皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

健康のために、発酵食品を普段から摂取したいところですが、ヨーグルト以外に日常的に簡単に摂れる食品って何でしょう?

腸内環境を改善する食事の基本は、「シンバイオティクス」。
シンバイオティクスとは、有用菌自体を含む発酵食品などの「プロバイオティクス」と腸内の有用菌のエサになる「プレバイオティクス」を組み合わせて摂ることです。

WELLMETHODの編集部でも、この食事法を習慣化するために、習慣化アプリを使って、毎日、シンバイオティクス食品を食べたら、写真をシェアしています。

シンバイオティクス

シンバイオティクス

プレバイオティクスである野菜や海藻類は普段からよく摂れていますが、共通した悩みとして、ヨーグルト以外の発酵食品「プロバイオティクス」がなかなか摂りにくいと感じています。

更に、「発酵食品」と思って選んでも、実は発酵していないものや、発酵過程を短縮しているために本来の栄養価が得られない場合もあります。

今日は、日常に取り入れやすい発酵食品やその選び方についてお伝えします。

1.お手軽で効果的な発酵食品

1)王道に代わるアーモンドミルクヨーグルト

アーモンドミルクヨーグルト

発酵食品の王道といえば、「ヨーグルト」ですね。
やはり、スーパーでもコンビニでも、気軽に買って食べられるので、使いやすいと思います。

ただし、乳製品自体へのアレルギーや不耐症、ホルスタイン牛乳が含むカゼインタンパク質の消化のしづらさなどの点から、全員にとって健康とは言えません。
また、環境への負担の大きさから、今後、動物性食品の量を世界全体で減らして行った方が良いとされていることもあり、日常的にスイッチできるその他の選択肢もあれば良いなと考えています。

ヘルストレンドとして、「プラントベース」が注目されており、植物性のヨーグルトが人気です。
日本でも、美味しい植物性のヨーグルトとして「アーモンドミルクヨーグルト」が発売されています。
私も含め、編集部でも美味しくて手軽なこのヨーグルトを愛用しています。

『SNSで話題沸騰「アーモンドミルクヨーグルト」を医師が徹底取材〜美容と健康と環境と〜』
https://wellmethod.jp/almond_yogurt/

2)納豆は機能性抜群

納豆

和食における発酵食品と言えば、納豆です。
その機能性は抜群です。

納豆は、土壌菌である枯草菌の一種の納豆菌によって発酵していますから、とにかく強い。
熱にも酸にも強いため、生きて腸まで届くことで、腸内の有用菌が喜んで増えます。

さらに、大豆由来であるため、イソフラボンを含みます。イソフラボンは、女性ホルモン様作用がある成分ですが、大腸内のエクオール産生菌に食べられると、さらに活性が高いエクオールに転換されます。
更年期や閉経期を元気に若々しく乗り切るために、エクオールをしっかりと腸内で作ることは、とても大切です。

腸内環境が悪く、エクオールが作れていない人も多く、普段からエクオールの原材料である豆製品を食べていないと、エクオール産生菌の働きも低下することが知られています。

発酵食品でありながら、イソフラボンを補うことができる納豆は、日常的に必須で摂りたいものですね。

3)しっかりと発酵した漬け物

漬け物は、野菜などの食材を、食塩やぬか床などに漬けて、発酵することで保存性と栄養価を高めた食品です。

糠漬け

伝統的な製法であれば、基本的にはしっかりと発酵しており、主に乳酸菌を含みます。
日本には、ぬか漬け、白菜漬け、たくわん漬け、すぐき漬けなど様々な漬け物がありますし、韓国には、キムチ、ドイツには、ザワークラウトなど、世界中に伝統的な漬け物があります。

残念ながら、スーパーでよく販売されている「浅漬け」や「浅漬けのもの」で作った漬け物は、発酵していません。

韓国製品は、基本的には、発酵により作られています。韓国政府認定の「キムチくんマーク」の表示があれば、発酵したキムチの証ですので、購入する際の目安にしてください。

キムチ

日本の漬物も、伝統製法であれば、乳酸発酵しており、胃酸にも強い菌株が多いのですが、調味液につけただけの浅漬けでは、十分に発酵していません。表示を確認して選ぶようにしましょう。

また、漬け物は、塩分が高く、塩分を減らすと腐敗しやすくなるために添加物が増えるのが悩みの種です。

その点、自宅で漬けると塩分量を減らすことができますし、塩自体も、精製塩ではなく、マグネシウムやカリウムなども豊富な自然海塩などを使うことができます。

最近では、毎日かき混ぜる手間がないぬか床も発売されていますので、活用してみては如何でしょうか。

4)伝統製法を選びたいお酢

りんご酢

お酢は、米や大麦などの穀物を発酵させた穀物酢やりんごやぶどうなどの果物を発酵させた果実酢に分類され、世界中にある伝統的な発酵調味料です。

ただし、こちらも最近では、大量生産のために効率を重視し、発酵プロセスを短縮して工程を省いているものが多くあり、伝統製法を守ったお酢に比べて、栄養価が少なく味も劣ります。

伝統的な米酢は米をもろみで発酵させます。伝統製法である静置発酵では、発酵に80~120日ほどかけ、その後は、240~300日ほど熟成させます。
アルコール発酵させた後に、酢酸発酵が行われます。

ゆっくりとした発酵と熟成によって、微生物が酢酸、クエン酸やリンゴ酸、乳酸など様々な有機酸やアミノ酸を多く分泌するので、複雑な旨味がある栄養豊かなお酢になります。
有機酸は、エネルギー代謝に役立ちます。

通常の米酢は、精米された米を使います。
穀物酢の中でも、黒酢は、主に玄米を使用し、伝統的にはかめの中で1年以上の長期発酵熟成させることで、米酢よりもさらに有機酸やアミノ酸が増えたお酢です。

黒酢

安価なお酢の原料米は、古米やクズ米などを使うことが多く、発酵過程も短縮されており、発酵に1日、熟成も1ヶ月程度に短縮されています。
原材料となる米の量も減らすため、十分に発酵しないため、「醸造アルコール」「アルコール」「酒精」を添加して作られます。

原材料を見ると分かりますが、伝統製法のお酢は、いずれも発酵の元となる「米」のみ。
工程が省かれたお酢は「醸造用アルコール」「アルコール」「酒精」などが表記されているので、区別ができます。

りんご酢などの果実酢も、原材料に「りんご」や「りんご果汁」などとだけ表記されている場合は、本格的な醸造酢であると考えて良いと思います。

無濾過・非加熱のりんご酢を選べば、プレバイオティクス食品であるりんごの水溶性食物繊維・ペクチンも含まれます。

5)万能調味料として使える塩麹

塩麹

塩麹は、塩を加えた米を米麹で発酵させた調味料です。
塩の代わりにどんな料理にでも使用できます。
麹菌の働きで、アミノ酸やビタミンB群が発生しているため、単なる塩や米よりも栄養価が増しています。

麹菌は、加熱することで死滅しますし、例え生きたまま摂取しても、胃酸によって死滅します。でも、生きて腸まで届くことは必ずしも必要ではありません。

塩麹を摂るメリットは、生きた麹菌を摂ることではなく、麹菌の働きで増した栄養価や有益な成分です。さらに、旨味が増すため、塩分の使用量も減らすことができます。

ドレッシング、炒め物、スープ、煮込み、肉や魚の漬け込みなど、マルチに使えてとても便利です。
塩麹をアレンジした、玉ねぎ塩麹やレモン塩麹も便利に使用できますよ。

『【医師直伝】腸活レシピ決定版④万能発酵調味料・玉ねぎ塩麹とマルチな活用法』
https://wellmethod.jp/onion_salt_malt/

『医師直伝】簡単&ヘルシーな万能調味料“レモン塩麹”|腸活レシピ決定版⑥』
https://wellmethod.jp/lemon_salt_koji/

番外編①:手軽な美容発酵ドリンク・コンブチャ

コンブチャ

手軽に発酵飲料が摂りたいと考えたときに、気軽に飲めるのが「コンブチャ」です。
アメリカやオーストラリアでは、様々なメーカーの製品が棚を席巻するほど人気で、今や、男女共に日常に摂取する発酵食品の一つになっています。

コンブチャは、スコビー株と呼ばれる酵母や酢酸菌などの複数の有用菌で紅茶や緑茶などのお茶を発酵させた発酵茶です。そのままでは少しクセがありますが、各メーカーがフルーツやハーブなどの様々なフレイバーを加えて、飲みやすい発酵ドリンクに仕上げています。

しっかりと発酵したコンブチャには、酢酸・クエン酸・リンゴ酸などの有機酸やビタミンB群、また抗酸化力を発揮するポリフェノール類が含まれます。

無糖というわけにはいきませんが、発酵過程で含まれる糖質は減るため、口に入る頃には糖質は減少します。

ただし、甘みのために砂糖を加えているものもあるため、原材料を確認して「砂糖」が含まれないものを選びましょう。
私は、自宅でスコビー株を育ててコンブチャを作っていますが、購入する際には「砂糖」の代わりに「エリスリトール」で甘みをつけた低糖質なタイプを選んでいます。

日本では、どこでも入手するというわけにはいきませんが、成城石井やナチュラルローソン、輸入食品店、カフェなどで見かけるようになってきました。

『米国セレブ愛飲の美容発酵飲料「コンブチャ」の止まらぬ進化と飲むべき理由』
https://wellmethod.jp/konbucha/

番外編②:困ったときにはプロバイオティクスサプリメント

乳酸菌サプリ

プロバイオティクスを摂るのがいよいよ難しい日に、私たちが便利に使っているのがプロバイオティクのスサプリメントです。

私も含めて、編集部で腸内フローラ検査を行なったのですが、いずれも常在菌として定着している乳酸菌が0~0.03%と極めて少ないタイプでした!
(結果は、GUT DIVERSITYで公開しています。 https://wellmethod.jp/gut-diversity/team.html

Mykinsoの調べでは、乳酸菌が0かほとんどいないタイプは、30%ほどいるそうです。
このタイプだと、常在細菌のエサであるプレバイオティクスだけを食べても乳酸菌を増やすことが難しいため、プロバイオティクスとして乳酸菌を毎日摂取する必要があります。

でも、私たちが実践してみたところ、毎日食事で乳酸菌を摂取するのが、意外に難しいと感じています。そんなときに、プロバイオティクスのサプリメントを常備していれば、パッと口に放り込むだけなのでお手軽で、大変便利です。

私自身は、複数のビフィズス菌や乳酸菌がブレンドされ、生きて腸まで届くタイプのサプリメントを常備しています。
各ビフィズス菌や乳酸菌の種類によって様々な機能性が確認されたものがありますので、自分に合った効果を持つものを選んで続けてみるのも良いと思います。

胃酸に負けず生きたまま腸に届けるよう工夫したものやプレバイオティクスであるオリゴ糖などを配合したものなど、親切な設計のものを選ぶといいでしょう。

発酵食品は、ヨーグルトに限らず、発酵調味料や発酵ドリンクなどの形で日常的に取り入れることができます。
自分のライフスタイルに合ったものを、何か一つでも毎日選んでみてくださいね。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか