皆さま、こんにちは。
医師で予防スペシャリストの桐村里紗です。

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私自身、以前、分子栄養療法やバイオロジカル医療などを用いて、妊活をサポートする栄養外来を行っていました。
日本妊活協会のイベントなどで、今でもお話をさせていただいています。

その外来では、まず初診の時に、多くの方は、涙からスタートします。

「苦しい」「辛い」「妊娠できない私が悪い」「パートナーとの関係が悪くなっていく」

当たり前に結婚して、当たり前に妊娠し、当たり前に子供を持つ。
それが、できない場合、不妊治療を選択することになります。
その治療の過程で、どんどんと追い詰められ、行き場がなくなり、萎縮して、自己否定していく女性がとても多いと感じます。

誰にも言えない、聞いてもらえない胸の内を、まず、聞くことから始めると、多くは、涙ながらに胸の内の苦しみをアウトプットして下さいます。
妊活がストレスになってしまっては、なかなか子供は授からないため、まず第1ステップとして泣いて解放することは、とても大切です。

今日は、妊活が辛いと考えている人がやめるべき5つのことをお伝えします。

1.妊活が辛いと考える人がやめるべき5つのこと

妊活が辛くて泣く女性

世の中には、望まないのにすぐに妊娠してしまう人、強く望んでいるのに妊娠できない人がいます。
不妊治療をやめた途端に妊娠したという話もよく聞きます。
これは、人生という物語の象徴的とも言える理不尽さを表しているようです。

努力ではどうにもならない不確定なファクターが、妊娠・出産という出来事には関与しています。

そうした前提がある上で、お話を進めていきましょう。

2.不妊の原因

妊活 不妊の原因

不妊には、様々な明確にできる原因とできない原因があります。
不妊治療をやめた途端に妊娠するなどの先ほどの例は、原因が明確ではありません。

女性側だけでなく、男性側の原因も同程度にあります。
原因がはっきりしていれば、治療のターゲットが分かるため、メリットもあります。

日本生殖医療学会による不妊の分類をご紹介しましょう。

2-1.女性の不妊症の原因

女性の不妊症の原因には、

・排卵因子(排卵障害)
・卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)
・子宮因子(一部の子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)
・頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)
・免疫因子(抗精子抗体など)
 
などがあります。

1.排卵因子による不妊

妊活 不妊の原因 排卵障害

月経周期が25日~38日型で、基礎体温が二相性であれば、女性ホルモンが正常に分泌されていると考えられます。
これにあてはまらない月経不順の場合は、排卵障害の可能性があります。

排卵障害の原因としては、環境の変化等に伴う大きな精神的ストレス、過度なダイエットによる大幅な体重減少の場合。
これらは、女性ホルモン分泌低下や乱れの原因になります。

また、プロラクチンという乳汁分泌ホルモンが過剰に分泌される高プロラクチン血症、男性ホルモンの分泌が増加する多嚢胞性卵巣症候群(PCOS))によるものがあります。

20歳台や30歳台にもかかわらず卵巣機能が極端に低下し排卵ができなくなる、早発卵巣不全もあります。

2.卵管因子による不妊

性感染症であるクラミジア感染症は、性活動が活発な人であれば、誰にでも感染のリスクがあるとても一般的な性感染症です。
無症状で気づかないことが多く、それが将来の卵管の閉塞や、卵管周囲の癒着となり、卵管に卵子が取り込まれて通過することができなくなり、子宮に到達できないので、不妊症になります。

また、虫垂炎(いわゆる盲腸)や子宮内膜症による腹腔内の癒着も卵管の狭窄や閉塞の原因になります。

3.子宮因子による不妊

子宮筋腫の中でも、子宮の内側にコブができる粘膜下筋腫があると、受精卵の着床障害につながります。
精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなることもあります。

子宮内膜ポリープや子宮内腔の癒着も不妊の原因になることがあります。
先天性の子宮形態異常は流産しやすくなります。

4.頸管因子による不妊

子宮頸部の手術や子宮頸部の炎症などにより、頸管粘液の量が少なくなった場合、精子が子宮内へ貫通しにくくなり、不妊症になります。
正常なおりものには、大切な働きがあります。

5.免疫因子による不妊

免疫異常で抗精子抗体という、精子を攻撃する抗体を持っている場合があります。
精子の動きを止める抗体が頸管粘液内や卵管に分泌されると、精子の運動ができなくなり、受精ができなくなります。

6.原因不明不妊

妊活 原因不明の不妊 妊娠検査薬

西洋医学的に不妊症の検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない場合があります。
これは、原因不明不妊と呼ばれます。

よく「年齢のせいだね」などと片付けられてしまいますが、それだけではありません。
栄養療法やその他のアプローチで成果が上がる場合、「特に不妊外来では問題ないと言われたのに、妊娠ができないんです」という場合です。

正常な卵子の生育や子宮内膜の増殖、着床などには、原料や機能の元となる栄養素が不可欠です。
例えば、排卵されてから、受精卵となり着床するまで、1週間程度、卵子は血液から栄養をもらうことができません。ですから、ミトコンドリア機能が良くないと、着床するまで持たないのです。

鉄、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB群、タンパク質、これらが原因不明不妊と呼ばれる人に共通して不足している栄養素で、食を整えて、これらをしっかり補うことで、健康な妊娠・出産ができることは稀ではありません。
人工授精の場合、最もグレードの低い卵しか採れなかった女性が、数ヶ月で最もグレードの良い卵が採れるようになり、妊娠したケースを私自身も経験しています。

この場合は、妊活も扱っている分子整合栄養療法を行う医師に相談してみて下さい。

2-2.男性の不妊症の原因

男性不妊

男性不妊も、女性と同程度あります。
いずれもに問題がある場合もあります。
ですから、「私だけが悪い」というわけではありません。

男性の不妊症の原因は、

1.精子の問題:造精機能障害
精液の中の精子の数が少ない、運動率が低下している、その両方

2.勃起や射精の問題:性機能障害
勃起ができず挿入できない、勃起はするが射精がうまくいかない、その両方

3.精子の通り道の問題:精路通過障害
精子は作られているが、精子の通り道が閉塞しているため精液中に精子がない

こうした問題は、女性だけが不妊治療に通っても解決しません。
パートナー同士で解決していく問題ですが、第三者である専門家がいないと中々話し合ったり建設的に治療していくことはできませんから、専門家と共に解決していきましょう。

3.やめるべき5つのこと

こうした原因を踏まえて、やめるべきことがあります。

3-1.自分を責めるのをやめる

妊活 自分を責めて落ち込む女性

なかなか妊娠できない場合、多くの人は自分を責めます。

学生時代に無茶をしなければよかった。
毎日甘いものを食べなければよかった。
もっと若い時にタイミングがあったのに、キャリアを優先しなければよかった。

などなど、考えれば考えるほど、「たられば」話が出てきます。
そして、毎月の検査の結果が悪く、頑張った治療が不成功である度に、どんどん落ち込んでいきます。

「自分のせい」と考える根拠をいくつか見つけることができたとしても、自分を責めるのをやめて下さい。
全く役に立たないどころか、ますます抑うつ的になって、楽しい妊活から遠ざかっていきます。

3-2.奇跡に頼らない

確かに、卵子と精子が出会い、子供ができるのは、奇跡的なドラマです。
だからと言って、1年以上妊娠を試みても成功しなかった場合は、何かしらのサポートが必要と考えて、医師の診察を受けてください。
天の采配を待つのは、妊娠を阻む原因を解決していった先に、妊娠できる最適な状況を作ってからです。

物理的に卵管が詰まっていたら、いくら待っていても妊娠はできません。

3-3.妊活のために生活を組み立てることをやめる

妊活 スケジュール表

妊活に一生懸命な女性に多いのは、自分の楽しみを一切やめて、妊活を生活の中心にしてしまうことです。
妊活のためにスケジュールをたて、妊活のために自分を犠牲にして、家族を犠牲にして、楽しみや喜びを遮断してしまいます。

仕事が過酷な場合、体のリズムを保つために調整することは必要になる場合がありますが、一切の仕事をやめて、その上に遊ぶことも外出することも旅行することもなく、ただ、不妊治療外来に通い、基礎体温を測り、注射を打つという生活の中で孤独になると、どんどん追い詰められていきます。

「妊活のために」ではなく「自分のために」、心身に良い生活をすると、切り替えてみましょう。
自分を整えることで、心身が整い、妊娠しやすい環境をもたらしてくれます。

3-4.セックスを子供を作る目的にするのをやめる

本来、セックスは、愛し合う2人にとって大切なコミュニケーションです。
五感をフル活用し、情熱的に互いを味わい、一体となる至福の時間。
性は、生の喜びを感じる最高の習慣のはずです。

ただし、「妊活」となると、おそらくセックスは妊娠する手段になります。
愛と喜びよりも、作業、苦しみという要素が強くなっていきます。

セックスが手段になると、特に男性にとっては勃起不全の原因になります。
女性以上に、男性は繊細な生き物ですから、頑張ってもできなくなります。

この繰り返しが、男性の自信を奪い、セックス=ストレスというイメージを作り、どんどんできなくなり、自然妊娠から遠のいていきます。
代替手段として、人工授精という手段はありますが、そうなる前に予防するには、日常からセックスを楽しむことです。

余談ですが、日本妊活協会の理事長は、5人の子供のパパで、「奥さんとのセックスほど最高なものはない!」と堂々と語ります。
セックスレスカップルが多い日本において、夫の鏡ではないかと、いつも惚れ惚れします。

4.まとめ

妊活 希望 赤ちゃんの手

私自身のことについて言えば、できにくい体質もある上に、自然妊娠を臨んでいるため、現状授かっていません。
子供ができたらできたで、夫婦二人だけではできない辛くも素晴らしい体験ができるのでしょうが、夫と二人で朝から晩まで子犬がじゃれ合うように遊んでいられますので、それはそれで、我が家は大変にハッピーです。

妊活外来では、多くの赤ちゃんが誕生して、皆さんの妊娠・出産には貢献しました。
世界全体では人口は増加に向かっているわけですし、まぁ、我が家ができなくても良いか。
と、気楽に構えるようにしています。

真剣に子供が欲しいカップルにとっては、ここまで気楽には考えられないと思いますが、上に挙げた5つをやめることで随分心が楽になり、楽しい妊活ができると思います。
幸せなカップルが増えることを願っています。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか