若年性更年期セルフチェックと30代からはじめる女性の健康のつくり方
こんにちは。ライターの廣江です。
「最近ちょっと、身体が思うように動かない」
「以前よりも疲れやすくて気分の浮き沈みが激しい」
「突然月経が止まってしまった」
更年期障害というと、多くは40代後半の女性に多くみられる症状ですが、近年では30代だけでなく20代の女性にもこのような症状があるケースも少なくありません。
はじめは“まさか……”と思っていても、“もしかして”に変わった時は、すでに危険信号なのかもしれません。
突然襲ってくる症状に戸惑い、日常生活に支障をきたすようになったり、仕事への影響、さらには妊娠を希望されている女性は不安になりますよね。
今回の記事では、“若年性更年期”についての特徴と、自分の今の状態をはかれるチェックシートをご紹介するとともに、その対策について解説していきます。
あなたの不安を安心に変えるためにも、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
目次
1.若年性更年期とは?
そもそも、若年性更年期とはどのような症状なのでしょうか?
まず、更年期障害は、45〜55歳ごろまでの閉経前後の更年期と呼ばれる時期に経験する症状です。
症状としては、
・顔はほてるのに手足が冷える
・息切れ
・めまい
・頭痛
・イライラ
・抑うつ
などが代表的なものです。
これらが起こる要因としては、閉経が近づくに伴い、卵巣機能が衰えて女性ホルモンの一種であるエストロゲンが減少することが関係しています。
若年性更年期も更年期障害とほぼ同じ症状で、これが悪化すると、
・骨量の減少
・膣の乾燥や萎縮
・脱毛
・うつ症状
・生理不順や無月経症状
といった症状が起こります。
2.若年性更年期の原因
いわゆる更年期障害は加齢に伴う卵巣機能の低下が、エストロゲンの減少の原因であるのに対して、若年性更年期の場合は別の要因が関係しています。
仕事などのストレスや、それによる自律神経の乱れ。
それから、良質な睡眠時間をなかなか取れない環境にあることや、過度なダイエット、不規則な食事など、生活習慣の乱れが関係していることがありますので、まずは日々の生活の見直しからはじめてみましょう。
しかし、初潮の低年齢化による早期閉経の可能性のほか、月経前症候群によるイライラ、甲状腺疾患の可能性も考えられますので、症状が改善しない場合は婦人科を受診して原因を確かめることをおすすめします。
3.現在地を知るための自己チェック方法
婦人科を受診する前に自己診断できる、簡略更年期指数(SMI)というチェックシートがあります。
まずは現在地を知るためにも、このチェック項目を参考にしてみましょう。
全10項目に対し、強・中・弱・無など、症状に合わせて採点していきます。
強 | 中 | 弱 | 無 | |
1.顔がほてる | 10 | 6 | 3 | 0 |
2.汗をかきやすい | 10 | 6 | 3 | 0 |
3.腰や手足が冷えやすい | 14 | 9 | 5 | 0 |
4.息切れ、動悸がする | 12 | 8 | 4 | 0 |
5.寝つきが悪い、または眠りが浅い | 14 | 9 | 5 | 0 |
6.怒りやすく、すぐイライラする | 12 | 8 | 4 | 0 |
7.くよくよしたり、憂うつになることがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
8.頭痛、めまい、吐き気がよくある | 7 | 5 | 3 | 0 |
9.疲れやすい | 7 | 4 | 2 | 0 |
10.肩こり、腰痛、手足の痛みがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
合計 |
0~25点 | 異常なし |
26~50点 | 食事、運動に気を付け、注意を |
51~65点 | 更年期・閉経外来を受診しましょう |
66~80点 | 長期間にわたる計画的な治療が必要 |
81~100点 | 各科の精密検査にもとづいた長期の計画的な治療が必要 |
各項目に点数をつけたら、合計点数を確認します。
大きく分けると、0〜25点、26〜50点までは生活習慣の改善など自分で予防・対策ができますが、51〜65点、66〜80点は婦人科の受診が必要です。
一方、81点以上になってくると、婦人科系の病気だけでなくほかの病気も隠れている可能性が考えられるため、精密な検査が必要になってきます。
ただし、これらの対処法は更年期障害のためのものとなり、若年性更年期の場合はまた対処法が異なるため、詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
4.妊娠・出産はできるのか?
もしあなたが、若年性更年期の可能性が考えられる場合、この症状が妊娠の可能性を妨げるのでは? と大きな不安を感じると思います。
では実際、どのような影響をもたらすのでしょうか?
4-1.早期閉経のケースは少なくない
妊娠するにあたり、月経の状態は非常に重要です。
定期的に月経があるのか? 排卵はきちんとされているのか?
生理痛はひどくないか? PMSなどの症状はあるのか?
妊娠を望む女性にとって、非常に重要な問題でしょう。
早期閉経は、無月経の女性のうちの5〜10%をしめており、30歳未満の1000人に1人、40歳未満の100人に1人の割合でみられると言われています。決して少なくない割合です。
早期閉経のうち、卵巣の中の卵子がほぼ完全になくなってしまう場合と、卵巣内に卵子がまだ残っているのに排卵しない場合があります。
何れにしても、不妊治療の対象になりますが、前者の場合は、特に妊娠率が低い為、治療を断られてしまうケースもあります。
後者の場合には、原因にもよりますが、ライフスタイルを整えながら、治療を行なっていくことで、排卵を自力で起こすことも可能になります。
4-2.卵巣機能が低下しやすい人
女性にとって月経や排卵は、精神状態や生活習慣によって大きく左右されます。
・ストレスを溜め込みやすい
・冷え
・ハードワーク
・肥満
・過度なダイエット
・喫煙
・食生活の偏り
などが卵巣機能を低下させる原因となります。
かくいう筆者も、学生時代から生理不順で、半年に1回ほどしか月経が来ない時期があり、排卵誘発剤を使ったこともあります。
また、仕事のストレスから排卵に影響があったこと、PMSによるイライラやひどい生理痛もあってまさに三重苦でした。
ひどい時は、PMSと生理痛がそれぞれ一週間ずつあり、月の半分もの期間、体調不良が続いたこともありました。
このように、女性の身体は繊細なため、何か不調を感じる場合はひとつずつ何が原因かチェックしていく必要があります。
5.卵巣機能を整えるには
これらのことから、卵巣機能を整えることが若年性更年期の症状に良い影響をもたらします。では実際に、どのようなことをすれば整っていくのでしょうか?
5-1.自律神経を整える
まず、生活習慣を変えていくことが必要です。
いまの仕事はハードワークになっていないか?
働く時間が長いと自律神経が乱れる大きな要因になります。
自律神経は交感神経と副交感神経に分かれますが、交感神経は活動している間に、副交感神経はリラックスしている時や夜寝ている時間に働きます。
この切り替えがうまくいっている時はよいのですが、どちらかが優位になりすぎるとバランスを崩してしまいます。
近年は働く女性が増えたことにより、交感神経優位の生活となってしまうため、自律神経のバランスが乱れがちな女性も多いでしょう。
自律神経を整えるには、これらが有効です。
5-1-1.朝起きたら日光を浴びる
日光を浴びることにより体内のセロトニン分泌が高まります。これは“幸せホルモン”と呼ばれるもので、精神を安定させる働きがあります。
また、朝起きた時に日光を浴びることで、体内時計がリセットされるため、体のバイオリズムを生み出す自律神経を整えることができます。
毎日バラバラの時間に起きてしまうと、体内時計を乱すことになります。
なるべく同じ時間帯に起きるようにしましょう。
5-1-2.軽い運動をする
適度な有酸素運動は、ストレスで交感神経モードに傾いた自律神経から、リラックスする副交感神経モードに切り替えてくれます。
デスクワークの場合、通勤時間などしか身体を動かすことがなく、日常的に運動不足に。メンタル的にもリフレッシュ効果があるほか、身体を動かすことで血液の循環が良くなります。ただし、急にハードな運動をすると、体への負担が大きく、逆に交感神経を刺激してしまうので、はじめは軽いウォーキングなどからはじめるのがおすすめです。
5-1-3.お風呂にゆっくり浸かる
仕事から帰ってきて疲れていると、ついシャワーで済ませてしまいがちですが、ゆっくり湯船に浸かることをおすすめします。
37〜40℃程度のぬるめのお湯に浸かることで副交感神経が優位になり、リラックスモードに自然と切り替わります。
43℃を超える熱いと感じるお湯は、交感神経を刺激してしまい、不眠の原因に。覚醒を促したい朝であれば良いですが、夜は控えましょう。
5-1-4.良質な睡眠
良質な睡眠は自律神経のバランスを整えるのに必要です。眠る直前にスマートフォンやパソコンの画面を見るとブルーライトの影響により交感神経が刺激され、睡眠を妨げます。
バイオリズムに影響がでるため、寝る前には避けるようにしましょう。
5-2.冷えを取り除く
冷えは卵巣機能の大敵です。足湯やホッカイロなどの外的なアプローチや、身体を冷やす飲み物は控えること、筋肉をつけて血液の循環を良くすることなど、冷えを取り除いていくことは良い作用をもたらします。
5-3.ストレスをリリースする
ストレスをためることも、卵巣機能に影響を及ぼします。
ストレスによって、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が優先されることで、女性ホルモン・エストロゲンの分泌が低下する可能性があります。
ストレスは、自律神経を乱す一番の大敵でもあります。
いまのライフスタイルはどうか?
ハードワークになっていないか、人間関係はどうか?
ストレスを溜め込まないように、ストレスリリースする手段を持っておくのは有効です。
誰かに話を聞いてもらうことだったり、趣味に没頭する時間だったり、“自分が好きなこと”に打ち込む時間は必要です。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
若年性更年期の原因は、様々ですが、ライフスタイルが乱れることで卵巣機能を低下させてしまうことがわかりましたね。
もし、チェックシートで更年期障害の症状が当てはまる場合は、まずはライフスタイルの見直しからはじめていただき、それでも症状が厳しい場合は我慢せずに婦人科を受診することをおすすめします。
身体のサインは、ライフスタイルを検討するタイミング。
自分の内側の声を聞いて、いまの自分に合った生き方をリデザインすることが必要だというお知らせなのかもしれません。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか