更年期はいつから? 平均的な年齢と症状と和らげるための対策
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
40代を過ぎると、いろいろと体の不調を感じることも増えますよね。
筆者もちょうど40歳を迎えたころから疲れやすくなり、体が冷えるとめまいを感じるといった不調に悩まされていました。
そして、この頃の年齢における原因不明の不調を、更年期障害ではないのか? と疑う人も多いのではないでしょうか。
筆者もめまいについて婦人科で相談したのですが、更年期が原因で起こるものではないといわれ、そのまま様子を見ることにしました。
仕事や家事に追われ少し無理をしていた時期とも重なっていたので、自分なりにリラックスタイムを作ったり生活習慣を見直したりしていたら、耳鼻科に相談する前に自然と治まっていきました。
結局めまいの原因は不明だったのですが、やはり自分ではなんとなくホルモンバランスの乱れが影響していたのではないか、と感じています。
そもそも更年期とはどのような症状で、いつからやってくるものなのでしょうか。
今回は、更年期症状が起こる年齢や主な症状、その診断方法や治療法について、分かりやすく解説します。
目次
1. そもそも更年期とはどのような症状をいうのか
更年期とは、女性の卵巣機能が低下することにより女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が減少し、その影響で起こるさまざまな不調の状態をいいます。
女性は一般的に毎月月経がありますが、50歳前後になると卵巣機能が衰え、月経が止まる「閉経」を迎えます。
この閉経における前後5年のおよそ10年間に、 冷えやのぼせ、イライラといった不快な症状を経験することが多く、これを更年期障害と呼んでいます。
▼更年期障害の症状とは? 正しい対策を立てるためには原因を知ろう!
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1-1. 更年期になるとどうなる?
更年期にさしかかると、体にはいろいろな変化が起こります。
その変化は月経が終わりかけている時期に起こるものと、月経が終わったあとの症状に分けることができます。
まずはこの「更年期にあらわれる症状」と「閉経後の症状」について詳しく見ていきましょう。
1. 更年期にあらわれる症状
更年期にさしかかると、まずは月経周期が乱れます。
それまで毎月規則的に来ていた月経の周期が短くなったり、出血がだらだら続いたりと、予測不能な月経が続くこともあります。
人によっては過多月経により貧血を起こしてしまうこともあるでしょう。
月経周期の乱れは、一般的に閉経の2~3年前ごろから始まり、そのような不規則な月経を繰り返した後、閉経を迎えることが多いです。
そして更年期がはじまると、女性ホルモンの乱れにより、身体的にも精神的にも以下のような症状が出ることが多いです。
・月経周期の乱れ
・顔がほてる、発汗する(ホットフラッシュ)
・動悸がする
・不眠
・胃もたれや胸焼けなど消化器の不調
・イライラしたり憂鬱になったりする
・頭痛やめまい
など
顔がほてるのはいわゆるホットフラッシュと呼ばれる症状で、突発的に上半身を中心に発汗してしまうものです。
また動悸はとくに運動をしていないのに、急に胸がどきどきするようなこともあります。
心配な症状だけに内科で検査する方もいますが、そこで問題がなければ更年期障害を疑う必要があるでしょう。
そしてイライラや憂鬱感は更年期によく起こる精神的な症状です。
女性ホルモンであるエストロゲンが不足し、精神の安定に不可欠なセロトニン分泌が低下することで、精神的に不安定になることが多いです。
更年期により心身ともに疲れてしまうこともあるので、我慢せず医師に相談することも大切です。
▼ホットフラッシュってどんな症状?発症する原因や対策を知っておこう
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2. 閉経後の症状
月経が1年以上なくなった状態を閉経といいます。閉経後における臓器は、次のように変化していきます。
・生殖器:腟の粘膜が薄くなって乾燥し、弾力を失っていきます。これにより膣が乾きやすくなり、痒みを伴う膣炎、性交時の痛みや、性欲の低下もよくみられます。子宮や卵巣などほかの生殖器もサイズが小さくなります。
・尿路:尿道の粘膜が薄くなり、尿道が短くなります。また、骨盤底筋群という泌尿生殖器を支える組織も弱ってきます。これにより尿路感染症を起こしやすくなったり、尿失禁などの排尿障害を起こしたりするリスクが高まります。
・皮膚:女性ホルモンであるエストロゲンの減少により、コラーゲンや皮膚に弾力を与えるエラスチンの量が減少します。これにより皮膚が薄くなって乾燥し、弾力を失います。
・骨:女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると骨量を維持する力が弱まり骨粗しょう症になるリスクが高まります。とくに閉経後の5年間は骨密度が急速に低下します。
・脂質値:LDLコレステロールの血中濃度が上昇します。一方で、HDコレステロールの血中濃度は閉経前とほぼ変わりありません。LDLとHDLコレステロールの比が高いと動脈硬化が進行しやすくなります。
閉経後の女性に動脈硬化が多いのは、このLDLコレステロールの上昇に原因があると考えられています。
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1-2. 更年期障害の症状が出ない人もいる?
