こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

みなさまは、脂肪肝についてどのような症状かご存知でしょうか?

聞いたことがあるけど詳しくは知らない、という人もいるかもしれません。

一番身近な脂肪肝としては、高級食材のフォアグラがそうです。

フォアグラは高級で美味しい・貴重なイメージがありますよね。

しかし、人間の脂肪肝はそうはいきません。

脂肪肝とは、名前の通り肝臓に脂肪(中性脂肪)が過剰に蓄積した状態です。

従来、脂肪肝はそれほど重要視されるような疾患ではありませんでした。

しかし現在は、脂肪肝は肝硬変や肝がんへのリスクを高めることや、生活習慣病のリスクを高めることが明らかになり、治療法や対策について注目されるようになりました。

筆者の父親も、むかし脂肪肝を指摘されたことがある一人です。

脂肪肝というと、お酒を飲みすぎの人が罹るイメージがありました。

しかし私の父は酒飲みでもなく、中肉中背の普通の体格です。

実はこのアルコールを飲まない人の脂肪肝こそ、生活習慣の見直しが大切と、いま注目されている疾患です。

そもそも、どうして人は脂肪肝になるのでしょうか。

また、脂肪肝を指摘された場合に生活上気を付けることや、予防法などはあるのでしょうか。

今回は脂肪肝について、原因や日常生活における予防法や対策などについてもご紹介します。

1.脂肪肝とは

脂肪肝 フォアグラ

脂肪肝とはその名の通り、肝臓に中性脂肪が蓄積する疾患です。

脂肪肝は、お酒の飲みすぎにより肝臓に負担がかかって起こる「アルコール性脂肪肝」と、それ以外の脂肪肝「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」に分類されます。

これまで、脂肪肝はアルコールの過剰な飲みすぎが原因とされていましたが、いまはアルコールを飲まない非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が注目されています。

1-1.非アルコール性脂肪肝(NAFLD)について

非アルコール性脂肪肝とは、お酒を飲まない人の脂肪肝のことをいいます。

ここでいう「お酒を飲まない人の酒量」の目安としては、「1日あたりのアルコール摂取量がエタノール換算で20g/日未満」のことをいいます。

NAFLDは多くの場合、肥満・糖尿病・脂質代謝異常といったメタボリックシンドロームの診断基準を少なくとも一つを満たしている患者さんに発生します。

さらに、NAFLDには、単純性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の2種類があります。

単純性脂肪肝(NAFL)では、肝臓内に脂肪が沈着するのみの単純性脂肪肝の状態ですが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)となると、肝硬変、肝がんへと進行するリスクの高い脂肪肝と考えられています。

また、NAFLもNASHに進行することがあります。

1-2.NAFLDの頻度

NAFLDの有病率は、国や地域によっても異なると考えられています。

日本において検診受診者を対象にした研究では、全体の29.7%~32.2%がNAFLDであることが報告されています。

また、NAFLDの有病率の男女差は、男性有病率が32.2~41.0%に対し、女性は8.7%~17.7%と男性の方がやや高い傾向にあります。

しかし、国内における、NAFLDにおけるNASHの割合は、若年層では男性に多くみられる一方で、60歳以上では女性に多いとも報告があります。

これは、加齢や閉経に伴うエストロゲンの低下がNAFLDの病態の進行に影響を及ぼしているのではと考えられています。

参考)
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/news/2020/0609_01_03.pdf

脂肪肝の種類

2.原因

肝臓は、脂質を脂肪酸、糖質をブドウ糖に分解し、中性脂肪へと変化させています。

本来、摂取するエネルギーと消費するエネルギーのバランスが良ければとくに問題はありません。

しかし、脂質や糖質を過剰に摂取し、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分な脂肪酸やブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に作り替えられ、体に蓄えられます。

中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪にも蓄えられる他、肝臓にも蓄積し、脂肪肝になります。

果物

糖質の中でも特に脂肪肝に直結しやすいのが「果糖」です。果糖は主に果物にも含まれる糖ですが、砂糖を構成する成分でもあります。最近では加工食品にもよく人工の「果糖」が使われており、砂糖より少量で甘みが強く、習慣性を生みやすいため、こちらの方がより注意が必要とされています。

アイスクリームや、炭酸飲料のみならず、ケチャップや漬物の味付けとして添加されている場合もあります。

これらを習慣的に摂取することは、脂肪肝のリスクを高めます。脂肪肝を指摘されている場合はもとより、指摘されていない場合でも注意が必要です。

商品のラベルを見て「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」「果糖類」「異性化液糖」「砂糖」といった記載に注意を払うようにしましょう。

▼アガベシロップは肥満の元?砂糖よりも危険な果糖を控えるべき理由【医師解説】

https://wellmethod.jp/agave-syrup/

また、お酒の飲みすぎも肝臓に中性脂肪がたまりやすくなります。

これは、アルコールが代謝されるときに中性脂肪の合成がすすみ、中性脂肪が作られやすくなります。

さらに肥満になると、肝臓での脂肪の燃焼が悪くなります。

そのため中性脂肪が肝臓にたまりやすくなります。

極端なダイエットや食事制限も「低栄養性脂肪肝」とよばれる脂肪肝になることがあります。

3.脂肪肝を引き起こす危険因子

3-1.アルコールの飲みすぎ

アルコール ビール

アルコールが原因で起こる脂肪肝を「アルコール性脂肪肝」と呼びます。

個人差はありますが、少量の飲酒による脂肪肝への影響は個人によって異なるとされており、とくに過剰の飲酒(毎日3合以上の日本酒を飲むなど)の人の多くに脂肪肝が認められます。

3-2.肥満や2型糖尿病、脂質異常症

アルコールが原因でない脂肪肝であるNAFLDを発症する原因として、肥満や2型糖尿病、脂質異常症(高脂血症)など、いわゆる「食べ過ぎ」「運動不足」によるものが関連します。

肥満、2型糖尿病、脂質異常症などの人は、体内でいわゆるインスリンの働きが鈍くなる「インスリン抵抗性が増大」していることがあります。

インスリン抵抗性が増大しインスリンの働きが鈍くなると、肝臓に脂肪がたまりやすくなり、脂肪肝になりやすくなります。

3-3.薬物、妊娠など

まれなケースですが、薬物や妊娠によって脂肪肝が引き起こされることもあります。 

4.症状

4-1.自覚症状がほとんどない

肝臓は再生能力が優れているため、脂肪肝となり肝臓がダメージを受けていても残りの細胞によって機能を維持することができます。

そのため、脂肪肝の初期には自覚症状ほとんどありません。

4-2.症状が進行すると疲労感、腹部の不快感、頭がボーっとするなど

脂肪肝の症状 だるさを感じる女性

脂肪肝になると、血液がドロドロの状態となり、血流が悪くなります。

血流が悪くなると、全身に十分な酸素と栄養分がいきわたらなくなるため、疲れやすさ、お腹の不快感、頭がぼーっとするなどといった症状が出ることがあります。

5.検査・診断

検査結果

・飲酒の有無の確認
・血液検査
・超音波(エコー)、CTなど画像検査
・必要に応じて肝生検

脂肪肝の検査においては、まず脂肪肝がアルコールによるものなのかどうか、他に要因があるのか飲酒についての確認が行われます。

また、血液検査にて肝機能を調べるほか、腹部超音波やCT検査などの画像検査を行い肝臓の大きさや脂肪のたまり具合を確認します。

また、診断の確定にまれに肝生検が必要になることがあります。

6.治療と対策

脂肪肝の治療は、まず原因が過剰な飲酒の場合はアルコールをやめることが第一です。

また、食事や運動といった生活習慣の改善を行うことが大切です。

食事や運動療法による体重減少は、肝機能や肝臓の組織を改善するとのことが明らかになっています。

2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの基礎疾患がある人にはその疾病に応じた治療を合わせて行います。

6-1.バランスがとれた食生活、良質なタンパク質を意識しましょう

和定食

バランスのとれた食事とは、1日3食をきちんと取るとともに、「主食1品」「主菜(肉・魚・卵・大豆製品など1品)」「副菜(野菜・きのこ・海藻類)2品」が1回分として食事をとることです。

例えば、主食や主菜を2品以上組み合わせることはエネルギー過多の原因になります。

また、食べ過ぎもNGです。

他に家族がいる場合、洗い物を少なくするために大皿に盛って取り分けるご家庭もあると思いますが、食べ過ぎの原因になるため、一人分ずつに盛り付けて、目でみて食べる量を把握できるようにすることが理想です。

また、外食では主食・主菜・副菜のそろった定食を選ぶようにしましょう。

麺類やどんぶりものなどの炭水化物がメインのメニューのときは、野菜を使った小鉢やサラダをプラスするなど、バランスを意識しましょう。

6-2.脂質をはじめ、糖質にも注目し抑えましょう

脂肪肝にならないために食生活を改善しようと、まず油っこいものを控えようと考えがちですが、実はそれ以上に注意が必要なのは糖質です。

糖質のとりすぎは、肝臓に脂肪がたまりやすく脂肪肝になるリスクが高まることが明らかになっています。

そのため、お菓子やジュースなどはもちろん、ごはん・パンや麺類など糖質が含まれる炭水化物は食べ過ぎないように注意しましょう。

また、果物はビタミンが含まれており体に良いイメージがありますが、果物に含まれる果糖は吸収が良く、肝臓で中性脂肪に変わりやすいため注意が必要です。

果糖も脂肪肝を招く要因になりますので、食べ過ぎないようにしましょう。

どうしても果物を食べたい人は、1日1/2個を目安にとり、朝に食べるようにしましょう。

また、加工食品には人工の果糖が含まれる場合があり、これらにも注意を払うようにしましょう。

6-3.野菜・キノコ・海藻類など積極的にとりましょう

いろいろなきのこ

食事には野菜・キノコ、海藻類などを積極的にとりましょう。

厚生労働省の「健康日本21」では、成人が1日あたりに摂取したい野菜の目標量を350g以上と定めています。

体に良いと理解していても、意識しなければ、十分な量をとることはできません。

目安としては、野菜の小鉢1つを1皿として、1食1皿以上、1日5皿分を食べるように意識しましょう。

野菜は生で食べるとかさが増え、満腹感を与えてくれます。

逆にキャベツなどの葉物は熱を加えると、かさが減り、たくさんの量を食べることができます。調理法や味付けを変えるなど工夫してみましょう。 

食物繊維は、ローカロリーな上、腸からの糖質や脂質の吸収を遅らせる働きがあります。

食事を取る際は、食物繊維を初めに食べて胃のスペースを占めておくと食べ過ぎが防止できます。

おすすめの食材は、水溶性食物繊維を含む納豆・モロヘイヤ・オクラ・わかめなどの海藻類・キノコ類、山芋などです。

▼もしかしてドロドロ血? 怖い病気の危険因子「脂質異常症」の原因と改善法

https://wellmethod.jp/dyslipidemia/

6-4.アルコール習慣は控えめに、おつまみに注意

肝臓で代謝されるアルコールは、いうまでもなく肝臓に負担がかかります。

飲酒量や飲酒期間が長い人ほど、注意が必要です。

またアルコールを飲むために主食を取らない人もいますが、かえって食事バランスが悪くなり太る原因にもなります。

つまみも高カロリーのものが多いため注意しましょう。

主食・主菜・副菜をそろえて食べるように意識しましょう。

6-5.定期的に運動しましょう

ウォーキングをする女性

摂取したエネルギーは運動で消費するようにしましょう。

肥満を指摘されている人は、1回30~60分、週3~4回の有酸素運動を1~3か月継続することが理想的といわれています。

なかなか時間が取れない人もいるかもしれませんが、運動を取り入れることは非常に有効です。

まずはいまより1日1000歩多く歩くことを心がけてはいかがでしょうか。

1000歩は、歩いて約10分程度といわれています。

近所に自転車や車で出かけていたところを歩いてみる、一日の中で運動する時間を設けるなど心がけてみましょう。

7.できることから改善しましょう

生活改善で脂肪肝を予防する女性

脂肪肝は症状が軽く、脂肪肝と指摘されてからでも原因を取り除くことができれば、そこまで深刻な問題とはならないケースがほとんどです。

しかし原因がわからずに、肝臓に脂肪の蓄積が続くようであれば、脂肪肝は悪化する可能性があります。

もし指摘されたら、まずは脂肪肝の原因を考え、自分の生活上でどのように取り除くことが可能であるか考えてみましょう。

また、いまは脂肪肝ではないという方も、普段から身体に脂肪が蓄積しない生活を送ることは大切です。

筆者も甘いものは大好きですが、夜に食べることは控える、子どもが寝てから運動する時間をつくるなど、体に脂肪がたまりにくい体づくりをするように心がけています。

毎日の積み重ねが、将来の自分への健康貯金になります。

みなさまもぜひ、生活の一部に取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修は 医師 城谷 昌彦先生

【医師】城谷 昌彦
医師

城谷 昌彦

監修医

消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・認定内科医・認定産業医
ルークス芦屋クリニック院長
腸内フローラ移植臨床研究会専務理事
NPOサイモントン療法協会理事
ヒュッゲ・ラボ株式会社代表取締役

主な所属学会

日本内科学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本抗加齢医学会・日本統合医
療学会・日本先制臨床医学会 など

東京医科歯科大学医学部卒業。
神戸大学病院内科、京都大学病院病理部、兵庫県立塚口病院(現・尼崎総合医療センター)消化器科医長、城谷医院院長などを経て、2016年ルークス芦屋クリニック開設。
消化器病専門医でありながら、自ら潰瘍性大腸炎発症によって大腸全摘術を経験。
西洋医学はもとより、東洋医学、心理学、分子栄養学、自然療法等の見地からも腸内環境を健全に保つことの大切さを改めて痛感し、腸内環境改善を柱とした根本治療を目指している。
2017年からは腸内フローラ移植(便移植)による治療を開始。腸内細菌が人体に及ぼす多大な機能改善力に着目し、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患だけでなく、うつ、自閉症、自己免疫疾患、がんなど多岐にわたる疾患の治療を行なっている。

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著作・監修一覧

  • ・『腸内細菌が喜ぶ生き方』(海竜社)
  • ・『骨スープで楽々やせる!病気が治る!』(マキノ出版)
  • ・『専門医伝授「アミノ酸豊富!骨だしスープで腸内フローラを再生」』(WEB女性自身)

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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