皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

さて、我慢の冬がやってきましたね。
今年はお正月休みも長くなりそうですし、外出せずにお家で過ごす時間が増えると思います。

家族との時間が増えれば増えるほど、イライラがつのっている人も多いと思います。
毎日ケンカしているという声や、ガマンできずに爆発しちゃったという声も。

一方で、家族の時間が増えてとっても嬉しいと考えている人もいます。
ラブラブ度が増したり、お互いの新しい発見ができたり、とても充実しているという人も。
この違いって何なのでしょう?

ストレスは免疫の大敵ですから、この問題を解決しないわけにはいきません。

1.こんなセリフが口をついたら要注意

家族の喧嘩

まず、こんなセリフを言っている人は要注意だと思ってください。

「あなたのためにやってあげてるんだから」「あなたのために言ってるのよ」

これって、いかにも相手を思いやっている風のセリフです。
こう言っているとき、
「どうして、私はあなたのためにこんなに尽くしてあげているし、あなたの幸せや安心のために考えてあげているのに、どうしてわかってくれないの!?」
そんな怒りが沸いていると思います。

でも、相手から返ってくる言葉の典型は、

「誰も頼んでない!」「うるさいなぁ、別にこっちの勝手でしょ?」「好きにさせてよ!」

そんなところではないでしょうか。
それが、夫婦間であれ、子供であれ、同じような言葉が返ってくると思います。

そうなのです、相手は、頼んでない。
つまり、それを望んでいない。

望んでいないのに、「あなたのために」と言いながら、自分の考えや価値観を押し付けている。
つまり、残念ながらこれは、思いやりと見せかけたエゴなのです!

そんなまさか、私ほど相手のことを思いやっている人間はいない!
そう反発されると思います。

私自身も、「あなたのために」を連発し、それが相手のためと思い込んでいた人間です。
でも、結果として、相手に受け入れられない「あなたのために」はエゴと見破られて、相手の心は離れていきます。

2.例えばこんなシーンに注意

2-1.勝手に机や部屋を片付ける

散らかった部屋

散らかし放題の机や棚、部屋を片付けてあげたのに、「なんで勝手に片付けたんだ!」とむしろ激怒される。

相手にとっては、相手の秩序や優先順位、好き嫌いがあって、そのルールに則って、こちらから見れば「カオス」に見える状態を保っていたはずです。

だから、断りなく片付けられるのは、テリトリーを侵されることになるので、とても不愉快です。
自分にとって価値のないものでも、相手にとってはとても価値があるものかも知れません。

2-2.家事の方法に口を出す

家事の方法に口を出すのも、領海侵犯です。

これは、普段家事をしない旦那様が、家にいる時間が長いからといって急に妻の家事を手伝い出した際に発生しがちです。

普段、仕事をしながらも家事をこなす女性は、とにかく時間がない中でマルチタスクを発揮して同時進行で色々やっています。
一つ一つにそんなに時間をかけて細かく丁寧にやる暇はありません(もちろん、そうではない完璧な方もいらっしゃるでしょうが!)

男性は結構凝り性な人が多いので、急に、料理や掃除など、自分が比較的得意とする家事を思い立ったようにやり始めたかと思えば、めちゃくちゃ時間をかけてこれでもかというほどに凝りに凝って作業をしがちです。

普段のペースを乱されることは、妻には邪魔である上に、「なんでもっと丁寧にやらないんだ」「こまめにやらずに手抜きしている」などと言われた日には、激怒します。

2-3.仕事や進路への良かれと思ったアドバイス

進路に悩む女子高生

相手に失敗して欲しくない、危険な目にあって欲しくない、いつも幸せであって欲しい!と願うのは、もちろん愛情ではありますが、それによって相手の経験を奪い自分の考える安全圏にいて欲しいと願うのは、エゴです。

相手が何か冒険したいな、経験してみたいな、チャレンジしたいな!と考えて、こちらからみるとと「失敗しそう」「リスクがあるな」ということに手を出そうとしているとき、どうしますか?

あまりにも無謀であったり、法を犯すようなことはもちろん、意志を持って止めた方が良いでしょうが、そうではない場合、それを止めたい理由は、自分の考える安全圏を相手が出ようとしていることに対する不安です。

自分の安全圏の中で目に届くところにいて欲しいという自分の安心が脅かされるために、それを止めようとします。
「あなたが失敗しないために」という枕詞をつけたとしても、相手の経験を奪うことになります。

失敗は、悪いことではありません。たとえ失敗しても、そこから学ぶことができれば、大きく成長することができます。
本当に信頼し合える家族になるためには、失敗ごと相手を受け入れ、人間として信頼する信頼する度量を持つことではないでしょうか。

3.イラッとするケンカの根本原因

そもそも、イラッとする、ケンカをする根本の原因は、相手が自分の思い通りにならないからです。
思い通りというのは、自分が「正解」「OK」「好き」「良い」と考える範囲の中にいるということです。

人間は無意識に、自分が正しいと思う価値観というモノサシの範囲で、相手にも行動して欲しいと願っているのです。
そして、厄介なことに潜在的に「自分の物差しは、絶対に正しい」と信じ込んでおり、疑うことがありません。

「あなたのために」という際にも、自分のモノサシの範囲で「良い」と思う価値観をこちらから押し付けているように相手から感じられてしまいます。
相手はそのモノサシの外で行動したいから、反発心が生まれて、ケンカになってしまうのですね。

「価値観の不一致」というやつです。
「致命的な問題」として、これが離婚原因になることは多いと思います。
有名人の離婚記者会見でも、よく出てきますね。

離婚

4.ケンカしないための5つの心構え

さて、価値観の不一致と分かっても、イラッとするのは当然です。
でも、それをケンカに発展させないためには、それを超える心構えが大切です。

その1:価値観は一致しなくて当然

そもそも、価値観など一致する方がラッキーくらいに考えるべきです。

その人の価値観は、生まれ育った家族の家庭環境や親の価値観、体験や経験などによって培われています。
同じ家に生まれた兄弟であっても「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」と言われて育ったか、「お兄ちゃんを見習ってもっとしっかりしなさい」と言われて育ったかによって、全く価値観は違ってしまいます。

それなのに、夫婦であれば、全くの他人が同じ屋根の下に暮らすのですから、たまたま部分的に価値観があったとしても、そこからはみ出た部分は全く真逆の価値観であると思いましょう。

子供は、親の影響を大いに受けて育ちますから、自分の価値観を受け継いでいるとは言え、自分の知らないところで様々な経験をして、情報を得て、全く違う価値観を身につけた別の人格です。
同一視せずに、別の人格であることを尊重しましょう。

その2:お互いの背景に興味を持ち理解する

趣味

夫婦や子供について、「全く、なんでこんなものが好きなのだろう、全然理解できない」と思うことはよくありますね。
行動や趣味嗜好は、人それぞれで、全く理解の範囲外ということも。

でも、それには必ず、好きになった理由があります。
そんな時に、自分のモノサシで判断しても無駄です。

相手のモノサシがなぜできたのか、その背景に興味を持って質問したり、想像したりしてみましょう。

多くは小さい頃に見聞きしたことや経験、家族的な背景などが大きいものですが、趣味嗜好については、もっと直感的で自分にもなんで好きなのかわからないけど好きということもあります。

その背景がわかると、理解が深まります。
だから、あんな行動するのね、と理由がわかると、怒る代わりに、受け入れやすくなります。

その3:ただ、ありのままを尊重する

そして、否定せず、ジャッジもせず、「そうなんだ、この人はこういう人なんだ」とありのままを受け入れるのが一番摩擦がありません。
尊重して、その人の時間を大切にしてあげましょう。

例え行動や趣味嗜好が自分とは違っても、その人が「楽しい」「幸せ」と感じている状況自体を、自分の喜びと捉えることができれば、自分も幸せに過ごすことができます。

その逆に、自分の思い通りにしようとすると、相手は必ず、そのエゴに気付いて反発し、ケンカになります。

相手を受け入れる

その4:お互い様だから自分も合わせなくて良い

一方で、自分が合わせるようにすると、自分のストレスになります。
相手は相手、私は私、お互い様だからお互いの価値観を尊重し合って大切にテリトリーを守るのが楽です。

我が家など、価値観が全く違いますし、好きなものも全く違います。
私はナチュラル志向のミレニアム世代(ギリギリ!)ですが、夫は若干のバブルを引きずったケミカルマテリアルボーイです。

私は、海、畑、山が好きで、大自然の中で野生的に過ごしたい。
夫は、ゴルフ、車が好きで、清潔な環境で安全に過ごしたい。

全く交わりません!
合わせようとするとお互いにストレスなので、あえて合わせないで尊重するようにしています。

その5:期待しないという愛情

仲の良い家族

一つ、究極の愛情をお伝えします。

「期待しない」ということです。

冷たいように聞こえますね。
でも、可能性に期待しないというわけではありません。

相手が、自分の思い通りになることを期待せず、ただ、相手を受け入れる。
それは、相手という人間の可能性に対する究極の信頼です。

相手を変えようとすることが、とにかくフラストレーションの源です。
ですから、期待通りにはならないと諦めてしまえば、こんなに楽なことはありません。

期待通りにしようという自分のエゴから解放され、相手を尊重すると、相手もそれを感じるために関係性がよくなります。
「ちょっと歩み寄ろうかな」という考えさえ生まれてくる場合もあります。

反発し合っていたご夫婦やご家族も、もしかすると、「好きにすれば?」と一言言ってあげたら、ガラッと変わるかも知れませんよ。

笑顔のハート

この冬だけでなく、家族とはこれから一生の付き合いです。
一緒にいる時間が長い今こそ、自分が変わることで、ストレスのない関係を作ることができますよ。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか