皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

新型コロナウイルスの感染拡大で、社会全体がストレスフルですね。

このストレスを難なく乗り切れる人、負けてしまい体調やメンタルを崩す人は、何が違うのでしょう?

普段から、疲労感や体調不良、うつうつやイライラなどの心身の不定愁訴に悩まされている人は、とりわけ辛い思いをしているかも知れません。

色々な原因がありますが、月経がある年代の女性に共通している根本の問題が、「隠れ貧血」です。

産後うつ、更年期うつや月経前症候群などにも関連している「隠れ貧血」を改善することは、女性の本来の活力を回復するキーになります。

1. 月経ある女性の不定愁訴は隠れ貧血を疑って

眠い女性

毎日なんとなく、「気が滅入る」「気力がわかない」「体調が悪い」「疲れやすい」。これが、私の体質。

そんな風に思い込んでいる女性の皆さん。
実は、本当のあなたは、もっともっと、心身ともに元気いっぱいかも知れません。

「だって、昔からそうだもの」

本当にそうでしょうか?
小さい頃はどうだったでしょうか?

小学校高学年から中学校の頃、月経が始まってから。もしくは、産後。
これらの時期から、こうした訴え、つまり不定愁訴が始まったなら、「隠れ貧血」を疑うべきです。
もしくは、更年期からこうした訴えが始まっているかも知れません。

こちらの記事もご参考に

これって更年期うつ? 女性のライフステージとうつの本当の関係

1-1. 「隠れ貧血」とは何か?

「隠れ貧血」は、「潜在性鉄欠乏」とも呼ばれますが、いわゆる「貧血」とは診断されないものの、体の中の鉄が不足している状態のことを言います。

月経のある女性は、定期的に月に1回の出血と共に鉄が体の外に排泄されてしまいます。
「たかだか貧血」と放置する人も多いのですが、体の中の鉄は多くの働きを担っているので、鉄が不足することが致命的になるのです。

いわゆる「貧血」は、血液中ののHb(ヘモグロビン)が女性で12g/dl未満になると診断されます。

貧血として「見える化」する手前が「隠れ貧血」と言われる状態ですが、この場合、Hb(ヘモグロビン)は減らないものの、体内に貯蔵されている鉄の貯金「フェリチン」という数値が枯渇しています。

1-2. 月経ある女性の7割が重度の「隠れ貧血」

月経のある女性にとって、これは無関係とは言えません。

平成18年の国民健康・栄養調査によると、20〜49歳までの閉経前の女性では、69.5%もの人がフェリチン30ng/ml未満の重度のかくれ貧血と言われています。このうち、約30%は10ng/ml未満という枯渇状態であり、様々な不定愁訴を起こす可能性が高い状態と言えます。

美しい花

1-3. 「隠れ貧血」チェックリスト

以下のリストをチェックしてみましょう。
かなり、当てはまる人も多いのではないでしょうか?

1. 立ちくらみ・めまいがする
2. 肩こり・関節痛がある
3. 頭痛・頭重になりやすい
4. くよくよ・うつうつとする、やる気がない
5. カッとしたり、イライラしたりしやすい
6. 寝つきが悪い、眠りが浅い
7. 力が弱く、よく物を落とす
8. シミができやすい
9. アザができやすい
10. 喉につっかえ感がある(錠剤などが飲み込みにくい)
11. 冷え性である
12. 体を動かすと疲れる
13. 夕方になると疲れて横になりたくなる
14. 月経前や月経中に不調がある
15. 月経量が多い

いずれもかくれ貧血で起こりうる、鉄不足にまつわる症状です。

月経がある女性であれば、2つ以上当てはまれば、可能性ありと考えましょう。月経がある女性以外にも、以下に当てはまれば、リスクがある場合もあります。

1-4. 「隠れ貧血」のリスクが高い人

鉄の摂取が少ない場合、鉄の利用効率が悪い場合、鉄が出て行く量が多い場合。
いずれの場合も、隠れ貧血が起こる可能性があります。

多くは、月経のある女性に起こるものですが、いずれかの原因があれば、男性にも起こる可能性があります。

花とキャンドル

1. 月経のある女性 特に出血量の多い人
2. 妊娠・授乳後の人
3. 便や尿、帯下などに持続的に出血が混ざる人(※注)
4. 激しい運動やサウナ、ホットヨガ、岩盤浴などで汗をよくかく人
5. 肉を食べない人、厳格なベジタリアン
6. 小食な人、カロリー制限や食べないダイエットをしている人
7. 胃もたれを起こしやすい人・ピロリ菌に感染しており萎縮性胃炎がある人
8. 甲状腺機能低下症のある人

※注:胃潰瘍や大腸ガン、慢性膀胱炎、子宮癌などの不正出血などの可能性があります。
胃潰瘍出血の場合は、真っ黒いタール便。大腸ガンの場合は、赤い血混じりの便。
何かしらの出血が持続する場合は、必ず医療機関で精密検査をしましょう。

大量に汗をかく場合、汗と共にミネラル分が排泄される場合があります。

また、食品に含まれる鉄のうち、ほうれん草やひじきなどに含まれる植物性の鉄分は、動物性の鉄と比べて吸収効率が落ちます。農薬を使う一般的な農法では、ミネラルを作り出す微生物が減少してしまい、農地自体にミネラル分が減っていることもあり、野菜に含まれる鉄分の量自体も減っています。

1-5. 鉄の仕事は赤血球の原材料だけではない

鉄といえば、赤血球の素で、不足すると「貧血」というイメージはあるかも知れません。
逆に、それ以外はイメージがないのではないでしょうか。

もちろん、鉄の大切な役割は、全身の細胞に酸素を運搬する赤血球の原材料となること。

それが生命を維持するために最優先であることは間違いありません。

だからこそ、赤血球の中にどれだけ鉄が含まれているかを示す数値Hb(ヘモグロビン)は、最後の最後まで低下しません。

鉄が不足すると、とにかく生命維持のために、まず赤血球に鉄を回す。
そのため、それ以外の鉄の重要な仕事ができなくなってしまうので、心身に不調が起きてしまうのです。

「貧血」が指摘された時には、すでに致命的に鉄の貯金が減っている状態と言えます。

1-6. 鉄の体内での多彩な役割

鉄は、全身の細胞や臓器で、体を機能させる重要な酵素の活性に不可欠です。

酵素といえば、神経伝達物質の合成酵素・肝臓の解毒酵素・抗酸化酵素・コラーゲン合成酵素など、色々な酵素があります。
そのため、不足することで、様々な問題が引き起こされてしまいます。

ベッドとコーヒー

鉄の働きは、

1. 赤血球の中の酸素を運ぶヘモグロビンの原材料
2. 骨・皮膚・粘膜の代謝
3. コラーゲンの合成
4. 白血球・免疫機能を維持
5. メンタルに関わる神経伝達物質セロトニン・ドーパミンなどの合成
6. 肝臓の解毒
7. 抗酸化作用
8. 筋力の維持

隠れ貧血となると、これらの多彩な働きが低下してしまうため、心身ともにパワーダウンしてしまうのです。

さらに、お肌など見た目の美しさにも必須ですので、老け見え防止にも重要と言えるでしょう。

患者さんとお話ししていて「あるある」症状としては、「アザができやすい」「喉のつっかえ感」があります。

コラーゲンの合成が低下すると、毛細血管が脆くなりますので、ぶつけた覚えが無いのにひざ下にアザができやすくなります。

また、筋肉の収縮が上手くできなくなるため、飲み込みが悪くなり、喉のつっかえ感につながります。

これらのちょっとした症状は、隠れ貧血を疑う材料になります。

1-7. メンタルの不調は隠れ貧血を疑って

「これって更年期うつ?女性のライフステージとうつの本当の関係」でもお伝えしたように、メンタルの不調には、鉄不足だけでなく、腸内環境や自律神経の問題などがあります。

でも、月経がある女性であれば、まず「隠れ貧血」も原因の一つになっている可能性があると考えてみてください。 ベッドで横たわる女性

鉄不足により、神経伝達物質の合成が上手くいかなくなると、様々なメンタルの不調が出てきます。

・ドーパミン不足:幸福感、集中力不足
・ノルアドレナリン不足:やる気不足
・セロトニン不足:抑うつ感・無気力感
・メラトニン不足:不眠

何も原因がないのに、漠然といつもうつうつとしたり、不安感に苛まれたり、イライラしたりする場合には、これらが上手く合成されていない可能性があります。

また、同じようなストレス状況下でも、これらが十分に合成されていなければ、耐性がなくなり、ストレス障害が起こりやすくなります。

思春期の精神不安定や産後うつも、実は、鉄不足が原因かも知れません。

2. 隠れ貧血を疑う場合の対処法

さて、ここまでで、「隠れ貧血」を疑う場合の対処法についてお伝えしたいと思います。

自分を愛する

2-1. 貧血「要治療」判定があればまず治療

「貧血」と診断されているのに放置している人は案外多いものです。

ふらふらになるほどの貧血があっても、慢性的になれば、体が順応してしまうもの。

ただし、心臓が多く拍動して血液をたくさん循環させなければならなかったり、心臓に負担がかかるため、重度の貧血を放置するといずれ心不全になる危険性もあります。

健康診断などで「貧血」と診断され、「D:要治療」の判定を受けていたら、まず内科を受診して治療をしましょう。

2-2. 「要観察」判定があれば栄養療法医を訪ねて

「C:要観察」の判定であれば、通常は次の検診まで経過をみてしまうものです。

一般的な医療では、少々、Hb(ヘモグロビン)が低下していても「問題」とはみなしません。
例え、鉄不足で不定愁訴があったとしても「特に問題ないですね」で話が終わってしまいます。

残念ながら、保険が適応される一般的な医療では、軽度の貧血を治療するかどうかはその医師の裁量によりますし、ましてや「隠れ貧血」は診断もされず、保険適応で治療もできません。

「隠れ貧血」とは、分子栄養医学(オーソモレキュラー医学)で提唱される概念の為、これを学んだ分子栄養療法医(オーソモレキュラー栄養療法医)でなければ、問題として扱うことはありません。保険は効かず、自由診療になります。

もし、気になる方は、「オーソモレキュラー栄養療法導入医療機関一覧」から検索してみましょう。全国に検査・相談が可能な医療機関があります。

2-3.  「貧血」判定がない場合の対処法

貧血の判定がない場合の対処法をご紹介します。

治療を進める

2-3-1. 1)他の疾患を除外する

不定愁訴の原因が他の疾患の可能性もゼロではありません。

安全策を講じるならば、まずは、分子栄養療法医を訪ねて、正確に診断してもらう方が良いでしょう。

例えば、副腎機能低下症や甲状腺機能低下症・亢進症、更年期障害などのホルモン異常の場合もあります。

また、慢性炎症を伴う自己免疫疾患や悪性腫瘍が隠れている場合、鉄が体に貯留し過ぎている可能性もありますから、むやみに鉄を補うことはお勧めではありません。

著しい倦怠感の持続や微熱、体重の低下などの症状が続く場合、まずは分子栄養療法を行う医師を訪ねて、これらの隠れた疾患がないか除外してもらう方が安全です。

分子栄養療法を行う医療機関は、基本的には保険診療も行なっていますので、これらの検査は、通常保険診療で行うことが可能です。

2-3-2. 2)鉄を補ってみる

上記のような症状がなく、まず単純な鉄不足を疑う場合は、食事などから鉄を補ってみましょう。鉄の貯蔵の回復とともに、不定愁訴が改善してくるなら、そのまま継続してみましょう。

鉄の効率的な補い方をご紹介しましょう。

3. 鉄の効率的な補い方

3-1. 2種類の鉄を使いこなすべし

まず、食事から鉄を補うには、2種類の鉄を理解することが重要です。

・植物性の鉄:非ヘム鉄
・動物性の鉄:ヘム鉄

3-1-1. 植物性の鉄・非ヘム鉄を効率よく吸収するには

植物性の鉄は、ほうれん草や小松菜、海藻類、プルーンなどに含まれているものですが、吸収率が2〜5%と動物性の鉄よりも低い為、工夫が必要です。

お茶やコーヒーに含まれる色素成分・タンニンと一緒に摂ることで吸収が妨げられる為、これらを一緒に摂らないようにしましょう。

ブロッコリー

また、胃酸が十分に分泌されない場合も吸収率が低下しますので、胃酸を抑える胃薬を飲んでいる人やピロリ菌感染で萎縮性胃炎がある人は鉄不足のリスクがあります。

逆に、ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂ることで吸収率がアップします。
柑橘類やブロッコリー、大根、サツマイモなどのビタミンCを多く含む食品や肉・魚・卵などを組み合わせて調理するといいですね。

3-1-2. 吸収率が良い動物性の鉄・ヘム鉄

ヘム鉄は動物性たんぱくに包まれた状態の鉄で、吸収効率が比較的良く15〜25%です。特に他の食品ととっても吸収を妨げることはありませんし、胃が弱くても吸収ができます。

赤身の肉やレバー、貝類などを料理に使ってみましょう。

3-2. 鉄鍋や鉄玉子の活用を

鉄鍋は、偉大な調理器具です。
調理をすることで、スープの中に吸収の良い形の鉄が溶け出す為、日常の食事が鉄分豊富になります。

特に、トマトやお酢など酸があることで鉄分が溶け出しやすくなる為、これらを使ったスープなどがお勧めです。

トマト

鍋まで買うのはちょっと・・・という方は、鍋に入れるタイプの鉄の塊が販売されています。玉子型やキャラクター型など色々ありますので、活用してみましょう。

ただし、注意点は、一般的な男性は、月経がないために鉄が潤沢だということです。
お肉好きならばなおさらです。
鉄は過剰になっても細胞内で活性酸素を発生するなど毒性を発揮してしまうので、調理をする場合、自分用だけ取り分けるなど工夫しましょう。

4. サプリメントを選ぶ際の注意点

必須栄養素ながら不足しがちな鉄を補うには、サプリメントも効率的です。
もちろん、食事を整えることが基本ですが、不足が著しい場合や食生活を整える余裕がない時期には上手く活用を。

4-1. 安全性と効率ならヘム鉄を

サプリメントに含まれる鉄にも、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。
非ヘム鉄は、胃腸を荒らしやすいために、という方もいるでしょう。

「鉄を飲んだら胃が荒れた」という感想を持つ人が多いのですが、この場合、胃腸障害がおきやすい非ヘム鉄を選んでいると思われます。
胃腸障害なく、吸収効率が良いタイプのヘム鉄を選ぶ方が無難です。

ドラッグストアや専門店で相談してみましょう。

サプリメント

また、鉄を利用するには、亜鉛や銅などのミネラルが必要になりますし、必須のミネラルやビタミンはそれぞれが助け合いながら働いています。

そのため、鉄だけでなくその他の必須ミネラルやビタミンがバランスよく含まれたマルチビタミン・ミネラルの形で補うことでより効率よく働いてくれるでしょう。

5. 食生活を見直しストレスに強い心身に

必須のミネラルやビタミンは、体内で合成ができない為に、毎日食事から摂ることが必要なものです。
前述したように、畑に農薬を使うことで栄養素を生み出す土壌微生物が減少して、農作物に栄養素が減っているという問題もあります。

昔ほど野菜を摂らないので、栄養不足が加速します。

他にも加工食品に含まれる添加物やミネラル分を流してしまう水煮野菜やカット野菜などを日常的に食べるという現代的な食生活や、栄養素を腸内で生み出すビフィズス菌などの有用菌の不足といった様々な原因が重なり合っています。

その為、普段の食生活を見直すことは大切なファーストステップになります。
その上で、ストレスに負けない心身にバージョンアップする為、隠れ貧血は今のうちに解決しておきたいものですね。

▼基本の食生活のリセット方法は、こちらの記事参照

コロナ太り解消! 医師が勧める9つの食事術とは? 自粛で見つめ直す私の不健康習慣

医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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