こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。

突然ですがみなさん、大事な場面で「おならが出そうになって困った」という経験はありませんか?
おならは生理現象であり、ずっと止めておくことはできません。

それでも「会議中におならをしたくなって困った」「エレベーターのなかでおならが出そうになった」といった経験は、多くの人があるのではないでしょうか。

しかし、「おならが過剰に出る」といった状況は看過できないでしょう。お腹が張りっぱなしでガスが溜まり、ずっとおならが出ているといった状態は、腸内環境が乱れていることが考えられます。

今日は、あまり人には相談できない「おならがよく出る」というトラブル対策について紹介します。

おならが出るメカニズムや、その改善方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

1.おならが出るメカニズムとは?

ガスが溜まる

おならとは、口から飲み込んだ空気や腸内で発生したガスが腸内を通り、肛門から排出される気体のことです。

私たちは飲食の際、無意識のうちに空気を飲み込んでいます。その飲み込んだ空気はガスとなって腸管に吸収されますが、吸収されなかったガスはおならとなって外に排出されます。

飲食の際に空気を飲むのは仕方のないことであり、おならは誰もが持つ生理現象です。

ただ、多くの場合は状況に応じておならを我慢することもできますし、一日中おならが止まらない、といったことは少ないでしょう。

しかし、おならの回数が異常に多かったり、我慢できないようなおならが続く場合は、お腹になんらかのトラブルが生じていることが考えられます。

2.おならがよく出る! その原因とは

サツマイモ

普段よりおならがよく出る…そのようなときは、次のような原因が考えられます。

・食物繊維の多い食材を食べすぎた
・便秘気味である
・ストレスや暴飲暴食などで腸内環境が乱れている

まず、おならがよく出る原因として「食物繊維をたくさん摂取した」ということがあります。

よく聞くのがイモ類です。焼き芋をたくさん食べておならが出る、といったことを見聞きした人も多いのではないでしょうか。

食物繊維は摂取量が多くなると、大腸内で腸内細菌に発酵される際に発生する水素やメタンなどのガスが増えるため、おならも発生しやすくなります。

しかし本来であれば、食物繊維を摂ることは腸内環境を整えることにもつながるため、あまり気にする必要はありません。水素やメタンは無臭のため、この際のおならは無臭になります。

問題なのは便秘などの「腸内環境の乱れ」が原因で起きるおならです。

これらが原因で起きるおならは腸内で主にタンパク質が腐敗菌によって腐敗し、硫化水素などの悪臭を放つガスを発生させるため、ニオイのキツイおならになることがあります。

また、便秘の状態では腸内には多くのガスが溜まっていることも多いので、おならの回数が増えることにもなります。

2-1.おならには良いものと悪いものがある

鼻をつまむ女性

おならがよく出てしまうと、日常生活で困ることもあるでしょう。

ただ、出るおならが無臭だった場合、それほど気にすることはありません。無臭のおならは腸内環境が整っている証拠ともいえ、良いおならといえます。

問題は、離れたところにいる人でも分かってしまうようなニオイのキツイおならです。

ニオイがひどいおならは腸内環境が乱れているサインです。例えば便秘で腸内に便が溜まった状態のおならは、腐敗臭を伴い、ニオイがキツくなります。

しかも、腸内で発生した悪臭の原因物質は、血液中に吸収されて、通常は肝臓で無毒化・無臭化されますが、アルコールの飲み過ぎや、疲労、脂肪肝などが原因で肝機能が弱っている場合には、一部が肺から放出されることもあり、息が臭くなるという衝撃的な事実もあります。

腸内環境由来の呼気の一つは、ジメチルサルファイドという成分で、「腐ったキャベツ臭」「生ゴミ臭」とも表現される悪臭です。

こうした悪いおならは、すぐに対策をしなくてはなりません。

1.臭いおならは悪玉菌が原因のことも

悪玉菌

ニオイがひどいおならは、腸内で腐敗菌、一般的に言われる悪玉菌が増えていることが考えられます。

私たちの腸内には大きく分けて「有用菌」「悪玉菌」「日和見菌」という3種類の細菌が存在するのですが、そのうち悪玉菌が増えすぎてしまうと腸内環境を荒らす原因になります。

悪玉菌は適正なバランスのなかにいれば必要な働きを担っていると考えられていますが、過剰に増えると腸のなかを腐らせ、有害物質を作る作用があります。

腸内の有用菌の主なエサは、植物由来の食物繊維などの多糖類、オリゴ糖などのプレバイオティクスですが、これが不足すると、代わりに、タンパク質をエサにする細菌が増え、タンパク質から有害物質であるアンモニアやインドール、スカトールなどを発生させます。これがニオイのキツイおならの原因になります。

肉類や油が多い食材は悪玉菌が好むエサとなるため、ファストフードなどを食べると、臭いおならが多く出ます。これは悪玉菌の増殖によって腸内における有害物質が増えてしまうからです。

2.ニオイのないおならは善玉菌が多い

反対に良いおならである無臭のおならは、腸内環境が整っているといえます。

無臭のおならが作られる要因としては、腸内の有用菌が、エサであるプレバイオティクスを発酵させて、人にとって有益な働きをする短鎖脂肪酸などの腸内代謝物と同時に、水素などのガスを発生させているからと言えます。

短鎖脂肪酸が増えることで、腸内環境は弱酸性になり、アルカリ性の環境を好む悪玉菌の活動を抑える効果があります。

また、短鎖脂肪酸は、腸内で消化吸収を助けたり、腸のぜん動運動をサポートして便秘を解消したりします。これにより腸に便が溜まることを防ぎ、臭いガスのもとである有害物質の発生を防いでくれるのです。

ただ、腸内細菌のバランスは、老年期になると乱れ、有用菌は、徐々に腸内から減ってしまうといわれています。無臭の良いおならを出すためには、腸内環境が整うような食生活を意識することが大切です。

3.おなかの調子を整えておならトラブルを防ごう

おならを全く出さないようにすることはできませんが、「臭くて回数の多いおなら」を防ぐことはできます。そのためには、腸内環境を整えることが大切です。

腸内環境を整えると聞くと、ヨーグルトの乳酸菌やサプリメントを連想する人も多いと思います。もちろん、有用菌の代表ともいえる乳酸菌やビフィズス菌を体に摂り入れることは重要です。

しかし、おならの回数を抑え、無臭のおならにするためには、腸内環境のバランスを維持することが大切です。

そのためには、有用菌だけでなく、腸内にいる多種多様な細菌がバランス良く生息できるよう、サポートしなくてはなりません。多くの細菌のバランスを整えるためにはヨーグルトだけでは不十分であり、日頃の食生活が重要になるのです。

3-1.腸内環境を整えるには「食物繊維」がカギ

野菜

腸内環境を整えるには、まず善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌が欠かせません。これらの善玉菌で発酵した食品を取り入れる「プロバイオティクス」食品だけでなく、腸内の乳酸菌やビフィズス菌、そして酪酸菌などその他の有用菌を育むことが大切です。

健康的な腸内環境には多くの細菌がバランス良く共存しています。すべての菌が住みやすいような環境にするためには、腸内環境の土台を整える必要があります。

そのサポート役となるのが「食物繊維」です。

食物繊維は腸内における有用菌のエサとなり、有用菌の数を増やして働きをサポートします。こうした有用菌の働きを支える食物繊維やオリゴ糖は「プレバイオティクス」ともいわれ、腸活において欠かせない存在です。

ちなみに、ヨーグルトやキムチといった善玉菌をそのまま摂り入れることができる食品を「プロバイオティクス」といい、食物繊維を中心としたプレバイオティクスと同時に摂取することを「シンバイオティクス」といいます。

腸内環境を整えるには、この「シンバイオティクス」の食事法を実践することが重要です。

本章では、食物繊維についてご紹介していきます。

シンバイオティクスについて詳しい解説はこちらをご覧ください。

▼腸を整えるシンバイオティクスという食事法

https://wellmethod.jp/intestinal_bacteria/

腸内細菌が健康を左右する! 腸を整える“シンバイオティクス”という食事法のすすめ

1.非水溶性(難溶性)食物繊維

キノコ

食物繊維には「非水溶性(難溶性)食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類があります。

便秘がちでおならが臭いという人は、まず便秘を改善する必要があるので「非水溶性(難溶性)食物繊維」を積極的に摂りましょう。

非水溶性(難溶性)食物繊維が含まれる主な食材は次のようなものです。

・キノコ類
・未精製を中心とした穀類
・葉もの野菜
・クロレラ・スピルリナなどの微細藻類

非水溶性食物繊維は、摂取すると、便のカサを増し、腸のぜん動運動を活発にしてくれる働きがあり、便秘の改善に期待ができます。

非水溶性食物繊維は、直接腸内に住む常在細菌のエサにはならないものの、腸内細菌を快適な部屋にするといった役割もあります。

ちなみに食物繊維は、ゴボウやニンジンなどの根菜類にも多く含まれています。このような根菜類や、アボカド、納豆などには水溶性・非水溶性の食物繊維が両方含まれています。

2.水溶性食物繊維

りんご

水溶性食物繊維の特徴は、体内で消化や吸収はされずに、大腸まで届くということです。大腸まで届いた水溶性食物繊維は、善玉菌のエサとなり、善玉菌が元気に増えることにもつながります。

水溶性食物繊維が含まれる食材は次のようなものです。

・果物(特にりんごや柑橘類、プルーンなど)
・イモ類
・キャベツや大根などの野菜
・昆布やわかめなどの海藻類
・麦類を中心とした穀類
・豆類
・こんにゃく

イモ類を食べるとおならが増えてしまうこともありますが、腸内環境を整える意味では積極的に食べたい食材です。

ただ、おならが増えすぎてしまうときは、イモ類以外の水溶性食物繊維を意識して摂るようにしましょう。

4.日常で実践してほしい腸内環境を整える方法

おならのニオイや回数を抑えるためには、シンバイオティクス食品を意識して摂り、腸内環境を整えることが大切です。

また、日常生活においても次のようなことを意識し、腸内の乱れを防ぐことでおなら対策につなげていきましょう。

4-1.ファストフードには要注意

ハンバーガー

シンバイオティクスを中心とした食材は腸内環境を整えますが、反対に腸内環境を乱す食材もあります。代表的なものが「ファストフード」です。

絶対にファストフードを食べるなとはいいません。しかし、お腹の調子が悪いときに食物繊維などのプレバイオティクスが不足したファストフードを食べてしまうと、腸内細菌の多様性が減ることから、ますます胃腸の調子が悪くなることは容易に考えられます。

また、ファストフードの調理に使われるマーガリンやショートニングには、細胞の劣化を促進するトランス脂肪酸が含まれていることが多いです。美容の観点から見ても、ファストフードを頻繁に食べることはおすすめできません。

腸内環境の多様性について詳しくはこちらをご参照ください。

▼医師が解説する若さと健康のカギは菌の「多様性」にあり

https://wellmethod.jp/diversity/

腸内環境改善に最重要!若さと健康のカギは菌の「多様性(ダイバーシティ)」にあり【医師が解説】

4-2.なるべくおならは我慢しない

おならはいつでもどこでも出せるものではなく、出ないよう我慢しなくてはならないシーンもあるでしょう。

しかし、おならを我慢することは腸内環境にはよくありません。

おならを我慢するとお腹の張りにつながり、腸の動きが悪くなって便秘につながることにもなります。

そして便秘になると腸内にガスが溜まり、ますますおならをしたくなる…といった悪循環につながってしまうのです。おならはなるべく我慢をせず、こまめにトイレに行くなどして体内から放出することが大切です。

また、おならと同じように、便意を我慢することもよくありません。
スムーズな排便は腸内環境を整えることにもつながり、腸に臭いガスが溜まりにくくなります。

水分を充分に摂って適度な運動をするなど、日頃から便意をしない生活を意識することが、おならトラブルの対策にもなります。

4-3.ストレスをためない

ヨガ

ストレスは万病のもとといわれますが、おならトラブルに関しても無縁ではありません。

ストレスが溜まると自律神経が乱れ、結果的に不眠や食欲不振などを引き起こすことから、腸内環境が乱れることにもなります。

また、激しいストレスで極度の緊張状態に置かれると、お腹が痛くなって下痢を起こしてしまう人も少なくはありません。

こうした状況は「過敏性腸症候群」ともいわれており、腸内細菌の多様性が低下していることが分かっています。

過敏性腸症候群は、高い確率で、小腸内異常増殖症候群(SIBO)を合併しています。
この場合は、食物繊維や発酵食品の摂取が逆効果になる可能性があり、除去食が必要になります。

大腸ではなく、小腸でガスが発生するため、お腹は貼るのに、おならが溜まってしまって出せず苦しくなりがちです。

▼【医師解説】腸活が逆効果になる腸内フローラの異常「SIBO(シーボ)」の原因と対策

https://wellmethod.jp/sibo/

【医師解説】腸活が逆効果になる腸内フローラの異常「SIBO(シーボ)」の原因と対策

おならトラブルを防ぐためには、以下のような行動を意識し、日頃からストレスを溜めないことも大切です。

・睡眠時間をしっかりと確保する
・瞑想やヨガを取り入れてリラックスする
・人と会って会話をし、愚痴を聞いてもらう
・ウォーキングなど適度な運動をする など

生きていく上で、全くストレスがない生活を送るというのは難しいでしょう。しかし日頃からなるべくストレスを溜めないように心掛け、自分の生活をふり返ってみることも大切です。

5.腸内細菌を整え、おならトラブルを防ごう

人前で出そうになってしまうおならは、恥ずかしく、どうしてこんな場面で…と困ってしまうこともあるでしょう。

しかし、おならはそのニオイや回数により、腸内の異常を知らせてくれるサインでもあります。

おならが異常に臭い、回数がやたら多いといった場合は、日頃の食生活を見直した方が良いかもしれません。
また、早食いを辞めて噛む回数を増やすだけでも、腸内にはよい影響が表れるでしょう。

トラブルを解消するためにも、今日から一歩ずつ腸内環境を整えられる方法を実践していきましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

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