こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

これまでタブー視されてきた「性」にまつわるウェルネス「セクシャルウェルネス」がオープンに語られ始めた今。
日本でも、女性特有の性にまつわるお悩みを解消するフェムケア・フェムテック市場が拡大しつつあります。

そんな中、女性のウェルネス課題の解決・支援事業を行うfermata(フェルマータ)株式会社(本社:東京都品川区、以下fermata)が、運営するオンラインストア「fermata store」は人気を博し、コロナ禍の2020年、“未来の日用品店”をコンセプトにする『NewStandTokyo』(東京・六本木)内にオープンしたフェムケア・フェムテックグッズの路面店も話題です。

fermataのビジネス・ディベロップ・マネージャーで、4年前にフィンランドから日本に来たエスコラ茜さんに最新の事情と、WELLMETHOD世代の悩みに対応したフェムケア・フェムテックグッズをご紹介いただきました。 

足を運んだのは、未来の日用品店『New Stand Tokyo』(東京・六本木)

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New Stand Tokyo
〒106-0032
東京都港区六本木 7 丁目 2 番 8 号
WHEREVER 1F
営業時間
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点で当面の間は営業時間変更となっています
毎週水・木・金 営業
営業時間:各日12:00-19:00

1.「タブーがワクワクに」創業の経緯

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桐村里紗(以下、桐村):fermataさんは、「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに、先進的な目線でウェルネスの課題解決に取り組んでおられますね。まず、創業の経緯などをお聞きできますか?

エスコラ茜さん(以下、エスコラさん):2019年10月にCEOである杉本亜美奈とCCOである中村寛子の2人が立ち上げたのですが、その1ヶ月前の9月に、渋谷で、世界中の26社のフェムテック企業から製品を集めて展示会を開いたんですね。
有料で60枚のチケットを用意してたんですが、なんと100枚以上売れたんです。

桐村:え〜、それだけ関心が高かったということですね。それに、本当に最近のことなんですね。

エスコラさん:それがきっかけで日本にも十分ニーズがあるんだとわかったこと、そしてそれらの製品が実際に手に取れる場をつくりたい、ということで会社を立ち上げました。
まずは、2020年4月にオンラインストアを立ち上げて、その3か月後の7月には実店舗として『New Stand Tokyo』内に路面店をオープンしました。

桐村:コロナ禍に!本当に最近なんですね。実は、ご近所なのですが、この前を通りがかることがなかったので、気づきませんでした。
素敵な女性編集者さんが「桐村さん、こんなのオープンしてますよ」とご紹介下さったんですよ。

2.男性も立ち寄る「未来の日用品店」

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エスコラさん:元々、『New Stand』は、アメリカで展開されているキヨスク型のショップなのですが、これまでキヨスクでは販売されていなかったような新しいものを並べているんですね。
『New Stand Tokyo』は、アメリカのコンセプトを踏襲しながら、さらに「これからの未来に必要なモノは何か?」や「これからスタンダードになるべき商品とは何か?」という次代性の視点を取り入れたキュレーションを展開していて、昨今国内外で注目を集めるフェムテック商品も取り扱っています。
なので、雑誌やイヤホン、ファッションアイテム、お菓子などの隣に、月経カップが並んでいる!という新しさがあるんです。

桐村:未来の日用品として、フェムケア・フェムテックグッズがキヨスクに並んでいるって、素敵ですね!
壁一面にfermataの商品が並んでいますものね。

エスコラさん:そうなんです。フェムケア・フェムテックグッズって、女性向けというイメージが強いので、女性がメインで立ち寄る雰囲気があると思うんですが、ここは、一見何を販売しているか分かりにくいので、カップルでふら〜っと立ち寄って、月経カップを手にとったりということがよくあるんですよ。

桐村:思いがけず迷い込んで、出会うということもあるんですね〜!

エスコラさん:ありますあります。
事前に調べてくれて、オンラインショップを見たんだけれども、大きさや質感など実際に商品を手にとってみたいと来てくださることも多いです。

桐村:確かに、実際に触れてみられると安心ですね。

エスコラさん:肌にあたったり、膣内に入れるものなので、素材なども気になりますよね。
コロナ禍であっても、配慮しながら定期的に来てくださる方もありがたいことにいらっしゃるんですよ。

桐村:リピーターの方が既にいらっしゃるんですね。

エスコラさん:はい、ご近所の方はふらっと立ち寄ってくださったり、通ってくださったりしていますし、地方から訪ねてくださる方もいらっしゃるんですよ。

桐村:それだけ求めていらっしゃる方がいらっしゃるということですね。

エスコラさん:お客様の層も、性別も年代も本当に幅広い方々がいらっしゃるんですが、最近は男性のお客様がお一人でいらっしゃって商品を購入いただくことが増えてる印象がありますね。

桐村:え〜、それは結構意外です。どういうニーズなんでしょう?

エスコラさん:例えば先日は、若い男性がお一人でいらして、出産祝いに友人のプレゼントを探すお手伝いをしました。
産後って、骨盤底筋群が弱って尿もれに困る方もいらっしゃいますよね。なので、吸水ショーツとデリケートゾーンにも使えるソープをセットにしたギフトをご提案しました。

桐村:お〜、それは実用的で嬉しいかも知れません。

エスコラさん:他には、男性お一人で来店されて、性交痛を和らげるグッズ「Ohnut(オーナット) 」を買っていかれる方もいらっしゃいました。

オーナット

Ohnut (性交痛軽減アイテム) – Ohnut ¥7,980(税込)

桐村:男性側に装着して長さを調整することで挿入の痛みを和らげるんですよね。とても画期的なグッズだと思っていました。長さの不一致による痛みが原因で楽しめない方もいらっしゃいますよね。

エスコラさん:カップルでいらっしゃる方は、「こんなものがあるんだね」と性についてコミュニケーションをとるきっかけになってますし、お一人でいらっしゃる男性は目的を持って買いにこられる方が多いようです。

桐村:実際にお悩みがあって、リサーチして、積極的に買いに来られるわけですね。

3.セクシャルウェルネスのカテゴリーは?

フェムテック,桐村

桐村:そう考えると、従来の日本のいわゆる男性目線の「アダルトグッズ」とはカテゴリーが違う気がしますね。性を楽しむという側面ももちろんありますけれども、性交痛という課題を解決するようなグッズは視点が違いますね。

エスコラさん:そうですね、カテゴリーや商品の分類も結構難しいところなんですが、2017年に市場情報を提供するアメリカの企業がヘルステック市場のカオスマップを出した際に、当初は、「セクシャルヘルス」とカテゴライズしていたんですね。

性交痛であったり、摩擦を和らげるジェルのような、ネガティブな症状を解決するものが取り上げられていたんです。
でも、バイブレーターなどを取り扱ってる企業は一社もなかったんですよ。
何が原因かは諸説あるんですが、ヘルステックの中でも「セクシャルウェルネス」はある意味タブー視される傾向でした。

私としては「アダルトグッズ」という日本的な呼び方に違和感があって、「セルフプレジャーアイテム」と呼んでいます。

桐村:確かに、いわゆる日本的な「アダルトグッズ」のイメージは、圧倒的に男性目線ですよね。

エスコラさん:そうですよね。男性が考える女性の快楽ってこうだというイメージで作られていると思います。
セックステックが一番普及しているのは、世界的にもニューヨークなんです。
例えば、女性エンジニアと心理カウンセラーが開発したグッズなどがあります。

桐村:心理学が裏づくって、女性の性の快楽や解放にとってとても大切なことですね。

エスコラさん:アメリカではセックスセラピストの資格をとるにも、心理学を学ばなければならないんです。

桐村:日本だと、心理カウンセラーに相談するにもハードルが高いですし、ましてやセックスセラピストは資格化されていないですしね。

エスコラさん:そうした制度の違いもありますね。 

なので、わざわざ、セクシャルヘルスとプレジャーを分ける必要がなくて、つながっているものを、総合して「セクシャルウェルネス」と呼んだ方が良いのではないか?という流れが数年前からあって、今では「セクシャルウェルネス」と呼ぶことが一般的になっていると思います。

fermataで作っている最新のグローバルマーケットマップを見てください。
ざっくりとカテゴリーは7つに分類されていて、これ全体をフェムテックと呼んでいます。

フェムテックグローバルマーケットマップ

各カテゴリーは、以下の7つ。

1.月経
2.ウェルネス(健康全般)
3.セクシャルウェルネス
4.不妊・妊よう性
5.妊娠・産後ケア
6.更年期
7.メンタルヘルス

世界的に見ても「メンタルヘルス」のカテゴリーに分類される企業はまだ少ないんですよね。

プレジャーアイテムを作っている企業やカップル向けのセラピーアプリを作っている企業なども登場しています。 

桐村:それだけ、細かなニーズに対応できるようになってきているということですね。

4.多様な社会に多様な選択肢を

フェムテック,エスコラ茜さん

桐村:日本では、まだまだ「セルフプレジャー」について語ることはオープンにはなりきれない感もありますね。

エスコラさん:そうですね。身近な友人とは話せても、肝心のパートナーとは話せないという方もいらっしゃいますよね。
私たちは、月1回をベースに「Femtech Fes!(フェムテックフェス)」という無料のオンラインイベントを開催しています。
カメラとマイクは完全にオフなんですけど、その分、匿名で参加できるので、セクシャルウェルネスの会は一番チャット欄が盛り上がるんですよ。

桐村:それなら参加しやすそうですね。隠された悩みはきっとみんなありますものね。

エスコラさん:そうですね。みんな悩みもあるし、興味もあるし、解決策があるなら試してみたいと思いつつも、産婦人科の先生に言うほどでもないし、セラピストに行くって私おかしいの?と感じてしまったり、なかなか話せる場がないんですよね。

桐村:そうですよね。病気という訳でもないですし、病院に受診するのはハードルが高いですね。セラピストに気軽に行く習慣も日本にはありませんし。

エスコラさん:セックスに関する悩みだけでなく、月経や妊娠、更年期に関わる悩みでも、なかなか相談できないことは共通していると思うんですよね。

桐村:日本だと、産婦人科疾患についても、なかなか他人に口にできない傾向がまだまだありますね。
特に、日本では、前の世代からの教育で、女性の性を「恥ずかしい」「隠すべきもの」として扱う傾向があると思うんです。
女性の性って、美しいものだし、昔は礼讃されていたもので、本来は誇って良いものなのに、「恥ずかしいから隠さなければならない」と教育されてしまうために、女性の根本的な自信のなさや自己肯定感の低さにつながっていると診療している中で感じます。

女性が自分の女性性を根本的に誇れずにいることも、性についてオープンになれない原因の一つではないかと感じています。

その辺り、日本と世界の事情の違いなどを感じられますか?

エスコラさん:日本から見た「外国」って言っても色々ありますから、一括りにはできませんし、それぞれの国や地域の事情があります。
一口にヨーロッパと言っても地域によって違いますし、世界各国でも、宗教や文化の違いによって全く事情が違います。

例えば、イスラエルでは、宗教上、ユダヤ人女性を大切に扱うため、世界的にも1番のフェムテック・ハブと言われるくらいなんです。
サンフランシスコと並び、AIなどを使用したフェムテックが生まれていますし、法律レベルで女性の健康を促進しているんですよ。

桐村:SDGsの目標には、女性の健康促進も入っていますけれど、国によって随分取り組むレベルは違いますね。

エスコラさん:日本も、江戸時代の春画を見ると、「Wow!」と思うほど大胆だったりしますし、キリスト教が入ってきたことことで変わったのかなと思ったり…

桐村:そうですよね、日本各地には歴史的に夜這い文化があった訳ですし、もっとオープンで盛んだったはずですよね。

(メモ:キリスト教では、「処女信仰」が強く、性欲についても否定的な思想があり、日本の古来の発想とは真逆だった訳です。西洋化の流れで国策として夜這い文化を禁止しようとしても、第2次世界大戦前までは日本ではなかなか浸透しなかったそうです。)

エスコラさん:時代の流れもありますし、国の文化の影響もありますよね。
インターネットの普及もあり、今まで手に入らなかった情報が色々なところから手に入るようになったということもあります。

一概に、日本で欧米の文化をそのままコピペして真似することが良いという訳でもありませんし、必ずしも、方法論に正解はありませんし、性についてオープンに全員が語ることが良いとも限りませんよね。
ただ、オープンに語りたい人にはそんな場を提供したいし、もし語りたくなくても、人の体験談を聞いて、自分の悩みが解決したり、「これって人と違うようだから産婦人科に行ってみようかな」みたいな、発見の場をもっと多く提供できればと思っています。

桐村:仰る通りですね。それも、多様性で、何か一つの価値観を押し付ける訳ではなくて、自分らしく、素直に、シンプルに生きられたら良いわけで、それぞれの人が「私にとって心地よく適度」でいられることが大事ですよね。

エスコラさん:多様な価値観に全て配慮すると何も言えなくなってしまうので、そこの線引きもチャレンジングになってきていると思うんですが、多様な選択肢を提案できることが価値があることだと考えています。
例えば、「みんな、これから月経カップを使おう!」じゃなくて、「月経カップもあるよ」「オーガニックコットンナプキンもあるよ」「吸水ショーツもあるよ」と選択肢を示して、「さぁ、好きなの選んでね」っていう形が今のところベストかな?と考えています。

桐村:価値観が多様化し、社会も多様化する中で、フェムケア・フェムテックにおいても多様な選択肢がありますよ。そして、多様な価値観を認め合っていきましょう、という社会的な流れは優しいですね。

エスコラさん:そうですね。でも、そのプラットフォームと土台を作っていくのは、とても大変な作業だなと感じています。

5.オンラインと実店舗の日本での拡大

フェムテック,エスコラ茜さん

エスコラさん:特に、コロナがなければ、オフラインのイベントなどもどんどん開催していきたいところだったのですが、今はできないので、オンラインだけの限界も感じています。

桐村:本当に、オフラインイベントがあれば、ぜひ参加したいところですし、どんどん開催していただきたいところです。

エスコラさん:この状況の中でも店舗に来てくださる方々の様子を見ると、やっぱり実際に手に取れる店舗がある必要性を感じています。

桐村:そうですよね、実際にショールームとして店舗があれば、そこで見て、触って体験できますし。

エスコラさん:はい、でも実店舗で実際にレジに持って行って会計することにもハードルがある人には、購入はオンラインでしていただいても良い訳で。実際に、そんなケースもあります。

桐村:そうか、そんな買い方もありですね。
でも、都内でも、まだまだ店舗は少ないですよね。他にはどこかありますか?
大阪には、大丸梅田店にフェムテックのセレクトショップ「michi kake」がオープンして話題になりましたね。でも、そのくらい。

エスコラさん:ある女性向けプレジャーアイテム専門店では、フェムケア商品も扱っておられますよ。
路面店ではないのですが、完全予約制で商品を触ったり説明を受けたりできるショールームはあります。
(※新型コロナウイルス拡大の影響で予約中止中。2020.2.18時点)
よりプライベートな場で、プライバシーにも配慮して、しっかりと説明を受けたいという場合には適していると思います。

『New Stand Tokyo』は、厳密にいうと専門店ではない訳ですけれど。

桐村:でも、そのポップさはありがたいですよね。だからこそ入りやすいという方はたくさんいらっしゃると思います。

エスコラさん:今後は、フェムテックを知らない層にも認識していただけるように、ポップアップなどをどんどん出していきたいと思っています。
私たちの中では「フェムテックってバズってるよね!」と思っていても、まだまだ認知度は低いですし。

桐村:そうですよね、まだ「フェムテック って何ですか?」って聞かれますものね。

次回は、日本のフェムテック市場の拡大やジェンダー格差後進国とされる日本の課題、フェムテックの未来の可能性などについてお聞きします。

つづきはこちら

▼性をオープンに!女性のためのセクシャルウェルネス最新事情を調査vol.2

https://wellmethod.jp/femtech_02/

40代からのセクシャルウェルネス!話題のフェムケア・フェムテックグッズを調査vol.3

https://wellmethod.jp/femtech_03/

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか