【医師解説】今さら聞けない「糖化」って何?AGEsを減らし老化を予防するには?
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
老化を促進する要因として「糖化」が問題になるというお話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
終末糖化産物(AGEs)が増える=老化が促進していると考えられ、老化の予防には糖化を予防することが大切と考えられています。
改めて、「糖化」とは何でしょう?
どうやったら防ぐことができるのでしょう?
目次
1.糖化は老化?予防と対策とは?
糖質は、体のエネルギーとなる栄養素ですが、過剰摂取や精製された糖質による血糖値の上昇や中性脂肪の増加による問題が気になりますね。
過剰な糖質は、体内のタンパク質と結合し、「糖化(メイラード反応)」が起こります。
その後、様々な過程を経て、最終的に作られる物質の総称が「終末糖化産物 AGEs(Advanced Glycation End Products)」です。
1-1.終末糖化産物 AGEsとは何か?
全身は、タンパク質によって構造が作られ、タンパク質によって機能しています。
全身のあらゆる機能は、体内の数万種類のタンパク質によって行われています。
構造タンパク:筋肉の収縮、コラーゲンなどの弾力、
機能性タンパク:ホルモン・酵素・免疫物質・受容体・神経伝達物質など
これらのタンパク質が糖化することで、全身の機能が低下してしまいます。
2.糖化が関連する疾患や症状
糖化によって全身のタンパク質の働きが阻害されると、全身の老化を進行させるだけでなく、様々な影響が現れます。
2-1.皮膚だけじゃないコラーゲンは全身症状に
例えば、コラーゲンは、タンパク質の一種です。
あら、お肌が気になるわ!
でも、それだけではありません。
もちろん、皮膚の真皮層を支えるコラーゲンの働きが低下すると、肌の弾力が低下して、たるみやシワの原因になります。
さらに、骨の強度は、コラーゲンによってサポートされていますから、骨も脆くなり、骨粗しょう症を引き起こします。
血管の弾力もコラーゲンによって保たれていますから、これが低下すると、動脈硬化や糖尿病の合併症が引き起こされます。
これらは、老化の一環です。
さらに、全身に様々な影響を及ぼします。
2-2.主な疾患
・皮膚:コラーゲンの糖化によりタルミ・シワ・黄くすみ。
酵素の働きの低下によるシミ
・血管:動脈硬化に伴う各臓器の障害、糖尿病合併症、脳血管性認知症、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、ED(勃起不全)など
・卵巣:卵子の糖化により不妊症
・骨:コラーゲンの糖化により骨粗しょう症
・脳:AGEsの蓄積によるアルツハイマー型認知症、抑うつ
・歯:歯周病とAGEsによる慢性炎症
・目:白内障・網膜症・黄斑変性症
他
全身の構造や機能を司るタンパク質の作用が低下するため、働きが悪くなり老化が促進してしまいます。
免疫機能、解毒、代謝、抗酸化作用を担う物質や酵素もタンパク質でできていますから、これらも含めた全体的な体の本来の機能が低下すると考えてください。
3.一度糖化すると元には戻らない
AGEsは、元のタンパク質に戻ることはできません。
砂糖を鍋で焦がして、キャラメルのようなベタベタの糖がタンパク質に絡んでいるイメージです。
元に戻る気がしませんね。
さらに、排出もしづらいため、体内にどんどん蓄積します。
こうして、体に蓄積したAGEsが、悪影響を与えます。
4.糖化=老化のマーカーである
今では、糖化は、老化のマーカーと考えられ、体内の老化度を判定する際にも使われます。
糖化による体へのストレスを「糖化ストレス」と呼びます。
糖化ストレスマーカーには,血糖値、糖化タンパク質、AGEsなどがあります。
糖尿病の診断や治療の判定に使われる「ヘモグロビンA1c」というマーカーがあります。
これは、ヘモグロビンというタンパク質が、どれだけ糖化しているかを現す数値になります。
つまり、糖尿病のコントロールが悪く、この数値が高い人は、その他のタンパク質も糖化しており、リスクが高いことを意味しています。
空腹時血糖が基準範囲内であっても、食後の極端な高血糖状態は糖化ストレスになります。
ですから、糖尿病という診断がない場合でも、食後高血糖や血糖値スパイクを起こさないように食事の取り方や質に注意することが大切です。
4-1.糖化度測定器で簡単検査
糖化度は、AGEsを測定する糖化度測定器で簡単に検査ができます。
よく医療機関で使われるのは『AGEs Reader』です。
腕を乗せるだけで、12秒で糖化度を測定でき、年齢平均と比較してどれほど糖化しているかを判定することができます。
以前に、WELLMETHOD監修医のルークス芦屋クリニックに、チームメンバーが受診した際には、20代であるにも関わらず、60代との判定が出ました。
【医師が調査】アトピー性皮膚炎完治を目指す腸内環境改善|根治にコミットするクリニックに相談したvol.5
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-5/
5.糖化のリスクのあるライフスタイルは?
糖化しやすいライフスタイルは、以下の通りです。
1. 甘いものが好きでよく食べる
2. 清涼飲料水をよく飲む
3. ご飯や麺類など炭水化物が大好きだ
4. 朝食を抜くなど欠食時間が長い
5. 早食いである
6. 食事はまずご飯から食べる
7. 喫煙する/していた
8. お酒をよく飲む
9. 野菜はあまり摂らない
10.揚げ物や丼ものをよく食べる
11.食べ過ぎを自覚している
12.運動不足である
13.生活が不規則だ
14.ストレスが多い
15.糖尿病の家族歴がある
甘いものや炭水化物の摂取が多いのはもちろんで、血糖値を上げない食べ方の工夫が大切です。
さらに、運動をすると糖は燃焼しますが、運動不足では糖が余って糖化しやすくなります。
さらに、大敵なのはストレスです。
6.ストレスがあると糖化しやすい
どんなに食生活に気をつけても、ストレスが高い人は、血糖値が上がり糖化しやすくなります。
ストレスがかかるとストレスに対抗するために副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、血糖値を下げるホルモン・インスリンを効きづらくし、血糖値を上げます。
さらに、酸化ストレスも高くなり、ますます老化を促進することになります。
ストレスをため込まないことはとても大切になります。
7.糖化を予防する食生活
糖化を予防する食生活のポイントとしては、
・体内でAGEsを作らせないこと
・AGEsの多い食品を控えること
・抗糖化作用のある食品を積極的に食べること
7-1.体内でAGEsを作らせない
これは、血糖値を上げないことと、血糖値が上がらなくてもAGEsを作る原因になる果糖の摂りすぎに注意することです。
もっとも避けなければならないのは、ブドウ糖、砂糖、果糖などを含む食品です。
ブドウ糖や砂糖は、体内に吸収されて血糖値を急激に上げ、AGEsを作り出してしまいます。
また、果糖は血糖値が上がりませんが、砂糖よりも糖化しやすくAGEsを作る原因になりますので、盲点です。
ケーキやクッキー、アイスクリームなどの洋菓子、おまんじゅうや団子などの和菓子、また清涼飲料水の摂りすぎには注意が必要です。
さらに、果糖は、「異性化糖」という砂糖よりも安価な甘味料に多く含まれています。
これは、甘いお菓子やジュース類などだけでなく、タレやソース、様々な加工食品、さらには「健康」を謳った食品や飲料などにも含まれていますので、注意が必要です。
アガベシロップは肥満の元?砂糖よりも危険な果糖を控えるべき理由【医師解説】
https://wellmethod.jp/agave-syrup/
7-2.体内で糖化させない食べ方の工夫
上記の砂糖や果糖などの甘味料だけでなく、糖化させないためには食べ方の工夫が必要です。
1.炭水化物は、白よりも黒
精製された白米やパンなどの穀物は血糖値が上がりやすくなります。雑穀や胚芽米、蕎麦なども取り入れて、黒い穀物をとるようにする方がベターです。
2.食物繊維の多い食品から先に食べる
糖質の多い炭水化物は後回しにして、まず、野菜、海藻類、豆類、きのこ類など食物繊維の多い食品やおかずを先に食べ、最後に炭水化物を食べるようにすると血糖値が上がりづらくなります。
3.よく噛んでゆっくり食べる
早食いは、どか食いの元となり、血糖値をあげる原因になります。
1口30回以上よく噛んで食べることが、過食を防ぎ、糖質の摂取を抑えるコツです。
7-3.AGEsの多い食品を控える
食品の中にも、AGEsを多く含む食品と少ない食品があります。
調理によって、食品のタンパク質が糖化しやすくなります。
食品には全てある程度のタンパク質が含まれますが、特に肉や魚、乳製品、卵などタンパク質が多い食品の調理法によってAGEsが多く含まれることになります。
糖化しづらい調理法は、順番に。
生→蒸す・ゆでる→煮る→炒める→焼く→揚げる
です。
特に、避けたい調理法は、
・電子レンジでの調理(特に10分以上の加熱)や再加熱
・二度揚げ
・揚げものを炒める
・肉や魚に小麦粉をつけるなどして焦げつかせる
・オーブンによる高温長時間調理
など
加熱は低温にする、短時間にする。
また、焼くより、蒸す・煮るなど調理の工夫をすることで、糖化が抑えられます。
とは言え、肉は蒸すよりも焼いた方が美味しい!
好きなものを食べさせろ!
という声も聞こえてきそうです。
調理法の工夫や栄養素によっても糖化を防ぐ働きがあります。
7-4.抗糖化作用のある食品を積極的に食べる
1.クエン酸
酢やレモンに含まれるクエン酸には、食品中のAGEsを減らす働きがあります。
レモンや酢をかけたり、マリネするなどして、クエン酸をプラスしましょう。
2.アルファリポ酸
αリポ酸には、糖代謝を促進し、糖化を防ぐ作用があります。
緑黄色野菜に多く含まれる成分です。
3.ファイトケミカル類
植物に含まれる色素成分・ファイトケミカル 。
フラボノイド類である、緑茶に含まれるカテキンやベリーなどに含まれるアントシアニンなどには抗糖化作用があります。
4.カルノシン
動物の筋肉や肝臓の中にある成分・カルノシンは、抗疲労物質として注目されていますが、糖化を促進する活性酸素を取り除き、AGEsの生成を防ぐことが分かっています。
特に、鶏むね肉に豊富に含まれています。
その他、糖化を防ぐには、酸化を防ぐことも大切ですから、抗酸化物質であるファイトケミカル類、ビタミンA ,C,Eなどを積極的に食べましょう。
8.まとめ
糖化を防ぐことは、老化を防ぐことにつながることが分かりました。
食生活やライフスタイルの工夫、そしてストレスを溜めないことが最大のポイントです。
糖尿病が指摘されている人だけでなく、糖質の摂取が多い人や運動不足の人、ストレスレベルが高い人は、誰もが糖化のリスクがあります。
糖化を防ぐ生活は、健康的なライフスタイルとイコールです。
見た目も内側も若々しく保つために、糖化にも配慮していきたいですね。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか