繊維をしっかり食べる

最初に取る食事で食物繊維を多く摂取すると、次の食事の血糖値上昇が穏やかになることがわかっています。

セカンドミール効果といいます。昼食後の眠気を抑えたい時は朝食から意識してみましょう。

5-7.食べ順を意識する

炭水化物を先に取ると血糖値が急上昇してしまいます。

タンパク質や脂質を含む主菜や食物繊維を多く含む副菜を先に、炭水化物は最後に少し取るようにしましょう。

5-8.食後に軽く筋トレをする

軽い筋トレをする女性

食後の血糖値増加は食後の筋トレで抑えられます。

有酸素運動を行うと胃の血流量が減り消化の妨げになってしまうので、軽く筋肉を動かすような運動が最適です。

エレベーターの代わりに階段を使う、座ったまま太ももを上げ腹筋や背筋を鍛える、スクワットを行うなど、軽く筋肉を動かすものがおすすめです。

5-9.お昼寝タイムを設ける

どれだけ血糖値上昇に気をつけていても、食後は副交感神経が優位になりオレキシンも低下するのである程度の眠気は避けられません。

抗わず15分〜30分程度の昼寝を設けるのもよいでしょう。

5-10.夜の睡眠の質を高める

日中の耐え難い眠気の原因は、夜の睡眠の質が悪い可能性があります。

また血糖値上昇は、睡眠中の成長ホルモンの分泌を低下させ体の回復を妨げるので、夜は糖質の摂取を控えましょう。

▼「食べたら眠い」はなぜ起こる!?|今日からできる10の克服法【医師解説】

https://wellmethod.jp/food-coma/

6.質の良い眠りでより健康的な毎日を

人は人生の約3分の1の時間を睡眠に費やしています。

質の良い睡眠をしっかりとるということは、長い人生の中においてとても大切なことです。

睡眠時間や睡眠の質によって、残りの3分の2の時間のパフォーマンスにも大きな影響を与えてしまうため「ただ寝るだけ」というよりも、しっかり体力を回復し健康的な生活を送ることができるような質の睡眠がとれるように心がけたいものですよね。

素敵に歳を重ねるためにも、睡眠や生活習慣を見直しながら健康的な毎日へと生活をアップグレードしていきましょう!

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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