こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。

突然ですが、 みなさまは「単純ヘルペス」についてご存じですか。

「再発を繰り返すけれど、いつ治るの?」
「他の人にもうつる病気なの?」

私自身は昔、友人から「口唇ヘルペスにかかりなかなか治らなくて大変」と悩みを打ち明けられたことがあったので、身近な病気の印象が強くあります。

しかし、単純ヘルペスについてどこまで知っているか? と聞かれると、「ポツポツした吹き出物がでる」といった漠然としたイメージしかなく、具体的にどのような病気で、どのように感染するのか、生活する上で気を付けなくてはいけない点についてはよく知りませんでした。

実は、単純ヘルペスこそ、私たち40~50代の女性が知っておきたい病気の一つです。

なぜなら、単純ヘルペスの原因であるウイルスは、年齢があがるにつれほとんどの人が保有するといわれており、ちょっとしたキッカケで誰でも発症する可能性を秘めているからです。

もし単純ヘルペスになったとき、私たちは他の人にうつさないためにどのような生活スタイルをとることが望ましいのでしょうか。

ご自身やご家族の健康を守るためにも、今回はこの単純ヘルペスについて、原因と改善法、対策についてご紹介したいと思います。

1. 単純ヘルペスとは

ウイルス

1-1. 単純ヘルペス

単純ヘルペスは口周囲などの顔面、腰回りや性器にできるウイルス感染症の一つです。

発疹や水ぶくれのような皮膚症状と針でつついたようなチクチクした痛みや不快感を伴います。

単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、一度感染すると症状はおさまっていてもウイルスは身体に棲み続け、免疫が弱るとしばしば再発を繰り返すことがあります。

ヘルペスウイルスに感染している人の割合は、年齢層があがるにつれ高くなり、成人になるまで半数~8割程度の人が感染するといわれています。70代以上のほとんどの人が感染しているという報告もみられますが、無症状で気が付かない場合もあります。 

1-2.「ヘルペス」は9種類、帯状疱疹も有名

ウイルス

いわゆる「ヘルペス」と言えば、「単純ヘルペス」のことを指すのが一般的です。
一方で、ヘルペスウイルスには、9種類あります。
ヘルペスウイルスは、人間と共存する共生ウイルスの一種で、一度感染すると神経の根っこに潜みます。

もう1種類有名なのが「帯状疱疹ヘルペス」です。体の半分に、帯のように水ぶくれを伴う赤い発疹がでて、痛痒く、神経痛が起こるものです。

帯状疱疹ヘルペスは、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスによって起こる病気です。

私たちは、子供の頃に、水ぼうそう=水痘にかかります。そのウイルスは、水ぼうそうが治った後にも、神経の根っこにずっと潜み、人間と共生しています。

共生しているだけで、普段は全く悪さをしません。

基礎疾患や加齢によって免疫が著しく弱ると、急にウイルスが元気になり、神経を壊しながら増殖し、神経の行き着く先の皮膚表面に、水ぶくれを伴う発疹として帯状疱疹を発症します。

単純疱疹(単純ヘルペス)と違い、帯状疱疹は一度起こると一般的に再発はなく、生涯一度きりですが、ひどい神経痛が残る場合があるため、皮膚科受診の上でしっかりと治療することが必要です。

2. どんな症状がでるの?

単純ヘルペスの症状は、口や目、唇、皮膚、性器などに違和感やかゆみ、ムズムズ感といった自覚症状からはじまります。さらに半日程度で赤く腫れ、2~3日後に痛みや小さな水ぶくれの症状が現れ、その後にただれ(びらん)、かさぶたになり、1〜2週間程度で治まります。

口にできる口唇ヘルペスの場合、水ぶくれは通常1か所にできることが多く、性器にできるヘルペスの場合、赤い小さな水ぶくれの他に皮膚のただれなどがみられ、排尿する際の痛みや、歩きづらくなるなどの症状がでるケースもあります。 

また、症状の程度は個人差があり、初めて感染した場合は、高熱を伴うなど症状が重たくなる場合がある一方で、感染しても自覚症状がでないケースや、症状が全くでないケースもあります。一般的には、大人になってから感染すると症状が重くなるともいわれています。

前述のように、ヘルペスウイルスは、人と共生するウイルスであり、その人の免疫の状態により、無症状であったり、症状を繰り返したりします。

通常は、ヘルペスの発疹部位に触ったとしても、皮膚を通して感染することはありませんが、アトピー性皮膚炎の人は、皮膚が弱いため単純ヘルペスウイルスに感染しやすいといわれています。全身にできる発疹(カポジ水痘用発疹症)を合併することもあるので注意が必要です。 

3. 単純ヘルペスの原因

単純ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス」が感染して発症します。1型と2型に分かれ、顔面や口回りなどの上半身にでるものは1型の単純ヘルペスウイルス、性器を中心とした下半身に症状が出るものは2型の単純ヘルペスウイルスが主な原因です。

3-1. 1型単純ヘルペスウイルス

赤ちゃん

1型の単純ヘルペスウイルスは、通常、赤ちゃんや幼児の頃に口内炎を伴う風邪症状として、はじめて感染します。感染後、ウイルスは顔にある神経の根元に棲みます。疲労の蓄積や、風邪をひいたり、強い紫外線がきっかけで繰り返し発症します。 

単純ヘルペスは全身のどこにでも症状が現れる可能性がありますが、発症した体の部分により、各部位の名前で呼ばれます。主に1型の単純ヘルペスによるウイルス感染としては以下のようなものがあります。

・口唇ヘルペス
・ヘルペス角膜炎
・ヘルペス脳炎・髄膜炎
・新生児ヘルペス

3-2. 2型単純ヘルペスウイルス

2型の単純ヘルペスウイルスの多くは性行為により感染します。

感染した後もウイルスは腰の神経の根元にひっそりと潜み続けます。風邪をひいたり、疲労の蓄積、ストレス、強力な紫外線などをきっかけに発症します。

再発した場合の症状は軽いケースが多いのですが、頻繁に再発を繰り返すことが体への負担となります。多いケースだと毎月再発を繰り返す方もいます。女性の場合、月経周期に合わせて免疫が弱ると再発するケースもあります。

2型の単純ヘルペスウイルスも1型同様に体の発症する場所により呼び名が変わるものがあります。

・性器ヘルペス
・臀部ヘルペス
・ヘルペス脳炎・髄膜炎

4. 単純ヘルペスの特徴

単純ヘルペスの特徴は1型、2型ともに一度感染すると生涯にわたり体に棲み続け、免疫力の低下などのきっかけにより発症、再発を繰り返すことがあげられます。

4-1. 一度感染すると、生涯にわたり体に潜み続けます

ウイルス

大半の人は乳児や幼児の頃に、気が付かないところで単純ヘルペスに感染します。

体に入りこんだウイルスは症状を現わさないまま神経の中にひっそりと潜りこみます。一度ウイルスに感染するとウイルスが体から排泄されることがなく、一生を共にするといわれています。 

人の体には、常在細菌と同じく、多くの常在ウイルスも暮らしており、人の体の機能をサポートしていますが、一部は、ヘルペスウイルスのように病気を引き起こします。

ヘルペスウイルスも、健康な状態であれば、症状を引き起こしません。

4-2. 抵抗力が落ちるとウイルスが活動する

単純ヘルペスウイルスは、体が元気で免疫力があるうちは大人しくしているため問題ありません。

しかし、風邪やストレス、疲労の蓄積や、発熱、生理、ケガや強い紫外線を浴びる、免疫力を抑える薬などの何かのきっかけで体の免疫力が弱まったときに、神経に潜んでいたウイルスが暴れだし、単純ヘルペスの症状が現れます。

4-3. 再発することが特徴です

治療や症状が治まってもウイルスが体からいなくなることはないため、また体の免疫力が落ちたときに再発することがあります。

(帯状疱疹の場合は、一度起こると免疫が学習するため、再発はないのが一般的です)。

そのため、再発した際は、ウイルスの増殖を抑えるためにも、初期の段階から薬を服用し、症状を和らげる必要があります。

5. 診断方法

通常は水ぶくれなどの皮膚の症状から診断されます。

しかし、まれに帯状疱疹や毛嚢炎などとの鑑別が必要な場合や、出産時の母子感染をさけるために確実な診断がほしいケースでは、水ぶくれから採ったサンプルを検査しウイルスを同定することがあります。

脳炎や髄膜炎の場合や、髄液検査や血液検査での抗体検査などを行い、ウイルスを同定します。

唇や顔面などの症状がある場合は皮膚科へ、性器や下半身に症状がある場合は婦人科や泌尿器科のある医療機関を選ぶとよいでしょう。

6. 治療方法

塗り薬

ウイルスを根本的に体から排泄する方法は確立されていません。しかし、薬でウイルスの増殖を防ぎ、症状を軽くすることは可能です。

抗ウイルス薬には内服と点滴があり、重症度や必要に応じて使い分けされます。軽症の場合は、抗ウイルス薬の外用のみを使うケースもあります。

また、必要に応じて痛み止めの使用や、発疹の程度によっては、皮膚を保護する塗り薬が使われる場合もあります。 

水ぶくれができる前のウイルスが増殖している早い時期に抗ウイルス薬を用いることが効果的です。そのため、繰り返すケースでは、再発しそうな予兆を感じたり、症状がではじめたら、速やかに治療を開始することをおすすめします。

7. 単純ヘルペスを予防する! 日常生活のポイント 

単純ヘルペスは、体の免疫力が落ちている時に発症しやすくなります。とくにストレス・疲労・風邪・性交渉・紫外線などで免疫力が落ちたときに発症するきっかけとなることがあります。

7-1. ストレスや疲労を溜めない

体の免疫力が落ちないようにするためには、日ごろからストレスや疲労をためない工夫をすることが大切です。 そのためには、日々の生活習慣を見直し、バランスのとれた食事と十分な睡眠をとるように心がけましょう。

7-2. 紫外線を防止する

紫外線対策

単純ヘルペスが発症するきっかけの一つとして、強力な紫外線があります。そのため、紫外線が強い日や外出時間が長い晴れた日などは、日焼け止めをこまめに塗る、日傘・帽子・UVカットのストールなどで紫外線対策を心がけましょう。

8. もし、自分や家族が感染してしまったら

多くの場合、成人では、単純ヘルペスウイルスを持っているものですが、もしご自身や身内が単純ヘルペスを発症してしまったら、感染への配慮も必要です。日常生活における気を付けたいポイントについてご紹介します。

8-1. 水ぶくれはつぶさない! 手洗いの徹底

手洗い

水ぶくれがある時期は、ウイルス量も多く感染力も強いため注意が必要です。

水ぶくれがやぶれると症状の回復が遅くなるだけではなく、別の細菌が感染したり、痕が残ったりすることがあります。また、ウイルスが手につき、ほかの場所にウイルスがうつる原因となることがあります。そのため水ぶくれをつぶさないよう注意しましょう。

とくにウイルスが付いた手で目やコンタクトを触ると、角膜ヘルペスを発症することがあります。角膜ヘルペスは失明することもある病気のため感染しないよう注意することが必要です。

また、水ぶくれを触らないよう気を付けるほか、感染部位を触った後は、必ず手洗いを行うことを徹底しましょう。

8-2. タオル・食器の使いまわしは避けましょう

単純ヘルペスは人の唾液などにもウイルスが排泄されることがあります。

そのため、単純ヘルペスの症状が出ている人とはコップやグラスの使いまわしなどは控えるようにしましょう。

また、肌に傷や湿疹ができて皮膚の抵抗力が落ちていると、タオルを介して感染するケースもあります。そのため衣類やタオルなどは共用で使用することはなるべく控えましょう。

8-3. 性的接触を避けましょう

単純ヘルペスを発症している時はパートナーとの性的接触は控えましょう。

性器ヘルペスだけではなく、口唇ヘルペスの場合もオーラルセックスによりウイルスが感染し、性器ヘルペスを発症することがあります。

とくに、パートナーが単純ヘルペスの抗体を持っておらず、初感染した場合、重症化するケースがあるので気を付けましょう。

自覚症状がなくても、唾液などにウイルスが排泄されることもあります。キスやセックスでパートナーを感染させてしまうことがあります。パートナーと病気について正しい情報をもとに理解を深め、できるだけ感染リスクを減らすように工夫しましょう。 

9. 頑張りすぎない体づくりを目指しましょう

リラックスタイム

私たち40~50代の女性は、日々家庭や仕事・家事・介護など時間に追われ、ついつい頑張りすぎたり、ストレスを抱えがちです。

しかし、単純ヘルペスはストレスや疲労など体の抵抗力が落ちるほど発症しやすくなるため、一日のどこかで体のストレスや疲労を発散できるような生活習慣を心がけることが大切です。

バランスのとれた食事を意識する・好きなアロマを焚く、ストレッチをするなどもいいかもしれません。

筆者も一日あれこれとやっているうちに、自分の時間を作ることを忘れがちなのですが、最近は朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる、といった習慣を取り入れてみることにしました。

これからの私たちの健康といつまでも輝く日々を送れますように。健やかに生き生きした毎日を送りましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

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