こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。

女性には毎月訪れる生理があります。

生理は厄介なものでもありますが、自分の健康状態を知る上で大切な役割があるともいえます。

なかでも生理の経血量は、自分の体調を知るバロメーターといえるでしょう。

異常な月経量があれば内膜症などの疑いもありますし、反対に経血量が少ない場合も、子宮内に何かトラブルが起きたのかと心配になります。

とくにゆらぎ世代の場合「ここ最近経血量が少なくなった」という声をよく聞きます。

経血量が減ることは生理がラクになることでもありますが、急な経血量の減少は病気なのか不安になるでしょう。

また、以前に比べて経血量が少なくなったと思った矢先に、ナプキンの許容量を超えるような多量の経血が出た、なんてお話も少なくありません。

40代以降の経血量の変化はつきもので、この乱高下といかにうまく付き合っていけるか悩んでいるという方は多いのではないでしょうか。

今日は、ゆらぎ世代に多い、経血量が少なくなる原因について詳しく紹介します。

1. 経血量が少ない状態とは?

月経血の減少

月経における経血の量は人によって違いがあります。生理時は夜用ナプキンをつけなくても安心して眠れるという人もいれば、日中も夜用ナプキンでないと不安を感じるという月経量の多い人もいます。

しかし普段とは違い、極端に経血の量が少なくなるときもあります。

月経の量が極端に少ない過少月経の場合は、通常20ml未満の量といわれています。
月経の量をはかることは困難ではありますが、次のような症状が出た場合には、過少月経の可能性があると考えて良いでしょう。

・あきらかに普段の経血の量より少ない
・月経中にごく少量の経血が続く
・月経期間が2日程度など、極端に短い(過短月経)
・経血の量が少ない生理が毎月続いている

一般的に月経のある女性は、毎月起こる生理において、自分の平均的な経血量がなんとなくわかるでしょう。

しかし、急に経血の量が減った、生理周期が極端に短くなった、といった症状が続く場合は、ホルモンバランスの乱れや婦人科系の病気が潜んでいる可能性もあります。

1-1. 40代以降の場合は更年期が原因の可能性が高い

閉経のイメージ

経血量が急に少なくなると、なんらかの病気が原因なのかと不安になるかもしれません。しかし40歳以降に起こる経血量の減少は、閉経移行期に差し掛かっている可能性が高いです。

40代以降の女性は、体にホルモンバランスの乱れが起きます。そもそも女性ホルモンがもっとも高く分泌されるのは20~30代であり、40歳を迎える頃には女性ホルモンの分泌量は減少しています。

加齢による女性ホルモンの低下は、どれだけ健康的な生活を送っていても止めることができません。

とくに女性ホルモンの一つであるエストロゲンは低下することにより、月経トラブルに直結することが多いです。経血量が少なくなるのは、女性の体が閉経に向かって動き出しているサインでもあります。

▼生理不順は閉経のサイン? 40代からの生理の特徴と付き合い方

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1-2. 経血量の減少は閉経へ向かうサインかも

40代前後で経血量が急に減るのは、体が緩やかに閉経を迎える準備をしているともいえます。

日本人女性の平均閉経年齢は、個人差があるもののおよそ50歳です。

閉経は50歳で急にホルモンバランスが乱れるのではなく、30代後半あたりからホルモンバランスが徐々に減少し、ゆっくりと閉経へ向かいます。

そのため、30代後半から50代における月経は、次のような変化が見られることが多いです。

・生理周期が短くなる、もしくは長くなる
・経血量が減ってくる、もしくは減ったり増えたりする

すべての女性がそうとは限らないのですが、多くの場合、30代後半を過ぎたあたりから、このような生理の変化が見られます。40代前後で経血量が少なくなるのは、自然な現象ともいえるでしょう。

1-3. 40代で経血量が少なくなるのは自然な変化

大豆

そもそも月経の経血は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが妊娠に備えて子宮内膜を準備することから始まります。

妊娠をしないと、赤ちゃんのベッドでもある子宮内膜は不要となり、剥がれ落ちます。この剥がれ落ちたものがいわゆる経血です。

しかし30代後半になり、分泌される女性ホルモンの量が減ると、用意される子宮内膜も少なくなります。つまり女性ホルモンの分泌量が減ったあとに経血量が減るのは、自然な現象なのです。

また40代以降の女性は、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が増えます。

この場合、経血量は反対に増えてしまい、40代から月経過多に悩まされる人もいます。

そのため、年齢とともに経血量が減ることは子宮のトラブルがないとも判断でき、ある意味自然な変化と捉えて良いでしょう。

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2. 病気が原因で経血量が減るケースも

40代を過ぎたあたりの経血量の減少は、閉経移行期に現れる自然な変化と捉えて良いでしょう。

しかしその一方では、病気が原因で経血量が減るケースもあります。

月経量が少ないこと自体は積極的な治療の対象とはなりませんが、子宮自体の異常(器質性)や内分泌異常・無排卵(機能性)などが関係している可能性があります。

ここからは更年期以外の、病気が原因で経血量が減る症状について具体的にみていきましょう。

2-1.器質性

先天的な原因では、月経開始時から過少月経となります。

1. 子宮奇形

子宮の形の先天的異常を指します。胎児期の発生段階(子宮ができあがる過程)が関係しているとされており、女性の5%にみられ、稀な病気ではありません。人によって種々の形の異常があります。

主な症状として、過少月経のほか、月経不順、月経困難などの月経異常や、不妊や習慣性流産、早産、分娩にあたり胎位の異常、微弱陣痛、胎盤残留などの異常をきたす可能性があります。

しかし、月経異常を認めない場合や妊娠・分娩を無事に経過することも多いとされています。

2. 子宮発育不全

子宮発育不全は病名としては確立されておらず、はっきりとした診断基準がないのですが、子宮が小さいことや子宮内膜の肥厚が不十分で不妊症や流産となる場合に、子宮発育不全という診断名をくだされることがあります。
原因としては、先天的な子宮低形成と卵巣機能不全を伴う後天的な発育不全の二つがあります。

3. 子宮内腔癒着(アッシャーマン症候群)

子宮内腔癒着は、子宮内膜掻爬手術や子宮内膜炎などの後遺症として起こる病気です。
子宮腔内の癒着が起こると、不妊症の原因になったり流産などを引き起こしたりもします。

また症状が重いと子宮内膜が十分に成熟することができず、毎月の経血量が減少することが考えられます。

4. 子宮内膜炎

子宮内膜炎とは、子宮に何らかの原因で細菌が入り、子宮の内膜に炎症が起きる病気です。
子宮内膜症とは異なりますので注意しましょう。

通常、子宮内膜は月経時に剥がれて体外に排出されるため、炎症は起こりません。
しかし、大腸菌やブドウ球菌、結核菌などの菌や、クラミジアや淋菌に感染すると炎症する可能性があります。これらが原因で月経に異常がみられる場合があります。

感染が原因だけでなく、免疫細胞が関連して起きる子宮内膜炎もあり、流産などが関連していることがわかっています。

これらのほか、子宮頸がんの高度異形成・上皮内がんや、微小浸潤扁平上皮がんの治療として行われる「子宮頚部円錐切除術」により、癒着が起き、過少月経を引き起こす場合もあります。

婦人科疾患でお腹が痛い女性

2-2. 機能性

1. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群は性腺刺激ホルモンの分泌が乱れ、男性ホルモンの働きが強くなることにより、卵巣から排卵が抑制されてしまい、卵巣に多数の卵胞(嚢胞)が生じる病気です。

この病気は子宮内膜の成熟が正常に行われないことが多く、月経量が減少します。また排卵障害のために月経周期が35日以上になったり、定期的な排卵が行われないために不正出血や無排卵、月経不順になる可能性もあります。

このような排卵障害のため、不妊につながったり、月経不順や無月経を長期間放置すると、子宮内膜に異常な変化が生じます。これにより、子宮内膜増殖症や子宮体がんが発生することがあります。

しかし、生殖年齢の後半になると、卵巣機能の低下により月経不順が改善される場合もあります。

2. 高プロラクチン血症

「プロラクチン」とは脳の下垂体から分泌されるホルモンで、乳腺を刺激して乳汁を分泌する働きがあります。
赤ちゃんが母乳を吸う刺激でプロラクチンの分泌は亢進し、血液中の濃度は上昇します。

プロラクチンの分泌量が多い授乳期間中は、排卵が抑制されることで無月経となりますが、授乳が終わればプロラクチンの血液中の濃度は正常化し、排卵も再開することで妊娠可能になります。

しかし、妊娠中や授乳中以外の時期にホルモンが過剰に分泌され、血液中の濃度が異常に上昇すると、「高プロラクチン血症」となります。20〜30代の女性に多くみられ、約70%に乳汁漏出と月経異常が起こります。

原因として、下垂体腫瘍、視床下部の機能障害、甲状腺機能異常、ストレス、薬剤性(抗うつ剤や胃酸分泌抑制薬など)があります。

3. 甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症などの甲状腺の機能異常も、過少月経の要因になると考えられています。

甲状腺機能低下症とは、血液の中の甲状腺ホルモンが不足している状態のことをいいます。

甲状腺ホルモンは「やる気ホルモン」とも呼ばれており、代謝を促す働きがあります。ホルモンが十分に分泌されることで、汗をかいたり体温を調節したりすることができるのです。

ホルモンの分泌が十分にされないことで、月経にも異常をきたすことがあります。

甲状腺機能低下症についての詳しい解説はこちらをご参照ください。

▼意外と少なくない女性の“甲状腺機能低下症”のメカニズム

https://wellmethod.jp/hypothyroidism/

4. 黄体機能不全

「黄体」とは、排卵後の卵胞のことを指します。黄体からはプロゲステロンという黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜を変化させ、着床に適した状態をつくります。通常は14日間ほどで機能を失い、プロゲステロンの分泌がされなくなることで月経が起こります。

黄体機能不全とは、黄体ホルモンの分泌が足りず、本来の機能がうまく働かなくなる状態のことを指します。
その結果、子宮内膜が十分に育たず、月経異常の原因となります。

黄体機能不全は、基礎体温の上昇がみられなかったり、高温期が10日以上続かないことでわかることがあります。

3. 病院へ行くべきかどうかの判断は?

婦人科

40代を過ぎて経血が少なくなってきた場合は、更年期が原因であることが大多数ではありますが、病気の可能性も考えられます。

経血量が減った原因に病気が潜んでいるかどうかを自己判断するのは、とても難しいのです。

そのため、次のような経血量の減少があった場合は、病院での受診をおすすめします。

・経血量が少ないだけでなく、月経痛も伴う
・生理期間が2日など、異常に短い
・月経というよりも、不正出血を疑う
・乳汁分泌がある
・若年層なのに、なかなか自然妊娠しない
・体重増加や寒気、倦怠感など体の不調を感じる

経血量はとても個人差が大きいため、自分の経血量が正常かどうかを判断することは難しいでしょう。

経血の量が減っただけでなく、少しでもおかしいと感じることがあれば、ためらわず婦人科を受診するようにしましょう。

4. 日常生活で心がけたいこと

経血の量は、ホルモンバランスの分泌が大きく関わっているため、加齢に伴う自然な変化であれば、自分でコントロールできるのものではありません。

そのため、経血の量が多くても少なくても、毎月訪れる月経を見守るしかない、ともいえます。

しかし、とくにホルモンバランスの影響を受けやすいゆらぎ世代は、普段からストレスを溜めず、心身共に健康な生活を送ることが大切です。

そうすることにより、ホルモンバランスの乱れは少なくなり、結果的に月経バランスの乱れも起こりにくくなるでしょう。

4-1. 睡眠をしっかりとりストレスを溜めない

よく眠る女性

良質な睡眠はストレスを軽減し、自律神経を整えることでホルモンバランスも安定します。

日本人は不眠に悩んでいる人も多く、年齢を重ねるたびに睡眠の質は悪くなるともいわれています。

とくに更年期を迎える40代以降の女性は、子育てや仕事が忙しく、親の介護といった問題も出てきます。こうした悩み事が原因で睡眠不足に陥り、ストレスが溜まってしまうこともあるでしょう。

まずは良質な睡眠を取るために、毎朝同じ時間に起床し、しっかりと太陽の光を浴びることが大切です。

そして朝は熱いシャワーを浴びて交感神経を活発化させ、夜はぬるめのお湯につかって副交感神経を優位にしましょう。

睡眠にとって良いことを実践することが、女性のホルモンの安定化にもつながります。

▼女性ホルモンを整えるには? いつまでも健康体でいるために必要な知識

https://wellmethod.jp/female-hormone/

4-2. 適度に運動を取り入れる

ウォーキングする女性

経血量が減るというのは更年期症状の一つと考えられます。

しかし、更年期症状はその他にも、動悸やめまい、うつ症状といった深刻な症状を引き起こすことも多いです。

そんな更年期障害を軽くする方法として「有酸素運動が良い」という研究報告もあります。

有酸素運動はウォーキングやヨガ、ジョギングや水中歩行といった、誰でも行いやすい運動です。

筋トレとは違い、体に負荷がかかることも少なく、スキマ時間を見つけて行うことができます。

有酸素運動をすることにより、とくに更年期症状の一つであるイライラを軽減することができるので、気分転換がしたいときはぜひ外に出て歩くと良いでしょう。

4-3. 健康診断を受けよう

婦人科検診

体が閉経に向かっているから、経血量が少ない。それならばこのまま放置していても良い、と考える女性もいるでしょう。

しかし、ゆらぎ世代の体は定期的なメンテナンスが必要です。「病気になったら病院にかかればいい」と考える女性も多いのですが、それではすでに病気が進行しているケースもあります。

体に関してとくに心配事がなくても、年に1回は健康診断を受け、婦人科も定期的に受診をしましょう。

とくに婦人科系の病気には表だって症状がでない病気が潜んでいることもあり、定期的な検診で発見されることもあります。

経血が減ったのを機に、体の状態をチェックするつもりで婦人科を受診してみるのも良いでしょう。

▼産婦人科専門医が語る健康診断の重要性

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5. 経血量の減少は自然なサイン。体の変化を見逃さずケアしよう

自分を大切に

経血の量が急に減ると、何か病気のサインではないかと驚いてしまいますよね。

しかし、40代を過ぎたあたりの年齢で経血量が減った場合、それは閉経へ向かっている順調な体からのサインともいえます。

腹痛や生理周期の異常などが起きていない限り、それは自然な更年期の症状としてとらえても良いでしょう。

しかし、ゆらぎ世代は婦人科系の病気に掛かりやすい年齢でもあります。

少しでも異常があると感じたらためらわずに婦人科を受診しましょう。

定期的な医師のアドバイスと、なるべくストレスのない生活を送ることにより、今後の健康的な人生につながります。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

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