ゆらぎ世代に多いめまい。更年期による症状と治療法
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
ゆらぎ世代になると、多くの方が1度はめまいを経験したことがあるのではないでしょうか。
実は筆者も、料理を作っている最中に急にくらっときたことがあります。
そのときは、調理中だったこともあり、暑さによるめまいなのかと思いました。
しかし、その後も立ちっぱなしのときにフワッとする軽いめまいを経験し、貧血が原因なのかと心配になりました。
ただ、よく考えてみると、そのめまいの原因は更年期障害によるものかもしれません。
更年期にはさまざまな体の不調が起こりますが、実はめまいも更年期が原因で起こることは多いのです。
今回は更年期に起こるめまいの症状や原因、その対策方法について詳しく紹介します。
目次
1.更年期にめまいは起こりやすい
更年期にめまいが起こることは珍しくありません。
ただ更年期における代表的な症状と聞くと、火照りやのぼせといったホットフラッシュ、イライラ感、頭痛や不眠などを連想する人も多いでしょう。
そのため、めまいが起きても「貧血かな」「疲れがたまっているのかな」と思い、更年期が原因だと気づかないケースも多いのです。
しかし、めまいの原因が更年期障害だった、ということは少なくありません。
耳鼻科や内科でめまいの相談をしてもよくならず、最終的に更年期障害の治療を受けたあとに、症状がよくなるケースもあるのです。
1-1.めまいにはいくつかの種類がある
一口にめまいといっても、その症状は多岐に渡ります。
また、めまいには内科的要因のものと、更年期が原因のものなど、いくつかの種類があります。
もし現在めまいで悩んでいるのなら、その症状によって自分のめまいはどれに当てはまるのか、次の内容から確認してみましょう。
1.更年期のめまいは「非前庭性めまい」
めまいは大きく分けて「非前庭性めまい」と「前庭性めまい」に分けられます。
更年期障害に伴うめまいは、非前庭性めまいに分類されることが多いです。
非前庭性めまいの特徴は「平衡機能の異常を示さない」ということです。
例えば内耳神経の障害によって引き起こされるメニエールなどのめまいの場合、横になっていても天井がグルグル回るといった、平衡機能の異常が起きることが多いです。
これを回転性めまいとも呼びます。
しかし、非前庭性めまいはそうした症状が少なく「体が一瞬浮くような感じ」「椅子から立ち上がったときにくらっとする」といった症状が多いです。これを浮動性めまいとも呼びます。
更年期症状に伴うめまいの場合、自律神経失調による影響が大きいと考えられます。
一方で、更年期の女性ホルモンの低下に伴い、耳の奥の内耳の前庭にある耳石(じせき)が剥がれ落ちた場合に、三半規管を刺激して、ふわふわとした浮動性のめまいだけでなく、前庭性の回転性めまいが起きる場合もあります。
頭の位置を変えることで、めまいが誘発される「良性発作性頭位変換性めまい症」と呼ばれるめまい症の原因になります。
また、更年期に伴い、加齢現象として動脈硬化が起こることで、内耳の血流が低下することでも、めまい症は起こりやすくなります。小脳の脳梗塞が起こると、重症の回転性めまいが起こることもあります。
更年期には、様々なめまいの原因が起こりやすくなります。
2.内耳神経が原因なのは「前庭性めまい」
メニエールなどの内耳や内耳神経の障害が原因で起こるめまいは「前庭性めまい」といわれています。
前庭性めまいには、耳石器や半規管、内耳神経のトラブルによって起こる末梢性めまいや、脳の障害が原因で起こる中枢性めまいも含まれます。
これらのめまいは平衡機能の異常が起きるケースが多く、耳鼻科の診断により原因がわかることが多いです。
とくに耳鳴りや難聴を伴うめまいは内耳神経が原因であることが多いため、まずは耳鼻科に相談すると良いでしょう。
平衡感覚を司る小脳の脳梗塞によってめまいが発症する場合は、重度の回転性めまいが起きます。この場合は、救急受診をして、内科で入院加療することになります。
3.何が原因なのか見分けが難しい場合も
めまいによっては、それが更年期が原因であるのか見極めが難しいケースもあります。
自分のめまいは内耳神経の障害が原因だと思っても、耳鼻科でもらった薬がなかなか効かないこともあるのです。
また、めまいの具体的な症例としては主に次の3つがあります。
・回転性めまい…ぐるぐると天井などが回って見える
・浮動性めまい…ふわふわ・ふらふらする、足元がおぼつかない
・失神型めまい…気が遠くなる、気を失ってしまう
回転性めまいは、内耳や内耳神経が原因の前庭性めまいであることが多いのですが、更年期障害が原因で回転性めまいが起きることもあります。
いずれにせよ、めまいの症状がひどかったり、1つの病院でなかなか治らなかったりする場合は、さまざまな可能性を考える必要があります。
耳鼻科や神経内科でめまいの改善が見られない場合は、更年期が原因であることも踏まえ、婦人科に相談してみると良いでしょう。
2.なぜ更年期にめまいが起きるのか
更年期障害においては、実にさまざまな体の不調が現れます。
めまいだけでなく、体の火照りや急な発汗、イライラや不安感、頭痛や不眠などは、とくに更年期症状を代表するものです。
これらが起きてしまう原因は、女性ホルモンの分泌量が低下してしまうためです。
女性は40代を過ぎた辺りから卵巣機能が低下し、エストロゲンをはじめとした女性ホルモンの分泌量が低下します。
エストロゲンの低下は自律神経の働きを大きく乱す原因にもなり、めまいなど体の不調を引き起こしてしまうのです。
2-1.めまいの場合、他に原因がないのか探ることが大切
めまいは更年期が原因で起こることもありますが、本来であれば耳鼻咽喉科で原因がわかることが多い症状です。
閉経前後の女性すべてがめまいのトラブルに悩まされているということはないため、まずは更年期が原因だと疑う前に、耳鼻科や神経内科などに相談することが大切です。
そこでメニエール病や前庭神経炎、良性発作性頭位回転性めまいなど、めまいを代表するような病気の可能性がないかしっかりと確認しましょう。
耳鼻科の病気でないことがはっきりとわかった上で、めまいが更年期によるものか疑うことができます。
3.更年期のめまい、その治療方法は
めまいの原因が更年期による可能性もある場合、産婦人科では主に次のような治療を行うことが多いです。
・漢方薬による治療
・更年期症状を軽減させるためのホルモン療法
これらは具体的にどのような治療なのか、紹介していきます。
3-1.漢方薬治療
漢方薬は更年期障害に有効なことも多く、その人の症状に合わせてさまざまな漢方薬が処方されます。
めまいに関しては「苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)」や「加味逍遥散(カミショウヨウサン)」といった薬が処方されます。
これらの漢方薬は、更年期症状におけるイライラを鎮めるといった作用があり、自律神経の乱れを整えることでめまいの症状改善にも期待ができます。
また、漢方薬は自然由来の薬なので、副作用が少ないというメリットもあります。
更年期障害に対してはホルモン補充療法が一般的ですが、こちらの治療方法では不正出血や吐き気といった副作用が起きるケースもあります。
そのような副作用が心配な場合は、はじめから医師に漢方薬治療をお願いするとよいでしょう。
https://wellmethod.jp/menopause_hot_flash/
3-2.ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法とは、更年期障害によって減少したエストロゲンを補充する治療方法です。
具体的には「飲み薬」と「貼り薬」があり、どちらも減少したエストロゲンを補充することで、ホットフラッシュといった更年期特有の症状を軽くしたり、自律神経の乱れを改善したりすることに期待ができます。
ホルモン補充療法の場合、直接めまいの症状を和らげる作用はありません。
しかしホルモン補充療法は更年期障害の治療のなかでは非常に効果が高く、これまで悩んでいた症状を改善してくれる可能性があります。
更年期におけるめまいは、自律神経の乱れが原因で起こる可能性もあり、ホルモン補充療法で更年期特有の症状を改善することにより、めまいの症状も改善する可能性があるのです。
https://wellmethod.jp/drtakao_int02/
4.めまいが起きたときの対策方法
実際にめまいが起きてしまったら「できるだけ安静にする」ことが大切です。
めまいは薬を飲んですぐに解決できるものではありません。可能であればその場で横になり、めまいが治まるのを待ちましょう。
また、日頃からめまいが起きないよう、規則正しい生活を送ることも大切です。
とくに「しっかりと睡眠を取る」「ストレスをためない」ことは、更年期症状の悪化を防ぎ、めまいを防止することにもつながります。
4-1.睡眠をしっかりとることが大切
睡眠と健康は密接した関係にあり、更年期においても例外ではありません。
質の良い睡眠を確保することは更年期症状の改善にも期待できます。
深い眠りにより更年期症状のトラブルが解決すれば、おのずとめまいの症状も改善されることがあるでしょう。
また、めまいは頭痛が原因で引き起こされることもあります。ホルモン療法をしてもめまいが改善されない人のなかには、昔から頭痛に悩んでいて、それが大本の原因である可能性もあるのです。
とくに片頭痛に悩んでいる場合は、アルコールやカフェインの摂取を控え、質の良い睡眠をとるように心がけましょう。そうすることで頭痛が改善され、結果的にめまいの症状を改善できることもあります。
▼【医師が解説】“良質な睡眠”をつくるために毎日やるべき習慣・やめるべき習慣
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4-2.ストレスをためない生活を心がける
「ストレスは万病の元」というように、めまいを改善するためにもストレスをためるのは良くありません。
しかしゆらぎ世代はストレスとの闘い世代でもあります。子育てや仕事のこと、夫との関係や介護問題など、日々いろいろなことに悩み、ストレスをゼロにすることはもはや不可能でしょう。
しかし、日々の生活のなかで次のようなことを取り入れれば、ストレスを軽減することにつながります。
・適度に運動する
・生活リズムを整える
・負担に感じているものをやめてみる
運動は更年期症状を改善するのに有効な手段です。
少なくとも週に2回、30分程度の運動からはじめてみましょう。ウォーキングなどの有酸素運動はリフレッシュとなり、外に出ることで考えがリセットされ、ストレス解消にもなります。
そして早寝早起きといった規則正しい生活習慣は、交感神経と副交感神経の働きを整え、良質な睡眠につながります。夜更かしを避けて毎日の体内時計を整えておけば、ストレスを感じにくい体を作ることもできるでしょう。
また、責任感が強い人が多いゆらぎ世代は、ときに何かをやめてみることも大切です。
たまには夕食作りをやめてみる、家事をがんばるのをやめてみる、いろいろと考えるのをやめてみるなど。
自分がやりたくないことをやめてみると、思った以上にストレスが軽減されることも多いのです。
5.めまいの原因を追求し、婦人科にも相談を
ゆらぎ世代の人のなかには、めまいで悩んでいる人も少なくありません。
ただ、めまいの原因は実にさまざまあり、更年期が原因のものもあれば、内耳神経の障害が原因のもの、ストレスが原因でめまいが生じることもあるでしょう。
「めまいの原因はこれだ」と自分で決めるのではなく、症状がある場合は医師に相談することが大切です。
耳鼻科でも改善がされない場合は婦人科にも相談し、原因の背景に更年期障害があるのか確認してみましょう。
その上で自分に合った治療を選択し、めまいの改善を図ることが大切です。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。