皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

新型コロナウイルスの感染拡大で続くこの自粛生活・在宅生活をポジティブに捉え、これまでの不健康や無駄をリセットし、ライフスタイルを一新するための知恵と技をお伝えしたいと思います。

今回は、食べ物の無駄、フードロスについて考えてみましょう。

1.新型コロナの影響でフードロス発生

1-1.食料は不足どころかむしろ余剰に

スーパーマーケットの様子
▲3月26日、都内スーパーマーケットにて(撮影:桐村医師)

 

新型コロナの影響で、今は食料品が足りないどころか、外食産業や観光・ホテル業が使わなかった農産物や畜産物、海産物などがむしろ余っているようです。

社会情勢への不安から、「食料品がなくなるかも!」と買い走り現象が起き、一時的にスーパーの棚が空になる一方で、市場に余った食料は廃棄されてしまうという不均衡が起きています。

日本政府は、緊急事態宣言の発令下でも、食料品や日用品の流通と小売は止まらない為に、くれぐれも心配しないようにと発表しています。

不安で買い占めたくなる気持ちは分かりますが、ここは自分勝手にならず、協力し合いながら冷静に対処したいところです。

一方で、その危機に直面したからこそ、普段当たり前にある食べ物の有り難みを感じることができるのではないでしょうか。

普段は、食べ残したり、腐らせて捨ててしまっていた食べ物について、自宅にいる時間が長い今こそ、見直す絶好のチャンスです。

1-2.広がる食料格差

日本で発生するフードロス(食品ロス)は、年間 632万トン。そのうち、食品産業からの発生量は 330万トンとその過半を占めていると推計されています。

300万トンという量は、世界食糧基金による世界全体の食料援助量と同じだそうです。

世界のどこかで食料があまり、ゴミとして捨てられる一方で、別の地域では食べられずにあえぐ人達もいるという不均衡が生じています。

食糧不足は、途上国の問題だけではありません。格差が広がる先進国でも、貧困から飢餓にあえぐ人達がいることも事実です。

この問題を解決するためにアメリカからスタートした「フードバンク」の取り組みが、日本でも始まっています。

これを機に思い出すべきは、日本人特有の「もったいない」精神。
私達一人一人にできることを考えてみたいと思います。

2.持続不可能なフードロス問題

2030年までに「持続可能な社会」を世界中の全員で協力しながら実現しようという国連の「持続可能な開発のための 2030アジェンダ」通称、「SDGs(エスディージーズ)」。

各企業の取り組みが行われて、耳にしたことがあるかも知れませんが、私たち個人個人が日々できることを積み重ねていくこともとても大切なアクションです。

その中でも「フードロス」は、一つの大きな課題となっています。

野菜の収穫

2-1.余った食品は産業廃棄物になる

日本で発生する年間フードロス量は、10tトラック約1700台分もの食料となり、お茶碗1杯に例えると、全国民が1日1杯ずつのご飯を捨てているのと同じ計算になるそうです。

主には、十分に食べられるものが、産業廃棄物として捨てられている現状があります。

2-2.規格外や過剰はゴミとなる農産物

味は変わらないにも関わらず、消費者が選ばず店頭に並べられない、規格外のサイズや形、傷ありの野菜や果物。

日本の消費者は、特に見た目の美しさや色、形にこだわるために、標準と比べて、大きすぎる・小さすぎる・曲がっているなどのいわゆる規格外のものや、栽培の過程で傷ができたもの、色づきが良くないものなどは、市場に出回ることなく廃棄されることが少なくありません。

また、ある年に、気候条件から特定の野菜や果物が大量に収穫されることもありますが、すると流通量が増えるために、市場価値が落ちてしまうという生産者側の都合で、過剰な分を間引く形で廃棄されることもあります。

農業の生産現場で発生するフードロスは、年間150〜200万tと大きな割合を占めています。

2-3.パッケージのミスでゴミとなる加工食品

加工食品

加工食品は、ある意味で工業製品です。

ですから、製造過程でミスがあれば、産業廃棄物としてゴミを増やします。

中身の品質に問題がないにも関わらず印字ミスや包装の破損などの理由で、食べられるはずの加工食品が産業廃棄物に変わってしまいます。

しかも、スーパーマーケットなどの小売店の注文に応じて納入ができず、その棚を空にさせてしまった場合、売り上げに穴を開けてしまった分の罰金として「欠品ペナルティ」なる損害賠償をしなければならないという業界の事情もあるそうです。
そのために、急な注文の増加にも対応できるように常に潤沢に製造しておく必要があり、ロスが発生しやすくなっているようです。

2-4.小売店での過剰な食品

賞味期限、消費期限切れの食品が廃棄されることはもちろんですが、コンビニ、スーパーマーケット、デパートなどの小売店で並ぶ食品には、その期限の手前に「販売期限」があります。

販売期限がきた食品は、返品されるならまだしも、まだ食べられるにも関わらず廃棄されてしまう場合があります。

2-5.衛生面から消極的になる飲食店

「もったいない」という精神から、食べ残しは悪とされる日本ですが、最近では人それぞれ。

子どもに「食べられなかったら、残しちゃいなさい」と平気で言う親御さんも見かけます。

消費者側の立場からは、「持ち帰り」を希望する人が多い傾向にあるようですが、特に日本では、食中毒や感染症の拡大などから衛生面を懸念して飲食店側が、食べ残しの持ち帰りを嫌い消極的になる傾向があるようです。

3.家庭での3つのフードロス

家庭から発生するフードロスは、全体の半分程度とされています。

その原因は主に、3つ。

・直接廃棄
・食べ残し
・過剰除去

食卓の様子

3-1.買いすぎてそのまま捨てる直接廃棄

直接廃棄とは、買い過ぎや長持ちしない保存法で食べ物を腐らせてしまい、調理されずにそのまま廃棄されるもののことを言います。

要するに、無計画なので、家計を考えても反省すべきポイントです。
その他にも、贈答品を使い切れないことなども挙げられます。

3-2.「もったいない」食べ残し

作り過ぎや好き嫌い、料理の失敗、作ったものの冷蔵庫で放置して忘れていた。

などの理由で、食べ残しが発生して、家庭ゴミになります。

子供の教育としても、よろしくありませんね。

3-3.過剰除去

食べられるはずの部分を過剰に取り除いて捨ててしまうことを言います。
調理の技術、つまり包丁使いが下手な場合もありますし、知識不足から無駄にしている場合もあります。

4.フードロスに対するサービス

このようにして生まれるフードロスは、大きな課題であり、社会全体での取り組みやサービスが生まれ、私たち一人一人が貢献することができます。

農作物

4-1.食品を貯金して分けるフードバンク

フードバンクは、食品廃棄物の問題や格差社会に生まれる先進国の飢餓問題の解決策として、アメリカから生まれたシステムです。
全米では200以上の団体が生まれています。

スーパーマーケットやレストランやホテルなどを大きな冷蔵車が周り、フードバンクに食料を集めます。主なスーパーマーケットなどの多くがフードバンクに加盟して、社会全体で取り組まれています。

この取り組みは、今やヨーロッパ、アフリカ、アジアの各地域にも拡大しています。
日本でも農林水産省や環境省が推進し、いくつかのNPO法人などがフードバンクに取り組んでいます。

4-2.畑から家庭へ農産物を届けるFarm to Family

作物の収穫

加工食品だけでなく、「Farm to Family(畑から家庭へ)」として、市場には出荷できない新鮮な農産物が農家からフードバンクに提供されます。

フードバンクに集められた食料は、主にボランティアによって仕分けされ、パントリーで無料〜格安で販売されたり、福祉施設に提供されたり、炊き出しなどの材料として提供されることになります。

特にアメリカでは貧困層の肥満が深刻な問題ですが、フードバンクの取り組みによって栄養バランスの良い野菜や果物を提供することが可能になっています。

廃棄物を減らすことが地球環境への貢献に繋がることで、持続可能性の高い取り組みということが出来ます。

4-3.持ち帰りはルールや意識が大切

アメリカでは、レストランで食べ物を残したら、「TO GO(持ち帰り)するか」とほぼ必ず聞かれます。
持ち帰り用の容器は「doggie bag(犬用のバッグ)」と呼ばれていますが、「いえいえ、私たちが食べるんじゃなくて、犬にやるんですよ」という言い訳が語源です。
もちろん、食べるのは自分たち人間です。

衛生管理面から日本では消極的になりがちな持ち帰りですが、フードロスの観点からは積極的に行いたいものです。

そもそも、食べきれないほど注文しないことが大切ではありますが、そうもいかないシーンがあります。
「衛生面から、持ち帰りは自己責任」という意識を消費者側が持つことや、加熱が不十分な食品は避けるなどの意識づけやルール作りが必要になります。

消費者庁や農林水産省などが「食べ残し対策に取り組むに当たっての留意事項」を作成していますので、これを参考にしてみるといいでしょう。

4-4.飲食店のロスをアプリで救済するフードシェアリング

レストランなどの飲食店やパン屋総菜屋などの食品店で、提供されずに余りフードロスになりそうな食品が発生したら、アプリで情報提供して、近くの消費者が安く購入できるプラットフォームサービス「TABETE」が話題です。

ダウンロードして、現在地や地名、駅名、ジャンルなどで検索すると、レスキュー待ちの食品があるお店が出てくるシステムです。

4-5.新型コロナで余った農産物を食べて応援

農産物を農家から自宅へ直送してくれるフードサービス「ポケットマルシェ」では、新型コロナウイルスの影響で余って困っている農家さんの農産物を「#新型コロナで困ってます」と共にリストアップして販売しています。

余剰になると廃棄されてゴミとなる新鮮な農産物ですが、買い物に行かずとも受け取れることは、双方にとって嬉しいサービスです。

「みんなで買って、食べて応援しよう!新型コロナからのフードレスキュー特集」

4-6.ユニークな農産物を直接販売

生産者と消費者を直接つなぎ、規格外や傷ありの農産物のフードロスを減らすWebサービス「única(ウニカ)」は、形の悪い野菜を「ユニーク」と表現しているところが、ユニークです。
不揃いの野菜は形も面白く、スーパーではお目にかかることができませんが、品質には問題がありません。これを価値がないものとして捨てることは大変なロスになります。

「ユニーク」という表現で価値を高めることで、「形が良ければ」「見た目が良ければ」という消費者の意識を変えるきっかけにも繋がります。

4-7.マイナスをプラスに変えるアップサイクル

市場に並べられない農産物や加工の過程で使わない皮やヘタの部分は、一般的にゴミとして無価値どころか、地球の環境に負担をかけるマイナス要因になるものです。

食品だけでなく、人が生産したり生活したりする過程で生まれる廃棄物という巨大な負担。このマイナスをプラスの価値に変え、役立つプロダクトに変えることを「アップサイクル」と言います。

市場に並べられない農産物を、廃棄する代わりに、ジャムやジュースなどの加工食品としてアップサイクルしたり。
捨ててしまう皮やヘタなどを原材料に健康に役立つ栄養素や衣服、生分解性プラスチック、燃料などに応用してアップサイクルを事業化する企業も増えています。

5.家庭でできるフードロスへの取り組み

社会全体での取り組みと同時に、私たち一人一人が日々できることがあります。

野菜

5-1.直接廃棄へのアクション

1. 買い過ぎない
2. 長持ちする保存法を知っておく
3. 食材を有効活用するようにレシピを検索してみる
4. 自分の好みでない贈答品はフードバンクに寄付する

5-2.食べ残しへのアクション

1. 作り過ぎない
2. 冷蔵庫での保管場所を決めて定期的にチェックする
3. 好き嫌いをせず食べる
4. 失敗防止のために料理の技術を上げる!

5-3.過剰除去へのアクション

1. 包丁使いの技術を上げる!
2. 皮や葉っぱまでそのまま調理やベジブロススープとして使ってみる

「ベジブロススープ」とは、捨ててしまう皮やヘタ、芯などのを集め、グツグツ煮込み野菜のエッセンスを抽出したダシのことです。野菜に含まれる栄養素が多く含まれている部分です。
「ベジブロス」で検索するとレシピが出てきますので、ぜひ挑戦してみてください。

家庭でのフードロスを避けるためには、こんなちょっとしたことを積み重ねていくことで十分です。

5-4.アップサイクル製品を購入する

さらに、私たち消費者は、消費すること、つまり製品を買うことで、その製品を通してフードロス対策に貢献できます。

廃棄されるはずだったものをアップサイクルして作られた食品やサプリメント、衣類や日用品などの製品を購入することは、その企業を応援し、その先のフードロス対策を共同作業で行っていることに繋がっています。

私たちは、一人一人の力がそれほど世の中に影響するとはなかなか信じることができません。でも、一人一人が選択を変え、行動を変えることで、大きなニーズとなれば、マーケットが変わり、社会のシステムを変えることも不可能ではありません。

今日からできることを始めてみてくださいね。

参照:
FEEDING AMERICA
https://www.feedingamerica.org
環境省 
https://www.env.go.jp/recycle/food/shiryou.pdf
農林水産省 
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank/pdf/data1-2.pdf
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_8-38.pdf

医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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