産婦人科専門医であり、婦人科スポーツドクター、そして、ヨガの指導者など、マルチに活躍しながら、女性の心と体、人生に役立つ情報をパワフルに発信なさっている「イーク表参道」副院長の高尾美穂先生にお話を伺いました。

第1回目は、「エイジング」への向き合い方です。
聞き手は、『WELLMETHOD』監修医で、予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

1.エイジングとの向き合い方

高尾美穂先生と桐村里紗先生
▲(写真右から)高尾美穂先生、桐村里紗先生

 

桐村:『WELLMETHOD』では、年齢と戦う「アンチエイジング」ではなく、年齢を肯定しながら自分と向き合い年齢を重ねていく「ウェルエイジング」を提案しています。

『WELLMETHOD』の読者世代は、主に40代女性ですが、徐々に月経も乱れ、更年期が近づき、そろそろ閉経かな?とも不安になり、女性ホルモンの揺らぎと共に、自分の「女性性」が段々と揺らぎ、自信を失いがちになってくるかと思います。

普段、女性ならではのエイジングについて、向き合い方など、どのようにアドバイスなさっていますか?

高尾先生:年齢があがってきたからかも、という不安な気持ちに対して、「歳ですか?」って聞かれたら、「はい、歳ですね!」って答えるタイプなんです(笑)。一瞬気を落とされる方もいらっしゃいますが、気を取り直してからだに起きている変化について正しく理解して頂くことが大切だと考えています。

患者さんからのよくある具体的な訴えとして「生理周期が乱れている」「生理の量が少なくなってくる」などありますが、不安というよりも加齢性の変化だということを否定して欲しい気持ちが見え隠れする質問が多いんですよね。

桐村:これは、日常的によくある症状ですね。

高尾先生:まず生理の量について、2つの女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロンが子宮内膜を妊娠に備えて準備し、妊娠成立しないと剥がれて出ていく。これが「月経=生理」です。

ですから、分泌される女性ホルモンの量が減っていけば、当然、剥がれ落ちる子宮内膜は少なくなるわけですよね。従って、出ていく月経血量は減りますね。
それが、年齢が高くなってきた、それに伴って、卵巣機能が落ちてきたとするのが正しい理解でしょう、とお伝えしています。

桐村:なるほど、要するに、この世代の「生理の乱れ」「量のばらつき」は、年齢に伴った卵巣機能の低下と考えるべきなのですね。

高尾先生:はい。でも、それと逆相関して、40代以降は子宮内膜症や子宮筋腫のある人が増えるので、出血量が減ってきていることは、ある意味、「自然な変化」と捉えられますね。

逆に、月経量が増えることは、子宮内膜症や子宮筋腫など病気のサインの可能性もあるため、「月経量が落ち着いてきているのであれば、自然な変化でよかったじゃないの」といったとらえ方をしてもよいのではないかと思っています。

桐村:月経の量が減ってきても、これは、病気ではない自然な変化だとポジティブに捉えることもできるということですね。

2.更年期は「慣れ」のための10年間

高尾美穂先生

高尾先生:もう1つ言えるのが、「更年期」という時期の定義です。
日本人の閉経の中央値は50.5歳です。平均の閉経時期は、45~55歳といえます。
更年期は、閉経の前後5年間ずつの合計10年間です。

閉経の5年前からが更年期のスタートなわけですが、閉経を迎えないと、何歳から更年期が始まっていたかは分からないというわけです。
例えば、47歳で閉経した人は、42歳から更年期がスタートしていたということになります。

そう考えたら、40代に入ったら、「自分はもう体が変化しつつある年齢に差し掛かっている」ということを念頭に置きながら、生活の中で何か困っていることはないか、という眺め方をしてもらうことがいいのではないかと思っています。

「更年期」の意味っていうのは、「エストロゲンがない状態に慣れていこうね、という10年間」だと捉えています。

桐村:これまでとは、圧倒的に変わってしまうことへの「慣れ」のための準備期間なのですね。

3.頑張れた分のパフォーマンスが発揮できる

男女がトレーニングする様子

高尾先生:そうですね。なので、更年期をネガティブに捉えるよりは、ホルモンによって毎月毎月揺さぶられていた頃から、更年期を通り超えると、すごくフラットな、頑張れば頑張っただけの効果が得られる時期が来るということをお伝えしたいと思っています。

桐村:つまり、女性ホルモンの揺らぎに惑わされず、ベースが一定の整った状態で、自分のパフォーマンスが発揮できるということですか?

高尾先生:そうですね。男性というのは、非常にシンプルで、トレーニングをするとトレーニングをしただけの効果が毎回得られるんですよ。1足す1が、ちゃんと2になるような。

でも、女性の場合は、どの生理周期にトレーニングしたかによって、全く成果が違ってしまうんですね。いわば、このブラックボックスの部分が生理周期になっていますが、そう言った状況からは、解放されるという前向きな考え方もできるんじゃなかろうかと。

4.寿命の延びに伴う女性の役割の変化

シニア夫婦

高尾先生:たまに「更年期が終われば元気になりますか?」という質問を頂いたりします。
本当に、その通りとも言えると思います。

桐村:その通りと!

高尾先生:よく「ソフトランディング」という言葉が使われますが、更年期というのは、エストロゲンの値がアップダウンしながら、平均が下がっていくので、人によっては、エストロゲンの値が40代でもかなり高く出る場合もあります。
そんな乱高下をしながら、平均値が徐々に下がっていき、最終的には、男性よりもエストロゲンの値が低い状態で安定します。

これは、卵巣の働きとしては仕方のないことです。
なぜなら、卵巣は期間限定でしか働かない臓器として準備されているので。

桐村:要するに、生殖して子孫を繁栄するためですものね。

高尾先生:それが、なぜこんなにも問題になるか、というと飛躍的な寿命の延長が最大の理由です。

寿命がいつ頃から延びてきたかというと、私たちのおばあちゃん世代の寿命って、まだ70代なんですよ。
つまり、今、100歳前後まで、すごく長生きできてしまっている人が、4、50代の頃は、人生70年の想定で生きていればよかったはずなんですね。
ところが、医療の進歩や衛生環境の整備によって、思いのほか長生きできてしまった人が多くいるはずです。

今、女性の平均寿命は87歳ですから、私たちは、少なくとも、87歳までは生きられる想定ですし、テロメア※を長くするなど医療技術が発達するともっと生きなければならない時代が来てしまう可能性すらあるわけです。

(※「テロメア」とは、「細胞の寿命」を決める構造です。細胞分裂のたびに、テロメアは短くなり、ある一定以上の短さになると、その細胞は寿命を迎えて死にます。
アメリカのベンチャー企業の女性CEOが、テロメアのすり減りを防ぐ遺伝子治療を開発し、自ら実験したところ「20歳寿命が若返った」と発表し、話題になっています。)

高尾先生:更年期と呼ばれるエストロゲンが減っていく時期に、どうやってソフトランディングするか。場合によっては、何かを足すことでどんなメリットがあるかをあらかじめ知っておくことが大事だと考えています。

桐村:寿命が延びたために、人生の半分は、月経がない、つまり、エストロゲンがない状態で生きる必要が出てきたために、そのための心づもりを準備する期間として、更年期を捉えたら良いということですね。

高尾先生:閉経を迎えてから、まだ人生が半分もあるということです。
だからこそ、私たちの「役割」についても考える必要があります。つまり、生殖能力を持っていた年代と、生殖能力を失った年代とで、役割が変わるわけです。

野生動物では、生殖能力を持たないで生き続けることはほとんどありません。
自分の種を残していくということが動物にとっての生きる意味なので、生殖能力を持ったまま寿命を迎えます。

5.閉経後は、次の世代のための社会づくりを

高尾美穂先生と桐村里紗先生

桐村:閉経を動物的に捉えてしまうと「生殖能力がない=生きる意味がない」となってしまい、ネガティブに捉えがちになります。

高尾先生:でも、生殖能力を持っていない生き物もごく僅かながらいるんですよね。

例えば、女王蜂の周りの働き蜂です。彼らは、生殖能力を持っていないわけです。

じゃあ、彼らが何をしているの?といえば、女王蜂が良い形で子孫を残し、子育てをするための環境づくりをしているんですね。

それと同じように、私たちの閉経後は、次の世代が良い形で子供を産み育てる社会を作る役割があるんじゃないかと思っています。それが、私たちが長生きできる意味になるんじゃないでしょうか。

桐村:つまり、役割が変化していく。それを、ネガティブに捉える必要はないということですね。

高尾先生:そうです。
戦前までというのは、閉経前後で寿命は終わっていた人が多かったわけです。
そのくらいの寿命が、動物としては理に適った状況だったわけですよね。

ただ、地球上で人間が一番知能が発達したからこそ長生きができるようになり、今、日本では、人が長生きできる環境が作れているということも言えるわけです。
しかし、また時代や環境が変わったら、寿命も変化していくでしょうし。

桐村:「女性とは、こうあるべきだ」などという一つの固定概念に捉われず、時代や状況によって、どんどん役割も変わっていって良いんだということですね。

高尾先生:そうですね。あえて、悲観的になる必要はないんじゃないかと思います。
「生理がないから」「子供を産めないから」というのは、女性としての生きる上での全体のごく一部の役割でしかないですよね。
他にも、できることはたくさんありますよね。

桐村:ありがとうございます。
「多様性」がキーワードになっている今、女性としての生き方や役割はもっと多様で、自由に捉えて良いのだなということが改めてわかりました。

次回は、女性ホルモンを補う治療としてのホルモン補充療法や、ピルについてのお話をお聞きします。

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医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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