皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

やる気はあるのに、食後の眠気に耐えられない!
うとうとして集中できない!
この眠気さえなければ、もっと効率よく動けるのに!

食後に惰眠をむさぼっても、誰かが代わりに仕事や家事、育児をしてくれるという御身分でもない限り、食後の眠気は厄介者ですね。

食後の眠気には、脳内の神経伝達物質、自律神経、血糖値が関連していますが、自分次第で克服も可能です。

1.食後の眠気にはこうして誘われる

以前には、「食後には血流が胃に集中するから、脳の血流が低下して眠くなる」と言われていましたが、私たちの生命線である脳の血流はそんなに簡単に低下するものではないとされています。

それでは、どうして?

そこには、3つのメカニズムが関連しているとされています。

1-1.覚醒物質・オレキシンの低下

まずは、新しく発見された神経伝達物質「オレキシン」の働きが関連していることがわかっています。

睡眠と覚醒、そして、食欲に関わる脳内の神経伝達物質「オレキシン」が発見されたのは、1998年の日本です。

オレキシンは、分泌が高まると食欲が増し、覚醒し、分泌が低下すると眠たくなる物質です。
オレキシンの働きをブロックすることで、覚醒のスイッチをオフにして睡眠を誘導する新しいタイプの睡眠薬「オレキシン受容体拮抗薬」も開発されています。

野生に暮らすライオンを思い浮かべて下さい。

ライオン

食糧にありつくことは、生死を分ける重要な問題です。

ライオンが空腹を感じると脳内でオレキシンが分泌されて、覚醒し、活動モードに切り替わることで、狩りをします。
狩りに成功して満腹になって、ライオンが昼寝を始める映像を観たことがありませんか?

満腹になるとオレキシン分泌が低下するので、覚醒から睡眠にスイッチが切り替わり、お昼寝モードになるのです。
人間も同じくです。

1-2.自律神経の働き

もう一つ、野生本能に関わるメカニズムが、自律神経です。

今度は、シマウマを想像して下さい。

シマウマ

草食動物のシマウマが、安全に食事をするには、天敵であるライオンに襲われない状況でなければなりません。
ライオンが襲いくる状況下に、呑気に草を食んでいる場合ではなく、逃げるためには消化器ではなく、手足の筋肉に血液を補給しなければなりません。これが、自律神経のうち、覚醒と活動を促す交感神経の働きです。

食事に関わる消化器は、リラックスモードの際に働くようになっていますから、人間も食事をして消化器を働く状況になると、自律神経のうち副交感神経が優位になって、リラックスモードになり、眠たくなるというわけです。

これらは、野生動物にも備わる、自然の摂理ですから、完全に避けることはできませんが、食事の量をコントロールすることで、ある程度は回避できます。

1-3.血糖値の乱高下

3つ目は、人間だけに起きるメカニズムで、とても不健康です。
食後の血糖値の急上昇と急降下による「血糖値スパイク」が、急激で耐えがたい眠気を引き起こします。

糖尿病でなくとも、血糖値が急激に上がる糖質を摂ることで、誰にでも起こりうる現象です。
炭水化物の多い丼ものや、おにぎりや菓子パンなどで食事をすませている人は要注意です。

ランチにパン

通常、食後の血糖値はなだらかに上がり、なだらかに下がり、3〜4時間後に元通りになります。

ところが、血糖値スパイクが起こると、食後30分ほどで血糖値が跳ね上がります。
そこで、血糖値を下げるホルモン・インスリンが膵臓から大量に分泌されることで、今度は急激に血糖値が低下に転じます。
場合によっては、上がったり下がったり、高血糖と低血糖を繰り返すケースもあります。

血糖値が下がってしまうと、脳の栄養であるブドウ糖の供給が低下するため、脳活動が低下して、眠気を引き起こすとされています。

一方で、急激な血糖値の低下は、体のエネルギー的な危機であり、血糖値を何とかあげようと交感神経モードになるため、副交感神経と交感神経のスイッチが急激に入れ替わり、自律神経がストレスを受け、疲労してしまいます。

うつやパニック症状の原因になることも以前の記事でお伝えしました。

『【医師解説】低血糖でうつやパニック? 糖質の摂りすぎが招く危険症状と6つの改善策|チェックリスト付』

https://wellmethod.jp/hypoglycemia/

2.食後の眠気の10の克服法

食後の眠気のメカニズムがお分かり頂けたかと思います。
オレキシンの分泌や副交感神経モードに切り替わることは生理現象なので、これを避けることはむしろ不健康ですが、ある程度の工夫で急激な眠気をコントロールすることは可能です。

血糖値の乱高下は、糖尿病だけでなく、自律神経の不調やうつやパニック症状などの精神症状をも引き起こす可能性があるため、必ず改善したいところです。

2-1.規則正しくマインドフルな食事を

時計

オレキシンの働きは、血糖値にも影響することが分かっています。
食事中にオレキシンが十分に分泌されていると、同じカロリーを摂取しても、筋肉での糖の利用が活発になり、血糖の上昇を抑えられ、血糖値スパイクによる眠気を抑制することに繋がります。

オレキシンを十分に働かせるには、味覚を刺激することと、規則正しく同じ時間帯に食事をすることで、「この時間には食事が食べられる」と脳に覚えさせて期待させることとされています。

早食いや、何か仕事をしながらのながら食いは、NG。
規則正しい時間に、目の前の食事に集中して五感をフル活用してマインドフルに食べることが大切です。

2-2.腹八分目以下に抑える

オレキシンは、空腹時に分泌が増してきます。
オレキシンの作用による、覚醒と集中、モチベーションの増加が最もえられるのは、空腹時ですから、大切な仕事の前には、あえて食事をせず空腹で臨んでみると、思わぬパフォーマンスが発揮されるかも知れません。

