こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

「フェムケア(Femcare)」や「フェムテック(Femtech)」という言葉を耳にする機会はありますか?

オーガニックコットンの生理ナプキンや月経管理アプリなどには、馴染みがあるでしょうか?
女性特有の性やホルモン分泌に関連した悩みを解決してくれるので、フェムケアのプロダクトやフェムテックは、活用すると、より快適に、健康に、幸せに生きていけそうです。

この分野、女性だけでなく、パートナーや家族の男性との相互理解が進むと、関係性はもっとよくなり、世の中もっとよくなるはずです。

2021年には、この流れはますます加速していくことは必須。
今回は、フェムケアを始めたいけど、よく分からない人への導入編です。

1.「フェムケア(Femcare)」を知ろう

フェムケア

男性と女性は、社会的に平等であるべきである一方で、体の作りや性ホルモンには大きな違いがあります。

女性には、男性にはない月経があり、性ホルモンのリズムによって心身のコンディションを左右されやすく、妊娠・出産などの特別なイベントや、更年期から閉経にかけての大きなバランスの変化などが待ち構えています。

健康な人であっても変化に振り回されがちですし、日常生活に支障が出るほどの状態になることも珍しくありません。

そんな女性特有の悩みや課題を解決してくれる、フェムケアやフェムテックを知ると、より楽に生きていくことができそうです。

1-1.フェムケアとは?

フェムケア(Femcare)とは、「Feminine(女性の)」と「ケア(Care)」の組み合わせで作られた造語です。

女性特有の性やホルモン分泌に関連した悩みを解決してくれる製品やサービスのことを意味しています。
月経や妊娠、産後、更年期、性生活や性感染症など、性に関連した様々な課題を解決してくれます。

同じような言葉に、フェムテック(Femtech)があります。この違いが、イマイチわかりにくい?

1-2.フェムテックとの違いは?

フェムテック

フェムテック(Femtech)とは、「Female(女性)」と「Technology(技術)」の組み合わせで作られた造語です。

アプリやデバイス、IoTを使ったものなどテクノロジーを使った製品やサービスです。
テックというと、なんだか自分とは遠い気がしてしまいますが、既に、月経管理アプリを使っている人もいるのではないでしょうか?
アプリをきっかけに始まり、ネット診療やサブスクリプションなど様々なサービスに拡大しています。

フェムケアは、フェムテックの潮流に関連して、日本で誕生した造語です。

フェムケアは、生理用品など、テクノロジーを使わないケアとして区別されていますが、世界的には、大きな概念としてのフェムテックの一部に含まれています。

あまり難しく考えず、テックを応用していれば、フェムテック。テックを使っていなければ、フェムケア。
と、ざっくりと考えておけば良いと思います。

テックを使いこなさない身としては、フェムケアと言ってくれた方が随分身近に感じます。

1-3.フェム関連市場は全年齢対象に拡大中

株式会社グローバルインフォメーションが発表した市場調査レポートでは、2019年のフェムテック市場規模は8億2060万米ドルと推定され、2030年までに年平均12.65%で成長すると予測しています。
大半はミレニアル世代に焦点を当てていますが、更年期世代の女性を支援するオンラインクリニックや、更年期症状のケアを支援する装置や商品なども展開しています。

女性のホルモン変化に伴うライフステージに応じてジャンルがあります。

1.月経関連

フェムケア生理用品

初潮が始まってから、閉経までずっと付き合っていくのが、月経です。

月経管理アプリやPMSに悩む人のための管理デバイス、オーガニックコットンの肌に優しいナプキン、月経カップやナプキン不要の月経ショーツなどの製品も多数あります。
最近は、雑貨店やコスメコーナーなどでも、こうした商品を見かけるようになりましたね。

海外では、月経痛の原因となる子宮の収縮を抑えるために、筋肉を緩める作用のあるCBDオイルを配合したタンポンのサブスクリプションも登場しています
世界的にヘルスケアトレンドとなっているCBDオイルブームと合間って、注目度が高まります。

月経前後の諸症状や女性特有の慢性的な不調を緩和するサプリメントなどもあります。
特に月経があるために女性は慢性的な鉄不足で、隠れ貧血の人が多く、日常的な不定愁訴や月経前の不調の原因になっています。病院ではなかなか診断されないこうした不調を救い上げるが、フェムケアの真価ではないかと思います。

