性をオープンに!女性のためのセクシャルウェルネス最新事情を調査vol.2
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに、先進的に女性目線でセクシャルウェルネスの課題解決に取り組むfermata株式会社 ビジネス・ディベロップ・マネージャーのエスコラ茜さんにお話をお聞きしています。
前回の記事は、こちら。
1.日本のフェムテック市場の成長と拡大
桐村:日本は、まだまだこの分野では後進国な気がしていますが、実際はどうでしょうか?
エスコラさん:実は、そうでもありません。
fermataでは、国内のマーケットマップを2020年4月に初めて発表しました。そのときは51サービスだったんですが、たった7か月でほぼ倍増の97サービスにまでなりました。
↑(2020年4月版)
↑(2020年11月版)
エスコラさん:成長速度は、決して遅いわけではないんですよ。
ただ、薬機法によって表現できることに制限があって、難しさも感じています。
桐村:そうですよね、そこはヘルスケア産業全般で難しいところですね。
エスコラさん:例えば、生理用ナプキンは「医薬部外品」なんですが、吸水ショーツは「医薬部外品」ではなく「雑品」の扱いなので、生理用ナプキンと同じ機能があるとは言えない訳です。
なので、具体的な表現ではなく、「これ一枚履くだけで過ごせます」とか、そんな風な表現になるんですよね。
桐村:それは、消費者にとっても商品の具体的な機能がはっきり分からないので、実はデメリットでもありますよね。
エスコラさん:そこで、2020年10月に、自民党の野田聖子幹事長代行を中心に、「フェムテック振興議員連盟」が発足しました。
より良い商品が生まれていくことも大事だと思うのですが、それが適正に世の中に広まるためには、制度を現代のニーズに合うようにアップデートしていかなければならない場合もありますよね。
変わるものも変わらないものもあると思いますが、そもそもディスカッションができるようになったということが重要だと感じています。
桐村:そうですね、その土俵に乗っているってすごいことですね。そう考えると時代は少しずつ進んでいるっていうことですね。
エスコラさん:進んでますよ!
それに、日本って決めるまではとても時間がかかるかも知れませんが、それは国民の健康に関わることだからこそ慎重に進めてるからであって、その分信頼できますし、国や省庁が責任を持って意思決定をしてからの変わるスピードは、他国と比べてもとても早いと感じています。
桐村:なるほど〜。普段医療に関わっている立場からすると、諸々の決定の遅さにイライラすることも多いんですが、確かに慎重に検討する分、制度化されてから国民に広く普及するスピードは早いのかも知れませんね。
2.フェムテックで自分を知る習慣を
エスコラさん:制度のことで言えば、国民皆保険制度も大きいですよね。
簡単に医療にかかれる分、病気になってから病院にかかることも簡単だし、実は医療費の方がドラッグストアなどでお金を使うよりも安くすみますよね。
世界的に見るとすごく良い医療制度だと思います。
桐村:それが、本当に良し悪しで、国民の「予防」意識を下げている原因にもなっているのが悩みどころです。
医療費も増えていますし、国も予防に力を入れはじめているところですよね。
婦人科疾患について考えたときに、何かしら不調があったとしても、無視してしまったり、対症療法の薬を飲んでごまかしてしまいがちです。
ついに我慢できずに病院に行った時には、すでに重症であることも多いと思います。
なので、もっと手前に自分の体と仲良くして、しっかり対話して、向き合うことを習慣化して欲しいと思っています。フェムケア・フェムテックは、小さな違和感を早期に発見してセルフケアするきっかけになるだろうと期待しています。
エスコラさん:本当にその通りだと思います。だからこそ、フェムテックには「自分の心身と向き合うきっかけづくり」という役割があると思っています。
自分が自分の1番の理解者になろうというのが私たちが定義する「フェムテック」の概念でもあるんですよ。
桐村:素晴らしい!(拍手)みんな、自分を無視して他人のことばかり気にしてしまいますからね!
エスコラさん:日本だけでなく世界的な傾向だと思うんですが、例えば、肌荒れが起きたりしたら、食生活改めようとか、水分とろう、などという気になるのに、女性特有の症状となると「まぁ、こんなもんだよね」「仕方ないよね」となりがちなのは、なんでだろうって。
桐村:本当にそうです!