女性なら誰もがいずれ閉経を迎えるので、更年期を迎えない人はいません。
しかし更年期症状の辛さは、人によってさまざまです。
中には閉経を迎えても特に体の不調はなく、無症状で過ごせる人もいます。
無自覚でも骨密度の減少やLDLコレステロールの上昇は誰にでも起こりうるものです。
ただ実際は、多くの女性が更年期による体の不調を感じているようです。
45歳以上を対象にした働く女性の健康に関する実態調査結果によると、更年期に関する症状がないと答えた人は27.5%であり、およそ7割以上の女性が何らかの更年期による症状があると回答しています。
参考)
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/common/pdf/0_5_3.pdf
この症状を重くとらえるかどうかは、その人の性格や症状の度合いによっても変わってきます。
重い症状に10年以上悩まされる女性もいれば、ほぼ軽症で更年期をさらりと過ごせる女性もいるのです。
1-3. 閉経が早い人の特徴
更年期は閉経を迎える前後10年の時期を指します。
つまり、閉経が早い年齢にはじまると、それだけ更年期症状を迎える時期も早まるといえるでしょう。
日本人の平均閉経年齢は50歳ですが、それより早く閉経する女性の特徴は次のようにいわれています。
・喫煙習慣のある人
・BMI指数が低く痩せ気味の人
・高地に住んでいる人
この他にも初経年齢が早い人や、妊娠回数が少ない人は、閉経時期が早くなりやすいといえます。
また、こうした閉経時期が早まる状況は、若年性更年期障害とも呼ばれ、ストレス社会の現代において増えているともいわれています。
2. 更年期はいつからはじまるのか
更年期は閉経年齢を挟んだ前後5年、合わせておよそ10年間を指します。
日本人女性の平均的な閉経年齢が50歳なので、更年期が始まる年齢はおよそ45歳から55歳までの10年間といえるでしょう。
しかし更年期症状は個人差が大きいため、必ずしも45歳になったら更年期が始まるとは限りません。
また、更年期症状が始まってもすぐに治まる方もいれば、閉経して10年以上経過してもなかなかすっきりしないという場合がある可能性もあります。
2-1. これって更年期症状? チェックシートで診断
ゆらぎ世代の女性が体の不調を感じたとき、それが更年期なのか、体の不調によるものなのか、分かりにくいこともあるでしょう。
自分が更年期かどうかを明確に診断するには、医師による診察が必要です。
それでも病院に行く前にチェックリストを確認し、自分が更年期かどうかある程度判断することもできます。
以下は簡略更年期指数(SMI)というチェックシートです。全10項目に対し、強・中・弱・無など、症状に合わせて採点していきます。
50点以下の方は自身での対策で体調を整えることが可能ですが、それ以上の点数がある方は婦人科への受診が必要です。
また「更年期」と診断するためには、更年期・女性外来で診察してもらう必要があり、血液検査でホルモンバランスや他の病気の可能性を調べたうえで、診断されます。
上記のシートはあくまで目安とし、更年期を疑う不調により日常生活に支障が出ている場合は、すぐに婦人科へ相談しましょう。
【更年期を疑う不調】
・顔や上半身が火照って熱くなる
・夜なかなか寝付けず目を覚ましやすい
・興奮しやすくイライラすることが多い
・無気力で疲れやすい
・不安感があり憂鬱なことが多い
・胸がドキドキしたり締め付けられたりする
・頭痛がしたり肩や首が凝ったりする
これらは、更年期障害だけで起こるものではなく、その他のホルモン異常や心疾患、栄養素の欠乏などが原因の可能性もあります。
更年期障害と診断するには、総合的に判断し、様々な可能性を除外していく必要があります。
重大な疾患や改善できる栄養障害を見逃す可能性もありますので、自己判断で片付けずに診断を受けましょう。
2-2. 30代でも起こる「若年性更年期障害」とは
一般的に更年期が始まる年齢は45歳頃ですが、働く女性が増え、ストレスを抱えやすくなった背景から、30代で月経が止まるといった「若年性更年期障害」も問題になっています。
若年性更年期障害の原因は卵巣機能の低下です。日ごろから以下のような精神状態や生活習慣を送っている人は注意しなくてはなりません。
・ストレスを溜め込みやすい
・冷え
・ハードワーク
・肥満
・過度なダイエット
・喫煙
・食生活の偏り
若年性更年期障害も一般的な更年期障害と同じように、ほてりや手足の冷え、めまい、頭痛といった症状があります。
放っておくと月経不順や無月経、不妊症を引き起こすこともあり、注意が必要です。
30代で月経が止まるといった状態が続いている場合は、すみやかに婦人科を受診しましょう。
40代前半までの月経周期は安定していることが多いのですが、女性ホルモンであるエストロゲンは30代後半になると緩やかに分泌量が下がり、閉経に向けて心身の変化が始まります。
そのため30代後半から冷えや肩こり、関節痛といった体の症状が現れる人もいます。
また、不正出血などの異常がある場合には、原因を特定するためにも、すぐに婦人科を受診するようにしましょう。
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3. 病院で行う更年期症状の治療方法とは
辛い更年期の症状を和らげるには、婦人科に相談することが大切です。
病院では主に「ホルモン補充療法」と「漢方薬治療」が行われます。
ホルモン補充療法は、更年期によって減少している女性ホルモンであるエストロゲンを人工的に補充する治療方法です。
最近では、合成ではなく、天然型の副作用の少ないホルモンを使用する方法もあります。
飲み薬や貼り薬などでホルモンを補充し、これによりホットフラッシュをはじめとした更年期症状が劇的に改善されることもあります。
そして漢方薬治療は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬を一定期間飲み続け、更年期症状を穏やかに緩和していく方法です。
比較的更年期の症状が軽い方や、ホルモン補充療法ができない人などが対象です。
どの治療法が良いかは、病院でのカウンセリングや診察、過去の病歴などを考慮して判断されます。
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4. 更年期症状を和らげるために自分でできる対処方法とは
更年期症状をしっかりと乗り切るには、婦人科に相談することが大切です。
しかし、婦人科に通ってもあまり症状が治らない場合は、日常生活になんらかの問題があるのかもしれません。
また、更年期を疑う不調がありつつも、病院に行くほどではないと感じている人も多いでしょう。
そのような場合は、更年期を乗り切るために次のような生活を送ることが大切です。
4-1. 趣味や仕事を楽しむ
更年期症状はイライラや不安感といった不快感の症状が多いです。
そのため何か没頭できるものに意識がいくと、その症状が緩和されやすくなります。
自分が好きなことをする趣味の時間を持ったり、もちろん無理は禁物ですが、仕事に集中するというのも辛い更年期症状を忘れられることもあります。
楽しく過ごす時間が多ければ多いほど、不快な症状も減るでしょう。
寝不足を引き起こす趣味はあまり良くないですが、自分のストレスが軽減されるような趣味があると更年期を乗り越える手助けになります。
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4-2. 運動をする
運動は更年期障害を乗り越えるのに有効です。
もともと運動はストレス解消に良いとされ、うつ病の予防や改善にも役立ちます。
更年期障害においても運動をすればリラックス効果が出るため、不快な症状の緩和に役立ちます。
また更年期に起こるホットフラッシュは頭に血液が上りがちになるため、脚の筋肉を動かすことにより血液を下におろす循環効果があります。
そのためジョギングやサイクリング、水泳などの有酸素運動はとくに更年期障害に向いています。
更年期症状の緩和以外にも、体力増加やダイエット効果などもあるのでぜひ取り入れていきましょう。
運動が苦手な人は日常に意識してウォーキングを取り入れるだけでも良いので、日々の生活に運動を取り入れていきましょう。
4-3. 栄養バランスを考えながら食事を楽しもう
更年期症状の緩和として取り入れてほしいのが栄養バランスの整った食事です。
更年期を劇的に改善する食事というのはないのですが、大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをするといわれています。
豆腐や納豆など、大豆製品を食事に取り入れるのも良いでしょう。
大豆製品や肉、魚、卵などに含まれるタンパク質は、女性ホルモンやストレスに対抗するための副腎皮質ホルモンの合成にも不可欠です。
またエストロゲンには骨の破壊を抑制する「骨吸収抑制」と、骨の形成を促進する「骨形成促進」の作用があります。
しかし更年期によりエストロゲンが減少すると、このような骨を維持する作用がなくなり、骨粗しょう症になるリスクが高まります。
そのため、カルシウムが豊富な小魚や乳製品、カルシウムと共に骨を維持するマグネシウムが同時に不可欠です。骨の維持をサポートするビタミンDが含まれた魚やキノコ類などを積極的に食べるのもおすすめです。
必須のビタミン・ミネラルは、全身の細胞が正常な機能を維持するために不可欠で、不足すると心身の不調を増長しますので、欠かさずとりましょう。
更年期障害はホルモンバランスが崩れるため、代謝や栄養の吸収率が悪くなることもあります。
これまで以上に栄養バランスを考慮し、お菓子やお酒などの嗜好品は少なめにするなど、健康的な食生活を意識しましょう。
▼ゆらぎ世代は骨の健康に注意を! 日常に取り入れるべき骨密度を増やす運動
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5. 更年期がはじまる時期は人によって違う! 症状を緩和できる生活を意識しよう
更年期症状が始まる時期は、一般的には平均的な閉経を迎える50歳の前後5年といわれています。
女性であれば更年期は必ずやってくるものであり、避けては通れません。
しかしあらかじめ更年期を迎えた体と心がどう変化するかを知っておけば、いざそのときが来ても落ち着いて対応できるでしょう。
急な体調の変化が起こっても「まずは体を休めて他に体の変化はないか見極めよう」といった行動もできます。
その上で、これから更年期を迎える人も、更年期真っ只中という人も、辛い症状に悩まされたら無理をせず、早めに婦人科を受診しましょう。
そして日常生活には規則正しい生活や運動、楽しめる趣味などを取り入れることが大切です。
不安や怖いイメージを持ちやすい更年期症状ですが、正しい知識を身につけておけば、心配な気持ちも軽減されるのではないかと思います。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか