皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

夕方空腹時に、低血糖になるからと、甘いものを常備している人はいませんか?
それ、むしろ糖質の摂り過ぎかも知れません。

「え!? 低血糖なら、むしろ糖質をとらなきゃいけないんじゃないの⁉︎」と驚かれた方は、是非最後までお読みください。

うつっぽさややる気のなさ、焦燥感、集中力の低下、動悸や息苦しさなどパニック様症状など、わけなく起こるこうしたメンタルの不調に悩まされているなら、低血糖を疑い、糖質の摂り過ぎを控えてみるべきです。

今日は、「体質だから、、、」と、軽視されがちな低血糖とメンタル症状との関連、そしてとっておきの対策をお伝えします。

1. 低血糖とメンタル症状

1-1. 低血糖はストレスの原因

マドレーヌ

そもそも、低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度:血糖値が70mg/dL以下と異常に低くなっている状態です。

ブドウ糖は、細胞の中のミトコンドリアというエネルギー工場の重要なエネルギー源です。
ですから、低血糖は細胞にとって、エネルギー切れ=いのちの危機!

とにかく、大変重大な出来事ですから、なんとかこれを回避しようと自律神経やホルモンを使って血糖値をあげようとします。

興奮と覚醒に関わる交感神経が刺激され、コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの副腎ホルモンが分泌されることで、血糖値が上がります。

交感神経も、これらのホルモンも、ストレス時に反応するシステムです。

つまり、低血糖は、心身にとって重大なストレスとなり、疲弊させるのです。

1-2. 低血糖が起こす神経・精神症状

低血糖が起こると、自律神経のうち交感神経が刺激されたり、コルチゾールが分泌されたりします。
さらに、脳の栄養源の一つであるブドウ糖が不足してしまうため、脳機能が低下します。

それに伴って様々な精神症状や自律神経症状が起こります。
血糖値が低くなればなるほど、重症になります。

・70(mg/dl)未満・・・発汗、動悸、手足の震え、不安感、悪寒
・60未満・・・集中力低下、脱力感、疲労感、眠気、めまい、視界のぼやけ
・50未満・・・傾眠(意識障害の初期段階)
・40未満・・・昏睡、けいれん

通常、糖尿病でインスリン分泌が刺激される薬剤やインスリン注射を行っている場合の低血糖や、インスリン分泌を起こすような腫瘍(インスリノーマ)などの原因がない限り、意識障害を起こすレベルの重度の低血糖症状が起こる前に、交感神経とホルモンの働きで血糖値は回復します。
ただし、その際には、神経・メンタル症状を伴っているのが一般的です。

1-3. 低血糖の分類

低血糖には、糖尿病の薬物治療中やインスリンを分泌する腫瘍などの器質的な原因があるものと、取り立ててこのような原因がない場合があります。後者を、「機能性低血糖」と言い、今回は、主に、「機能性低血糖」について話をしていきます。

1. 器質的な原因がある場合

この場合は、元となる疾患の治療を、また、糖尿病の治療薬の副作用の場合は、薬の調整が必要です。

・糖原病:糖尿病薬の副作用などによる疾患
・下垂体・副腎・甲状腺などホルモン臓器の機能不全
・インスリノーマ:インスリンを分泌する細胞の腫瘍
・インスリン自己免疫症候群
・胃切除後のダンピング症候群
・カルニチン欠乏症 など

2. 機能性低血糖

ベッドに横たわる女性

上記の原因がない場合には、機能性低血糖となります。

こちらは、食後3、4時間頃に、精神症状(不安、イライラ、集中力低下、思考力低下など)と交感神経刺激症状としての身体症状(ふるえ、動悸、発汗、顔面蒼白、倦怠感、視力障害など)を伴う症候群とされています。

意識障害を起こすほどの低血糖にはならないものの、身体の自己調整機能が上手くいかずに起こるものです。
現代人の様々な心身の不調の気づかない原因になっています。

機能性低血糖は、まだ新しい概念で、一般の医療従事者にはあまり認識されていません。

症状がうつ病や不安神経症、パニック障害などの症状と見分けがつきづらく、精神科や心療内科で、このような診断を受けている人の中に、機能性低血糖がかなり隠れている可能性があります。

正式な診断のためには、機能性低血糖について知識を持った分子整合栄養療法(オーソモレキュラー 療法)を行っているクリニック(精神科や心療内科でも一部取り入れられています)を受診する必要があります。

