こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

みなさまは、胃潰瘍にどのようなイメージありますか。

「ストレスが溜まって胃潰瘍になりそう」
「お腹が痛くて、胃潰瘍じゃないか不安」

といった会話を聞いたことがあるかもしれません。

筆者も幼少期の頃、「叔父が仕事のストレスで胃潰瘍になり、入院した」なんて聞いたことがありました。

従来、胃潰瘍はストレスとの関係が知られており、ストレスが溜まる人ほど胃潰瘍になりやすいといったイメージがありました。

しかし近年では、胃潰瘍の原因はストレス以外にも胃潰瘍を引き起こす大きな原因が明らかになっています。

胃潰瘍について、普段の生活習慣や食事などで予防できることはあるのでしょうか?

今回は、ストレス社会とよばれる現代の私たちだからこそ知っておきたい、胃潰瘍についての原因や症状、対策についてご紹介します。

1.どうして胃潰瘍になるの

胃潰瘍 胃痛

胃潰瘍とは、胃の壁が胃酸によって傷つき、痛みや出血を起こす病気です。

本来、健康な胃では、口から食べたものを殺菌・消化するために、胃酸という消化酵素が分泌されています。

胃酸は、食べ物を消化する一方、胃自体は消化しません。

これは、胃の粘膜から分泌される粘液が、粘膜表面にある細胞(上皮細胞)を守っているからです。

この、上皮細胞を守るために分泌される粘液のバランスが崩れてしまうと、胃酸により上皮細胞が傷つき、痛みを感じたり出血が起こったりといった胃潰瘍の症状が現れると考えられています。

2.胃潰瘍の原因

胃潰瘍 胃痛

胃潰瘍はこれまで、喫煙とストレスが直接的に関係すると考えられていました。

喫煙:胃酸分泌増加による攻撃因子(胃酸など)の増強、胃粘膜の血流を防ぐことによる防御因子(粘液など)の低下
ストレス:自律神経を介して胃粘膜の血流低下や胃酸分泌の増加

しかし、近年ではピロリ菌が大きく関わっていることが明らかになりました。

また、胃潰瘍の原因には、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や、生活習慣も関連が深いと考えられています。

2-1.ピロリ菌

近年、胃潰瘍の患者さんの胃では、高頻度にピロリ菌が存在することがわかっています。
ピロリ菌を除去することで、潰瘍がほとんど再発しなくなることが明らかになりました。

ピロリ菌とは、正式名はヘリコバクター・ピロリとよばれるらせん状の細長い形をした細菌で、体の片側に数本のひげ(べん毛)を持っているのが特徴です。

これまで胃には、胃酸(強い酸)があるため、細菌は定住できないと考えられていました。

しかしピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を出してアンモニア産生を行い、胃酸を中和して定住できる環境を作ることができることが明らかになりました。

胃潰瘍とピロリ菌の明らかなメカニズムは解明されていませんが、このピロリ菌が産生したアンモニアやその他の要因が複雑に絡み合い、胃潰瘍が発生すると考えられています。

2-2.NSAIDs

日本人の胃潰瘍の発生では、ピロリ菌の次に非ステロイド性抗炎症薬(もしくはNSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)と略されます)によるものが多いと考えられています。

NSAIDsとは、鎮痛・解熱・抗炎症で使用する薬です。

代表的なものとしてはアスピリン製剤などがあります。

アスピリンは、少量で使用すると血小板の働きを抑えることから、心筋梗塞や脳梗塞などの再発予防で使用されたり、NSAIDsでは関節リウマチ、膠原病、変形性膝関節症などの整形外科で使用されるケースが多くみられます。

これらの薬が原因となり、胃潰瘍を起こすことがあります。

3.胃潰瘍を悪化させる生活習慣(喫煙・ストレス)

タバコ 喫煙

これまで、喫煙やストレスは胃潰瘍の発症や再発に重要であると考えられてきましたが、現在、胃潰瘍の原因の大部分は、ピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であることが明らかになっているため、胃潰瘍に喫煙は直接的な原因でないとされています。

しかし喫煙は、これまでの研究により、胃酸の分泌増加による攻撃因子(胃酸など)の増強、胃粘膜の血流を防ぐため、防御因子(粘液など)を低下させることがわかっています。

また、ストレスが加わると、自律神経を介して、胃粘膜の血流の低下や胃酸分泌が増加することが明らかになっています。

そのため、ピロリ菌の感染がなくNSAIDsを飲んでいない人の場合は胃潰瘍になる頻度は極めて少ない一方で、ピロリ菌の感染がある場合には、喫煙やストレスにより胃潰瘍になるリスクは上がりやすくなります。

また、胃潰瘍ではありませんが、急性粘膜病変(AGML)という病気があります。

この病気は、突然の上腹部痛、嘔吐などの症状があります。

この原因には、ストレス、NSAIDsの服用、ピロリ菌の感染、食事などが関連すると考えられており、いずれも胃粘膜の血流低下であるとされています。

喫煙やストレスは胃潰瘍のリスクの他にも、さまざまな病気の原因になるため避けることが大切です。

4.胃潰瘍の症状

胃潰瘍 胃痛

・腹痛
・お腹が張る
・気持ち悪い、嘔吐
・胸焼け
・ゲップ
・食欲不振
・(出血している場合)吐血、下血
・無症状

胃潰瘍では、腹痛がもっとも多い症状です。

鈍く、うずくような、あるいは焼けるような痛みが特徴です。

半数近くが、空腹時や夜間帯に痛みが出ることがあり、これらは食事をすることで改善する傾向があります。

また、食後の60~90分後に腹痛が現れる場合もあります。

腹痛は、通常みぞおち部分が痛くなる(心窩部痛)ことが多いのですが、背中の痛み(背部痛)や、腰痛が現れる方もいます。

腹痛以外にも、お腹が張る、気持ち悪い、胸焼けなどがありますが、これらは食欲不振が起こりやすくなります。

また、潰瘍の合併症として出血がありますが、出血している場合、口から血を吐く吐血(通常は、コーヒーの残りカス状に変化したもの)や、肛門からの出血(下血とよばれ、タール便とよばれる黒い便が排出されます)が起こります。

最後に、胃潰瘍であっても無症状の方がいます。とくに、高齢者、NSAIDsを服用している患者さんの場合多くみられやすいので注意が必要です。

このような症状がある場合には、一度医療機関を受診して相談してみましょう。

5.胃潰瘍の検査・診断

胃潰瘍の検査

・問診
・バリウム検査
・内視鏡検査

胃潰瘍の診断は、医師による問診と、必要に応じて上部消化管のバリウム検査や内視鏡検査を用いるケースが多いです。

さらに内視鏡検査では、癌などの悪性病変との鑑別を正確に行う必要があります。

潰瘍の既往や、経験的に消化性潰瘍を強く疑われる場合は、胃潰瘍の治療薬が処方されることもありますが、診断の正確さを考慮し、内視鏡検査が優先されることも多くあります。

・ヘリコバクター・ピロリの感染の有無

胃潰瘍が確認された場合、ピロリ菌の感染の有無も確認します。

診断法として、内視鏡を使う培養法・組織鏡検査法・迅速ウレアーゼ試験と、内視鏡を使わない尿素呼気試験法、抗体測定法、糞便中抗原測定法があります。

検査の方法には、それぞれ時間や金額、簡易性など長所と短所があるため、主治医とよく相談しましょう。

6.胃潰瘍の治療

胃潰瘍 胃痛

胃潰瘍の治療では、出血している場合はまず出血を止めることが先決です。

さらに出血していない胃潰瘍の治療においては、ピロリ菌に感染しているかしていないかで治療方法が異なります。

6-1.ピロリ菌の感染がある場合

ピロリ菌に感染している場合、ピロリ菌の除菌を行います。ピロリ菌の除菌は、胃潰瘍の治癒と再発予防に有効です。

除菌方法としては、初回治療の場合、プロトンポンプ阻害薬(PPI)とよばれる胃酸の分泌を抑える薬を1種類、ペニシリン系抗菌薬2種類(アモキシシリンとクラリスロマイシン)の計3種類を合わせて1週間内服します。

きちんと内服した場合、除菌の成功率は76~90%程といわれています(除菌に失敗すると、2次除菌として、初回とは異なる成分の治療薬を服用します) 。

6-2.ピロリ菌の感染がない場合

ピロリ菌に感染していない場合、胃潰瘍の治療では胃酸の分泌を強力に抑える、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が使用されます。

ただし、胃潰瘍では保険上8週間との制限があるため、長期的に使用する場合は、H2受容体拮抗薬とよばれる胃酸の分泌を抑える薬や、防御因子増強薬と呼ばれる胃薬(スクラルファート、ミソプロストール)を使用することがあります。

6-3.NSAIDsを服用している胃潰瘍

胃潰瘍がNSAIDsによるものの場合、ピロリ菌の感染にかかわらずNSAIDsを中止することが優先となります。

しかしながら、NSAIDsにはアスピリンなど、脳梗塞や心筋梗塞の予防に使用されている薬など、薬をやめてしまうと再発するリスクや基礎疾患の治療のために休薬できないケースがあります。

そのため、NSAIDsを休薬するかどうかについては主治医とよく相談しましょう。NSAIDsを継続する場合は、PPIやPG製剤といった胃薬で治療を行います。

6-4.プロトンポンプ阻害薬(PPI)服用の注意点

胃潰瘍の治療としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用することがありますが、近年では制酸剤(プロトンポンプ阻害薬)を服用することで胃酸が低下し、それにより腸内細菌が乱れ、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)につながる要因の一つになることがわかっています。

そのため、長期にわたり、PPIを使用することは注意を払う必要があります。 

胃潰瘍の急性期の治療ではPPIが大変効果を発揮しますが、治療が終了した後はストレスマネジメントをしっかり行った上で、できるだけPPI等の胃酸抑制剤に頼るのは控えた方が良いでしょう。日本人にはもともと胃酸の基礎分泌が少ない人も多いと言われており、場合によっては胃潰瘍の治療後はむしろ胃酸をしっかり出させる方が良い場合もあります。

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6-5.ピロリ菌を抑制する効果のある食材 / サプリメント

従来の治療と併用することでピロリ菌に対する抑制効果を高める食材が知られています。

1.プロバイオティクス

納豆

プロバイオティクスはいわゆる胃腸に住む善玉菌と悪玉菌のバランスを維持するのに役立ちます。従来のピロリ菌除菌の際に抗生剤を使いますが、この際にプロバイオティクスを同時に摂取することで善玉菌を維持し、真菌の異常増殖のリスクを軽減することが可能です。特にLactobacillus acidophilusという菌が効果的とされています。

2.緑茶

動物実験では緑茶にもピロリ菌感染を抑制し、ピロリ菌が起こす胃炎の程度を軽減させる効果があることが知られています。

3.蜂蜜

蜂蜜にはピロリ菌に対する抗菌作用があります。特に従来の治療時に蜂蜜を摂取することで治療期間が短縮される可能性が示唆されています。中でも生蜂蜜やマヌカハニーの持つ抗菌作用が効果的とされています。

4.オリーブオイル

オリーブオイル

ある研究ではオリーブオイルは胃酸に対しても分解されず安定しており、ピロリ菌を抑制する抗菌効果があることが確認されています。

5.甘草

甘草は漢方薬にもよく使われる生薬の一つですが、胃潰瘍の治療に古くから用いられてきました。ある研究ではピロリ菌直接殺す事はしないものの、ピロリ菌がいの細胞壁に定着するのを予防することで抗菌作用を発揮することが明らかになってきました。

6.ブロッコリースプラウト

ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン」という成分がピロリ菌に対する抗菌作用があることが示唆されています。スルフォラファンが胃の炎症を抑え、細菌が定着してコロニーを形成することを抑制します。

参考文献
World J Gastroenterol. 2012 Nov 21; 18(43): 6302–6307.
Int J Antimicrob Agents. 2009 May; 33(5): 473–478.
World J Gastroenterol. Feb 14, 2014; 20(6): 1450-1469
J. Agric. Food Chem. 2007, 55, 3, 680–686
Journal of Ethnopharmacology, Volume 125, Issue 2, 7 September 2009, 218-223
Cancer Prev Res, 2009;2:353-360.

7.胃潰瘍にならないための予防策3つ

胃潰瘍の原因の多くは、ピロリ菌やNSAIDsによるものですが、胃に負担をかけやすい生活習慣も、胃潰瘍を発生させるリスク要因となるため、気を付けましょう。

7-1.コーヒーや香辛料は少なめに

コーヒーに含まれるカフェイン濃度に応じて胃酸分泌が盛んになるため、過剰なカフェインの摂取は控えましょう。同時に、濃い紅茶や緑茶も多量に摂取しないように気をつけましょう。

また、香辛料は胃酸分泌促進作用があるため、攻撃因子を増強させてしまう危険があるため、控えるようにしましょう。

ほか、脂肪性の食品は消化に負担がかかるため、避けた方が良いでしょう。
合わせて食事時間は就寝4時間前までに済ませるようにしましょう。

7-2.お酒の飲みすぎは避けましょう

アルコールは、多量の飲酒によって急性胃潰瘍になる原因の一つです。

また、適度な飲酒は問題ありませんが、飲みすぎは胃腸に良くない影響をもたらします。

また、ピロリ菌の除菌治療では2次除菌(初回の除菌治療が失敗した場合の次の除菌方法)にメトロニダゾールという薬を用いる場合、お酒との飲み合わせが悪いので禁酒しましょう。

アルコールの代謝を阻害し、アセトアルデヒドという毒物の濃度が上昇しやすくなります。 

7-3.ストレスマネジメントを心がけましょう

慌ただしい毎日を送っていると、ふと気が付いたときに体はストレスフルな状態になっていることがあります。

ストレスだけが胃潰瘍を発生させるわけではありませんが、リスクを高める原因にもなるため、ストレスリリースすることは大切です。

1.ストレスリリースを心がける

ストレスリリース

まずは、自分がどのようなことをすると気持ちが上がるのか、知っておくことが大切です。

カフェに行く、美味しいものを食べる、アロマを嗅ぐ、映画を観る…いま、自分が何に興味があるのか、自分自身にきいてみましょう。

気になったモノや、やってみたいことなど、書き出しておいて実行するのも良いですね。

そうすることで、上手に気持ちを切り替えられ、イライラを最小限にすることができます。

また、「できない自分」を責めるのではなく、そんなときだからこそ毎日行うルーティーン「朝起きた」「挨拶をした」など小さな積み重ねを褒めてあげましょう。

2.思い切って運動をしてみる

ストレスが溜まったり、イライラしたりするときこそ、思い切って体を動かすことが大切です。

激しい運動よりは、日中の時間帯に日光をあびながらのウォーキングや、軽いジョギングなどの運動がおすすめです。

外にでて運動することは気分転換にもつながります。

どうしても時間が取れない方は、寝る前のストレッチや起床後の体操なども良いでしょう。

体を動かすことは、精神面が安定し、ストレス解消につながります。ヨガや瞑想なども良いです。

ストレスリリース

8.自分のためにストレスリリースを大切に

胃潰瘍の多くは、ストレスと直接的要因はないものの、ピロリ菌やNSAIDsによる服用がある場合、ストレスがあると発生のリスクが懸念されています。

そのため、日頃からのストレスマネジメントは大切です。

「普段より、イライラするな」と感じたときは、体からのストレスサインでもあります。

そんなときは、できる限り早くストレスをリリースするように心がけましょう。

とくに40~50代になると、仕事、家庭、育児、介護など問題は山積みです。物事がうまくいかない日や、イライラする日もあると思います。

筆者もそんなときは、できなかった自分を責めず、毎日行うルーティーンをあえて丁寧に行ってみる、「まぁ仕方ないな」と思う、「自分をいたわる時間」と思い、自分にやさしくするように心がけています。

気持ちが乗らない日でも「こんな日もあるか」と思いながら、自分自身を大切にしていく。

そんな心がけこそが、ストレスを解消し、自分自身を大切にすることにつながります。

これからも楽しく輝く日々をすごしていけますように。

この記事の監修は 医師 城谷 昌彦先生

【医師】城谷 昌彦
医師

城谷 昌彦

監修医

消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・認定内科医・認定産業医
ルークス芦屋クリニック院長
腸内フローラ移植臨床研究会専務理事
NPOサイモントン療法協会理事
ヒュッゲ・ラボ株式会社代表取締役

主な所属学会

日本内科学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本抗加齢医学会・日本統合医
療学会・日本先制臨床医学会 など

東京医科歯科大学医学部卒業。
神戸大学病院内科、京都大学病院病理部、兵庫県立塚口病院(現・尼崎総合医療センター)消化器科医長、城谷医院院長などを経て、2016年ルークス芦屋クリニック開設。
消化器病専門医でありながら、自ら潰瘍性大腸炎発症によって大腸全摘術を経験。
西洋医学はもとより、東洋医学、心理学、分子栄養学、自然療法等の見地からも腸内環境を健全に保つことの大切さを改めて痛感し、腸内環境改善を柱とした根本治療を目指している。
2017年からは腸内フローラ移植(便移植)による治療を開始。腸内細菌が人体に及ぼす多大な機能改善力に着目し、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患だけでなく、うつ、自閉症、自己免疫疾患、がんなど多岐にわたる疾患の治療を行なっている。

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著作・監修一覧

  • ・『腸内細菌が喜ぶ生き方』(海竜社)
  • ・『骨スープで楽々やせる!病気が治る!』(マキノ出版)
  • ・『専門医伝授「アミノ酸豊富!骨だしスープで腸内フローラを再生」』(WEB女性自身)

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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