長く続く疲労感は更年期が原因? その他の病気との見分け方
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
朝起きた瞬間から、疲れている。
長時間寝ても疲れがとれない。
動くのが億劫……。
特に、子育て、仕事、家事と毎日慌ただしく生活する40代~50代の女性は、こうした経験をされている方も多いのではないでしょうか?
筆者も20代、30代の頃は疲れを感じても、睡眠を十分とれば翌日にはすっきりしていたのですが、40代に入るとその疲労感がなかなかとれないことが多くなりました。
そんないつまでも続く疲労感に不安を抱くことも……。
このなかなか改善されない「疲労感」にはいくつかの原因があります。
その原因をしっかり把握することが、疲労感を軽減するにはとても大切なのです。
この記事では、長期にわたる疲労感の原因とその対策について解説していきます。
1.疲労感はカラダからのSOS
疲労を感じるということは、体が限界に達している、もしくは限界を超えているといえます。
つまり、体が「疲労感」という形でSOSを発している状態です。
疲労を感じることが多くなってきたという方は、まずは日常生活を振り返り、疲労感の原因として当てはまるものがないか確認してみましょう。
1-1.不規則な生活リズム
大人世代は、仕事や育児、親の介護など、プライベートだけでなく社会的にも責任を一手に担う世代でもあります。
これらは、自分でコントロールできない突発的な出来事がほとんどで、身体的にも精神的にも無理をしている状況が続いている方も少なくないのではないでしょうか。
そのため、就寝時間などを自分でコントロールすることが難しくなり、徐々に生活リズムが不規則になります。
その結果、倦怠感の発生や気力の低下により、疲労を強く感じてしまうのです。
1-2.偏った食生活と栄養不足
忙しい毎日に追われ、食事を十分に摂る時間がない場合や簡単にすませてしまうことで、体が必要とする栄養素が不足していきます。栄養素が不足すると、代謝がうまく働かなくなるのです。
一方で「食べ過ぎ」にも注意が必要です。
動物性たんぱく質や脂質が多い食事やインスタント食品を過剰に摂取することで、腸内環境が悪化したり炎症が起きたりして、体の代謝が悪くなると、疲労感の原因になります。
また、体重増加にもつながります。
体が重くなると、それだけ動かすためにエネルギーを浪費することから疲労感が出やすくなると考えられます。
1-3.精神的なストレス
職場や家庭内での人間関係や育児、親の介護など精神的なストレスが積み重なることで、イライラや倦怠感が発生し、長期的な疲労感へつながっていくことがあります。
1-4.運動不足
車や交通機関を使うことが増え、歩くことが減っている方が多いのではないでしょうか。
運動不足から体力が低下し、疲労を訴える方も少なくありません。
2.長期間、疲労感が続く「慢性疲労」の原因は何か?
日常生活を振り返っても、これといって思い当たることがないという方や、疲労感が長期間続く場合、原因は何でしょうか?
また、よく耳にする「慢性疲労」とはどういった状態のことをいうのかをご紹介します。
2-1.慢性疲労とはどんな状態のこと?
慢性疲労とは、「6ヵ月以上疲労が続き、一晩寝ても疲れがとれない」状態のことをいいます。
慢性疲労になると、日常生活に支障をきたし、いつもできていたことができなくなったり、思考力や活動量が低下したりします。
慢性疲労をそのままにしておくと、心の病気や生活習慣病などを誘発させることもあるため、まずは疲労感の原因を知ることが大切です。
2-2.その疲労感は「更年期障害」の症状かも
40代~50代の女性によくみられる慢性的な疲労感の原因のひとつに「更年期」が考えられます。
更年期障害とは、閉経前後に女性ホルモンのエストロゲンのバランスが急激に変化することで、心や体にさまざまトラブルを引き起こしている状態です。
更年期障害の症状は、そのままにしておくと疲労感だけではなく、うつ病などの気分障害を引き起こすことがあります。
2-2-1.更年期障害の症状と対策
月経のある女性は、慢性的で潜在的な貧血であることが多い傾向にあります。
貧血の原因はさまざまですが、女性の場合は、主に月経による鉄不足です。
40代~50代の女性は更年期障害の影響もあり、月経時の出血量が不安定になります。しばらく月経がないと思っていても、突然月経が始まり、多量の出血を伴うこともあります。
通常は月経量の減少に伴い、貧血も改善してきますが、逆に出血が増える場合には、貧血がひどくなることで、だるさを感じることがあるため、鉄分の多い食事を摂るよう意識しましょう。
更年期症状は、一人ひとり症状やその程度も異なります。まずは、規則正しい生活を心がけることが大切です。
適度な運動、栄養バランスの良い食事、十分な睡眠をとることから始めてみてください。
それでも、症状が改善しない場合は、婦人科を受診し、主治医に相談してみましょう。
2-3.更年期障害以外の病気が疑われることも
長期にわたる倦怠感や疲労感は、不規則な生活や更年期障害以外のことが原因となっている可能性があります。
日常生活の見直しや婦人科を受診しても、疲労感が持続する場合は、以下のような病気が原因となっていることも疑われます。
2-3-1.風邪やインフルエンザなどの感染症
体内にウイルスが侵入すると、体はウイルスを排除しようと免疫機能を活性化させます。
免疫機能を活性化させる際に、体力の消耗や発熱、倦怠感などを生じることがあります。
風邪などが原因で起こる疲労感は、一般的には1週間程度で改善されます。
2-3-2.糖尿病
生活習慣病のひとつとして知られる糖尿病は、すい臓で作られるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態となります。
症状が悪化すると、喉の渇きや体重の減少、倦怠感などその他にもさまざまな合併症を引き起こします。
倦怠感は、糖をうまくエネルギーに利用できないために「電池切れ」のようになる症状で、糖尿病では一般的によく起こります。
2-3-3.睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり、大きないびきをかいたり、眠りが浅くなる病気です。
夜間は眠っていると感じているので、自分で気づくことが難しく、長期間放置してしまうことも少なくありません。
十分な睡眠がとれないことから、日中に疲れや眠気を感じることがあります。
2-3-4.慢性疲労症候群
「慢性疲労」とよく似た名前で混同されがちですが、慢性疲労とは症状が異なります。
慢性疲労症候群は、体を動かすことができないほどの疲労が6ヵ月以上続く病気です。
症状は、疲労感、頭痛、筋肉痛、不眠、発熱、咽頭痛、気分障害などが代表的で、日常生活に支障をきたすことが多いといえます。
詳しい原因や治療法がまだはっきりと分かっていませんが、あまりにもひどい場合には「疲労外来」に相談することをお勧めします。
2-3-5.甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症
どちらも甲状腺に関する病気です。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると「甲状腺機能亢進症」、一方甲状腺ホルモンが不足していると「甲状腺低下症」と診断されます。
甲状腺機能亢進症の症状は、動機や、手の震え、体重の減少、過度な発汗などがあげられます。
甲状腺機能低下症の症状は、慢性的な疲労感、体重の増加、便秘、浮腫、気分の落ち込みなどです。
どちらも、長期的な疲労感の原因となります。
2-3-6.うつ病
うつ病は、人間関係や環境の変化によるストレスが長期的に持続することで発症することが多い病気です。
うつ病は気分障害のひとつでもあるため、気分が激しく落ち込み、意欲や気力を失い自分では回復するのが難しいといわれています。
気分の落ち込みにともない、疲労やだるさを感じることがあります。
2-3-7.花粉症
花粉症とは、植物の花粉によって起こるアレルギー性の病気です。スギ・ヒノキを代表に、ブタクサやヨモギ、シラカバなど花粉症を引き起こす植物はさまざまあります。
花粉症の症状として、くしゃみや鼻水・目のかゆみなどがあり、それらが進行していくと全身症状として倦怠感や熱っぽさ、だるさなどの症状が現れることがあります。
3.疲労感の解消法
疲労を長期的に感じて毎日を過ごすのは、とてもつらいことです。
少しでも今感じている疲労感を軽減するための、疲労解消方法をご紹介します。
その前に、「疲労解消の三原則」をご存知ですか?
疲労解消には、「食事」「運動」「休養」がとても重要な役割を果たします。
これら3つは私たちの日常生活に密接しているため、今すぐ取り組みやすいことばかりです。
3-1.食事
疲労回復に大切なのは、バランスの良い食生活です。
ダイエットなどにより極端な食事制限を行っていると、必要な栄養素が行き渡らず、疲労を解消することができません。
疲労とは、要するにエネルギー切れの状態ですが、人のエネルギーになるのは「炭水化物」「タンパク質」「脂質」の3大栄養素です。
最近は、「糖質制限」ダイエットが流行り、炭水化物をカットして、肉などのタンパク質を中心にし、油からエネルギーを得ると言う食事スタイルが流行っていますが、これには多くの議論があります。
特に、治療目的でないのに、炭水化物を長期間完全にカットすることで、体が上手く作られず、機能しないと言う状態になることも懸念されています。
特に、急に炭水化物をカットしてしまうことで、エネルギー代謝が回らずに強い倦怠感を感じてしまうこともありますので、こうした食事スタイルは医師の指導のもとで行う方が無難です。
もし「最近、疲れやすい」と体の不調を感じたときは、最近自分が食べたものを振り返ってみるといいでしょう。
「偏った食生活ではなかったか?」「足りない栄養素はないか?」と振り返ることができます。
食生活の振り返りを習慣化させることで、バランスのとれた食事をより意識することができます。
3-2.運動
日頃から運動が習慣化されていると、体の各組織が発達し、ストレスホルモンが分泌されにくくなります。
そのため、緊張やストレスに強くなると同時に、運動をすることにより気分転換をすることができます。
3-3.休養
睡眠中には、心や体の休養などに関係するホルモンが分泌され、疲労の回復や免疫力の向上、ストレス解消に大きな役割を果たします。
また、休養とは睡眠のことだけを指すのではなく、心の休養も意味します。
忙しすぎる毎日を見直し、ゆっくりと過ごす時間を確保することも疲労感の解消には大切です。
4.疲労感を解消して楽しい毎日を
今回ご紹介したように、長期的な疲労感はさまざまな原因が考えらます。
毎日忙しく生活する私たちにとって、「疲労を感じることが当たり前」にならないように、日常生活からしっかり見直していきましょう。
しかし、長期的に疲労感が続く場合は、迷わず医療機関に相談してください。
毎日笑顔で楽しく過ごしていくために、疲労を残さない生活を心がけることが大切です。
監修:内科医 桐村里紗
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか