つらい目の渇き…「ドライアイ」の治療法と8つの予防法
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
みなさまは「画面の見過ぎで目が乾く」と感じたことはありますか。
新型コロナの影響で、以前よりも増えたおうち時間。
代表的な過ごし方といえば、映画を見る・TVを見る・ゲームをする・パソコンをする…などがありますよね。
どの時間も楽しく、熱中しやすいものばかりですが、みなさまは「画面の見過ぎで目が痛い…」「長時間パソコンをしていたら目が乾いた」「ゲームをしすぎた次の日は目がゴロゴロする」といったことを経験したことはないでしょうか。
筆者自身も、おうち時間を利用して、いつもよりも多く自宅で映画を見たりするようになりました。
しかし、ついつい夢中になると、目がゴロゴロしたり乾燥したり…と感じることがあります。
実はこれらはドライアイの症状のようです。
「ドライアイ」という言葉は、耳にしたことがあるかもしれません。
ドライアイとは、目を酷使した際に起こる症状で、スマートフォンやパソコンが普及した現代人に起こりやすい病気の一つでもあります。
「ドライアイは視力低下につながるのだろうか?」
「ドライアイにおすすめの食べ物やサプリはあるのだろうか?」
など、気になることもありますよね。
目は生涯使う大切な体の一部です。
ドライアイで目を酷使させないためにも、日ごろの予防策をしっかり行い、目を大切にしていきましょう。
今回は、ドライアイの原因や簡単なセルフチェック、治療法やご自身でもできるセルフケア、予防法についてご紹介したいと思います。
目次
1.ドライアイとは
ドライアイとは、目の表面の潤いが不足し、目の表面が肌荒れを起こしているような状態です。
目の乾燥、ゴロゴロとした異物感、充血、涙目、かすみ目、視力の低下などあらゆる目の症状が生じます。
また、眼精疲労がある人はドライアイを合併している可能性があります。
2.ドライアイの原因
ドライアイは「涙の分泌が減少すること」や「涙の成分に異常が起こること」が原因で起こります。
また、年齢やホルモンにも関係するといわれています。
2-1.涙の分泌が減少する
涙の分泌が減少する理由として、生活習慣や環境の変化が影響します。代表的な理由を以下にご紹介します。
・コンピューターのモニター作業によりまばたきが極端に減少する
・エアコンが動作している乾燥した室内に長時間いる
・コンタクトレンズの使用
・季節による空気の乾燥
・ストレスが持続している
2-2.涙の成分に異常が起こる
ドライアイは涙の成分に異常が起こることでも起こります。
1.涙の成分「ムチン」の減少
「ムチン」とは、涙を構成する糖タンパクであり、水分を目の表面に留まらせる、水分を目の表面に均一に行き渡らせるなどの働きを担っています。
このムチンと水のバランスがとれているものが“質の良い涙”と呼ばれるものであり、このムチンの量が減ることで、涙が不安定になります。
2.マイボーム腺の機能不全
マイボーム腺とは、目の表面を覆う涙の一番上層にある油層の形成に重要な役割を果たします。
油層とは、いわゆる潤いを保つ役割をもつ部分のことで、涙を蒸発しにくくさせ、安定させる効果があります。
このマイボーム腺が機能不全を起こすことで、うまく油層が作れなくなり、涙は不安定になります。
2-3.ドライアイと年齢やホルモンの関係性
ドライアイは、年齢やホルモンと密接な関係があります。
とくに歳を重ねるにつれ、涙の分泌量は減少傾向にあるといわれており、ドライアイは悪化しやすいといわれています。
また、マイボーム腺の油の分泌も、性ホルモンに依存しているといわれています。
そのため、更年期を迎えた後の女性は明らかに悪化傾向にあるといわれています。
3.ドライアイの症状
ドライアイの症状は人によりそれぞれです。
単なる一時的な不快感や不調とドライアイとの区別を自分で判断することはできません。
しかし下記の「ドライアイの主な症状10項目」にいくつか当てはまる場合、ドライアイの可能性があります。
心当たりのある方は一度病院を受診し、眼科医に診断・治療をしてもらいましょう。
3-1.ドライアイの症状12項目
(1)目が乾いた感じになる
(2)目ヤニがでる
(3)目が重たい感じがする
(4)目がゴロゴロとする
(5)目に不快感がある
(6)視界がかすむ
(7)目がかゆい
(8)目が痛い
(9)光をまぶしく感じる
(10)目が充血しやすい
(11)10秒以上まばたきせず目を開けられない
(12)涙がよくでる
3-2.ドライアイを放っておくとどうなるの
重症のドライアイでは黒目(角膜)が傷ついて濁り、光がとおりにくくなるため、視力が低下したり、傷から細菌が侵入して感染症を起こすこともあります。
さらにコンタクトレンズを使用している人は症状を悪化させることがあります。
また、ドライアイの原因には、シェーグレン症候群という全身性の自己免疫疾患が原因である場合もあります。全身の臓器の障害や合併症を伴う場合もありますので、症状が持続する場合は適切な診断を受けるようにしましょう。
4.ドライアイの検査
ドライアイの診断するためには、いくつかの検査が行われます。
4-1.視力検査
ドライアイ以外の目の疾患が隠れていないか、はじめに行われる検査です。
4-2.顕微鏡検査
目の表面にできている傷の程度を確認します。フルオレセインという試薬を点眼し、細隙灯顕微鏡で染色部を観察しながら傷の有無や程度をチェックします。
4-3.BUT検査
涙の質を調べる検査です。涙が多く出ても、涙の質が悪いと目の表面がすぐに乾くことがあります。
目を開いてから目の表面の涙の膜が破壊されるまでの時間(BreakUpTime:BUT)を図ります。
BUTが5秒以下の場合、ドライアイが疑われます。
4-4.シルマー検査
涙の量を調べる検査です。
メモリのついた専用の試験紙を下まぶたの端に5分間挿入します。試験紙が涙で濡れた長さで涙の量を測ります。この検査で涙の量が5mm以下と少ないとドライアイが疑われます。
5.ドライアイの治療法
ドライアイの治療は症状や状態によって治療法がさまざまあります。
一般的に症状が軽いドライアイの場合は、涙を補充する目的で人工涙液や潤いを保つための点眼薬などが使用されます。
最近では、外から潤いを補給するだけでなく、内側からのムチンの産生を高め粘膜を修復するタイプの点眼もあります。
また、点眼薬では改善しない、重症のドライアイ患者には手術が適応となるケースもあります。
これら治療法は、ドライアイの症状や状態によって異なります。
まずは自分がどの程度のドライアイであるかを眼科医に診断してもらい、適切な治療を受けましょう。
5-1.薬物治療
ドライアイの治療には点眼薬を使用します。
これまでドライアイの点眼治療は、人工涙液やヒアルロン酸など外から水分を補う(保湿する)ことが主流でした。
しかし近年では、目の中から水分やムチンの分泌を促す「体の中から治す」ドライアイ治療薬が出てきました。
これらの点眼薬の登場により、それぞれのドライアイの涙のタイプに合った目薬を使い分けて治療します。
点眼薬には、市販の目薬などもありますが、かえって病状を悪化させてしまうことがあるので必ず眼科医に相談しましょう。
5-2.手術
ドライアイの治療では、涙の排水口である涙点を閉じることで涙の流出を抑え、目の表面の涙を保つ手術があります。
方法としては、上下の涙点にシリコン製の小さなプラグを差し込む方法や、涙点を縫い合わせる方法(涙点閉鎖術)があります。
6.生活習慣からの予防しよう! ドライアイにならないために
6-1.まばたきを意識的に行う、休憩をしっかりとる
テレビやパソコンの画面を見続けていると、自然とまばたきの回数が減少し、ドライアイになりやすくなります。
パソコンなどモニター画面を見続ける際は、まばたきを意識的に回数を増やす、加湿器を近くに置き湿度を上げることも効果的です。
また、画面を目よりも下の位置に置き、エアコンの風が直接目に当たらないように座りましょう。
テクノストレスによって、交感神経が優位になり涙液の分泌が減少する可能性もあります。
適度な休憩がもっとも大切で、一般的には60分間モニター画面を見続ける場合、10~14分は休憩を取りましょう。
十分な休憩をとっても症状が治まらない人は、目の表面が傷ついている可能性もあるため、眼科医に相談しましょう。
6-2.コンタクトレンズを外して目を休ませる
涙はコンタクトレンズと黒目(角膜)の間で潤滑油の役割として目を保護していますが、涙の量が減った状態であると、黒目を傷つけ、細菌に対する抵抗力が下がり、重症の角膜感染症を起こすことにもなりかねません。
日中コンタクトレンズをつけている人は、夜間や週末は装用を減らして目を休ませてあげることも大切です。
6-3.目の健康におすすめ食材
目の健康を保つためには、目の生理機能を維持するために必要な基本的な栄養素が不足しないようにすることも必要です。
1.青魚
青魚にはDHAやEPAが豊富に含まれており、血流を良くする働きや網膜や視神経を柔軟に保つ働きがあります。
2.ナッツ類
ナッツには目の粘膜の健康を維持したり、視神経の働きを維持する、ビタミンB群や血行促進作用のあるビタミンEが豊富に含まれています。
3.野菜、果物類
小松菜、ホウレン草、ニンジンなどの緑黄色野菜には、角膜や網膜の新陳代謝を促し、視力の維持に欠かせないプロビタミンAが豊富に含まれています。
また、柑橘系の果物、赤ピーマン、芽キャベツ、ブロッコリー、じゃがいも、さつまいもなどに多く含まれるビタミンCには抗酸化作用や目の粘膜保護の働きがありおすすめです。
4.亜鉛を含む食材
亜鉛は粘膜の維持に必要なコラーゲンの合成に必要で、体の新陳代謝をサポートする働きがあります。
そのため、牡蠣など貝類、鶏・豚レバー、牛肉、卵黄など意識すると良いでしょう。
5.カラフルな食材
紅鮭、いくら、エビやカニの殻に含まれる天然の赤い色素であるアスタキサンチン。とうもろこしなど黄色の野菜に含まれるゼアキサンチン。ナスやブルーベリー、黒豆など紫色の野菜に含まれるアントシアニン。これらの色の成分は、抗酸化力が高く、眼精疲労や視力低下の予防、紫外線による目のダメージを軽減する効果があるといわれています。
6-4.目の周りの血行促進マッサージでドライアイを予防しましょう
ドライアイの予防として、目の周りをマッサージし、血行を促すことも効果的です。
オイルやクリームを指先や目の周りに塗って滑りを良くした後、中指と薬指を合わせた指先で、眼球を囲む骨の縁に沿って、一周滑らせるだけでも眼球全体のツボを押さえることができます。
時間があれば、この眼球周辺のマッサージ(1周)を1セットとして毎日10セット、20セットと繰り返しましょう。
しっかりと目の周りのコリをほぐして血行を良くすることで、ドライアイや眼精疲労の改善が期待できます。
また、40~45℃位のホットタオルで10分くらい目を温めてマッサージすると、より効果的です。
7.生活の見直しでドライアイを改善しましょう
ドライアイは環境の変化など気が付かないうちに、目を酷使するなどして悪化させていることがあります。
とくにパソコンにスマートフォン、なんでもデジタル化される時代に生きる私たちは普段の生活でもドライアイになりやすい時代に生きているともいえます。
筆者自身も、仕事でパソコンを長期に使用することがあり、気付くと目がとても乾いている…ということが過去にあったのですが、いまではパソコンに向かう時間を決めて、定期的に休憩やまばたきを意識的にするように心がけています。
普段、何気なく使っている目だからこそ、大切にしていきたいものですね。
みなさまも生活や環境を見直し、目に優しい生活を意識してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。