その手荒れもしかして手湿疹? 9つの原因と症状緩和のためのケア法
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、手を洗うことが増えたという方も多いのではないでしょうか?
それに加えてとくに女性の方は料理や洗濯などの水仕事も多く、手が荒れて「かゆみ」や「痛み」に悩んでいる方も多いと思います。
筆者自身もこれまで手の乾燥を感じることは何度もあったのですが、最近は乾燥だけではなく手全体がかゆくなることが増えてきました。
かゆみがひどいときには、かきむしってしまうことも。
冬場に愛用していたハンドクリームをつけていても、だんだん悪化して痛みを伴うようになってしまいました。
そこで手荒れの原因を調べてみたところ、手湿疹という皮膚疾患を知りました。
今回は日常的に水仕事を多くする女性が悩みやすい手湿疹について、その原因と対処法を詳しく解説していきます。
目次
1.手湿疹とは?
手湿疹とは、手の甲や手のひら、指の皮膚にできる湿疹のことです。手湿疹はただの手荒れではなく、炎症が起きている状態で、手湿疹をそのままにしておくと、「かゆい」→「かきこわす」→「炎症の悪化」のサイクルを引き起こしてしまいます。
料理や洗濯などの水仕事が多い女性の発症が多いことから「主婦湿疹」と呼ばれることもありますが、発生するメカニズムや皮膚の状態によっていくつかに分類されます。
1-1.手湿疹の症状
一般的にいわれる手荒れの状態から始まりますが、乾燥だけでなく、炎症を起こすことで湿疹化します。強いかゆみや赤みがあったり、腫れや水疱ができます。
症状がひどくなると、皮膚がひび割れて、体液が染み出てジュクジュクしてくることもあるので注意が必要です。
手湿疹は症状によって、主に2つにわけられます。
いずれも、痒みと炎症を伴います。
1.乾燥型
・皮膚が硬くなりゴワゴワする
・ひび割れが起こる
・鱗屑・落屑がある
乾燥型はただのひび割れやあかぎれと似た症状であることから、「湿疹」ではなく「肌荒れ」として放置されがちです。
2.湿潤型
・水疱ができる
・小さな発疹や発赤ができる
・指が腫れる
・患部がジュクジュクする
湿潤型はかゆみや痛みが強く、悪化すると炎症が広がり腫れてジュクジュクしてしまうこともあります。
2.手湿疹の原因は?
肌は、本来皮脂と汗が混ざってできた皮脂膜という天然の保湿クリームに守られています。しかし、さまざまなことが原因となり、皮脂膜が不足することで手湿疹となってしまいます。
2-1.病態による原因
手湿疹はおもに病態から、これらに分類されます。
1.刺激性接触皮膚炎
2.アレルギー性接触皮膚炎
3.アトピー型手湿疹
4.蛋白質接触皮膚炎(接触蕁麻疹を含む)
1.刺激性接触皮膚炎
いわゆる「手荒れ」による手湿疹の7割が、洗剤や水が接触源の接触皮膚炎と考えられます。
これらは、原因となる物質自体の毒性や刺激性が高いことから発症します。
誰にでも起こりうる皮膚炎ですが、もともと皮膚のバリア機能が弱い方や、皮膚の乾燥が起こりやすい環境や職業、アトピー性皮膚炎を持っている方は高頻度で起こることがあります。
水仕事が多い主婦に多いのはこのタイプです。
また、美容師など、水や洗剤、薬液によく触れる職業の人にも起こりやすいものです。
原因となる物質に触れた部分に赤みや強いかゆみを生じます。ひどい場合は、水ぶくれやびらんになる場合もあります。
洗剤や化粧品、化学物質、薬品、食品(肉・魚・野菜など)、樹液などの植物由来の物質、衣類、紙などの摩擦が主な原因と考えられています。
これらの刺激に対して過剰に反応し、炎症による湿疹が起きてしまいます。
2.アレルギー性接触皮膚炎
アレルギーとなる原因物質によって、水ぶくれや紅斑などかゆみをともなう湿疹ができることがあります。
指先や親指の付け根のふくらみ部分にできることが多いのが特徴です。
以下のようなものが、アレルギーの代表的な原因物質です。
・消毒液
・香料
・金属
・ゴム手袋
・ヘアカラーリング剤・パーマ剤
・ラテックス(病院などで使用されるゴム素材)
当初、刺激性接触皮膚炎から始まったものが、何度も触れるうちにアレルギー性接触皮膚炎に発展する場合があります。
3.アトピー型手湿疹
アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下しやすいため、刺激性の手湿疹を発症しやすいと考えられています。
4.蛋白質接触皮膚炎(接触蕁麻疹を含む)
皮膚に触れたアレルゲンに対するアレルギー反応で起こる皮膚炎です。最も多いアレルゲンは食品(肉・乳製品・魚介類・野菜・果物・香辛料)で、その他にも動物のフケ、尿、花粉、ラテックスなどが原因となります。
アレルギー接触皮膚炎とはアレルギー反応のメカニズムが異なるため、分類は別になっています。
アレルゲンに触れた部分は腫れとかゆみが生じますが、接触を中止すると症状は数時間以内に治まります。
2-2.皮膚の状態による分類
手湿疹の原因は、皮膚の状態によって分類することもあります。
1.角化型手湿疹
角化型手湿疹は、手のひらの皮膚表面の角質が厚くなりぼろぼろとはがれる状態で、ひび割れができることもあります。足の裏にも同じような症状がみられることが多く、原因は不明であることが多いです。
2.進行性指掌角皮症
進行性指掌角皮症は、手湿疹のなかでも皮膚がかたくなる傾向が強い状態のことを指します。指の腹や手のひらの乾燥、ひび割れ、指紋消失などの症状が現れます。
水仕事が急に増えた場合や、紙やキーボードに頻繁に触れる仕事、ピアニストなど、物理的に指先を酷使する人にも同じような症状が現れることがあります。
3.貨幣状型手湿疹
貨幣状型手湿疹は、刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎、アトピー型手湿疹のいずれでも生じる症状です。主に手の甲に貨幣くらいの大きさの円形の湿疹がみられ、強いかゆみを伴います。
4.汗疱型手湿疹
汗疱型手湿疹は、汗疱(かんぽう)といわれる直径2~5mmの小さな水ぶくれが手のひらと足の裏に発生し、それが何らかの刺激により手の甲や指側にも拡大し、かゆみを伴う状態です。
原因を回避することで自然に治ることもありますが、手を使う仕事の方、手洗い・消毒の頻度が高い方は治りにくいこともあります。
5.乾燥・亀裂型手湿疹
乾燥・亀裂型手湿疹は、皮膚のバリア機能が低下することで起こると考えられており、手のひらや指全体の乾燥と亀裂が起こるのが特徴で、水ぶくれにはなりません。冬場に症状が悪化することが多いです。
3.手湿疹と似た症状
手湿疹以外にも手が荒れてしまう皮膚疾患があります。
ここでは手湿疹とよく似た主な疾患をご紹介します。
3-1.しもやけ
しもやけは寒さによる血行障害が原因で炎症が起こり、手に赤みやかゆみが現れます。
入浴したりマッサージをして手の血行をよくすることが大切です。
自己免疫疾患に合併する場合もあります。
3-2.手白癬(てはくせん)
白癬とは、白癬菌という真菌による感染症です。手にできるのが手白癬、足にできるのが足白癬、一般的にいわれる「水虫」です。
手白癬は、指と指の間の皮が薄くむけたり、皮が硬くなって亀裂が生じたり、小さな水ぶくれができたりします。
3-3.掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
掌蹠膿疱症とは、手のひらと足の裏に膿疱(のうほう)が多発し、よくなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。原因は明らかになっていませんが、喫煙者に多く発症するといわれています。
虫歯や扁桃炎、歯科金属アレルギーなどが関与していることもあります。
3-4.カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲炎(そういえん)
カンジダ性の皮膚疾患は、カンジダ菌という常在菌が異常に増殖することで発症し、水仕事をしている方に多くみられます。
カンジダ性指間びらん症は、中指と薬指の間の皮がむけて、かゆみや軽い痛みをともないます。
カンジダ爪囲炎は、爪の周りが赤くなって腫れあがり、押すと膿が出ることがあります。治りにくい上、再発もしやすいのが特徴です。
https://wellmethod.jp/vagina_candida/
他にも、ヒゼンダニというダニの感染症である疥癬(かいせん)や慢性湿疹の一種である尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)などの湿疹があります。
治療法が全く異なる場合がありますので、なかなか治らない場合は、皮膚科で診断をしてもらいましょう。
4.症状が軽い場合に自分でできる対処法
手湿疹が起こる原因は手の乾燥によることが多いため、しっかりハンドクリームなどで保湿することが大切です。
皮膚の保湿におすすめなのはワセリンやヘパリン類似物質を配合したクリームです。塗ったあとにべたつくようでも、保湿力が高いため、こまめに外用することが重要です。
皮膚の潤い効果を高めるには、ヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分が配合されたものがおすすめです。
ここでは症状が軽い場合に、自分でできる対処法を原因別にご紹介します。
(症状がひどい場合は自己判断せずに皮膚科を受診ください。次章にて詳しい治療法を解説しています)
https://wellmethod.jp/handcream/
4-1.刺激性接触皮膚炎・アレルギー性接触皮膚炎
炎症を起こした原因となる物質やアレルゲンに触れないことが最も重要です。場合によっては、生活環境や職業を変えることも検討しなければいけません。
4-2.進行性指掌角皮症
外部からの刺激を避けることが大切です。水仕事をするときはゴム手袋を着用し、手洗い後や水仕事のあとはもちろん、日頃から保湿力の高いクリームをこまめにつけるようにしましょう。
4-3.汗疱型手湿疹
症状が軽く、かゆみなどがない場合は、適度な手洗いと保湿を行いましょう。水ぶくれがあるときは、水ぶくれが破れると感染症を引き起こす可能性があるので、できるだけ水仕事などの刺激を避けて清潔を保ちます。
4-4.やってはいけないこと
せっかく症状が軽減するためにケアを行っていても、やってはいけないことをしてしまっては効果がないどころか、悪化してしまうこともあります。
以下のことはやらないように気を付けましょう。
・熱いお湯で水作業を行う
・必要以上に手を洗う
・水疱を潰す
・ラテックスが原因になっている場合にゴム手袋を使用する
5.こんな症状があったら、皮膚科へ
・ブツブツとした湿疹やかゆみがひどい
・ハンドクリームなどでケアをしていても改善されない
・悪化していく
・膿が出ている
こんな症状がある場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
手湿疹は症状が軽いうちはかさついたり少しかゆみがある程度ですが、重症化してしまうと手湿疹を繰り返しやすくなり完治が困難になる可能性もあります。
手湿疹以外が原因の場合もあり、全く治療方法が異なる場合もありますので、適切な診断と対処が必要です。
5-1.手湿疹の治療
皮膚科では外用薬のステロイド軟膏、抗ヒスタミン剤の内服薬が代表的な治療方法です。
ステロイド軟膏は効き目が強いため、副作用のリスクから使用をためらう方もいるかもしれません。
しかし症状がひどく炎症が強い場合は、まず炎症を抑えることが重要となります。
そのためには、ステロイド外用薬を医師の処方に従って使用することが大切です。
炎症が治まってきたら、トコフェロール酢酸エステルなどが入った治療薬やワセリン、ヘパリン類似物質を配合したクリームなどを塗り、手の保湿を行います。
炎症がひどいときは、水仕事などをしないことで治りが早くなります。
6.手湿疹の自宅でできる予防法
手湿疹は普段水仕事をする機会が多い方によく見られます。
主婦の方や仕事で水を使う方は、一年を通して手のケアが必要になります。
ここでは、手湿疹の自宅でできる予防法について解説していきます。
6-1.刺激・乾燥を防ぐ
手湿疹を予防するにはまず、刺激や乾燥を防ぐことが大切です。
食器を洗ったり、水仕事を長時間行う場合はゴム手袋を着用するなどの対策をするとよいでしょう。
ゴム手袋を使うとかゆくなってしまう方は、綿素材やビニール素材の薄い手袋をはめてからゴム手袋を重ねて使用することをおすすめします。
6-2.手を洗いすぎない
手を洗いすぎると、手は乾燥してしまいます。
石鹸やハンドソープは皮膚表面の皮脂を洗い流すため、皮膚のバリア機能が低下し、手湿疹が発症しやすい状態となります。
手洗いは、必要以上に行わないことが大切ですが、感染症対策の観点から手洗いをする際は、水洗いを基本とすることをお勧めします。
常在菌を守りながら、表面に付着している病原性の微生物を洗い流すことが大切です。
その後、しっかりと清潔なタオルで拭きとって、必ず保湿しましょう。
https://wellmethod.jp/indigenous_bacteria/
6-3.保湿する
水仕事や手を洗ったあとは、しっかり水分をふき取ることが大切です。十分に水気をふき取ったら、保湿クリームやハンドクリームで保湿するよう心がけましょう。
とくに空気が乾燥する冬は、乾燥しやすい状況に加えて風に当たることでさらに皮膚が乾燥するため、外出の際は手袋を着用するといいでしょう。
6-4.手袋を使用する
お湯は手の皮脂を必要以上に取り除いてしまうため、食器を洗う際にはパウダーフリーのプラスチック手袋を使用しましょう。
なるべく手が水やお湯、洗剤と接触しないようにすることが大切です。
また空気が乾燥する季節は、外出時手袋をすることをおすすめします。
6-5.ナイトケアをしましょう
寝る前のリラックスタイムにハンドクリームをしっかり塗り込み、就寝中は綿の手袋(ナイト手袋)をしてハンドケアをしましょう。アルコールを含む化粧水や乳液は刺激となるため逆効果になります。オイルもしくはクリーム状の刺激のないものを基本にしましょう。
7.毎日おつかれさまの気持ちをこめて、こまめなハンドケアを!
手湿疹の予防には、毎日のこまめなケアが大切です。
また、できてしまった手湿疹を改善させる場合も、毎日のケアが重要です。
手湿疹がひどくなかなか治らない場合、気分も落ち込んでしまいますよね。
私は手湿疹を経験してから、毎日ハンドクリームをつけたり、手袋をはめて寝たりとハンドケアをこまめに行うようになりました。
それからはかゆみや痛みなどなく、きれいになった自分の手を見て笑みがこぼれることもあります。
これからもがんばっている自分の体のSOSをキャッチして、健康的でハツラツとした毎日を送りましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。