40代からはじめる“女性に生まれたよろこび”を知るための8つの考え方
「自分を愛したくても愛せない」
前回の記事では、幸せな女性をつくるには、“自分を愛すること”が大切ということを桐村先生にお話いただきました。
そしてそれは、潜在意識がつくられる子ども時代に、親からどのような言葉かけをしてもらったかが大きく関係している、ということがわかりました。
では実際、どのようにして、癒していけばよいのでしょうか?
桐村先生いわく、「自分の内側が変わると外側に起きている現象も変わる。まずは仕組みを知ることが大事」とのこと。
今回は、先生が実際に乗り越えられてきた体験談を通して、“自分を愛すること・自分を幸せにする”ために必要なマインドについてお届けします。
目次
1.“私が私をどう思っているか?”が根本
ーー先生はよく、“自分の内側が変わると外側も変わる”と発信されていますが、どのような意味合いでしょうか? そしてこれは、“自分を愛する”ためにどのように作用しますでしょうか?
マインド的な観点で言うと、人間は行動があってそれが積み重なって人生になると思うのですが、逆算すると行動はなぜ起きるかというと、いろんな考えや感情が動いて選択していますよね。
ではその考えや感情はどのように生まれたのか? それは、経験や体験、教育やメディアの情報などによってつくられた価値観や判断基準です。その根本が、アイデンティティの部分です。
「私自身が私をどう思っているのか?」というのが根本で、全部それが外側に起きています。その積み重ねが人生になっていく。
▲(写真)医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗先生(tenrai株式会社代表取締役医師)
例えば、「自分を愛していない」というのが自分だったら、言葉や行動が変わってきますよね。私はもともとは自分に自信がある方ではないんです。20代で失敗しながらなんとか自己肯定感を高めながら解放して、といった感じです。多分、自信がなかったらまず人前にも出ないし、「いえいえ私なんて」「いいです」と言って隠れてしまうと思うんです。
ですので、全部現実をつくるのは「自分が自分をどう思っているか」というアイデンティティがすべてだなと思います。「愛されない自分」というアイデンティティだとその現実がやってきますし、「幸せじゃない自分」だったら、幸せじゃない出来事が起きます。
2.子どものころにどのように育てられたのか?
ーー実際、桐村先生はどのようなアプローチをされて乗り越えられてきたんですか?
脳が出来る過程は、幼稚園くらいまでの年齢に潜在意識が作られて、小学校くらいから大脳新皮質という、理性で考えたらわかる脳が発達してきます。ですので、保育園くらいまでに体験したことが全部潜在意識に入っています。
やはり、親子関係が一番なんです。小さいころに親とどのような会話をして、どのように育てられたか? 褒められているのか。ちゃんと出来ることを認めて、出来なくても「大丈夫。あなたはすごいんだから」と育てられているのか。
100点をとっても怒られる子もいます。例えば、「99点とっても100点じゃないの」といったように。兄弟と比べられて育てられた場合、お兄ちゃんと弟だと全然性格が違ってきます。「お兄ちゃんなんだからこうしなさい」と育てられるのか、野放しにされているかで全く変わってきます。
私の場合は、見た目について、「親の両方の悪い遺伝子を受け継いで、悪いとこどりで可哀想」と言われながら育ったので、本当にずっとそう思っていました。褒められたら全力で否定したくなります。
うちは、母は全く悪い気はなく天真爛漫なのですが、辛辣で正直者で、褒める時は褒めるけれど否定する時は自分の思うままにはっきりと否定する。
そんな訳で、私自身が例えば「美人ね」と言われようものならば、「いやいや、鼻は低いし顔が崩れて仕方ないんです」と全力で否定したくなるような感じです。その言葉をなぜ言ったかと言うと、母から植えつけられた言葉だったからなんですね。
3.子育ては連鎖していくもの
――お母様自身が自信がなかったのが原因でしょうか?
だいたい子育ては連鎖しますね。虐待も連鎖するし、親から教わったことをそのまま子育てに応用するので、受け継いでしまいます。
理解すれば、自分で止めることができますが、基本的には無意識なので気づきづらいものです。
母はどちらかというと自信満々です。
愛情を込めて子育てはしっかりしてくれており、私は、ママっ子でした。
私は、単純に母が思ったことを何気なく口にしただけだと思います。
だけど、何気ない言葉が、例え冗談でも子どもの心に強烈に残ることがあるんですね。
子どもは、冗談も本気も建前も本音も理解しませんから、全て真剣に受け止めますから。
また、父は、お母さんが3歳の時に亡くなってしまい、あまり母親や家庭の愛情を知らないんです。ですから、家族や子どもへの接し方のイメージがないからよく分からなかったんですよね。
結婚しても仕事中心で、付き合いで飲みに行ってしまったり、家にいませんでした。
団塊の世代だと、そんな父親がほとんどで、父不在の家庭は良く耳にします。
母はずっと家に居たので、母性は足りていました。時に辛辣だけど私を守り、頑張って育ててくれて、ずっと一緒にいてくれましたし、どちらかというと父性が足りませんでした。
これは、実際に父に愛がないと言う訳ではありません。
父は愛情深く愉快な人で、私を子どもの頃から愛してくれていたようですが、表現と接する時間の問題で子どもに上手く伝わっていなかったのですね。
大人になれば親の事情は理性で分かりますが、子どもには大人の事情は分かりませんから。
“母性・父性”というのは、人生で一番はじめに出会う女性がお母さんで、一番はじめに出会う男性がお父さんですよね。女の子にとってはお父さんが一番はじめの恋人というか、そういった関係のひな形がいなかったので、すごく愛が足りない感覚がありました。ですので、20代では特に恋愛で大失敗。父がくれるはずの愛情を男性に求めてしまうということをずっと繰り返していました。
そのメカニズムや「今の私じゃなくて、小さいころに全部つくられていたんだな」ということがわかったんですね。こういうのをインナーチャイルドというのですが、セッションをしたことで、“30代でやっと生きられる”といった感じです。今でこそ、やっと天真爛漫に生きていて、むしろ子どもっぽくなった気がします。
また、母も病気だったので、私自身、自分をすごく抑圧していました。母はずっと泣いているし、病気だし、寝込んでいるし……。父はどちらかというと仕事メインでいなかったので、私が大人にならなきゃいけなくて、良い子だったんです。
もともとはおてんばというか、きっとじゃじゃ馬ですし、良い子ではないのですが、セッションをして抑圧がとれて、今こそ自分を発揮している感覚です。とても素直に生きています。これが出来るようになったのは30代からですね。
今も、わかっていながらも戻ってしまうことはあります。こういったことは、パターンでプログラムされているんです。全部コンピュータのプログラムみたいなものなので、全員小さいころに覚えたものが自動的に発動してしまうんです。
大事なのは、理解して「あ、やっているな」と気づくこと。理解しないままオートメーションに巻き込まれたらまた同じ失敗を繰り返してしまうんです。
4.仕組みを知るだけで楽になった
――乗り越えられたきっかけは仕組みを知ったことがきっかけでしょうか?
まず、頭で理解出来たことです。今の私は適正に判断した私ではなくて、すべて小さいころに植えつけられたプログラムで自分を判断してしまっているんだということを理解したことですね。知るだけで楽になりました。
あとは、感情を出すことです。たくさんの感情がチャージされていました。例えば「もっと自分を発揮したかった」ですとか、当時すごく怒っていたはずです。そういった抑圧されたものを解放するワークのようなものをやっていくと、抑圧がなくなっていきました。
だいたい、患者様と接していると、「なぜ過食をしてしまうの?」「なぜ職場で上司がストレスになっているの?」と紐解いていくと、ほとんどが自分のアイデンティティが原因です。
100パーセント幸せな家庭はなかなかないと思います。家庭で受け継がれていくことは、どこかで少しねじれたものがそのまま連鎖する。全員そうなので、わかってしまえば楽です。全部プログラムで、リセットも出来るんです。
5.女性であることを肯定する
ーーでは、女性が元気で活き活きしていくためには、プラフアルファでどのようなことが必要でしょうか?
社会的に特に、「女性はこうすべきだ」といった考えがありますよね。現代は女性性が抑圧されています。もっと発揮されて良いものだし美しいものなのに、隠さなきゃいけないもの・いやらしいものとして扱われている。
女性がちゃんと女性を肯定していって欲しいですし、もっと自分のセクシャリティやセンシティビティ、感性や感受性を楽しんでいいんです。
性というのは本質的に、それが根本で人間が出来ていますし、本来いやらしいものではないんです。女性は素晴らしいものですし、男性も女性から生まれたんです(笑)。そこを肯定したいですね。
6.“これが大好き!”を素直に発揮すること
不妊の外来もやっていたのですが、女性性を否定してしまうから子宮・卵巣のトラブルを抱えている、というケースがあります。
女性であることを楽しんでいくことがひとつと、抑圧されたものを全部解放していったら、すごく素直になると思うんです。
「大人だからこうしなければ」「女性だからこうしなければ」「お母さんだから」「妻なんだから」「40歳になったらこうだから」など、社会で押し付けられたマスクがあると思うのですが、本来外しても問題ないんです。
マスクで生きているから本質が歪んで楽しくないのであって、「自分はこれが大好き」なことを素直に発揮していけば、結構なんでもありで楽しい。それでいいなと、最近ますます思います。
30代を超えて、一旦トラウマは解放されたとはいえ、「医者であるからこうしなければならない」「楽しんじゃいけない」感覚はまだあります。
私の場合は、“自分をよろこばせちゃいけない”という自己犠牲のような感覚があります。母が病気だったので、まず私よりも母をよろこばせなければ、母が元気になれば、といった感じ。“自分よりも母が”というところが全部人間関係に応用されているんです。
私よりも患者さん。私よりも他人と、つい自己犠牲をしてしまうんですね。自分をよろこばせるのが苦手です。
やっと、昨年くらいからリハビリをしています。自分のためにあまり時間も使わないし、仕事ばかりしています。旅行も仕事で行ってしまうといった感じ。好きな小説を読んだり、好きな絵を描いたり、そういった時間をつくるのが下手なんですよ。
ですので、意図的に自分をよろこばせる、そして素直になるというところを、この1年意識するようにしました。そうしたらとても楽しい!
7.本来自分が好きなものをとことんやる!
――最初は勇気がいりましたか?
勇気いりました! 特に、自分に対してベクトルが向いていなかったので、外ばかり見ていて自分を置き去りにしてばかり。そのうちに自分が何が好きなのかも忘れてしまっていました。
「私、何したいのかな?」と言われたら、ぼんやりしていたんですよ。「誰かのため」と思っている女性たちは、特に子どもが生まれると子どものためになって自分は後まわしになりがちだと思います。
私の場合、自分は一体何が好きなのかも、自分の感情もよくわからなかったんです。あまり感情表現しない抑圧する方なので、まずは感情に向き合うところからはじめました。
特に、怒りが出てこないタイプでしたね。家庭においては、私が唯一子どもだったので「明るくしなきゃ」「わがまま言っちゃいけないし、明るく良い子で周りの大人を和ませなきゃ」というマインドからはじまっているので、一番怒りが抑圧されていたんです。ひどいことを言われると違和感はあるのですが、感情の認識が出来ないんです。
五感や五つの感情すべてを表現しないと不健康ですが、誰しも何かしら抑圧しているはずです。私の場合は、感情のアウトプットをするリハビリをしました。
例えば、何か違和感があって「これは何の感情か?」と思って、「今ひどいことを言われたようだぞ」からはじまります。そして「ここは怒るべきところですよ、私」と気づいていく。
そうしていかないと、「ああ、そうなんだ」で終わってしまうんです。後から、「あれはおかしい。怒るべきだった」とその場で気づけなかったりするんです。
また、女性性を抑圧している人は多いと思います。小さいころにどう育ったかで、規制されますよね。
素直な自分で小さいころに遊んでいたら、「あれしちゃダメ、これしちゃダメ」と大人の目線で子どもの興味を抑圧してしまっていることはあると思うんです。あれは規制で、“やっちゃいけない”がどんどん増えていってやらなくなる。本当は可能性は無限大なのに、大人からの“やっちゃいけない”は子どもがすごく小さくなるんです。それが後々の人生では、自分自身の無意識の足かせになります。
人生を楽しんで謳歌しようと思ったら、「本来の自分の興味や好きなことを思う存分やると決めても大丈夫だよ」と自分で自分に言ってあげること。多分、ダメだと思っているはずなので。
8.人生は選択の連続。クリエイティブなマインドへ
ーーでは、桐村先生が考える、幸せな女性像とはどのようなものでしょうか?
まず、自分を肯定出来ること、それから自由であること。
でも、自由であることには責任が伴いますよね。本来の自分に気づかずに生きていると、自分の感情と見せかけて小さいころの親や社会の価値観が植えつけられていたりします。
それを全部取っ払ってしまって自分の好きだけて生きていくと、自己責任になります。
本当は、健康や日常の食生活、すべて自分の行動で人生もつくっているんです。自分が主体になるとそこには責任が生まれるのですが、その分自由になります。
でも、自分の健康ですら、病気になったら被害者のように感じてしまいますよね。主にこの年代が関わることは生活習慣病なのですが、それは全部行動の蓄積なので、自分がつくったはずなのに、「突然がんになりました」というように被害者になってしまいがちです。
健康もつくれるし、主体的になることが大事。真の意味で自立することだと思います。そこではじめてクリエイティブになるんです。幸せというものも、クリエイトしていけるなと思っています。
――被害者を選択すると依存的になってしまいがちです。
依存的になりますね。被害者意識からクリエイティブなマインドにシフトして、人生のクリエイターになりましょう。
――人生をクリエイトという言葉、素敵ですね!
本当に、全部自分の選択です。例えば、ものすごく日常的な話ですが、すごく身体に悪いポテチのようなものを出されたとします。食べたくないんだけど出されたから食べよう。口に運ぶのは自分の選択ですよね。誰かに与えられているから相手のせい?と見せかけて、自分が口に運んでいるんです。
最終的な行動は自分で決めないと選択出来ないはずですし、全部自分の責任において人生は出来ているんです。
パートナーシップでも同じです。例えば、旦那さんいこう言われたから私は出来ないというようなことがあったとしても、その行動を選択するのは結局自分です。
本当はやりたいことを選択出来るはずだけど出来ないと思っていること、少なくないと思うんです。
明確にどうやって生きたいか。明確な意思をどう持つか。その意思には責任が伴うのですが、その分自由に選択も出来るし、自分でつくっていけると私は思っています。
9.まとめ
「自分の内側が変わると外側に起きる現象も変わる」
今回は、この原理についてお話いただきました。
人生の中で、「あんなにがんばったのに」と言いたくなる瞬間、ありますよね。
筆者も何度もそのような経験があるのですが、そういった時は決まって、
「私なんて何をやってもダメなんだ」
という、自分を責める気持ちだったり、諦めだったりします。
何とか現実を変えようと努力をしても変化がないのは、この原理にのっとっていなかったからだということがわかりました。
桐村先生の「今の私のアイデンティティは小さいころにつくられた」という言葉は、特にがんばり屋さんにとっては勇気となるのではないかと思います。
自分を癒し、そして幸せは自分でクリエイト出来るもの。
そう考えると、気持ちがふわっと軽くなりますね。
次回は、身体を愛するメソッドについて。
日常に必要な栄養素や食事法、更年期障害についてお届けしてまいります。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか