【管理栄養士解説】初鰹VS戻り鰹 あなたはどちらがお好きですか?
はじめまして、WELLMETHODの商品プランナーで、管理栄養士の小原亜希子です。
これから月に1回、栄養についてのお話をしていこうと思います。
突然ですが、 皆さんは、「食べること」と「動くこと」、どちらがお好きですか?
私は食べるのも動くのも大好きです。趣味でジョギングやマラソンをしており、その記録や、遠征先で出会った旬の食べ物の栄養情報などを、愛犬「チャシロー」の写真も交えながらInstagram(@kohara_p_wellmethod)で公開中です。
興味がある方は、ぜひフォローいただければと思います。
目次
1.鰹(カツオ)から学ぶ栄養学
さて今回は、「鰹(カツオ)」についてお話ししたいと思います。
スーパーの鮮魚コーナーに並ぶ、鰹のたたきの赤身と香ばしそうに焼かれた皮。
あぁ、想像するだけで、熱燗を用意して一杯やりたくなりますね!
ところで、鰹の旬がいつか、ご存知でしょうか?
1-1.鰹の旬は年に2回ある
なんとなく、春か秋のどちらかかな? と思った人も多いと思います。
実は、鰹には年に2回、旬があるんです。
春の鰹は「初鰹」、秋の鰹は「戻り鰹」と言われます。
鰹は回遊魚で、春に北上し、秋に成長して戻ってきます。そのため、初鰹は脂肪分が少なくさっぱりとしており、戻り鰹は脂が乗った味わいが特長です。
個人的には脂の乗った秋の戻り鰹が好みです。
1-2.初鰹VS戻り鰹 栄養成分はどう違う?
まずは、初鰹と戻り鰹の栄養成分を比較してみましょう。
初鰹 | 戻り鰹 | |
エネルギー (kcal) |
114 | 165 |
タンパク質 (g) |
25.8 | 25.0 |
脂質 (g) |
0.5 | 6.2 |
ー飽和脂肪酸 (g) |
0.12 | 1.5 |
ー不飽和脂肪酸 (g) |
0.25 | 3.17 |
鉄 (mg) |
1.9 | 1.9 |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)調べ
戻り鰹は脂質が多くなっています。その分、カロリーも高くなっていますね。
ということは、初鰹の方がヘルシーなのでしょうか??
一概にそうとも言えません。
初鰹も戻り鰹も基本的には高タンパク・低脂質ですので、どちらもおススメです。
戻り鰹は脂質が高いけどヘルシーって言えるの? と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、戻り鰹は不飽和脂肪酸の割合が高く、いわゆる良質な脂質を摂取することができるのです。
1-3.鰹に含まれる良質な脂質とは?
ここで少し、脂質の話をしましょう。
脂質は構造の違いから、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。
動物性の脂肪に多く、常温で固体なのが飽和脂肪酸(バターやラードなど)、植物性や魚の脂肪に多く、常温で液体なのが不飽和脂肪酸(オリーブオイルや魚の脂など)です。
さらに不飽和脂肪酸の中にヒトの体ではつくることができない必須脂肪酸というものがあり、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)はこれにあたります。
オメガ3というワードを聞いたことがある人もいますよね。DHAやEPAもオメガ3の一種です。
戻り鰹には、このDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富に含まれているのです。
▼良質な脂質に関して詳しく知りたい方は、監修医の桐村先生のこちらの記事もおすすめ
https://wellmethod.jp/drlisa_vol06/
1-4.頭にも血液にも良い魚
皆さんは「おさかな天国」という曲を聞いたことがありますか?
スーパーマーケットの鮮魚コーナーでかかっていることが多いので、きっとどこかで聞いたことがあると思いますが、あの「おさかな天国」では、魚を食べると頭が良くなるとか、魚を食べると体に良いと言っていますね。
本当に魚を食べると頭が良くなって、体に良いのでしょうか?
なんとなく、魚っていうだけでお肉より健康に良い気がするし、きっとそうなんだろうな、という感覚の人が多いかもしれません。
実は、この歌の真偽にも、魚に含まれる良質な脂質であるDHAやEPAが関係しているのです。
DHAは脳の海馬と呼ばれる器官付近のリン脂質中に多く含まれているとされ、記憶や情報伝達に関わっています。
アルツハイマーを患っている人とそうでない人を比較すると、アルツハイマーを発症している人では海馬付近のDHA量が低いそうです。
また、EPAは善玉コレステロールと言われるHDLコレステロールを増やし、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールを減らし、血液をサラサラにする機能があります。
実際、いくつもの研究報告があり、機能性表示食品でも機能性関与成分をDHAやEPAとした、認知機能の一部である判断力や記憶力、中性脂肪の改善に関する表示の届出がされており、多数の商品が販売されています。
1-5.隠れ貧血にも鰹を!
もう一つ、鰹にはおすすめすべきポイントがあります。
それは、この鮮やかな赤身!この赤身って何だと思いますか?
この赤い色は、「ヘモグロビン」や「ミオグロビン」によるものなのです。
ヘモグロビンは血液の色素タンパク質で、酸素を体中に運ぶ役割をしています。
ヘモグロビンは鉄とタンパク質が結びついたヘム鉄で、非ヘム鉄に比べ、吸収されやすく、鉄分補給にもおすすめです。
ミオグロビンは筋肉に存在するタンパク質で、ミオグロビンが運んだ酸素を受け取り、筋肉中へ運んで、体に蓄えたり、エネルギーをつくる働きをします。
鰹は回遊魚なので、海の中を泳ぎながら酸素を取り込んで体の中に蓄えたり、使ったりできるように、ヘモグロビンやミオグロビンが多いのです。
また、鰹のビタミンを調べてみると、他のタンパク源である豚肉や大豆製品の豆腐と比較して、特にビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンDが多く含まれていることがわかります。
初鰹 | 戻り鰹 | 豚肉(ロース) | 豆腐(木綿) | |
ビタミンB1 (mg) |
0.13 | 0.10 | 0.69 | 0.09 |
ビタミンB2 (mg) |
0.17 | 0.16 | 0.56 | 0.04 |
ビタミンB6 (mg) |
0.76 | 0.76 | 0.32 | 0.05 |
ビタミンB12 (μg) |
8.4 | 8.6 | 0.3 | (0) |
ビタミンD (μg) |
4.0 | 9.0 | 0.1 | (0) |
ビタミンB群は食べたものを効率良くエネルギーに換える働きをしており、B6はタンパク質をつくる働き、B12は赤血球をつくる働きをします。
ビタミンDは近年、欧米諸国や中国などでは重要性が叫ばれ、積極的に補給する人が増えています。
一方で日本ではその重要性が浸透しておらず、十分に摂取できていない栄養素の一つとなっています。ビタミンDは骨を丈夫にしたり、免疫に関わっていたり、筋肉の萎縮を抑える働きをします。
2.鰹で考えるスポーツ栄養学
それでは、ここでスポーツ栄養学的な観点から鰹を見てみましょう。
まずは高タンパク・低脂質であることから、壊れた筋肉の補給に適していますね。
BCAA(分岐鎖アミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン)が豊富に含まれています。
そして、鉄分。
吸収が良いヘム鉄が摂れるということで、長距離走やバスケットボール、ラグビーなど、赤血球が壊れやすい動きをするスポーツをしている方や貧血になりやすい女性にもおすすめです。
冒頭で、私の趣味はジョギングやマラソンだと申しましたが、各地で開催されるマラソン大会へ、旅行がてら参加しています。
2016年に高知県で開催された四万十川ウルトラマラソンに出場した時は、旅程の都合上、現地でおいしい鰹を食べることができず悔しい思いをしたものですが、帰ってきてから都内で土佐料理のおいしいお店にうかがっていただきました。
おいしい鰹のたたきは塩でいただく、と聞いてはいましたが、そちらのお店では塩とニンニク、青ネギでいただくことが出来、大変満足したのを覚えています。
先ほどお話ししたとおり、ビタミンB群は食べたものを効率良くエネルギーに換えたり、赤血球をつくることにも関わっており、体を動かすことそのものや、動かした後に疲れをとることにも役だちます。また、ビタミンDは免疫系や、骨と筋肉の成長や萎縮に関係しています。
運動をすると、筋肉を壊してエネルギーに活用したり、汗でビタミン・ミネラルが出ていったりするので、一時的に免疫が低下して風邪をひきやすくなったりします。
そういったことをカバーしてくれる栄養成分が鰹には含まれているのですね!
ウルトラマラソン完走直後に食べられたら、なお良かったなぁと、今更ながら思います。
3.終わりに
以上のように、鰹はおいしいだけでなく、高タンパク低脂質、鉄分やビタミン類が摂れる、大変栄養豊富な魚なのです。
しかしながら、鮮度が落ちるのが早いというデメリットもあります。
そのため、なるべく鮮やかな赤身のものを選んだり、調理まで時間が空く場合は煮物や焼き物にすると良いでしょう。
理想的な鰹の献立は、スライスした玉ねぎやたっぷりの青ネギ、水菜などを付け合わせに。
これを肴にお酒をちびちびと、なんてのも良いですが、茄子の煮びたしやほうれん草の胡麻和え、キノコやお豆腐を具材にしたお味噌汁と、炊きたてのごはんを一緒にしたら、栄養学的にも視覚的にも、とても満たされた「鰹たたき定食」ができあがります。
そして、お魚を買う時は、できるだけ天然ものを選びましょうね!
技術的な課題や、もともと鰹自体の価格がそれほど高値ではないことから、養殖の鰹はほとんど出回っていないと思いますが、概ね養殖魚というのは、飼料が穀物や油かすだったりすることが原因で、DHAやEPAの含有量が少ないと言われています。
そのため、少々お高くても身体をつくる食材としては、天然魚を選ぶことを推奨しています!
今年はもう、鰹の旬はおわりかけですね。
そろそろスーパーマーケットでも鰹を見ることは稀になってくる頃ですが、鹿児島あたりでは、12月頃、戻り鰹ならぬ「迷い鰹」と呼ばれる、脂の乗り切った幻の高級鰹がとれるとか?
そんな珍しいものにはなかなかお目にかかれませんが、寒い冬を超えたらまた、ぴちぴちの初鰹の時期がやってきます。次の鰹の旬を楽しみに、日々過ごしていきたいと思います。
以上、小原がお伝えいたしました!
次回は「みかん」のお話しです。どうぞお楽しみに。
小原 亜希子
【WELLMETHOD商品プランナー】
スポーツ栄養学に精通し、大学院修了後は管理栄養士として、スポーツ選手や学生向けの栄養指導などに従事。
その後、サプリメント開発を経て、2020年6月よりWELLMETHODチームへ商品プランナーとして加入。
心地良く生活することを大事にし、保護犬である愛犬チャシローと1人&1匹の暮らしを送っている。
趣味はジョギングと旅行。
毎日のラン記録とチャシローとの日々は、instagramで公開中。
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