2.妊娠・不妊関連

出産の高年齢化に伴い、自然な形で妊娠するよりも、「妊活を頑張る」人が増加しています。

月経周期に合わせて排卵日などもわかる管理アプリや、妊活専用のSNSやコミュニティサービス、妊活コンシェルジュや病院とのマッチングサービス。
妊活は、辛い不妊治療で精神的なダメージを受ける人が多くいますが、同じ思いで頑張る仲間ができるコミュニティはとても良いサービスだと思います。

また、妊娠に必要なサプリメントや栄養療法など。
私自身、分子栄養療法的な血液検査に基づいて、妊活栄養外来を行っていましたが、これも今で言えば、フェム関連の医療サービスになりますね。

アメリカでは、オリモノの成分を分析して、妊娠しやすいタイミングを教えてくれる膣内挿入型デバイスなどもあります。

その逆に、予定外の妊娠は女性の心身にも大きな負担となります。思いがけない妊娠を防ぐための低用量ピルのサブスクリプションサービスもあります。

3.妊娠期・産後子育て関連

フェムケア産後子育て関連

妊活が終わると、今度は、これまた大変な妊娠期と産後の子育てが待っています。
赤ちゃんに栄養を吸い取られる上に、ホルモンが激変し体に大きな負担がかかるビッグイベントですから、サポートが欠かせませんね。

現状は、オンライン相談サービスや情報サービス系が中心です。
核家族が増え、周りに相談できる人がいないで孤独になり追い込まれてしまうパパママも多くいますから、気軽に情報が得られることはとても大切です。

この時期、女性は人生の中で最も栄養不足で心身の不調が出やすい時期です。鉄不足も最も重度になりやすい時期ですが、産後のうつやイライラも鉄を補うことで改善できる場合が多いのです。
今後は栄養的なサポートサービスが増えたら良いなと思います。

4.更年期関連

更年期から閉経にかけても、女性ホルモンが人生で最も激減し、女性の心身に負担がかかるタイミングです。
更年期関連のサービスは、まだまだ少ないのが現状です。

カップルのための互いの体調を共有するサービスや相談サービスなどが登場しています。
サプリメントとしては、女性ホルモンの働きをサポートするエクオールが有名ですね。
更年期から閉経後の女性ホルモン減少に悩む女性にとっては、強い味方です。

フェムケア更年期

海外では、尿もれを防ぐためのアプリ連動型膣トレグッズなども登場しています。

これからもっとサービスが増えることが期待されます。

5.セックス・性器ケア関連

性において、特にセックス関連の話はタブー視されていましたが、最近はむしろ、オープンに性を楽しもうよ!という流れが来ています。

女性向けにお洒落で抵抗感のないデザインのセルフプレジャーアイテムが多数登場しています。
2019年11月には、大手百貨店・大丸梅田店がフェムテック常設コーナー開設し、そこには、百貨店で初めて、TENGAがリリースしている女性向けヘルスプレジャーライン「イロハ」を常設で展開したことも話題となっています。

性器をケアすることは、「ヨニケア」とも呼ばれ、自分を大切する「セルフラブ」の実践として女性たちの関心が高まっています。デリケートゾーンを優しくマッサージするための専用オイルやケア用品なども登場しています。

私自身も、以前に大手ランジェリーメーカー・PEACH JOHNの展開するローズの香りのデリケートゾーン専用の美容液やオイルの取材にご協力して、自身でも使わせて頂いたことがあります。

普段は、体用のソープで一緒に洗っていましたし、美容液などつけたこともありませんでしたが、香り高いローズの香りで自分の大切な部分を優しく洗い、さらに美容液をつけてあげると、自分への愛情が高まり、もっと自分の女性性を大切にしようという気持ちになりました。

その他、匿名でできる郵送タイプの性病(STD)検査キットもあり、性を楽しみながらも、自分を傷つけないためにしっかり守るためのサービスが展開しています。

2.まずは身近なところから始めよう

何を使うか迷ったら、ライフステージや悩みに応じて、その課題を解決してくれるものを使ってみるのが良いですね。

2-1.まずは生理用品から初めてみては?

フェムケア用品

月経がある年齢であれば、誰でも手軽に始めやすいのは、生理用品ですね。

1.オーガニックコットンナプキン

お肌に優しく環境にも優しいオーガニックコットンのナプキンは、デザインも可愛いものが多いですし、最近ではドラッグストアでも手に入ります。

通常のナプキンでは、石油化合物の吸収性ポリマーが使われています。
脱炭素社会に向けて、石油由来の原料を置き換えていこうという流れも後押ししています。

私は、行きつけのライフスタイルショップやオーガニックショップで購入しています。

2.月経カップ

蒸れやすく資源の無駄になるナプキンなど使い捨ての生理用品の代わりに、欧米を中心に利用者が増えているのが、月経カップです。
世界的に脱プラや使い捨てによるゴミを無くそうという流れが、生理用品にもやってきました。

膣内に挿入するタイプで、経血が皮膚に触れることがないので、蒸れやかぶれ、ニオイの心配がいりません。旅行や海にいく際に生理が被ってしまった場合にも便利です。

経血がカップ内に溜まっていくので、4時間から最大12時間の連続使用も可能です。
不潔にならないように消毒をして衛生管理をする必要があります。

最近では、大手日用品店やインターネットで手に入りますので、試してみては?

3.月経パンツ

ナプキンやタンポンが不要になる、月経パンツも利用者が増えています。
多い日に血液にむれたゴワゴワのナプキンをつけるという苦痛から解放されます。
吸収するのは経血だけでなく、くしゃみをするとちょっと尿もれが…という方にも使えます。

おむつ型のナプキンとは全く違い、見た目は完璧にショーツ。
普通のショーツをデカパンにしたような大きいサイズから、レースのものやヌーディーなものまでデザインも様々です。

ショーツそのものが経血をグングン吸ってくれる優れものです。
多い日用や夜用は吸水力が高いながら、場合によっては横漏れすることもあるようなので、自分の経血量に合わせて様子を見ながら試すのが良さそうです。

洗濯の際に、水が真っ赤になることやつけ置きが必要なことなどの手間はありますが、一度使うとやめられない女性が続出しています。

2-2.不調があれば鉄不足をケアして

鉄分サプリ

月経がある世代で、日常的に心身の不調があるのに、特に病気ではない場合、まず、鉄不足からくる「隠れ貧血」を疑ってみて欲しいと思います。
フェムケアにおいて、隠れ貧血の解決はとても重要だと考えています。

私自身、不定愁訴に悩む多くの女性、不妊や産後うつに悩む女性の血液検査による栄養解析を行ってきましたが、その原因が隠れ貧血であることがなんと多いことか!?

何かしらの不調がある場合には、セルフチェックをしてみましょう。

『もしかして「隠れ貧血」?医師が教えるセルフチェックで不調の意味を考えよう』

https://wellmethod.jp/indefinitecomplaint_hiddenanemia/

2-3.WELLMETHOD世代なら更年期の課題解決を

WELLMETHOD世代なら、これから迎える更年期への不安があったり、今現在、更年期で困ったりしているかも知れませんね。

「病院に行くほどではないけれど・・・」という場合に役立つのが、漢方薬やサプリメント。

「わたし漢方」というLINEサービスでは、症状を入力すると専門の薬剤師が相談に乗ってくれ、ぴったりの漢方を選んでくれ、希望すればすぐに購入できるお手軽さです。

また、エクオールは、女性ホルモンをサポートする働きがあることで知られています。
腸内のエクオール産生菌が活躍していれば、大豆イソフラボンを原料に腸内のエクオール産生菌で分泌されますが、腸内環境が悪い場合や豆製品の摂取が少ない場合、元々腸内の常在菌として定着していない場合などには、十分に産生されず、更年期障害が顕著になってしまうリスクがあります。

エクオールを補給することは、医師もおすすめする代替案です。

ウェルメソッド

WELLMETHODでは、多くの女性に役立つ情報、更年期世代や更年期準備世代の役に立つフェムケア情報をお届けしています。

編集部も私自身も、女性特有の課題を持ち、フェムケアで解決していきたいと考えています。
ぜひ、こんなことが聞いてみたい、こんな情報が欲しいというお声をお聞かせ下さいね。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか