こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

コンビニやスーパー、ドラッグストアに行くと口臭予防に関するタブレットやガム、その他のさまざまな商品が販売されています。

愛用されている方も多いのではないでしょうか?

筆者が学生の頃は「なんで年配の人は口臭がするのだろう」と思っていたことがあります。

40代になったいま、話をしている相手の方に口臭があると「自分は大丈夫かな?」と気になるようになりました。

口臭は自分で気づくことが難しいため、知らない間に相手を不快にさせていることもあります。

また口臭以外にも口の中のねばつきや歯周病など、若いときには気にもならなかったトラブルが気になることも少なくありません。

お口のトラブルが気になって、人と会うことを避けたり話をしないなんてことにならないように、いろいろ調べてみました。

調べた結果、私の悩みは「ドライマウス」からきているのだと気がつきました。

今回は、多くの女性が悩むといわれるドライマウスについて詳しくご紹介します。

▼口臭編|医師が教える家族の「ニオイ問題」傾向と対策

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口臭編|医師が教える家族の「ニオイ問題」傾向と対策

1.ドライマウスとは?

悩みの口

ドライマウスとは、唾液の分泌が減少、または分泌されなくなることで口の中が乾燥した状態のことをいいます。口腔乾燥症とも呼ばれています。

ドライマウスの症状を訴える方は若い年代では少ないですが、50歳以上で多くみられており、日本では口の乾きを感じている人が数百万~数千人いると推測されています。

近年増え続けている現代病の一つともいわれており、とくに女性に多い傾向があります。

しかし、ドライマウスは「ただ口が乾くだけ」と軽く見られがちですが、放置しておくと健康にとってさまざまな悪影響を及ぼす「万病の元」となることもあるので、注意が必要です。

2.ドライマウスの症状とは?

ドライマウスに気づく女性

ドライマウスの症状は、自分で認識できる「自覚症状」と医療者側からみた「他覚症状」に分けることができます。

それぞれの症状を詳しくみていきましょう。

2-1.自覚症状

口の中が乾くことが原因で様々な口腔関連のトラブルが発生します。

・口が乾く
・口がねばつく
・口を潤す目的で水をよく飲むようになった
・話しづらい
・食事がしづらい
・食事がおいしくない、味覚が変化した
・舌が痛い、ヒリヒリする
・口臭が気になる
・寝ていると口がカラカラに乾く
・入れ歯が合わなくなる
・入れ歯で口の中が傷つきやすい
・虫歯や歯周病になりやすい・悪化した

2-2.他覚症状

・明らかに口の中が乾燥している
・大唾液腺の開口部から唾液が流出しない
・唾液が泡状になったり、ねばつきがある
・舌表面の乳頭が消失し、つるっとしている
・舌表面がひび割れている
・口腔内カンジダ症を繰り返す

これらの症状以外にも、耳下腺や顎下腺の場所が腫れていたり、食欲が低下したりすることもあります。

口の乾きだけではなく、いろいろな症状が現れるのがドライマウスの特徴でもあります。

3.ドライマウスの原因は?

口に悩む女性

ドライマウスは年齢を重ねると症状が現れやすいといわれていることから「加齢現象」の一つとして、諦めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、ドライマウスが発症する原因はさまざまであり、いくつかの原因が重なっていることも多く、明らかな原因がわからないこともあります。

代表的な原因について一緒にみていきましょう。

3-1.薬や病気によるもの

一部の風邪薬や抗ヒスタミン剤、血圧降下剤、抗うつ剤は、薬の副作用として口が乾くことがあります。花粉症の際に処方される薬の中にも、唾液が出にくくなる副作用があることから同じような症状が現れることもあるのです。

とくに女性の場合、更年期障害に関連した抑うつ症状に対して、抗うつ剤を処方されるケースがあるため、ドライマウスに悩む女性も多いのです。

ドライマウスの症状が出現する代表的な病気には、自己免疫疾患の一種であるシューグレン症候群や唾液腺の病気があります。糖尿病や心疾患を患った場合にも、その症状の一つとしてドライマウスになることがあります。

3-2.身体的な変化によるもの

ドライマウスは身体的な変化によって症状が現れる場合があります。例えば、加齢によって唾液の分泌機能が低下することで起こる口の乾きなどです。

年齢と共に全身の様々な細胞は、萎縮したり、機能低下を起こします。唾液を分泌する細胞が機能低下することで、加齢と共に唾液分泌は低下しやすくなります。

また筋力の低下もドライマスの原因です。唾液は噛むという刺激が脳に伝わることによって分泌されるのですが、噛む力が衰えることで唾液が出にくくなるのです。

同様に、会話の機会が減って、口を動かす頻度が減っても、唾液分泌は低下します。

3-3.生活習慣によるもの

コーヒー

日常的にしていることが、ドライマウスの原因となっている場合もあります。口呼吸をしている場合、口の中が乾きやすくなります。

また、飲酒や喫煙もドライマウスの原因の一つと考えられます。アルコールには利尿作用があるため、十分な水分補給を同時に行わないと脱水傾向となり、唾液分泌量が低下します。

喫煙やカフェイン入りの飲料、ストレスは自律神経のうち、血管を縮める交感神経を刺激するため、唾液の分泌が低下してしまうのです。

唾液は、食事に関連した機能のため、リラックスして副交感神経モードになっている際に十分に分泌されるものです。

4.ドライマウスをそのままにしておくとどうなるの?

ドドライマウスを気にする女性

ドライマウスを「ちょっと口の中が乾燥しているだけ」と考える方もいらっしゃるのですが、実はドライマウスをそのままにしておくと、さまざまなトラブルを引き起こしてしまいます。

ドライマウスは唾液の分泌が低下している状態です。唾液には、口腔内の汚れを洗い流して、衛生的に保つ作用があります。唾液には、口腔内の細菌を抑制する抗菌作用もあるため、唾液の分泌が少ないと、口腔内の衛生を維持することができなくなり、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。

口腔内に汚れが溜まりやすくなることで、口臭が悪化する可能性もあります。

その他にも唾液には、味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じる組織に味物質を届ける役割があるため、唾液が少なくなると食べ物の味がわからなくなる味覚障害を引き起こすことがあります。

また口腔内が乾燥することで、食べ物が飲み込みにくくなります。これを嚥下障害(えんげしょうがい)といいます。嚥下障害が続くと自分で食事を満足に摂取することができなくなったり、飲み込んだものが食道ではなく気管に入ってしまい、誤嚥性肺炎を起こすリスクが高まります。

5.自分でできる対処法

ドライマウスを改善するために、自分でできる対処法をみていきましょう。

5-1.日常生活

・喫煙・アルコール・カフェインを控えめにする
・噛み応えのある食材を食事に取り入れ、よく噛んで食べる
・鼻呼吸を心がける
・ストレスを溜めすぎないように、リラックスする時間をとる
・規則正しい健康的な生活を心がける
・部屋の中が乾燥しすぎないようにする
・なるべく喋ったり、歌ったりして口、顔の筋肉を使う 

5-2.ドライマウス対策グッズを使う

ドラッグストアやコンビニで購入できるドライマウス対策グッズもあります。

1.ガム

ガム

ガムを噛むことで咬筋(噛む筋肉)が動くため、唾液腺が刺激され唾液が分泌されます。「ガム法」と言って歯科医もすすめる方法です。これだけでもドライマウスが改善する人もいます。

おすすめのガムは、虫歯予防効果の高いキシリトールガムです。ドライマウス対策と同時に虫歯予防のより高い効果を求める場合は、歯科医院で売られている甘味料のうちキシリトールの配合率が100%のガムがおすすめです。

インターネットや東急ハンズなどのデンタルケアコーナーでも販売されています。

砂糖が入ったガムは虫歯の原因になってしまう恐れがあるので避けましょう。

2.保湿ケアアイテム

保湿スプレー

ドライマウス対策として、お口の保湿ケアグッズを使うこともおすすめです。

スプレータイプ、ジェルタイプ、マウスウォッシュタイプなどがあります。

スプレータイプは外出するとき、ジェルタイプは就寝前にしっかりと保湿したいとき、マウスウォッシュは歯磨きのあとに使うなど、それぞれのシーンで使い分けるとよいでしょう。

5-3.唾液腺をマッサージする

唾液の分泌を促すためには、唾液腺マッサージが効果的です。強く押さずにやさしくマッサージしましょう。

〇耳下腺(耳の下の部分

上の奥歯のあたりを後ろから前へ回すようにマッサージします。10回くらい行いましょう。

唾液腺をマッサージする女性

〇顎下腺(顎のエラ部分から約3cm内側)

耳の下から顎の下あたりを指で押すようにマッサージします。5回くらい行いましょう。

唾液腺をマッサージする女性

〇舌下腺(舌の付け根の真下の顎の部分)

顎の下を親指で押すようにマッサージします。5回くらい行いましょう。

唾液腺をマッサージする女性

5-4.ドライマウスを改善する食べ物

唾液がよく出る食べ物というと、酸っぱいものがあります。

しかし、酸っぱいものの摂り過ぎは、歯を溶かす「酸蝕症」を引き起こしてしまうことがあるので、注意が必要です。

酸っぱいもの以外にも唾液を出してくれる食べ物をご紹介します。

・するめ
・ゴボウなど繊維質の野菜
・昆布(うま味成分が唾液分泌を促進)
・納豆(ポリグルタミン酸に唾液分泌促進作用あり)

6.ドライマウスが改善しない場合は、病院へ

歯科

自分でできる対処法を試してみても、ドライマウスが改善しない場合は、一度歯科医院に相談してみましょう。

ドライマウスの診断は、その原因が何かを探すことから始まります。問診や口腔内の乾燥状態、炎症の有無を確認します。その後、唾液分泌量が正常であるかを測定します。

歯科で行う治療としては、唾液腺のマッサージやガム(歯茎)マッサージ、口の筋肉や舌の運動の指導・練習などです。

歯科で治療を受けても治らない場合は、他の診療科と連携し治療を行うこともあります。

例えば鼻炎が原因であれば耳鼻科的な治療が必要になります。

全身的な病気が原因の場合は、その治療を進めなければいけません。

また毎日服用している薬が原因の可能性が高い場合には、投薬している医師に相談し、服薬調整が必要な場合もあります。

難病指定されている自己免疫疾患のシェーグレン症候群が疑われる場合は、血液検査や唾液線の画像検査、唾液を分泌する組織の検査や眼科での検査が行われます。

7.ドライマウスを予防・改善し、楽しい毎日を!

40歳を過ぎると、仕事にも責任が出てきたり、子どもの進学や親の介護などで毎日がとても慌ただしく、自分の心や体と向き合う時間がとれない方も多いと思います。

しかし、毎日ほんの数分でも自分の心と体の声に耳を傾けてみましょう。

ドライマウスと聞くとすぐにお口の中だけのことを想像してしまいがちですが、心と体の健康、生活習慣などとも影響し合っています。

お口の中が不快だと、気分もすっきりしませんよね。

気分が落ち込み無理を重ねていくことで、心や体は悲鳴をあげてしまいます。

忙しい毎日を過ごすなかで、つい自分のことを後回しにしていませんか?

これからの人生楽しく、そして自分らしく過ごしていくためにも、体からのSOSをキャッチして、笑顔あふれる毎日を送りましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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