こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

生理中はさまざまなトラブルが生じてしまうこともありますが、よく耳にするのは「生理中に下痢になってしまい辛い」という相談です。

生理中は腹痛が起きることも多いのに、くわえて下痢といった腸のトラブルまで併発してしまうのは本当に辛いですよね。

昔から生理中は便秘や下痢といったトラブルが起こりやすいといわれてきましたが、近頃そのメカニズムが解明されつつあります。

生理中の下痢にはいくつかの要因があるものの、体内で分泌されるホルモン量の変化と子宮の収縮を促す物質の分泌が増えることが、下痢を引き起こす大きな要因となっているようです。

今日は、生理中に下痢になってしまうメカニズムやその対策、そして腸内環境とストレスの関係などについてを具体的に説明していきましょう。

1.生理中、下痢になってしまう原因とは

月の満ち欠け生理中に下痢になってしまう大きな原因は、生理によるホルモンバランスの変化と、それに連動して起こる腸の収縮によるものです。

そもそも生理とは、剥がれ落ちた子宮の内膜が血液と一緒に流されたものです。妊娠をしない限り子宮の内膜は月に1回程度のペースで剥がれ落ち、再び妊娠の機会に備え、内膜の増殖を繰り返します。

この子宮内膜の変化を起こしているのが「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンです。子宮では生理が始まって2週間ほどすると排卵が生じますが、この排卵をサポートするのが卵胞ホルモンとも呼ばれるているエストロゲンです。

そして、排卵のあとには赤ちゃんを迎え入れるられるよう、子宮内膜はふかふかに成熟します。この子宮内膜のサポートを主に担っているのが黄体ホルモンと呼ばれるプロゲステロンです。

しかし、妊娠をしないと子宮内膜は剥がれ落ち、生理が始まります。この際、エストロゲンとプロゲステロンの分泌は急激に低下し、プロスタグランジンという物質が産生されて、子宮の収縮がはじまります。プロスタグランジンは、体の様々な場所で強い働きを持つ「生理活性物質」の一種です。胃腸の働きにも影響を与えるため、生理の前後において便秘や下痢が起こりやすくなるのです。

このように女性ホルモンは生理周期において分泌量に激しい変化を見せ、それと同時にプロスタグランジンが腸の収縮に大きな影響を与えます。

1-1.生理前は便秘に悩む人が多い!?

生理中は下痢で悩む人が多くても、実は「生理前はなかなかお通じが来ない」という人もいるのではないでしょうか。

それは、排卵後に分泌量が増えるプロゲステロンの影響が大きいといわれています。分泌量が増えると、子宮の収縮を抑制する作用が働き、それと同時に腸の運動も抑制されます。

つまり生理前はプロゲステロンによって腸の動きが鈍くなるため、便秘になる人が多く、生理が始まると、この働きが弱まるため、便秘は解消されるというメカニズムが働いているのです。

1-2.下痢はプロスタグランジンの影響が大きい

生理中の下痢

生理が始まると、「プロスタグランジン」という子宮の収縮を促す物質が増えていきます。

プロスタグランジンは子宮の収縮と同時に腸の収縮運動にも働きかけるため、これにより腸が普段よりも活発に動き、下痢が起こりやすくなります。

また、プロスタグランジンが過剰に分泌されると、子宮やその周りにある血管が過剰に収縮してしまい、腹痛を起こすこともあります。これによりさらに下痢の症状が悪化することも考えられます。

こうして生理中に下痢を繰り返すと、生理のたびに「またお腹の調子が悪くなるかも」と考えてしまい、精神的に不安定になることもあるでしょう。生理の度にストレスが溜まり、精神不安によってさらに下痢がひどくなる、というケースもあります。

2.生理中の下痢を予防するには

では、どのようなことをしたら、生理中の下痢を改善させることができるのでしょうか?

根本的な解決策は現状のところありませんが、症状を悪化させないように生活の工夫をして、より良い環境に整えることで緩和できる可能性があります。

この章では、日常生活でできるお腹のサポートについて解説していきます。

2-1.まずは体を冷やさないこと

ストールで体を温める

生理中に限らず、下痢を防ぐためには「体を冷やさないこと」がとても大切です。長い間、冷房の風を浴びてお腹や足が冷えたり、冷たいものを食べ過ぎて体の内側から冷えたりすると、お腹が痛くなって下痢を引き起こしてしまうことは多いです。

また生理中でも、お腹を温めることで子宮収縮を抑え、結果的にプロスタグランジンの産生を減少させることができます。プロスタグランジンが減れば腸の収縮も抑えることができるので、生理中の下痢症状を和らげることができるでしょう。

そして生理中は基本的に体温が低くなるので、普段の服装だと寒気を感じることもあります。いつもより1枚余分に羽織り、下腹部を冷やさないようにすることが大切です。

2-2.胃腸にやさしい飲食を心がける

カップケーキ

生理中下痢になりやすい人は、いつも以上に胃腸に優しい食品を選びましょう。まずは、胃腸に刺激を与えない食材を選ぶことが大切です。生理中に避けたい食材は次のような物です。

・唐辛子など香辛料がたくさん入ったもの
・カップラーメンやスナック菓子
・冷たい食べ物や飲みもの
・ブドウ糖や砂糖が多いもの
・人工甘味料が多いもの
・コーヒー、ビールなど、カフェインやアルコール類

香辛料がたくさん入った辛いものは、胃の粘膜を荒し、下痢の症状をひどくすることもあります。また、カップラーメンやスナック菓子は酸化した油が含まれるため、胃腸に負担をかけてしまいます。

そして、体を冷やさないためにも、冷たい飲みものは避けましょう。また、砂糖やブドウ糖などの甘いものは、血糖値の変動を引き起こすことで体のストレスとなり、血管や筋肉を収縮させる交感神経を刺激する可能性があります。

人工甘味料は大腸で水分を引き寄せる働きがあるため、大量に摂取すると下痢を悪化させる可能性があります。

カフェインやアルコール飲料をたくさん飲むと、消化器系に刺激を与えるため、下痢を起こしやすくなります。

カフェインは血管を収縮させる作用があるため、症状を悪化させやすくなります。

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2-3.薬選びには注意が必要

生理中の下痢は、食あたりや細菌感染による下痢とは違うため、薬選びには注意が必要です。生理中の下痢を止めたくて、市販の下痢止めなどを飲んでしまうと、便秘や吐き気といった副作用が生じるケースもあります。

辛い場合は、必ず婦人科や産婦人科に相談して処方してもらった薬を服用するようにしましょう。

また、下痢のなかにはウイルスや細菌感染によるものもあります。こうした状態のときに下痢止めを飲んでしまうと、かえって症状が悪化するケースもあります。普段とは違うひどい下痢だったり、血がにじんでいたりするときは病気の可能性もあるので、無理をせず医療機関を受診しましょう。

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3.生理中の下痢はストレスが影響していることも

生理中の下痢はホルモンバランスやプロスタグランジンの分泌で起きることが多いのですが、生理時の不安定な精神状態からお腹の調子が悪くなることもあります。

「生理→下痢になる→不安になる→ストレスでさらに下痢がひどくなる」このような悪循環を抱えてしまう女性は少なくありません。生理中のお腹をサポートするためにも、ストレスを溜めないことが大切です。

3-1.腸内環境が悪いとストレスを感じる

トイレットペーパー

過度な緊張や嫌な場面に遭遇したときなど、ストレスがかかるとお腹が痛くなるというのは有名です。脳で感じたストレスが消化器系に影響を与えるというのは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。

反対に、胃腸の調子が悪いことが、脳に悪影響を及ぼすこともわかっています。これは胃腸が副交感神経によって支配されており、腸と脳が密接した関係にあるためです。腸内環境が乱れていると、精神に悪影響を及ぼしたり、記憶力の低下などをもたらしたりするのです。

生理中の下痢症状を抑えるためには、ストレスを軽減するだけでなく、腸内環境を整えることも大切です。腸内環境を整えるとは具体的にどのようなことをすればよいのか、次から詳しく解説していきます。

▼医師が解説する「ストレスと腸の関係」

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もし、ストレスによって下痢が悪化していると感じるのであれば、ストレスによって下痢や便秘を起こす「過敏性腸症候群」の可能性もあります。

このタイプは、「小腸内異常増殖症候群(SIBO:シーボ)」を合併していることが多いため、腸内環境を整える食事が返って逆効果となることがあります。

SIBOの場合は、SIBOの病態に対する治療と食事法があります。

お腹がすぐにガス腹になって苦しい、胃酸の逆流、ゲップ、下痢、食べても体重が増えないなどの症状が日常的にある方はSIBOを疑い、医療機関を受診しましょう。

▼【医師解説】腸活が逆効果になる腸内フローラの異常「SIBO(シーボ)」の原因と対策

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3-2.腸内環境を整えて下痢を予防しよう

野菜を食べる

私たちの腸内には「有用菌」「悪玉菌」「日和見菌」という3種類の細菌が存在します。腸内環境を整えるためには、これら3つの菌が腸内でバランスよく生息することが大切です。

ただし注意したいのが、悪玉菌が腸内において増えすぎてしまうことです。悪玉菌が増えすぎてしまうと、腸のなかで有害物質を作ったり、腸のぜん動運動を過剰に起こしたりして、下痢になってしまうことがあります。悪玉菌の動きを抑えるためには、有用菌の数を増やして腸内の菌をバランスよく保つことが大切です。

有用菌には乳酸菌やビフィズス菌があり、ヨーグルトなどに多く含まれることでも有名です。しかし、ヨーグルトだけを食べても、本当の意味で腸内環境を整えることはできません。腸内環境を整えるためには、すべての菌が腸内に住みやすくなるよう、腸内環境の土台を整える必要があります。

3-3.有用菌と食物繊維で腸を元気に

キムチ

腸内環境の土台を整えるのに役立つのが「食物繊維」です。食物繊維は腸内における有用菌のエサとなり、食べられることで有用菌自体の数を増やす働きがあります。

また、食物繊維と同じ働きをするのが「オリゴ糖」です。食物繊維とオリゴ糖は有用菌の働きを支える役目を持ち、これらの食材を「プレバイオティクス」といいます。

そして、ヨーグルトやキムチなどの発酵食品には、有用菌そのものが含まれています。有用菌をそのまま摂り入れることができる食品を「プロバイオティクス」といいます。

腸内環境を整えるためには、食物繊維を中心としたプレバイオティクスと、発酵食品を中心としたプロバイオティクスが欠かせません。

これらを同時に体に摂取することを「シンバイオティクス」といい、日頃からシンバイオティクスの食事法に切り替えることで健康的な腸内環境を維持することができるのです。

4.生理中の下痢トラブルは無理せず体のケアを

いかがでしたでしょうか?

生理中の下痢トラブルは、子宮と腸の収縮運動に作用するプロスタグランジンの影響によるものということがわかりました。

いままで原因がわからず毎月つらい思いをしていた方は、メカニズムがわかったことで少し安心につながったのではないでしょうか。

下痢の症状や、生理前後の便秘や腹痛などは、「ストレスを溜めない」「体を温める」「腸内環境を改善する」といった対処により、症状の軽減につなげることは可能です。

生理中にはいつも以上に無理をせず、体のケアをすること。それから予防として日頃から腸内環境を整えることはとても大切です。

今日からぜひ食物繊維と発酵食品を意識して摂り入れ、生理中の不調にも負けない、丈夫な体づくりをしていきましょう。

監修:内科医 桐村里紗

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和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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