婦人科に対する意識調査からみる「婦人科、産婦人科、ピル」との正しい付き合い方
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
突然ですが、みなさまはどのくらいの頻度で婦人科に通っていますか?
女性にとって婦人科は大切な場所です。生理に関するトラブルはもちろん、妊娠に関する相談、ゆらぎ世代であれば更年期に関する相談もできるでしょう。
今回は、女性の方がもつ婦人科のイメージとピルの使用に関する意識調査をもとに、考察をしていきます。
ピルは女性ホルモンをサポートする上で重要な役割をもっていますが、実際に使うのには抵抗感を持つ人もいるようです。
ここでは、婦人科利用に関する意識調査の結果からみる産科・婦人科、ピルなどの薬との付き合い方についてまとめてみました。
目次
1.アンケート結果からの考察
今回WELLMETHODでは、全国の20代以上の女性を対象に、女性ホルモンを含む薬の使用および、婦人科利用についてのアンケート調査を実施しました。
女性の年代別にみたピル服用への抵抗感や、婦人科利用に関する意識がわかる調査結果となっています。ではさっそく、そのアンケート結果からみていきましょう。
1-1.避妊目的のピル使用について
「避妊目的のためにピルを使用すべきである」という質問に対し、20代女性は「強くそう思う」「そう思う」の回答合計が45.7%でした。30代女性に関しても近しい結果だったので、若年層世代の女性のおよそ半数が避妊目的でピルを服用することにそれほど抵抗感がないことがわかります。
その一方、40代の女性の場合は容認派が37.6%、50代では28.7%、60代では18.3%となり、年齢層が高くなるにつれ、避妊目的でのピル使用に抵抗があることがわかります。
これには後述するピルの歴史が関係していると考えられます。
1-2.婦人科利用における抵抗感について
「婦人科を利用することについて、抵抗感がありますか?」の質問に対して、全体的にみると「抵抗感を持つ人が約6割」という結果となりました。
内訳としては「非常にある」が22.8%、「ややある」が43.1%、「あまりない」が24.2%、「全くない」が9.9%となっています。
全く抵抗なく婦人科へ通院できる人は10人に1人という結果となり、多くの女性が婦人科に対してハードルを感じていることがわかります。
1.年代別にみた婦人科利用における抵抗感
年代別のアンケート結果をみると、20代において婦人科利用の「抵抗感が非常にある」「ややある」と答えた人の合計は55.2%。若年層のおよそ2人に1人が婦人科の利用をためらっていることがわかります。
そして、年齢層が上がるにつれ婦人科を利用するのに抵抗がある人は増えており、60代以上になると合計78.2%もの人が「抵抗がある」と答えていました。
婦人科における診察では、多くの場合内診を行わなくてはなりません。
内診は恥ずかしさや痛みが生じるケースもあるため、婦人科に対してネガティブなイメージを持つ人も多いのでしょう。
しかし、今回のアンケート調査をみると、若い世代の方が抵抗感が少ないことがわかります。
これは昔と比べると、クリニックがキレイだったり、プライバシーが保たれたりと、女性が通いやすいレディースクリニックが増えていることが背景にあるでしょう。
またインターネットの普及により、性に関する悩みや情報を気軽に入手できるようになり、婦人科の利用が若者のあいだで一つの選択肢として普及しているのかもしれません。
2.ピル等の女性ホルモンを含む薬との付き合い方とは?
女性にとって婦人科はなくてはならない存在です。しかしアンケート結果をみると、まだまだ婦人科はハードルの高い存在のようです。
ただ、女性は何歳になっても婦人科系のトラブルに悩まされることが多く、良い婦人科医をみつけることは、自分の将来を左右することにもなるでしょう。
ここからは、女性と婦人科との関わりについて、そしてピル等の女性ホルモンを含む薬とどう付き合っていけば良いのかについて考えていきましょう。
2-1.日本におけるピルはまだ歴史が浅い
生理がある若い世代にとっても、更年期に悩むゆらぎ世代にとっても、「ピル」は体の調子をサポートしてくれる薬です。
しかしアンケートをみると、20代・30代は抵抗感が低いものの、40代以降の女性はピルを使うことに抵抗がある人が多く、ややネガティブなイメージもあるようです。
その理由としては、日本におけるピルの歴史がまだ浅いことが挙げられます。日本で本格的にピルが使われるようになったのは20年前であり、子宮内膜症などの治療目的で使われるようになったのは約15年前です。
▼産婦人科専門医に聞く、40代からの「エイジング」との向き合い方vol.2
https://wellmethod.jp/drtakao_int02/
確かに、私自身も「ピル=避妊薬」というイメージをこれまでもっていました。
避妊目的のピルは、女性主導でほぼ確実な避妊ができることからも女性のQOL向上に貢献することが期待されています。ところが、特に、50代や60代と年齢が上がるほど、妊娠を目的としない性交渉への罪悪感や恥ずかしさと共に、ピルの使用についてもネガティブなイメージを持っている人が多いようです。
しかし、友人のなかには生理痛がひどくて服用している人もいますし、スポーツ選手が試合などで生理周期を整えるために使用することもあるようです。
自分には関係のない薬だと考えていたピルですが、服用している人すべてが避妊のために飲んでいるわけではなく、実際は婦人科系のトラブルを改善するために飲む人も多く、ピルがつらい症状を和らげる手助けとなっているのです。
2-2.ピルは更年期特有の生理の乱れを和らげる
ピルは若年層が避妊のために使うものだけではなく、さまざまな婦人科治療において活躍しています。
たとえば、子宮内膜症の症状緩和や生理周期のサポート、月経量の安定などにも役立ちます。そして更年期障害に悩むゆらぎ世代にとっても深い関わりをもっています。
ゆらぎ世代では、月経サイクルが乱れて生理が短かったり来なかったりすることや、月経量が少なくなるだけでなく、急に増えたりすることもあります。
どうしても生理に振り回されることが多くなりがちですが、ピルを継続的に飲み続けている方の場合は、こういった悩みを避けられるというメリットがあります。
ピルを服用する理由はさまざまだと思いますが、服用することで生理周期が安定し、重い生理痛などから解消されている方の中にも、「何歳まで飲んで良いのだろう?」といった疑問を持つ女性もいるのではないでしょうか?
ピルの服用は、ガイドライン上は
・閉経まで
・閉経が訪れなくても50歳まで
という規定があります。
さらに、一度やめてしまうと、40歳以降では再開が推奨されていません。40歳以降は、血栓症のリスクが上がるため、リスクを避ける目的からピルの投与を慎重にする必要があることなどが理由です。
たとえば、もともとピルを服用していて症状の緩和を感じている女性が、40代半ばに性交渉の機会が減って避妊の必要がなくなることで服用をやめてしまうと、人によっては、一気にいわゆる更年期の強いゆらぎを感じることがあります。
これらのことを初めて知ったことにより、ピルを服用中の方にもそうでない方にも知って欲しい事実だと感じました。
婦人科では、これまでピルを継続的に問題なく服用している方はそのまま閉経まで飲まれることを勧められています。
現在40歳以上の更年期世代の方で服用している方は、自己判断で途中で服用をやめることで、一気に更年期障害の症状に悩まされることになる可能性もあります。
「ピルをやめなければ良かった!」と後悔しないために、すでに始まっているかもしれない更年期に備え、そのまま継続していただきたいと思いました。
2-3.ホルモン補充療法という可能性
更年期障害における治療には、「ホルモン補充療法(HRT)」という治療法があります。
これまでピルを使われていた方の場合、ホルモン補充療法は、ピルの服用を終えた後に用いられます。
更年期障害の主な原因は、これまで自分の体内で作られていた女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減ってしまうためです。
ホルモン補充療法では、エストロゲンを足すことにより、更年期症状の改善に期待ができます。その効果は高く、およそ2ヶ月で8割程度の人に更年期症状の改善がみられるそうです。
効果を得ようと投与量をむやみに増やすと血栓症などのリスクが高まります。
ホルモン補充療法では、高い効果を得ながら、リスクを最低限に抑える「最少有効量」、つまり、必要最低限の量を見つけ、リスクを避けながら安全に投与できる量を婦人科や更年期外来で探していきます。
婦人科では更年期症状に苦しんでいる女性に対し、まずこのホルモン補充療法をすすめることが多いです。
ただ、ホルモン補充療法に抵抗がある方には「漢方薬」や「エクオール」の服用をすすめることもあり、それらに加えて適度な運動をすることも重要とされています。
いずれにせよ自分一人で更年期症状を改善することは難しいため、気になる症状があれば婦人科へ相談することが大切です。婦人科に相談することで体の状態を知ることになり、自分にあった治療法を選択できることになるのです。
2-4.自分を知るために健康診断は必要
アンケート結果をみると、婦人科への抵抗がある女性は全体の5割にも及びます。
そのため「何か異常があったら婦人科へ行く」という人が多く、症状が重くなって受診をしたときにはすでに病気が進行していたなど、重篤なケースもあるのです。
そうならないためには「健康診断」を受けることが大切です。
できれば一年に一回、同じ項目を検査して、体に変化がないか確認すると良いでしょう。異常があってから病院へ行くのではなく、異常が起きる前に定期的な健康診断を受け、病気になるリスクを下げることが大切です。
女性は乳がんや子宮頸がん、子宮体がんといった女性特有の病気にかかるリスクがあります。
検診を受けてもがんの発生率は下がりませんが、早期発見早期治療で、死亡率を下げることはできるのです。
3.まずは自分に合うクリニックを探してみましょう
今回のアンケートでは、女性のおよそ半数が婦人科に対してややネガティブなイメージをもち、ピルに関しては若年層は肯定的な意見が約半数近くを占めていましたが、40代以降の女性は不安を抱いていることがわかりました。
何か体に異常が起きないかぎり婦人科には通わないというのは、非常にリスクがあります。
例えば子宮がん検診は20歳から対象となっていますが、WELLMETHODのアンケート調査によると、その受診率はたったの19%です。
検診に行かなかったことでがんが進行し、亡くなってしまうケースもあるのです。
まずは、年に一回の婦人科検診を受けることからはじめてみてはいかがでしょうか? その上で生理や更年期に関する不安なことを相談すれば、自分に合った治療法もみつかるはずです。
また、普段から婦人科の先生と信頼関係をつくっておくことも大切です。
先生と信頼関係があれば、何かあったときに病院に行きやすくなり、些細なことでも相談しやすくなります。クリニックや先生によっても相性があるため、自分に合ったクリニックを探しておくのは大切なことではないかと思います。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか