こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。

みなさまは、糖尿病という病気についてご存知でしょうか。

糖尿病は生活習慣病の代表的な疾患の一つであり、健康に関するTV番組や雑誌でもよく取り上げられる身近な疾患でもあります。

実は筆者自身の叔父も糖尿病を患っており、お正月など親戚の集まりの際は「糖尿病だから甘いものは食べられないんだ」と話していたことが記憶に新しいところです。

では、みなさまは糖尿病の合併症については、どの程度ご存じでしょうか。

もしかすると、糖尿病の合併症は「なんとなく怖い」といったイメージを持たれている方もいるかもしれません。

実はこの合併症こそ、糖尿病の中で気をつけなくてはいけない大切な問題です。

糖尿病の治療を放っておくことは、糖尿病合併症の発症につながり、重症化するとこれまでの日常生活に深刻な影響を及ぼしかねない危険性を備えています。

では、合併症にはどのような症状があるのでしょうか。また、なぜ糖尿病は合併症を発症するのでしょうか。

今回はこの糖尿病合併症について、具体的な症状や原因について詳しく解説したいと思います。

1.糖尿病合併症とは

糖尿病合併症

糖尿病とは、体の中の血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌の不足や、インスリンの機能が不十分なために血糖値が高くなる病気です。

この血糖値が高い状態に関連して併発する他の病気が糖尿病合併症です。

糖尿病の治療が不十分であったために引き起こされる病気のことをいいます。

▼「糖尿病」その初期症状は? 具体的な治療法と予防のために必要な生活習慣

https://wellmethod.jp/diabetes/

1-1.糖尿病合併症は血管の老化現象

糖尿病による血糖のコントロールがうまくいかず、高血糖の状態が長く続くと、血管は硬くなり動脈硬化などの血管の老化現象が進行します。

この血管の老化により体の血管のあちこちで血行障害が起こり、糖尿病合併症の症状が引き起こされるようになります。

▼「動脈硬化」を予防するための今日からはじめる新たな生活習慣

https://wellmethod.jp/prevention-of-arteriosclerosis/

1-2.血行障害は「細小血管障害」と「大血管障害」に分けられる

糖尿病の血行障害には、毛細血管など細い血管の血流不全で起こる「細小血管障害」とよばれるものと、より大きな血管の障害で起こる「大血管障害」に分けられます。

また、大血管障害の場合は、高血糖の他にも高血圧、脂質異常症、中性脂肪の値が高い、肥満や喫煙、加齢などが関連します。

「細小血管障害」では、おもに「神経症」「網膜症」「腎症」がみられ、「大血管障害」では、「脳梗塞」「狭心症、心筋梗塞」「閉塞性動脈硬化症」といった病気が発症しやすくなります。次の章で、それぞれの症状を解説します。

2.血管障害でみられる病気(細小血管障害)

糖尿病合併症 細小血管障害

糖尿病による血行障害は体のさまざまな部分で合併症を引き起こします。

とくに毛細血管とよばれる細い血管が障害をうけることを、細小血管障害といい、代表的な症状として、三大合併症と呼ばれる「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」があります。

2-1.糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害は、頻度が高く比較的糖尿病早期におこる合併症です。

私たちの体全体には、あらゆる神経が張り巡らされています。これらの神経は、体を動かしたり、物をみて触ったり、血圧の調整や消化管を動かすために脳へ信号を伝える働きをしています。

高血糖の状態が続くと神経に栄養を与える血管が障害されるため、神経障害が起こります。

さらに高血糖のために、ブドウ糖が変化した不要な代謝物が神経細胞の中に蓄積することも、神経障害に関連しているといわれています。

1.神経障害の症状

神経は体のあらゆる場所で体のコントロールをしているため、神経障害はさまざまな症状が現れます。

特徴的な症状として、左右両足の同じ部分にしびれや痛みを感じる、感覚が鈍るなどがあります。

「足の裏に紙が一枚挟まったような感覚の鈍さ」と表現されますが、初期では本人も自覚していないことが多いため、専門医での診断が必要です。

また、自律神経の障害による、全身の機能障害が起こります。

糖尿病合併症 神経障害

2-2.糖尿病網膜症

網膜とは、目の奥(眼底)にある薄い膜のことをいいます。本来、人は物をみるときに瞳孔を通して、光を網膜にうつします。

網膜で受け取った光は、電気信号に変換され、神経を通して情報が脳に伝わり、形や色を認識します。

この網膜には、細かい血管が密集しています。この網膜の細い血管が糖尿病により傷つけられ、「網膜症」が発症します。

1.網膜症の症状

糖尿病を指摘されたからといって、すぐに網膜症の症状が現れるわけではありません。

例え血糖のコントロールがうまくいかず、高血糖の状態が続いたとしても、多くは自覚症状のないまま進行していきます。しかし、放置するとある日突然、網膜剥離や眼底出血の症状が現れ、失明に至ることがあります。

糖尿病と指摘されたら、必ず眼科も同時に受診し、網膜の状態を確認し、失明を防ぐように血糖コントロールを行う必要があります。

網膜症の重症度により、単純・増殖前・増殖網膜症と3段階に分かれていますが、増殖網膜症の段階にあっても自覚症状がない場合がほとんどです。
増殖前網膜症の段階から、予防的なレーザー治療などを行います。

血糖コントロールが良好であれば、網膜症などの合併症は進行しないため、血糖値を良い値に安定させることが重要です。

2-3.糖尿病腎症

高血糖の状態が長期間続いたり、血糖値のアップダウンが激しい状態が続くと、最終的には腎臓の血管にも障害が及びます。

腎臓は、体の水分量を調節する働きや、血液をろ過して体に必要なものと不必要なものとを分けて尿を作り排泄する働きをしています。

この腎臓の中で、血液のろ過を行う部分が糸球体です。

糸球体は細い毛細血管が密集しており、糖尿病が進行すると、この糸球体の毛細血管に血行障害が起こります。

血行障害をうけた糸球体は、働きが低下し、体から老廃物をうまく排泄できなくなります。

そのため、糖尿病腎症が悪化すると、むくみが生じ、さらに放置し続けると、腎臓の機能を人工的に代替えする人工透析をする必要がでてくる場合があります。

足のむくみ

1.腎症の症状

・むくみ

糖尿病腎症は、糖尿病を治療せず高血糖の状態が長く続いていてもすぐに症状が現れるわけではありません。

血糖値が高いと腎機能は徐々に低下するものの、多くは自覚症状のないまま進行していきます。

病状が進行すると、尿として体の老廃物や水分を排泄する機能が低下してくるため、足など体にむくみが現れます。

このむくみがみられると、腎機能がかなり低下しているサインでもあります。

血液検査などを行いながら、十分に血糖コントロールを行い、腎機能を守ることが大切です。
血糖コントロールが良好であれば、糖尿病があっても生涯合併症を起こさず元気に過ごすこともできます。

3.血管障害でみられる病気(大血管障害)

糖尿病による血管の老化は細い血管だけではなく動脈などの太い血管にも影響します。

そのため、血管では動脈硬化が起こり心臓や脳に障害が起こったり、足に症状が現れたりします。

3-1.動脈硬化による心臓や脳への障害

動脈は、心臓から血液を全身へ送り届けるための大切な血管です。

本来、動脈の血管壁はしなやかで弾力性があり、心臓が血液を送り出すたびに広がることができるので、血圧を一定に保つことができます。

しかし、高血糖が長く続くと、動脈の壁が硬くなり、徐々に溜まるプラーク(脂肪分などの塊)により内径が狭くなり動脈硬化が起こります。

1.動脈硬化で起こる症状

・狭心症・心筋梗塞
・脳梗塞

動脈硬化が起こると、血圧は高くなり、血流が悪化し、心臓に負担がかかりやすくなります。

さらに血管の壁にたまったプラーク(脂肪分などの塊)が何かの拍子に破裂すると、血小板が集まり、血栓を作ります。

この血栓が心臓に関連する血管に詰まると、心筋梗塞が起こります。さらにこの状態が脳で起これば「脳梗塞」が起こります。 

▼脳梗塞の前兆「一過性脳虚血発作」とは? 危険信号を見逃さないための症状と予防策

https://wellmethod.jp/transient-ischemic-attack/

3-2.足の病変(末梢動脈の病気)

糖尿病合併症 足の病変

糖尿病合併症では、足の病変にも注意が必要です。

血糖値が高い状態が続くと、心臓や脳の血管と同様、手足の動脈にも血管障害が起こります。

とくに、体の末端である足の血管が詰まりやすくなります。足の動脈が詰まる病気を閉塞性動脈硬化症と言います。

1.足の病変でみられる症状

・足が冷たくなる
・少し歩くと足に痛みが起こり歩けなくなる(間欠性跛行)
・潰瘍ができる
・感染症が起こる
など

足の血管障害が起こり血液の流れが悪くなると、足先が冷たくなり、しびれることがあります。

さらに感覚も鈍くなっているため、ケガややけどをしても気がつきにくくなります。

さらに足は手と異なり、普段すぐに目にする場所ではないので発見が遅れます。

血流が低下していると傷の治癒が遅れるため、潰瘍となりなかなか治らなくなります。
その上、血糖コントロールが悪いと免疫機能も低下するため、感染症が起こり、重症化すると壊疽が起こり、最終的には足の切断を余儀なくされるケースも出てきます。

さらに足の血管が細くなると、血液不足で歩くために必要な酸素が供給されず、歩くとふくらはぎや太ももに痛みを覚え、休み休みでないと歩くことが難しくなります。

3-3.糖尿病が合併症を併発する3つの理由

糖尿病であると、なぜ血管が老化するのでしょうか。

1.高血糖

血中の血糖値が高い状態では、血中には多くのブドウ糖が存在することになります。

この状態では、血液がねばねばとして流れが悪くなる上、炎症が起こるために、動脈硬化が起こりやすくなります。
また、糖とタンパク質が結合した糖化タンパク質(最終糖化産物AGEs)は、動脈硬化を促進します。

また、余分なブドウ糖は代謝され、ソルビトールとして蓄積すると、「神経障害」を起こす原因の1つとして考えられています。

2.高血圧

高血圧

高血圧では、血管に負荷がかかることから、血管障害が進行しやすくなります。

さらに血糖値が高い状態が続くと、浸透圧の関係で体の血液の量が多くなるため、さらに高血圧を悪化させる原因にもなり、合併症を引き起こす引き金にもなります。

▼“女性の更年期高血圧”とは? 予防のための食生活・生活習慣

https://wellmethod.jp/menopausal-hypertension/

3.高トリグリセライド血症

血糖値が高くなると、肝臓は余分な糖を利用して中性脂肪(トリグリセライド)を作ります。

この中性脂肪は、いざというときの体のエネルギー源のため体脂肪として体に貯蓄されます。

この中性脂肪が血液中に過剰にある状態が高トリグリセライド血症です。

血液中に過剰になった脂肪は、血管壁に溜まり血行障害を引き起こし、合併症を併発します。

LDLコレステロールの増加を伴う場合、高血糖があるとLDLが酸化しやすく、動脈硬化のリスクが高まります。

4.治療の目的こそが血管障害の発症リスクを下げること

糖尿病は血糖値が高い状態だけが続くわけではありません。
特に血糖値の乱高下を引き起こすことが、合併症のリスクを高めることがわかっています。

高血糖だけでなく、低血糖が起こることによって致命的な状態になったり、眼底出血を起こす場合もあります。
糖尿病は血管の老化を早める非常に危険な因子でもあります。

血行障害を防ぐためにも、日ごろから糖尿病を含め、高血圧や脂質異常症などの基礎疾患の治療、そして生活習慣の見直しが大切です。

4-1.糖尿病をはじめ基礎疾患の治療を行う

糖尿病合併症を起こさないためには、何よりも血糖値を安定的にコントロールし、目標の値にすることが大切です。

もし、医療機関にかかり糖尿病の治療を行っているのであれば、「いまは大丈夫だから」と自己判断で治療を中断せず、コツコツと続けるようにしましょう。

さらに、血圧や中性脂肪の値を指摘されている場合は、糖尿病と合わせて治療を行うことが大切です。

合併症を早期に発見するためにも、定期的に医師の診察、検査を受けるようにしましょう。

4-2.生活習慣の見直しをしましょう

生活習慣病の予防 体組成計

生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症)は、生活習慣が大きく関連しています。そのため、生活習慣を見直し、できるところから改善しましょう。

血糖値をあげる元となるのは、一重に、糖質です。
まずは血糖値のもととなる甘いもののとりすぎや炭水化物のとりすぎには注意しましょう。

間食を避け、野菜・海藻・キノコなどの食物繊維の多いものを中心に、バランスの良い食生活を意識するようにしましょう。

また、適度な運動を行い、肥満を防止することも大切です。

適度な運動は、血中のブドウ糖を消費するだけではなく、中性脂肪を低下させる、善玉コレステロールを増やす、筋肉の衰えや骨粗鬆症を予防する効果もあります。

また、喫煙は控えましょう。

▼キッチンに砂糖は不要!医師が実践するシュガーフリー生活ってどうやるの?

https://wellmethod.jp/sugar-free/

5.糖尿病合併症にならないように、生活習慣を見直しましょう

スイーツ ドーナツ

スイーツに目がない女性は多いですよね。

しかし、そういう方こそ糖尿病についてきちんと知っておくことが大切です。

糖尿病は病気そのものは生活に支障がでるほどの症状はありません。しかし、恐れているのはこの先に起こりうる血管障害です。

糖尿病による血管障害も、はじめは症状が出ずにひっそりと進行していき、気づいたときには後戻りできない、といった状態になることも少なくありません。

だからこそ、血糖のコントロールはとても大切です。

まずは、食生活の改善や運動習慣をとりいれ、それでも血糖のコントロールが悪い場合はきちんと受診をし、いまの体の状態を調べましょう。

定期的に専門の医療機関を受診して治療をする、そして主治医の指導をきちんと生活に活かすことが大切です。

自分らしく輝く毎日を送れるように、自分自身を大切にしていきましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

続きを見る

著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

廣江 好子の記事一覧