月経困難症とかPMSとか、無い方が普通なのに、あることが当たり前になっていて、その理由をあまり考えずに対症療法に頼ってしまいがちです。
痛みがあっても「痛み止め」を飲んでごまかして、仕事をがんばってしまったり、それで辛い思いをすることになる訳ですが、いやいや、その前にできることはいっぱいあるよ!と言いたいんですよね。
病院にかかったとしても、一般医療では、根本原因を探すことは難しくて結局対症療法になりがちなので、フェムケア・フェムテックによって日常から予防することにはとても価値があると思います。
3.フェムテックはコミュニケーションツール
エスコラさん:そうですよね。fermataに入社してから感じていることは、フェムテックって、コミュニケーションツールだなと思うんです。
自分とのコミュニケーションもそうなんですが、家族や友人、パートナーなど周りの人とのコミュニケーションをサポートできるんです。
例えば、ある生理管理アプリは自己管理できるだけでなく、ペアリング機能があり、パートナーに自分の生理日、排卵日、妊娠の可能性の高い日をLINE上で通知できる機能があるんです。
桐村:それは良いですね。逆に、男性も理解しようとはしてくれているのかも知れないですが、実体験がないから、根本的なところでは理解ができないじゃないですか。でも、それを共有することで、女性にはゆらぎがあることを知っておいてもらえる、そして、理解しようという姿勢になってもらえるとなると、とても大切なことですね。
それが、パートナーシップの健康、職場環境の健康にもつながってきますね。
エスコラさん:言うのは恥ずかしいけど、ちょっと知っといて欲しいという人のニーズにマッチしていると思います。
桐村:私も、そもそも不調が多いタイプなので、夫に理解してもらうにはすごく時間がかかりました。もちろん、セルフケアはその分しっかりしているんですが、でも完全には難しくて。
夫はものすごく元気で全く不調がないタイプなので、なんで具合が悪いのか理解ができず、サボってると思っている気配があったんです。
「いや、サボっている訳じゃなくて、本当にしんどいんだ!」ということをなかなかわかってもらえなかったんですよ。
そういう時に、自分であえて言葉にしなくても、自動的に相手に不調の時期を知らせてくれるって、本当にありがたいですね。
エスコラさん:これ、みてください。
エスコラさん:先日、女性ホルモンの検査キットを作っている方から頂いたグラフです。
これを見たら一目瞭然ですよね。
桐村:そうそう!これを分かってもらいたいんですよ!
月経のようにコントロールできないものがコントロールできる、予測できないものが予測できるって、女性の人生設計やキャリア設計を考える時にとても役に立ちますよね。
エスコラさん:もう人生変わりますよね。
4.ジェンダー・ギャップを超えて相互理解を
エスコラさん:私自身がすごくスタンスが変わったなと思うことがあって、フィンランドから日本に来たのが4年前なんですね。
フィンランドは、ジェンダー・ギャップ(ジェンダー格差)指数で大体1位〜2位、日本は常に100位以下ということもあり、かなり意識の格差を感じていました。
※世界経済フォーラム(WEF)による「世界ジェンダー・ギャップ報告書2020」では、ジェンダー格差が少ない国1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド。日本は、121位と、前年から11位ダウン。
エスコラさん:でも、fermataに入ってから、男性も女性と同じくらい「男らしさ」というイメージに苦しめられているんだなということが分かりました。表に出てくるのは「何で分かってくれないの」というネガティブな気持ちですが、お互いに「理解して欲しい!」と思っていることをまずは知ることから始めないとな、と思いました。
桐村:そうそう。男性も「男性らしさ」というイメージに苦しんでいますよね。相互理解が大事だと思います。
エスコラさん:fermataでは、女性だけでなく、男性向けのイベントも開催しています。
あるイベントでは、みなさん真剣に聞いてくださっただけでなく、イベントが終わった後もずっと残って質問してくださいました。
桐村:日本の男性の知識は、乏しい学校での性教育とアダルト系の雑誌やビデオの歪んだイメージで出来上がっているのが現状だと思うのですが、実は、男性も、もっと真剣に女性のことを知りたいと思っているんですよね。
お話をお伺いしていて、このフェムケア・フェムテックが習慣から文化になっていくにつれて、男女の相互不理解も解消され、違いを尊重し合い、多様性を認め合う良い社会になっていくんだろうな、と未来に希望が持てました。
次回は、エスコラ茜さんに、WELLMETHOD世代にもおすすめのフェムケア・フェムテックグッズをご紹介頂きます。
▼性をオープンに!女性のためのセクシャルウェルネスを調査vol.1
https://wellmethod.jp/femtech_01/
▼40代からのセクシャルウェルネス!話題のフェムケア・フェムテックグッズを調査vol.3
https://wellmethod.jp/femtech_03/
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この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか