“腸内フローラ”を制する者は健康を制する! 整えるための9つの新習慣
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
突然ですが、みなさんは「腸内フローラ」という言葉を聞いたことはありませんか。
腸内フローラの乱れが原因で便秘が引き起こされたり、逆にバランスを整えればダイエットが期待できるなど、私たちの健康と深い関係があります。
また「腸は第二の脳」ともいわれており、腸内環境を整えることは、心身の健康状態や美容に大きな影響を与えます。
今回は、腸内フローラとは私たちの体においてどのような役割を果たしているのか、その特徴を詳しく解説していきます。
目次
1.そもそも腸内フローラとは何か
腸内フローラとは、私たちの腸内に常在する細菌の集合体のことです。
小腸から大腸には、およそ1,000種類、数にして100兆個以上もの細菌が生息しているといわれています。
その細菌を顕微鏡でみると、まるで多くの植物が生息しているようにも見えます。
そのため、英語の花畑(floraフローラ)という名称から、腸内に住んでいる多種多様な細菌の集合体を「腸内フローラ」と呼ぶようになりました。
腸内フローラには実にさまざまな細菌が存在しており、健康的な腸内環境では、それらが協力しながら人の体の働きをサポートしています。
人の体にとって悪い菌が増えると私たちの体には便秘や下痢といった腸内トラブルが生じ、反対に良い菌が増えると、お通じが改善されたり、肌ツヤが良くなったりするのです。
1-1.腸内フローラには3つの役割がある
腸内に100兆個もの腸内細菌が暮らすことにより、体にとって次のような効果があります。
・消化しにくい食べ物を、体に吸収しやすい形の栄養素に作り変える
・腸のバリア機能を高め、病原体などの侵入を防ぐ
・免疫や代謝、精神、認知など人の体内の様々な働きをサポートする
近年の研究結果によると、腸と脳は密接な関係にあることが分かっています。
脳がストレスを感じると、自律神経を通して腸の動きを低下させて腹痛などを起こすだけでなく、ビフィズス菌などの有用菌を低下させ、ウェルシュ菌などの悪玉菌を増やすことなどがわかっています。
ただこうしたケースも、腸内フローラの環境が整っていれば腹痛が悪化することは少なく、自律神経の乱れを防ぐことができるといわれています。
1-2.腸内フローラの状態は人それぞれ
腸内フローラの面白いところは「同じ腸内フローラを持つ人はこの世に存在しない」ということです。一人一人の顔や手相、指紋などが違うように、それぞれの人が持つ腸内フローラは異なります。
また、腸内フローラの違いは、健康状態にも現れます。
例えば、健康な人の腸内フローラと、肥満の人の腸内フローラには、腸内にある細菌の割合に大きな違いがあることが分かっています。肥満や病気を防ぐためには、腸内フローラの環境を健康体に近づける必要があるのです。
2.腸内フローラを構成する腸内細菌とは
腸内フローラには100兆個もの腸内細菌が生息しており、それらは大きく3つの種類に分けることができます。
まずは乳酸菌やビフィズス菌が有名な「有用菌(善玉菌)」、そしてブドウ球菌やウェルシュ菌といった「悪玉菌」、最後にどちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」です。ここからは、それら3種類の細菌について詳しく見ていきましょう。
2-1.体にとってうれしい「有用菌」
有用菌は、人の体にとって有用な働きをする菌です。悪玉菌が体内に増殖するのを防いだり、腸の運動を促したりします。腸内で活躍する有用菌といえば、これらになります。
・ビフィズス菌
・乳酸菌
・酪酸菌
・酢酸菌 など
https://wellmethod.jp/mykinso/
これらの菌は、有機酸(腸内環境を整える酸)を分泌する酸性環境が好きな菌といわれています。
腸内細菌が作る、乳酸・酢酸・酪酸・プロピオン酸などの有機酸は「短鎖脂肪酸」とも呼ばれています。短鎖脂肪酸は、腸内を有用菌が暮らしやすい酸性環境にする上に、免疫系や代謝系に働きかけて健康にも役立ちます。
2-2.体に悪影響を及ぼす「悪玉菌」
悪玉菌は別名「腐敗菌」とも呼ばれており、その名前の通り腸のなかを腐らせ、有害物質を作るという作用があります。悪玉菌の割合が増えると体の不調につながってしまうことも多いです。具体的な悪玉菌の種類は次のようになります。
・病原性クロストリジウム菌
・病原性大腸菌
・ウェルシュ菌
食中毒の原因にもなる大腸菌やウェルシュ菌も、悪玉菌の一つです。これらの細菌はたんぱく質を腐らせて毒素を発生させるといった作用があります。
ただ、最近では、いわゆる「善玉菌」「悪玉菌」という分け方は正確ではなく、環境によって良い働きをするか悪い働きをするかは変わってくると考えられています。
悪玉菌と呼ばれる細菌であっても、適正なバランスの中にいれば、必要な働きを担っていると考えられています。例えば、有用菌では排除できなかった病原菌を悪玉菌が排除してくれるというケースもあるのです。
2-3.敵にも味方にもなる「日和見菌(ひよりみきん)」
腸内にいる菌は有用菌(善玉菌)と悪玉菌の2つのイメージが強いかもしれません。しかし、腸内には「日和見菌」という、どちらにも属さない菌が最も多く存在しています。
日和見菌は腸内環境において、その立ち位置を変えることでも有名です。例えば腸のなかで有用菌が優勢なときは、日和見菌が有用菌の味方となって、腸内環境を整えてくれます。
反対に、悪玉菌が優勢になっているときは、日和見菌が悪玉菌の味方となり、腸内環境を荒らすといった立場に変化します。ストレスや暴飲暴食で悪玉菌が腸内に増えてしまうと、中間の立場であった日和見菌が悪玉菌に加勢し、ますます腸内環境を荒らしてしまうのです。
つまり、健康的な腸内環境を手にするには、この日和見菌をどうコントロールするのかがポイントになってきます。
3.腸内フローラの理想的なバランスとは
腸内フローラには主に3種類の菌が生息していることがわかりました。そして腸内フローラの理想的なバランスは
「有用菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割」
とされています。
人によって違いはありますが、腸内において、1割程度の悪玉菌の存在は問題ではなく、それ以上に善玉菌が多く、日和見菌が味方についていれば、全体的に「良い腸に環境」と言えます。
どの種類の菌であれ、単一の菌が極端に増えたりして、比率が極端に変わってしまうと、腸内環境は乱れ、健康において多くのデメリットが生じてしまいます。
3-1.有用菌の数でなく、全体のバランスが大切
ただ、腸内フローラの理想的なバランスを見ると「有用菌が2割」しかありません。有用菌は最も体に良いとされている菌なので、いっそのことすべて有用菌が良いのでは? と思う人もいるでしょう。
腸内フローラのバランスを整えるには、実は有用菌の数ではなく、それに共存する多くの腸内細菌のバランスが大切です。多くの種類の菌が共存することで、それぞれの菌が作用し合い、体に良い効果を及ぼすことが分かっています。
例えば、有用菌のなかには、存在するだけでそれ単体では特に働いていない菌もあります。また、悪玉菌であっても、日和見菌とともに良い働きをして、病原菌を排除してくれる効果がある細菌もいるのです。
このように腸内フローラは、有用菌だけに偏らず、それぞれがバランスよく共存することで、体にとって良い相互作用を発揮してくれます。
4.腸内フローラを整える生活習慣
腸内フローラを整えることは、肥満を防止し、ダイエットを成功に導くことにもつながります。また、腸内フローラが整っていると、免疫機能が維持され、健康的な体づくりができるようになります。
腸内フローラを整えるには、腸内細菌のバランスを整えてあげることが大切です。それに効果的な食べ物としては「乳酸菌」や「ビフィズス菌」そしてそれらを活性化させるための「食物繊維」や「オリゴ糖」などです。
4-1.ビフィズス菌・乳酸菌を摂取する
ビフィズス菌は主にヨーグルトにしか含まれていませんが、ヨーグルトなどの乳製品が苦手な人はサプリメントなどで摂取することができます。しかし、ビフィズス菌がゼロでなければ、プレバイオティクス食品を増やすことでビフィズス菌を増やすことも可能です。
プレバイオティクス(食物繊維・オリゴ糖)については5章にて解説いたします。
一方、乳酸菌はビフィズス菌と比べて多くの発酵食品に含まれます。
・ヨーグルト、チーズ
・乳酸菌飲料
・漬物(キムチ・すぐき漬け・ザワークラウト)
・一部シードル(バスクシードルなどは酵母だけでなく乳酸菌による発酵も加わる)
大切なのは、日々、プレバイオティクス食品とプロバイオティクス食品両方を食べるシンバイオティクスを実践することです。シンバイオティクスについても、5章で詳しく解説していきます。
4-2.脂質を摂りすぎないようにする
近年、日本人の腸内フローラが乱れて肥満や病気などにつながることが問題視されています。その原因となるのが「欧米化した食事」です。
日本人の食事はもともと、納豆や漬物、干物などの発酵食品が多く、それらから豊富な有用菌を摂ることが可能でした。しかし、欧米化した食事が原因で脂質や動物性のタンパク質の量が増えた一方で、食物繊維の摂取量が減ってしまい、結果的に腸内に悪玉菌が増えてしまったのです。
欧米化した食事は腸内環境を悪化させ、アレルギーや自己免疫疾患、大腸がんを増やす原因にもつながると指摘されています。積極的に乳酸菌などを摂ることも大切ですが、まずは食生活をふり返ってみましょう。
4-3.アルコールを摂りすぎないようにする
乳酸菌や食物繊維を積極的に摂っているのに、なぜかお腹の調子が悪い。そういった人は「アルコール摂取」が原因で腸内環境が乱れていることも考えられます。
食生活でどれだけ意識して有用菌を摂っていても、多量のアルコールにより、腸内細菌のバランスが乱れて悪玉菌が増えてしまうのです。
毎日のようにお酒を飲むという人は、休肝日を設け、お腹の調子がどう変わるのか観察してみるのも大切です。
しかし、お酒は発酵食品でもあるため、上手に飲めばヘルスケアにも役立ちます。
最近注目の、りんごのお酒・シードルは、腸活もでき、グルテンフリー、プリン体フリー、低アルコールのため、おすすめです。
5.腸内フローラを整える食生活
5-1.シンバイオティクスを実践することの重要性
腸内フローラを整えるためには「シンバイオティクス」を取り入れた食生活を意識することが大切です。
シンバイオティクスとは、腸内環境を整えるために欠かせないプロバイオティクスとプレバイオティクスの両者を組み合わせて摂取することです。
その名をうたった栄養補助食品なども多いのですが、実は日常の食生活で摂ることもできます。まずは、プロバイオティクスとプレバイオティクスについて見ていきましょう。
5-2.プロバイオティクスは日本古来のスーパーフードから
プロバイオティクスは、有用菌そのものを摂ることができる食品です。代表的な食品でいえば、これらが挙げられます。
・発酵食品
ヨーグルト、漬物(ぬか漬け・キムチ・すぐき漬けなど)、納豆、味噌・醤油などの発酵調味料
・有用菌のサプリメント
乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌などを配合したもの
プロバイオティクスは日本古来の発酵食品にも多く含まれています。
これら日本古来からある発酵食品を積極的に食べることにより、プロバイオティクスを摂取することができます。
5-3.プレバイオティクスは主に食物繊維とオリゴ糖
プレバイオティクスは有用菌を育む食品のことで、人に消化吸収されず、大腸まで届いてエサになり、短鎖脂肪酸の原料になります。
主に、「食物繊維」や「オリゴ糖」「難消化性デンプン(レジスタントスターチ)」などがあります。具体的には以下のような食品です。
5-3-1.食物繊維
食物繊維は、水溶性と非水溶性があります。
水溶性は、人には消化されず吸収されない代わりに大腸まで届き、腸内細菌の中でも有用菌全般の大好物のエサとなります。
非水溶性の食物はエサにはならないものの、ぬくぬくした寝床を与えます。
また、腸の運動を活発にする為、便秘がちな人には必須の食物です。
・水溶性食物繊維:りんご・プルーン、バナナなど果物、わかめ・コンブなど海藻類、こんにゃく、大根などの野菜、穀類(麦類)、豆類
・非水溶性食物繊維:きのこ、芋類、豆類、穀類(未精製のものに多く含まれる)、葉物野菜、ゴボウ など
なお、ゴボウやニンジンなどの根菜類、アボカド、納豆などには両方が多く含まれます。
5-3-2.オリゴ糖
また、オリゴ糖は、砂糖の代わりとなる甘味料で自然界に存在するもので、シロップタイプや顆粒タイプのものが市販されています。
ただし、イソマルトオリゴ糖は、一部人に消化されて大腸まで届きにくい為、十分な効果が得られません。
「オリゴ糖」と表示されていても、ブドウ糖や人工甘味料が原材料として使用されているものもあるため、原材料表示を確認し、100%のものを選ぶようにしましょう。
5-3-3.難消化性デンプン
難消化性デンプン(レジスタントスターチ)は、デンプンの中でも、ポソポソしたタイ米やインディカ米、タピオカ、じゃがいもなどに含まれます。
デンプンは、冷えると食物繊維のような働きになり、腸内細菌のエサになるので、意識して摂るようにしましょう。
「腸内フローラのバランスを整える」と聞くと、ビフィズス菌や乳酸菌といった有用菌だけをイメージする方が多いかもしれません。しかし、それら有用菌をしっかりとお腹のなかで育てるには、プレバイオティクスの食物を摂ることが欠かせないのです。
ちなみに、大人が1日に摂取したい食物繊維の量はおよそ20グラムであり、現代人はその半分も摂っていないとされています。
3食のうち1食はせめて和食にするなどし、普段から意識してこれらの食物を摂るようにしましょう。
6.腸内フローラと肥満との関係性
腸内フローラと肥満には密接な関係があります。
例えば、乱れた食生活などが原因で発症してしまう、2型糖尿病の患者の腸内は、共通して腸内細菌のバランスが乱れています。その結果、インスリンが効きにくくなってしまうのです。
反対に、健康体重を維持している人の腸内には腸の動きを促す有用菌が多く存在し、腸内環境が整っています。
ですので、太りやすい人の場合は、代謝を高める短鎖脂肪酸を分泌する菌を増やす為に、シンバイオティクスを意識した食生活を基本スタイルにしましょう。
また、腸内細菌タイプにおいて、バクテロイデス属と比較し、プレボテラ属の比率が高い人は、「高食物繊維・高タンパク質食」に切り替えることで、ダイエット効果が期待できます。
野菜や海藻、きのこなどをたっぷり、肉や魚などのタンパク源を摂るダイエット法がおすすめです。
医療機関・人間ドッグにて腸内フローラ検査が受けられますので、ご自身の腸内環境を詳しく知りたい方は一度調べてみることをおすすめします。
https://wellmethod.jp/mykinso/
7.腸内フローラのバランスは自分の健康そのもの
私たちの腸内には100兆個もの細菌が住みついており、体調によってその形成パターンは変わっていくことが分かりました。
暴飲暴食を繰り返すと太りやすい悪玉菌が増え、反対に体に良い食事を摂り続けると、痩せやすい有用菌が増えるというのは驚きです。
腸内フローラは私たちの体形や健康に大きく影響するものなので、できる限りバランスを整え、理想的な美容と健康を手に入れたいですよね。
ただ、いくら体に良い菌を摂っても、アルコールを摂取しすぎたり、脂質の多い食事ばかり摂ったりしては意味がありません。
健康的な体づくりのためにも、まずは自分の食生活を見直すことから始めましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
- facebook
https://www.facebook.com/drlisakirimura - Instagram
https://www.instagram.com/drlisakirimura/ - twitter
https://twitter.com/drlisakirimura
著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか