こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

2月は暦の上では春。

春といえども、朝晩はもちろん、1日を通してまだまだ気温が低い日が続きますね。
お住まいの地域によっては、雪が降り積もる時期でもあります。

そんな寒さが厳しいときは、温かいお風呂でゆっくりと冷えや疲れをとりたいものですよね。

筆者はお風呂が大好きなのですが、脱衣所で服を脱いだ瞬間、あの「ブルっ」とする瞬間が苦手です。

みなさまの中にも同じような経験した方も多いのではないでしょうか。

暖かい部屋から足早に脱衣所に向かい、寒さに耐えながら一気に服を脱ぐ。
ブルブルとしながら、さっとかけ湯をして湯船に飛び込むように入る。

この行為は、とても危険なことなのです。
何が危険かというと「ヒートショック」を起こすリスクが高くなるからです。

温度差が体に影響を与える「ヒートショック」。

みなさまも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ヒートショックは、死に至ることもあるとても怖い健康障害です。

今回は、このヒートショックが起こる原因と起こりやすい環境、予防対策についてご紹介します。

1.ヒートショックとは?

ヒートショック

ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ移動するなど急激な温度差が体に引き起こすショックのことです。血圧が大きく変動することで、心筋梗塞や失神、脳卒中などを引き起こす可能性があります。

ヒートショックは毎日行なっている習慣や日常生活の中で突然起こり、突然死や入浴時の溺死など、時には命を落としてしまうこともあります。

入浴をするために暖かい部屋から寒い脱衣場へ行く。
寒い脱衣所で服を脱いだ後すぐに温かい湯船に入る。
暖かい部屋から寒いトイレに行く。

こうした時に起こる血圧の乱高下が、ヒートショックを招く原因になるのです。

1-1.高齢者の浴槽における死亡者は交通事故による死亡者よりも多い

とてもショッキングな事実ではありますが、毎年多くの方が浴槽で命を落としています。

消費者庁でもリリースされていますが、厚生労働省の「人口動態調査」によると、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数は、令和元年には6,901人と報告されています。

その内、「家及び居住施設の浴室における死亡者数」は4,900人で、高齢者の不慮の溺死及び溺水の71%を占めています。

この数字は、平成23年以降、交通事故による死亡者数よりも上回っています。

参考)消費者庁リリース(図1、図2)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042/assets/consumer_safety_cms204_20201119_02.pdf

また、気温が高い夏よりも12~2月という寒さの厳しい今の季節に多いため、注意が必要です。

参考)消費者庁リリース(図4)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042/assets/consumer_safety_cms204_20201119_02.pdf

2.ヒートショックが起こるとき、体の中で何が起きてるの?

ヒートショック

ヒートショックが起こる原因は、温度差による血圧の急激な変動です。
では、血圧の急激な変動はどのようなタイミングで起こるのでしょうか?

その仕組みは、寒い場所では、体温を逃さないように血管が収縮します。血管が収縮すると血圧は上昇します。

血圧が上昇した直後、温かい湯船などに浸かると血管が拡張し、急激に血圧が低下します。
暖かい部屋から急に寒い部屋にうつると、この逆のことが起こります。

まさにこの血圧の急激な変動がヒートショックを招くのです。

3.ヒートショックを起こすリスクが高い人

ヒートショックは誰にでも起こり得ることです。
しかしヒートショックのリスクが高い方もいます。

3-1.高齢者

ヒートショックリスクが高い高齢者

65歳以上の高齢者の方は、ヒートショックのリスクが高いといえます。とくに75歳以上の方はさらにリスクが高くなる傾向があります。

年齢を重ねると普段元気な方であっても生理機能の低下により、体温維持や血圧の変動が起きやすい状態になっています。

そのため、若者よりも高齢者の方の方がヒートショックのリスクが高くなるのです。

3-2.生活習慣病の方

ヒートショックが起こる原因は先に解説したとおり、血圧の急激な変動です。

ヒートショックに関連する主な病気や症状には、心筋梗塞や脳卒中・失神などがあります。
生活習慣病のある方は注意が必要です。

高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の方は、動脈硬化が進行している可能性もあるため、血圧が変動しやすい状態であるといえます。
また、糖尿病の方は、自律神経に障害があり血圧が不安定になります。

高血圧があると、血管の柔軟性が失われているために、調整が上手くいかず、低血圧から意識障害を起こしやすくなります。

4.ヒートショックが起こりやすい場所

ヒートショックが起こる原因は急激な温度差です。

では私たちの生活の中で、どのような場面で急激な温度差が起こるのか、ヒートショックが起こるリスクの高い場所を解説します。

ヒートショックが起こりやすい場所は、暖房器具をあまり使うことのない寒い季節の冷え込んだ脱衣所や浴室・トイレなどです。

4-1.浴室

ヒートショックリスクが高い浴室

ヒートショックで亡くなる場所でもっとも多いのが浴室です。

暖かい部屋から寒い脱衣所に移動し、温かい湯船に浸かることで血圧が乱高下してしまいます。

結果、浴室内で意識障害を起こし、湯船で溺れて亡くなる方は少なくありません。

4-2.トイレ

トイレに行くことでなぜ血圧が変動するのか疑問に思われる方もいるかもしれません。

温かい部屋から寒いトイレに行くことで血圧が変動します。トイレでは服を下げるため、さらに寒さを感じてしまいます。

トイレの温度差以外にもリスクが高くなるのは、排便や排尿のときです。

排便をするときにいきむと血圧は上昇し、排便後、いきむことを止めると急激に血圧が低下します。
また、排尿する際には身体はリラックスして血圧が下がります。

排便や排尿で血圧が変化するため、ヒートショックが起こりやすくなるのです。

5.夏にも起こるヒートショック

夏のヒートショック

「ヒートショック」と聞くと冬場だけに起こると思われがちですが、ヒートショックは10度以上の温度差があると危険とされていますので、夏場も注意しましょう。

例えば、入浴後や暑い部屋から、クーラーがガンガンに効いたリビングに移動した場合には、血圧が大きく変動し、ヒートショックを引き起こしてしまう危険性があります。

対策としては、夏場にはクーラーを強くしすぎないこと。それから、クーラーのある部屋に移動する時には薄手を一枚羽織る、汗をかいたあとや暑い日に外出先から帰ってきた時、すぐに冷たいシャワーや水風呂に入って急激に体を冷やさないなどの注意が必要です。

6.ヒートショック対策

死に至るケースも少なくないヒートショックですが、ヒートショック対策は難しいことではありません。

日常生活の中で、寒暖差を意識することで予防ができます。
この章では、リスクが高い場面別に対策をご紹介します。

6-1.入浴

もっともヒートショックのリスクが高いのは入浴時です。
入浴時の対策はしっかり行いましょう。

1.浴室を暖めておく

ヒートショック対策で風呂を温める

ヒートショック対策のためにまずしてほしいことが、入浴前に浴室を暖めておくことです。

浴槽にお湯を張るときに、浴室暖房乾燥機を入れておくと浴室を暖めることができます。

浴室暖房乾燥機がない場合は、お風呂の蓋を開けたままにしておくことでお湯の蒸気で浴室内を暖めることができます。

2.脱衣所を暖めておく

浴室を暖めると同時に脱衣所を暖めておきましょう。
脱衣所と浴室の温度差を少なくすることが大切です。

脱衣所は、入浴前だけでなく、入浴後も注意が必要です。

入浴により体が温まり血圧が下がったところ、再び寒い脱衣所に移動することで血管が収縮し、血圧が上昇。これにより血圧の乱高下が起きる危険性があります。

これを防ぐためには、脱衣所を事前に暖めておくことが大切です。脱衣所に置くことができる小さな暖房器具を利用することで、効率的に暖めることができます。

安全性が気になる方は、脱衣所のドアをしっかり閉めた状態で、浴室のドアとお湯張りをした湯船の蓋を開けたままにしておくことで脱衣所を暖めることをおすすめします。

3.お湯の温度は41度以下にする

ヒートショック対策で風呂温度に気を付ける

湯船の温度は、41度以下に設定しましょう。
お湯の温度が高すぎると、心臓に負担がかかるため注意が必要です。

暖房の効いていない脱衣所で裸になり、暖まっていない浴室に入ると、体は体温を逃さないように血管が縮み、血圧が上がります。熱いお風呂に浸かると、熱さに驚いて血圧はさらに上昇します。
さらに、お風呂に浸かることで体が温まってくると血管が広がり、今度は血圧が下がりはじめます。

入浴時に血圧が上がったり下がったりする「乱高下」はお湯の温度が高いほど大きくなりますので危険です。

この「乱高下」は、動脈硬化が進んで血管が弱くなっている高齢者はとくに危険で、血管が破れたり詰まる原因となります。

設定した水位と温度を自動でセットしてくれる自動お湯張り機能がある場合は、温度を設定しておくと便利です。

そうした機能がない場合は、温度計を使って温度を調節しましょう。

4.かけ湯をしてから湯船に入る

湯船は急に入るのではなく、湯船のお湯またはシャワーをゆっくり手足にかけてから入るようにしましょう。

かけ湯をしてから入ることで急激な血圧の変化を防ぐことができます。

5.入浴時間は10分以内にする

寒い季節だからこそゆっくり湯船に浸かっていたいと思いますが、ヒートショック対策を考えるならば、入浴時間は10分以内にしましょう。

長湯をすると心臓に負担がかかり、疲労感が増します。
また、のぼせるほど入ると血圧が下がりすぎてしまい、失神による転倒のリスクになります。さらに、入浴後に再び寒い脱衣室に移動すると血圧が急上昇し、ヒートショックが起こりやすくなります。

湯船に浸かる場合も、急に胸までつからないようにしましょう。
水圧によって、たくさんの血液が心臓に一気に戻ると、心臓に負担がかかりやすくなります。腰湯からはじめ、様子を見ながら胸元まで浸かるようにしましょう。

6.入浴の前後に水分補給をする

ヒートショック対策で水分補給する

入浴をすると汗をかきます。

汗をかくと体内の水分が減って、血液がドロドロになり血流が悪くなります。

こうした状況は血栓ができやすい状態となっており、脳梗塞や心筋梗塞などの怖い病気を引き起こす可能性があります。

また、体が温まると足の血管が広がるため、立ち上がった時に血液が一気に下半身に下がります。その影響で、脳への血流が少なくなり、失神が起こる可能性もあります。

入浴の前後に水分をしっかり補給することで、血圧や血流の変動による脳疾患や心疾患の予防につながります。

7.食後や飲酒、睡眠薬などを服用したあとすぐに入らない

食後は血圧が下がり過ぎてしまう「食後低血圧」になることがあります。

食後低血圧によって失神することがあるので、食後すぐの入浴は避けるようにしましょう。

また飲酒も一時的に血圧を下げます。飲酒後は体からアルコールが抜けるまで、入浴はしないようにしましょう。

その他にも体調が優れないときや、精神安定剤や睡眠薬などを服用した際は、入浴を控えることが大切です。

8.家族に一声かけてから入浴する

入浴中に何かあったときのことを考え、入浴する際は家族に声をかけておくと安心です。

なかなかお風呂から上がってこない場合など、安否を確認することができます。

9.入浴後の血圧変動にも注意を

ヒートショックによる急死は入浴中に多発しますが、入浴後も注意が必要です。

血圧の変動は、入浴後も数時間は続きます。入浴後も急激な温度変化を起こさないよう、体を冷やさないように注意しましょう。

6-2.トイレ

ヒートショックが起こるリスクが高い場所の一つにトイレがあります。

トイレのヒートショック対策

1.暖房器具を使用する

一般的な家庭ではトイレに暖房器具が設置されていないことが多く、リビングなどのような生活の中心となる部屋との温度差は大きくなる傾向があります。

さらにトイレでは衣服を下ろすため、急激な温度差で体に大きな影響を与えてしまう可能性があるのです。

できればトイレにも小さな暖房器具を用意しておくと安心です。

2.便座を温かくする

トイレに暖房器具を設置することが難しい場合は、温かい便座を使用することをおすすめします。

暖房式の便座がおすすめですが、暖房式の便座がない場合はパイル地などの便座カバーなどを使うようにしましょう。

3.便秘にならないようにする

トイレでいきむことも血圧を上昇させる原因となります。

便が硬く便秘がちだと、いきまないと排便ができません。
普段から便秘にならないように、食物繊維や水分をしっかり摂取して便通を改善しておきましょう。

7.リフォームでヒートショック対策も

リフォームでヒートショック対策

お住まいの家が持ち家である場合、ヒートショック対策を考える上で家をリフォームするという方法もあります。

脱衣所やトイレなどの狭く、あまり人がいない空間に暖房器具をつけたままにしておくことに不安を感じる方もいらっしゃると思います。

安全性を考えると、浴室には暖房乾燥機や自動給湯器、トイレには暖房式の便座があると安心ですね。

8.ヒートショックを防ぐには毎日の小さな心がけが大切

ヒートショックを防ぐ心がけ

寒い季節になるとよく耳にするヒートショック。

毎日健康に気をつけていても、ヒートショックは条件がそろえば誰にでも起こり得るものです。

ヒートショックは死に至ることもある怖い症状です。

これまで行ってきた習慣をほんの少し変えることで、ヒートショックを防ぐことができます。

将来のことを考えて改善方法を習慣化していくことが大切です。
まだ40代・50代だからと安心してはいけませんね。

これからの生活を健康に、そして安心して送るためにも、まずは無理なくできることから対策をはじめてみませんか?

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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