オレキシンの分泌が低下してくるのは、腹八分目程度からとされています。
満腹に近づけば、オレキシンの分泌は低下しておやすみモードになってしまいます。
「ちょっと物足りない」と感じる程度の食事量に抑えることで、完全に眠気に支配されてしまうことをある程度回避できます。

また、食事の量が少なく、糖質の絶対量が少ないと、血糖値も上がりにくくなりますね。

2-3.血糖値スパイクを抑える食事

血糖値のスパイクを抑える食事は、食後の急激な眠気を避けるために有効です。

1)糖質を控えめにする

血糖値のスパイクを抑えるためには、糖質の摂取を減らすことです。
丼ものをかき込んだり、うどんなどの麺類、おにぎりやパン、特に砂糖をたっぷり含む菓子パンなど炭水化物オンリーの食事は、糖質過多になりやすいため注意が必要です。

2)白い穀物より黒い穀物

雑穀米

精製された白いお米や白い小麦には、血糖値の上昇をゆっくりにする食物繊維が不足しています。
穀物は精製度の低いものの方が、血糖値のスパイクを予防してくれます。

うどんより、蕎麦。
白い小麦より、全粒粉やライ麦。
白ごはんより、雑穀米。
などを意識してみましょう。

ただし、どんなに未精製であっても糖質は含みますから、量をたくさん食べてしまうと血糖値は上がります。
量はほどほどにしましょう。

3)砂糖を控える

砂糖を含むパンやお菓子類は、血糖値を上げやすい食べ物です。
清涼飲料水やシロップ、甘いコーヒーなども同じくです。

人工甘味料も、インスリン分泌を刺激してしまい血糖値を乱高下させることが問題になっています。

おすすめは、オリゴ糖です。
100%のシロップタイプは使いやすく、味にもクセがないため、料理にも飲み物にも万能に使えます。
人には消化されないため、血糖値はあげませんが、大腸まで届いて腸内の有用菌のエサになりますので、腸活にも最高です。

イソマルトオリゴ糖だけは、半分消化されてしまうため、原材料表示を見て、これ以外のものを選びましょう。

4)朝食に食物繊維をしっかり食べる

ある食事で食物繊維を摂取すると、その次の食事の血糖値の上昇が緩やかになることが分かっています。
これを、セカンドミール効果と言います。

昼食後の眠気を防ぎたいのであれば、朝食に食物繊維をしっかりと食べること。
雑穀ご飯に具沢山の味噌汁、納豆。これで十分です。

食物繊維たっぷりの朝食

5)食べ順を意識する

食べる順番も大切だということが分かっています。
まず、ご飯をかき込むことが喜び!という方もいらっしゃるかも知れませんが、これは血糖値を上げてしまう食べ方。

炭水化物は最後に。タンパク質や脂質を含む主菜や野菜やきのこ類など食物繊維を含む副菜からまず食べて、ご飯は最後にちょっぴり。

懐石料理のような食べ方が理想的とされています。

6)食後に軽く筋トレをする

食後に階段を登る女性

食後に血糖値を上げたくないのであれば、運動をして筋肉を使うのが最も効率的です。
胃に食べ物が入った状態で本格的な有酸素運動をすると、消化器の血流が低下して消化の妨げになってしまうため、軽く筋肉を動かすことを意識する程度が良いでしょう。

スクワットをゆっくり20回。
椅子に座ったまま、太腿を上げて腹筋と背筋を鍛えてみる。
エレベーターの代わりに階段を使ってみる。

など、少し筋肉を動かす工夫をしてみましょう。

血糖値スパイクと改善方法は、こちらもご参照ください。

『【医師解説】低血糖でうつやパニック? 糖質の摂りすぎが招く危険症状と6つの改善策|チェックリスト付』

https://wellmethod.jp/hypoglycemia/

2-4.お昼寝タイムを設ける

昼寝をする女性

コロナの影響で在宅勤務になって良かったことと言えば、自由に昼寝ができることではないでしょうか!?
どんなに血糖値に気をつけても、オレキシンの低下と副交感神経の働きで、食後のある程度の眠気は避けられません。
ここで我慢をすると、パフォーマンスが低下しますから、争わずにお昼寝タイムを設けてしまいましょう。

あまり長く眠ると夜の睡眠に影響が出てしまうので、15~30分くらいに止めること。

2-5.夜の睡眠の質を高める

睡眠

日中の耐え難い眠気は、夜の睡眠の質が悪いからかという可能性もあります。

夜の睡眠の質を高めるために、夜はパソコンやスマホと距離を置き、ゆったりとリラックスして過ごすこと。
また、血糖値の上昇は、睡眠中の成長ホルモンの分泌を妨げ、体の回復を妨げますから、夜の糖質は控えめすることなど、工夫をしてみましょう。

食後の眠気は、野生の生理現象という側面もあり、誰にでも起こる可能性があります。
ただし、耐え難い眠気で、活動に支障が出てしまうようであれば問題ですね。
血糖値のスパイクは、眠気どころではなく、体を老化させ、精神にも影響を与えてしまう可能性もありますから、必ず改善したいところです。

少しの工夫で眠気をコントロールして、日中のパフォーマンスを高めましょう。

LINE登録でプレゼント実施中!
詳しくは→ https://wellmethod.jp/present/

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

桐村 里紗の記事一覧
tenrai株式会社 https://tenrai.co/
公式ブログ http://dr-lisa.info/