機能性低血糖には、血糖値の動きによって3つのパターンがあります。

1. 反応性低血糖の特徴と症状

最も多いのがこのタイプです。

食後急激に血糖値が上がり、ピークに達すると急激に下降に転じて低血糖になります。

血糖値を下げるホルモン・インスリンの分泌が正常より遅れ、かつ過剰に分泌されることで、血糖値の異常に繋がります。

1時間で30以上の血糖値の低下が起こることは、身体にとってかなり危機的な状況であり、これを回避するために、交感神経と、興奮系の副腎ホルモンが大量に分泌されます。

身体は、パニック状態、ストレス状態になります。

自律神経症状としての、動悸や発汗、呼吸促迫、筋肉のこわばり、頭痛。そして、精神面では、イライラや不安感、焦燥感、恐怖感などに襲われます。

「パニック症候群」と誤って診断されやすいのですが、この場合、本来は精神的な原因がないため、「理由がないのに急にパニックに襲われる」という発言がみられます。

パニック様症状は、本人にとっては「死の恐怖」を感じる症状ですから、その症状自体に追い詰められている傾向にあります。

また、インスリンの過剰分泌により、細胞内に大量のエネルギー源、糖分が送り込まれるため、細胞がエネルギー過剰になり、脂肪がつきやすく、太りやすくなります。

2. 無反応性低血糖の特徴と症状

電池切れ

このタイプは、食事を摂った後の正常な血糖値の上昇がないままに、低血糖を起こします。インスリンの分泌が一定せず、出たり出なかったりします。

血糖値が十分に上がらないために、脳や筋肉などの細胞にエネルギー源であるブドウ糖を十分に送り込むことができません。

このタイプは、基本的に「エネルギー不足=電池切れ」の症状がメインになります。

疲労感、倦怠感、やる気の低下、集中力の低下、思考力の低下で、動作も億劫で緩慢になります。

「怠けている」と他人から思われやすいものの、本人は、非常に辛いと感じています。

3. 乱高下型低血糖の特徴と症状

このタイプは、食後の血糖値が乱高下します。

精神的にもアップダウンが激しく、本人も周りもその感情の変化に振り回されやすくなります。

血糖値が急降下している時間帯は、交感神経症状が中心で、イライラ、ソワソワ、ドキドキと興奮気味になり、低血糖になると、どんより、うつうつ、うとうとと鎮静気味になります。

これを数時間のうちに繰り返すことで、心身は大きなストレスを受けます。

1-4. 機能性低血糖かも?チェックリスト

機能性低血糖を疑う場合、以下のチェックリストを確認してみてください。

3つ以上当てはまれば、疑いがあると考えましょう。

・砂糖の入った甘いものや清涼飲料水をほぼ毎日摂る
・空腹感を感じて、おやつや甘い飲み物を摂ることが多い
・夜間に覚醒し、何かを食べることがある
・夕方の空腹時に強い眠気を感じたり、集中力が落ちたりしやすい
・体重の増減が激しい
・体重が増えてきた、または痩せにくい
・イライラや不安感があり、甘いものの摂取で改善したことがある
・動悸、発汗、呼吸苦などがあり、甘いものの摂取で改善したことがある
・抗うつ薬や抗不安薬を服用しても、症状が改善しない
・糖尿病の家族歴がある
(溝口徹「うつは食べ物が原因だった」(青春出版社)より改変)

1-5. 機能性低血糖の主な原因とは?

甘いものや糖質を日常的に過剰気味に摂取し、一方で、食物繊維が不足している傾向があります。

低血糖があるから、甘いものを食べているというロジックになっていることがありますが、元をたどれば、糖質の摂りすぎにより、膵臓からのインスリン分泌の異常が起こり、低血糖になり、それを回避するために、また糖質をとるという悪循環になっています。

1. 糖質の過剰摂取

スイーツラバーやパンや麺類など炭水化物ラバーの方は、特に注意してください。
特に砂糖やブドウ糖などを含む菓子類や清涼飲料水は急激な血糖値の急上昇をもたらします。

2. 食物繊維の不足

食物繊維

食物繊維は、血糖値の上昇を穏やかにする作用があるだけでなく、腸内細菌のエサとなり、血糖値の上昇を抑える短鎖脂肪酸を分泌します。不足することで、これらの作用が低下します。

3. 不規則な食事

食事時間が不規則になると、膵臓のインスリン分泌を疲弊させ、自律神経を乱します。

4. アレルギー体質や免疫異常

気管支喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患は、炎症を抑えるために、抗炎症ホルモン・コルチゾールを分泌します。コルチゾールは、血糖値をあげるホルモンでもあるため、血糖値が乱れやすく、この状態が続くことで副腎の機能が疲労を起こして低下しやすくなります。

5. ストレスの過剰

ストレスは、交感神経と副腎ホルモン分泌を刺激して、血糖値の乱れを引き起こす原因になります。

1-6. 機能性低血糖の診断は?

診断

機能性低血糖の診断は、食後の血糖値やインスリン分泌を細かく測定することで明らかになります。
基本的には、保険が効かず、自由診療になります。

1. 75gOGTT糖負荷試験

75gのブドウ糖液を飲み、5時間の間に30分置きに血液検査を行い、血糖値とインスリンを測定します。
機能性低血糖のパターンを確実にするなど、確定診断には、この検査が必要です。

ただし、半日は病院にいる必要がある上に、意図的に症状の原因であるブドウ糖を負荷する為、パニック様症状などの重度の症状が誘発されるリスクもあり、慎重な実施と観察が必要になります。

あまりにも重度の場合は、リスクを考えて「行わない」こともあります。

2. 24時間グルコースモニタリング検査

24時間、日常生活の中で血糖値をモニタリングする測定器を付け、血糖値の日内変動をみる検査です。

普段の生活を続け、食事内容や運動などを記録しながら、血糖値の変動をみていく為、症状とライフスタイルの関係性が認識しやすく、その後のライフスタイルの改善にもつなげやすいのがメリットです。

2週間程度、測定器をつけっぱなしにはなりますが、日常生活を送ることができる上に安全に行うことができるので、安全です。

2. 食事のポイントは血糖値

砂糖

低血糖に伴う神経症状・メンタル症状を改善するポイントは、血糖値を過剰に上げず、インスリンの過剰分泌を防ぐことです。

つまり、砂糖やブドウ糖を含む食品や炭水化物の摂り方を工夫することです。

2-1. いきなり糖質制限は危険

機能性低血糖まで起こしている人が、「じゃあ、糖質制限か!?」と、一気に糖質をカットしてしまうと、低血糖を引き起こして、疲労倦怠感、脱力感、思考力低下、集中力低下など抑制系の症状で動けなくなる可能性があります。

まずは、過剰だった分の糖質を適正量に減らし、血糖値が上がりにくい食べ方に変える工夫をしてみましょう

2-2. 砂糖・ブドウ糖の入った菓子類やジュースは避ける

まず、血糖値を急上昇させる、砂糖やブドウ糖の入った菓子類やジュース類は避けましょう。
血糖値は、ゆっくり上げることがポイントです。

低血糖になったときのために、非常食として持っておきたい!という気持ちはわかりますが、これを続けると治りません。

非常食には、血糖値が上がりづらい糖質として、GI値やGL値を考慮して、バナナを1口2口程度がおすすめです。

2-3. 食品のGI値・GL値をチェックする

GI値(グリセミックインデックス)は、食後血糖値の上昇を示す指標です。
食事から2時間後までの血糖値の上昇を標準食(ブドウ糖、白米飯、食パン)を100として、それとの比較で数値を表します。
従来、GI値が低い食品は血糖値をあげづらいと言われてきましたが、実は、この数値は、含まれる糖質量をカウントしておらず、含まれる糖質量が多いと、結局は血糖値が上がることがわかってきました。

それを踏まえて重視されるのが、GL値(グリセミック・ロード)です。

GL値は、食品に含まれる糖質の重量にGIをかけて100で割ったものです。

GL値=食品が含む炭水化物の量[g] × GI ÷ 100

1. 食品のGI値とGL値

食材 GI値 GL値 1食重量(g)
白砂糖 110 110 100
キャンディ 108 5 5
黒砂糖 99 71 80
菓子パン 95 33 70
食パン 91 25 60
チョコレート 91 28 55
ジャガイモ 90 22 140
ハチミツ 88 15 21
85 43 100
精白米 84 47 150
うどん 80 52 250
胚芽米 70 38 150
トウモロコシ 70 13 100
そうめん 68 44 250
スパゲティ 65 37 200
ソバ 59 38 250
玄米(五分) 58 32 150
ライ麦パン 58 18 60
玄米 56 30 150
サツマイモ 55 33 190
バナナ 55 12 100
全粒粉パン 50 13 60
豆腐 42 1 150
チーズ 35 0 20
納豆 33 2 50
30 0 50
トマト 30 2 150
アーモンド 30 1 15
ピーナッツ 28 0 8
牛乳 25 3 210
プレーンヨーグルト 25 1 100
キュウリ 23 1 100
コーヒー 16 0 100
みりん 15 1 18
緑茶 10 0 100
紅茶 10 0 150

(溝口徹「うつは食べ物が原因だった」(青春出版社)より)

基本的なGI値、GL値を踏まえた食品の選択の基準は、以下のように考えましょう。

1. GI値60以下は、安心食品
2. GI値60~70は、要注意食品
3. GI値70以上は、避けるべき食品
4. GI値が低い場合でも、GL値が高い場合は少量にする
5. GL値は〜10=低値、11~19=中値、20〜=高値です。

例えば、GI値が低めのそばや玄米も、含まれる糖質量は多いため、GL値は高めです。
基本的に、主食となる穀物は、お茶碗に軽めに一杯。
麺類は、1食の摂取量が多いために高GL値になる傾向があるため、なるべく避けたい食品です。

バナナを見ていただくと、GI値55、GL値12といずれの項目も満たす安心食品です。
サツマイモも、GI値55と低いのですが、1食分食べるとGL値33と高くなります。GL値を減らすには、量を少量にすることです。50g程度の摂取量であれば、血糖値は上がりにくくなります。

2-4. 食べ順を意識する

懐石料理

食べ順も大切です。
まず、お米!と行きたい気持ちはわかりますが、それでは血糖値が跳ね上がります。

食物繊維を含む野菜や海藻類、キノコ類などの副菜だけでなく、タンパク質や油を含む肉や魚などの主菜をまずは先に食べること。
そして、最後に、炭水化物をちょっぴり。

これは、懐石料理やフルコース料理のような食べ方ですね。

昔は、主菜、副菜、主食を順番に食べるいわゆる「三角食べ」が推奨されていましたが、血糖値を考えるとこれはおすすめできない食べ方です。

2-5. よく噛んで時間をかけて食べる

よく噛まずに糖質を含む食べ物を飲み込み、急にお腹に入れることで、血糖値の急上昇とインスリン分泌を促進してしまいます。

ゆっくりとよく噛んで食べることで、満腹中枢が刺激され、過食も防ぐこともできます。

2-6. 重度の場合は「少量頻回食」を

バナナ

最終的には、食べるタイミングを朝食・昼食・夕食と1日3食にする方向に持っていきたいのですが、低血糖が重度な人では、これでは空腹時間ができてしまい低血糖になってしまうリスクがあります。

その場合は、1日の食べる全体の量は変えず、朝食・10時の補食・昼食・15時の補食・夕食・夜の補食など6回程度に分ける「少量頻回食」をおすすめします。

夕食が早い時間帯の場合は、夜間の低血糖を避けるために、夜に補食しますが、夕食が遅い場合は、これは不要です。

食後2〜3時間経過し、血糖値が下がりやすくなってくる時間帯に備えて、捕食をします。

慣れないうちは、バナナやサツマイモを少量。徐々に糖質を控えた食事に慣れてきたら、糖質量の少ない乳製品(ヨーグルトやチーズなど)やほとんど糖質を含まないナッツ類などに切り替えていきましょう。

3. 適切な対処ができれば解決の道はある

リラックス

私自身、機能性低血糖の方を栄養外来で拝見してきましたが、多くの方は、「自分はうつ病だ」「自分はパニック障害だ」「自分の心と体がコントロールできずに周りに迷惑をかけている」などと考えて、自分を責めがちです。

精神科・心療内科を受診しても改善しないため、食事のアプローチを行わないでいると薬剤の量も増えていく可能性があります。

軽度の場合は、まず、食事を変えてみることで様子をみれば良いですが、自分ではコントロールができないほどの症状が出ている場合は、「機能性低血糖」の適正な診断と指導が可能な医療機関に相談をしてみてください。
分子整合栄養療法(オーソモレキュラー療法)を行なっている医療機関(検索「導入医療機関一覧」 https://www.orthomolecular.jp/clinic/)が前提ですが、診断と治療ができる医療機関は限られています。

「機能性低血糖」について、診断と治療ができるかは、各医療機関にお問合せください。

適切な診断によって対処法がわかれば、必ず、解決する日が来ることを、信じて頂きたいと思います。

LINE登録でプレゼント実施中!
詳しくは→ https://wellmethod.jp/present/

医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

桐村 里紗の記事一覧
tenrai株式会社 https://tenrai.co/
公式ブログ http://dr-lisa.info/