片頭痛・脂質異常症|現代型栄養失調と不調の意外な関係がここまで分かる「分子栄養検査」vol.4
治らない慢性的な片頭痛と若い頃からの高コレステロール血症を抱える、WELLMETHODチームの久徳さん(30代、女性)。
そんな久徳さんが、最先端かつホリスティックなアプローチで根本原因を本気で探り、本気で治すことにコミットした話題の「ルークス芦屋クリニック」に受診相談するというこの企画。
初診時の検査や診察、心理テストで、あまり自覚がない割に、亜鉛やマグネシウムなどのミネラルの不足やストレス負荷がかかっていて、実は体に無理が来ている可能性が指摘されました。
分子整合栄養医学(オーソモレキュラー医学)的な血液検査で70種類以上の検査項目を解析したところ、片頭痛と高コレステロール血症、現代型栄養失調との以外な関係が明らかに。
治らないはずの慢性疾患の原因や解決の道が総合的に見えてきました。
WELLMETHOD監修医・桐村目線で、診察の様子を実況中継いたします。
前回までの様子はこちら
▼【医師が推薦】根治にコミット!話題の腸と心の専門クリニックを調査vol.1
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-1/
▼片頭痛や肩こり「不定愁訴」の本当の原因は? 根治にコミットするクリニック医師徹底レポートvol.2
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-2/
▼【医師解説】片頭痛とストレスの関係性|根治にコミットするクリニックレポートvol.3
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-3/
1.ここまで分かる分子栄養学的血液検査
城谷先生:前回の受診以降、何か始めたこと、変えたことはありましたか?
久徳さん: エプソムソルト(硫酸マグネシウム)の入浴剤は使い始めました。
食事は、脂っこいものをやめて、和食にしています。
ただ、パンは食べないんですが、朝食は グラノーラ+ヨーグルトですね。
城谷先生:当院では、基本的に、牛乳・乳製品は最初から控えてもらうようにしています。
バイオロジカル医療の分野では、「デイリーフリー(乳製品なし)」「カゼインフリー」を推奨しています。
ホルスタイン種の牛乳に含まれるA1カゼインというタンパク質が腸の炎症(リーキーガット症候群)の原因や代謝物が脳を刺激すること、また、穀物飼料を与えられた一般的な牛乳の脂肪分が炎症を起こすリスクがあることから、まず中止してみます。
その代わりに、以前にご紹介した「アーモンドミルクヨーグルト」や「豆乳ヨーグルト」などのプラントベースミルクに置き換えるのが一般的です。
城谷先生:生乳ヨーグルトを豆乳ヨーグルトにしてみてはどうでしょう?
久徳さん:以前にアーモンドミルクヨーグルトを買ったこともありますが、近所には売っていないんです。豆乳ヨーグルトも手に入りません。
城谷先生:豆乳を買ってきて、乳酸菌の種菌を使ってヨーグルトを作ってしまうのも良いですよ。
分子整合栄養医学(オーソモレキュラー医学)的な血液検査の解説をしていきましょう。
2.分子栄養学的血液検査を深読み
項目名 | 基準値 | 測定結果 |
AST(GOT) | U/L 10〜40 | 15 |
ALT(GPT) | U/L 5〜40 | 11 |
ALP | U/L 115〜359 | 162 |
コリンエステラーゼ | U/L 200〜459 | 401 |
γーGTP | U/L 30以下 | 12 |
LD(LDH) | U/L 115〜245 | 148 |
CK(CPK) | U/L 45〜163 | 56 |
2-1.AST/ALT/γGTP:タンパク質やビタミンB6の不足
城谷先生:まず、ASTとALT。これらは、一般的には、肝機能をみる検査です。
一般的な医療では、高い場合に問題になりますが、久徳さんは、若干少なめかな?
15(U/L)と11 (U/L)です。2つの数値の差が「4 (U/L)」ありますね。
久徳さん:基準値内だから問題ないんじゃないんですか?
城谷先生:栄養学的には、基準値の範囲に入っていても不足とみなします。
これらの数値は、出来たら20ずつが良いんですね。
タンパク質がしっかり摂取できていたら、20に近づいてきます。
そして、2つの数値の差が開かない方が良い。
ビタミンB6不足があるとALTの数値が下がってしまうので、ASTとALTの差が2以上に開きます。
γGTPも、通常は高いと「肝機能が悪い」と言われる数値です。
久徳さん:これは、以前から良い数値のはずですよ。
城谷先生:実はこれも、ちょっと不足ですね。
γGTPもタンパク質が十分摂取できているかをみる数値です。
できればこちらも、20(U/L)くらい欲しいところ。
やはり、タンパク質やビタミンB6不足がありそうだな、と分かります。
項目名(蛋白分画) | 基準値 | 測定結果 |
アルブミン | % 60.5〜71.5 | ↓ 58.4 |
α1ーグロブリン | % 1.8〜3.1 | 2.7 |
α2ーグロブリン | % 6.0〜9.8 | ↑ 10.0 |
β1ーグロブリン | % 6.9〜10.7 | 10.7 |
β2ーグロブリン | % | 0.0 |
γーグロブリン | % 10.0〜20.3 | 18.2 |
A/G比 | 1.5〜2.5 | ↓ 1.40 |
アルブミン(計算値) | g/dL | 4.4 |
グロブリン(計算値) | g/dL | 3.1 |
総蛋白 | g/dL 6.7〜8.3 | 7.5 |
尿素窒素 | mg/dL 8.0〜22.0 | 11.8 |
城谷先生:総タンパク質(TP)は高いですが、タンパク質は意識して摂っているつもりでしょうかね?
さらに、タンパク分画(詳しいタンパク質の種類とバランス)をみてみましょう。
実は、アルブミンが重要です。この数値は、若干低いので、もっとタンパク質を摂る必要がありますね。
尿素窒素の数値もみてみましょう。これは、通常は「腎機能」に関連した数値ですが、栄養解析では、タンパク摂取量の目安にします。
こちらも、低いとタンパク質不足を意味していて、γGTPと同じくらい、20に近づくように目指すことが良いとされていますよ。
久徳さん:タンパク質は、肉や魚、乳製品などしっかり摂っているつもりなんですが。
城谷先生:前回の診察の結果を踏まえても、久徳さんは、胃腸が弱い可能性があるので、食べていても消化吸収ができていない可能性がありますね。
ボーンブロスや出汁など、分子量の小さい形でタンパク質を摂る方が吸収が良くなりますよ。
2-2.ALP:亜鉛やマグネシウムの不足
城谷先生:それに、ALPの数値。これは、一般的には、肝機能や胆嚢系をみる数値です。
最近、測定方法が変わったのですが、この数値だと、180以上は欲しいところなんですが、162(U/L)とやや不足ですね。
こちらも、一般的な検診や診察ではこちらも高いと問題にされますが、基準値内だとスルーされてしまいます。
でも、ALPは、亜鉛やマグネシウムが十分にあって、ようやく働く酵素です。
栄養解析では、亜鉛やマグネシウムの不足があると低値になるため、これらの不足の指標としています。
久徳さん:前回のオリゴスキャンの検査で、亜鉛もマグネシウムも不足していましたね。
片頭痛の原因として、マグネシウムの不足も関連すると言われました。
城谷先生:血液検査では、血液中のマグネシウムの数値はよいが、細胞中にどれだけ十分にあるかが大切です。
血液中の濃度は、ホメオスターシス(恒常性)が保たれ、すぐに補正されてしまうので、実際には不足がわからないんですね。
なので、オリゴスキャンの検査と組み合わせる必要があるんです。
項目名 | 基準値 | 測定結果 |
血清銅 | μg/dL 70〜130 | 111 |
亜鉛 | μg/dL 80〜130 | 90 |
城谷先生:ちなみに、血液検査での亜鉛の数値は、正常範囲でした。
ただし、理想は100のところが90です。
亜鉛は、銅と一緒に判断します。
亜鉛と血清銅とのバランスが、100:100=1:1が理想なんですね。
比較的、亜鉛が低いので、血液検査でみても、もう少し亜鉛を増やす必要がありますね。
2-3.LDH:ナイアシンの不足と高コレステロール
城谷先生:LD(LDH)は、ミトコンドリア活性化に重要な酵素です。
B3(ナイアシン)と関連しているんですね。ナイアシンは、ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称です。
こちらも、基準値内だと異常なしと言われてしまいますが、180(U/L)以上欲しいところ。
やはり、148なので、やはり、不足していますね。
久徳さん:不足だらけですね!普段の検診だと全く問題ないと思っていました。
城谷先生:高コレステロールとナイアシンの不足の関連が指摘されているので、関係している可能性がありますね。
全体的なビタミンB群の不足が全体の問題の一つになっていそうですね。
2-4.コレステロールはバランスが悪い
項目名 | 基準値 | 測定結果 |
中性脂肪 | mg/dL 50〜149 | 123 |
総コレステロール | mg/dL 150〜219 | ↑ 248 |
HDLコレステロール | mg/dL 40〜96 | 56 |
LDLコレステロール | mg/dL 70〜139 | ↑ 169 |
LDL/HDL比 | 3.0 | |
LDLーch 計算 | mg/dL | 167 |
城谷先生:コレステロールについては、HDLコレステロールが56(mg/dl) 、LDLが169(mg/dl)です。
LDLとHDLの比が問題になります。
動脈硬化の予防には、L/H比<2以下が良いとされていますが、久徳さんの場合は、3くらいありますから、理想ではないですね。
HDLが低くはないものの、もっと増やして、LDLを減らしたいところですね。
甲状腺機能低下でも、コレステロールが高くなることがありますが、それは、合格です。
2-5.隠れ貧血:フェリチン
項目名 | 基準値 | 測定結果 |
フェリチン | ng/mL 3.6〜114 | 28.6 |
城谷先生:女性の場合は、鉄不足による「隠れ貧血」も問題になりますね。
そのために、貯蔵鉄「フェリチン」の数値を見ます。
基本的に、基準値は甘すぎるんですよ。
久徳さん:3.6~114ng/mlという基準値は、随分差がありますね。
城谷先生:医師によって考えは違いますが、栄養学的な目標は50くらいです。
ただし、鉄は諸刃の剣なので、急速に改善しよう!とするのはお勧めしません。
特に、腸内のカンジダ菌のエサになるので、急な鉄分の補給は逆効果になる可能性もありますよ。
サプリメントで補給するかどうかは医師の考えに寄りますが、食事で摂取するようにした方がより安全ですね。
2-6.隠れ炎症が燻っている:白血球・CRP
項目名 | 基準値 | 測定結果 |
CRP | mg/dL 0.30以下 | 0.16 |
CRP判定 | (ー) | (ー) |
城谷先生:どうやら、久徳さんは、体のどこかに慢性炎症が燻っている可能性がありますね。
慢性炎症は、体のボヤみたいなもの。万病の元と言われます。
炎症をみるのは、CRPという数値です。
この数値も高いと問題になります。基準値内に入っていて、全く問題ないようですが、栄養学的に細かいことを言うと、0.03未満が良いんですね。
久徳さんの場合、0.16mg/.dlはちょっと高めです。
どこかで慢性炎症が燻ってるのかな?と。
例えば、脂肪肝や腸、鼻(上咽頭)、歯の根っこ(歯周病)などの炎症が主な原因になりますね。
久徳さん:そう言えば、気になることは、5年前に大腸にポリープがあって取ったんです。
良性の中でも最もレベルが高いと言われました。
城谷先生:それは、大腸腺腫ですね。
大腸ポリープには、放置しても大腸がんにならない「非腫瘍性ポリープ」と、放置すると大腸がんになる「腫瘍性ポリープ」があります。 大腸腺腫は、腫瘍性ポリープで、放置すると大腸がんに進展します。
腸内細菌では、フソバクテリウム・ヌクレオタムという歯周病菌など様々な腸内細菌が大腸がんに関連していることが指摘されています。
また、実は、久徳さんに不足していそうなビタミンB群の一種「葉酸」の代謝も大腸腺腫の発症リスクと関連しています。
項目名 | 基準値 |
測定結果 |
末梢血液一般 | ||
白血球数 | /μL 3500〜9100 | ↑ 10400 |
赤血球数 | ×10000/μL 376〜 | 472 |
血色素量 | g/dL 11.3〜15.2 | 14.7 |
ヘマトクリット | % 33.4〜44.9 | 44.3 |
MCV | fL 79.0〜100.0 | 93.8 |
MCH | pg 26.3〜34.3 | 31.1 |
MCHC | % 30.7〜36.6 | 33.2 |
血小板数 | ×10000/μL 13.0〜 | 21.1 |
網状赤血球数 | ‰ 2〜26 | 12 |
血液像(白血球分類) | ||
骨髄球 | % | 0.0 |
後骨髄球 | % | 0.0 |
好中球 | % 40〜74 | 71.1 |
好酸球 | % 0〜6 | 1.4 |
好塩基球 | % 0〜2 | 0.2 |
リンパ球 | % 18〜59 | 22.3 |
単球 | % 0〜8 | 5.0 |
異形リンパ球 | % | 0.0 |
城谷先生:それから白血球が高めですね。今回、10400(/μl)もありました。
ストレスでもあがるので、前回の初診の際は、ちょっとストレスに感じていたでしょうか?
久徳さん:実は、検査の前日にひどい頭痛があって、それも関係あるのでしょうか?
城谷先生:痛みがあると白血球の数も上がるので、連動してるかもしれませんね。
理想としてはもっと低い方が良いです。
炎症のコントロールが課題になりそうですね。
初診時のスマートパルスの検査でも、交感神経優位でしたね。
ストレス状態にあったということを意味しています。
白血球の分類をみると、好中球が増えて、リンパ球が減っています。好中球<60%、リンパ球>30%が理想的なのですが、バランスが悪いですね。
自律神経のうち、交感神経が優位になると、好中球が増えてリンパ球が減ります。
逆に、副交感神経が優位になると、リンパ球が増えて好中球が減ります。
城谷先生:以前に会社で受けた検診でも、12300(/μl)と高かったですね。
久徳さん:再検査では、6000台になったので、問題ないと言われました。
でも、検診の際も、頭痛があったんです。
城谷先生:痛み刺激でも、白血球は上がることがあるんですよ。
もっとリラックスモードにならなければならないですね。
2-7.ビタミンDが枯渇!
城谷先生:ビタミンDが、6.9(ng/ml)とかなり低いです!
摂取不足?日照不足?どうでしょうか?
ビタミンDを含む食品を食べていたとしても吸収不良のことがあるんですよ。
久徳さん:きのこ類、干し椎茸は摂っているんですが、、、
在宅勤務も増えていますし、日にも当たっていないですね。
城谷先生:食べても吸収率が悪い人もいますし、日本人の場合しっかり食べてしっかり日にあたっても、ビタミンDの血中濃度はギリギリのことも多いから、サプリメントで補給することも検討した方が良いかも知れませんね。
これは、驚きの数値です。
私自身、日照の多い季節少ない季節を含めて多くの患者さんのビタミンD濃度を測定してきました。
その全員が、欠乏状態であったのですが、それでも、10~20(ng/ml)程度の範囲でした。
ちなみに、30(ng/ml)以上ないと不足で、20(ng/ml)未満は枯渇です。
1桁はかなり低い数値ですから、免疫機能的にもかなり心配な数値です。
特に、自粛や在宅勤務が増えて自宅に引きこもりがちな現在、全員に枯渇リスクがあると考えた方が良さそうです。
関連記事:
▼【医師直伝】腸活レシピ決定版⑤免疫機能向上「ビタミンD強化きのこスープ」
https://wellmethod.jp/mushroom_soup/
2-8.ピロリ菌・ペプシノーゲン:栄養の吸収効率の低下
項目名 | 基準値 | 測定結果 |
ペプシノーゲンⅠ | ng/mL | 46.9 |
ペプシノーゲンⅡ | ng/mL | 6.7 |
判定 | 陰性 | 陰性 |
抗ヘリコバクターピロリIgG | U/mL 10未満 | 3未満 |
城谷先生:ピロリは、陰性ですね。
萎縮性胃炎の原因になり、栄養吸収不良の原因になりますが、これは大丈夫。
ただし、やはり胃の消化力が弱そうです。
ペプシノーゲンⅠ、これは、胃酸と結合して、ペプシンというタンパクを溶かす酵素に変わります。
70(ng/ml)以上が理想ですが、46.9です。
おそらく、胃酸も少なく、栄養の吸収効率が悪そうだなということがわかります。
交感神経優位なので、胃の機能が低下して、胃酸不足に拍車をかけてしまう可能性がありますね。
久徳さん:やはり、栄養の消化が悪そうですね。食べているのに、消化吸収ができていないんですね。
城谷先生:実は、胃の機能低下がひどくなると、 MCVという赤血球の容積を表す数値が大きくなるんですよ。
胃が悪いと、葉酸やB12の吸収が悪くなり、これが原因で貧血になります。
この時に、MCVという数値が大きくなる大球性貧血になります(赤血球が大きくなるタイプの貧血)。
一方で、鉄不足の場合の貧血は、MCVという数値が低くなる小球性貧血(赤血球が小さくなるタイプの貧血)になります。
だから、葉酸やビタミンB12の不足と鉄不足が同時に存在すると、MCVの数値が見かけ上、良い数値になります。久徳さんの場合、MCVは正常値ですが、実は両方の不足がある可能性もありますね。
2-9.ホモシステインとビタミンB群:動脈硬化のリスクファクター
城谷先生:実は、葉酸の不足、葉酸代謝の苦手な人は、ホモシステインという数値が高くなりやすいんです。
久徳さんの場合は、12.8(nmol/ml) ですね。
ホモシステインが、11を超えると、動脈硬化のリスクが高まり、脳梗塞の発症リスクが高くなります。
潜在的にリスクがある状態ですよ。
ホモシステインの代謝には、ビタミンB群である葉酸、B12、B6が不可欠です。これらの代謝が上手に出来ないと、ホモシステインが増加してしまい、動脈硬化リスクも高くなります。
ホモシステイン高い人に対して、葉酸、ビタミンB12の補充で、LDLコレステロールが下がるという研究報告もあります。
(※心臓 Vol . 49 No . 9(2017))
代謝が悪い原因は、遺伝的な要因も考えられますね。
久徳さん:全部ビタミンB群ですね!
城谷先生:日本の葉酸のサプリメントは、人工の活性型でないものです。
実は、活性型葉酸でないと上手に使えない人が、日本人には多いんですね。
普段の食事では、天然葉酸を摂るには、葉物野菜をしっかりと食べることです。
鮮度の良い材料を使って、ほうれん草。小松菜、オクラ、枝豆、豆苗など、それから、レバーは様々なビタミンB群が豊富です。
葉物野菜や動物性タンパクをしっかり摂ると良いですよ。
「葉酸」には、食べ物に含まれる天然の葉酸「Folate」と人工の葉酸(Folic Acid)があります。
国内では、サプリメントや食品には、人工葉酸の使用しか許可がされていません。
ただし、天然には存在しない葉酸で、体内での利用効率が悪い上、過剰になると健康へのリスクも懸念されるため摂取上限があります。
久徳さん:ここにある食材は結構食べているはずなんですが。
城谷先生:サプリメントで摂取するとしたら、活性型葉酸が含まれたもの。もしくは、中間型葉酸が含まれたものを摂取すると良いですね。
久徳さん:サプリメントの摂取をやめてしまうと、代謝はまた元に戻るんですか?
城谷先生:葉酸を効率よく利用できるかは、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の遺伝子をみる必要があります。遺伝的な体質によって全く違ってしまうんですね。
MTHFR遺伝子を見て、日本人で、葉酸代謝効率が良い、非常に元気なタイプは3割。
まずまずなのが、5割。葉酸代謝効率が悪く、色々不調が起こりやすいのが約15%ということがわかっています。
この代謝を改善することで、色々な不調・不具合が改善するので、ハッピーに過ごせる可能性が高くなります。
遺伝子的にも弱い場合は、サプリで補うのが賢明ではないかと考えています。
もちろん、日常生活でも注意していく必要がありますが。
久徳さん:葉酸は「妊婦のサプリ」と言う認識が高かったので、自分ごとではなかったですが、実は動脈硬化のリスクにも関連していたんですね。
葉酸代謝は、非常に重要なポイントです。
MTHFRという酵素の遺伝的な不具合で働きが悪いと、体の様々な働きに不具合が起きる可能性があります。
「メチレーション」という重要な働きが低下してしまうからです。
メチレーションの役割には、
1.遺伝子のスイッチをON/OFFにする
2.化学物質や毒素を代謝する
3.神経伝達物質を合成する(ドーパミン、セロトニン、エピネフリン)
4.ホルモンを合成する(エストロゲン)
5.免疫細胞を生産する(T細胞、NK細胞)
6.DNAとRNAを合成する
7.エネルギーを合成する(CoQ10、カルニチン、ATP)
8.神経細胞の保護
などがあります。
これらの働きには、葉酸を含めたビタミンB群の働きが必要で、その代謝が悪いと、ホモシステインの増加として現れます。
2-10.今日の処方箋:スタチンよりオメガ3系オイル
城谷先生:あと、LDLコレステロールが高いと、薬飲みましょうと言われることがありますが、どうでしょう?
久徳さん:言われましたが、お薬は今のところ拒否しています。
城谷先生:一般的に処方されるスタチン系の薬剤は、コレステロール代謝ブロックしてしまうので、あまり薦めたくないんですね。
確かに、コレステロールが下がるには下がるんですが。
久徳さん:内服することで、コレステロールが出来にくくなるってことですか?
城谷先生:コレステロールが原料となるのは、コルチゾール、性ホルモン、ビタミンD、コエンザイムQ10などですが、これらの産生ができないと、体の機能が低下します。
LDLコレステロール自体が悪いわけでなく、LDLが酸化、つまり、錆びると、問題になります。
サビがなければ、大丈夫ですね。
それを調べるのが、LOX-index®︎(ロックスインデックス)という検査です。
ホモシステインは、高いと酸化要因となるので、酸化LDLコレステロールが高い可能性も否定できないと思います。
その場合、スタチン系の薬剤を使うよりは、オメガ3系の油(DHA・EPA)を使う方がベターです。
オメガ3系の油は、コレステロールを劇的には下げないが、地味に下げることができます。血液サラサラにして、動脈硬化を予防するというところです。
久徳さんのように、「脂質異常症」の診断がつく人は、保険診療内で処方ができますよ。
体全体の慢性炎症を抑えることにもつながります。
久徳さん:全部に繋がりますね!
城谷先生:慢性炎症は全ての病気の原因なので、炎症を抑えることが大事ですから、そういう点でも良いと思いますよ。
久徳さん:大腸ポリープを切除した際に、年齢は関係ないなと思いました。
城谷先生:ポリープできないようにするのが、本当の予防ですね。
炎症を抑えることは、大腸がんの予防にも重要です。
オメガ3系の油は、腸の炎症も抑えてくれますよ。また、ビタミンDの欠乏も炎症性腸疾患に関連しています。
ビタミンDの低下も改善する必要がありますね。
ビタミンDには、抗癌効果もありますし、抗アレルギー効果や自己免疫疾患の抑制、骨粗しょう症、冬季うつの予防など、色々な役割がありますから。しっかり増やしましょう。
久徳さん:こうしてみると、栄養素の不足が本当に多いですね!全く認識していませんでした。
城谷先生:ビタミンDをしっかり増やすことに加えて、特にナイアシン・葉酸・B12・B6などビタミンB群も必要ですね。
亜鉛やマグネシウムもしっかりと補給することです。
3ヶ月から半年ほど、不足した栄養素をしっかり補って、再検査していきましょう。
片頭痛も緩和されると思いますし、コレステロールも下がってくる可能性もありますよ。
2-11.今後の治療方針と提案
城谷先生:今日の方針としては、食事や生活習慣をしっかり整えて頂いた上で、オメガ3系の油を含むお薬を保険診療で処方しますね。
久徳さん:はい、お願いします!
城谷先生:それから、ご希望があれば、後日、自費検査として、葉酸代謝に関わるMTHFR遺伝子をみる遺伝子検査を行い、それを踏まえて必要であれば、活性型葉酸を組むビタミンB群(マルチビタミンB)のサプリメントを摂るという選択もできますよ。
久徳さん:自社製品であるエクオールやセラミドは飲んでいますが、いわゆる必須栄養素を補うベースサプリメントは摂ったことがありません。
城谷先生:日本と違って国民皆保険ではないアメリカは、予防的なアプローチが一般に浸透しているために、高用量のベースサプリメンテーションをよく行いますね。
ビタミンB群はなかなか食事では補いきれない上に、久徳さんの場合は生涯的な動脈硬化のリスクにもつながってきますから、なにか摂るならば、活性型葉酸を含むビタミンB群(マルチビタミンB)のサプリメントがお勧めです。
また、酸化LDLコレステロールや実際の動脈硬化リスクをみるLOX-index®︎(ロックスインデックス)も、ご興味があればご提案しましょう。
最後に、久徳さんのテーマとして、実は、ストレスがかかっているようなので、しっかりリラックスすることも大切です。ご自身への水やりをどんどんしましょう。
リラックスするには、社会的な脳である大脳新皮質を使うよりも、もっと原始的な脳・爬虫類脳と呼ばれる脳幹の深いところを喜ばせることが大事です。
頭を休めて、しっかりとリラックスする時間を作ることが大事ですよ。
久徳さん:気づかないストレスや色々な栄養不足があって、驚きました。
まずは、3ヶ月、しっかり取り組みながら、私自身に水やりもしてみます!
3.検査や診療について
日本の法律では、保険診療と自費診療の混合診療が認められていません。
保険診療と自費診療を同時に行うことができません。
今回の久徳さんの診療は、高コレステロール血症という病名の診断があり、保険薬を処方したため、保険診療で行われました。
こちらの費用に加え、「選定療養費(予約代)」を加えた金額が窓口負担になります。
一般的に、保険病名がつかない場合、また、サプリメントや自費検査は、保険適応とはなりません。
詳しくは、下記クリニックにお問い合わせください。
3-1.分子栄養学的スクリーニング検査
価格:17,000円〜22,000円(税別)検査内容により異なります。
分子整合栄養医学(オーソモレキュラー医学)的な血液検査で、不足した栄養を70種類以上の検査項目から解析します。
一般医療の血液検査ではわからない総合的な栄養の不足を読み解きます。
一般医療では、数値の上昇があれば「生活習慣」を指摘されますが、数値の低下は問題にされないことがほとんどです。実は、その低下にこそ、栄養の不足による不調の原因が隠れていることも多いのです。
糖尿病とまでは言われない、隠れた血糖値の乱高下も、この検査では見逃すことはありません。
・タンパク質・脂質・糖の代謝
・各種ビタミン・ミネラルの不足
・ビタミンB群・鉄・亜鉛・銅など
・ビタミンD
免疫機能や妊活にも必須。
・コルチゾール
ストレス状態や副腎疲労の診断に。
※太字は、他院の栄養解析ではオプションになりますが、ルークス芦屋クリニックでは標準的に検査項目に入っています。
3-2.LOX-index
価格 12,000円(税別)
動脈硬化を起こす原因となる「sLOX」と血液中の変性LDL「LAB」という数値を解析し、今後の脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する最新の血液検査です。
コレステロールが高いと指摘された人の、真の動脈硬化リスクをみるために役立ちます。
3-3.MTHFR遺伝子検査
価格 14,000円(税別)
葉酸代謝のカギとなる酵素であるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)をコードするMTHFR遺伝子に存在する遺伝子多型をみる検査です。
口腔内の粘膜から、遺伝情報を採取します。
CC型・CT型・TT型の3タイプがあります。
CC型は酵素活性が良好です。CT型では、約35%、TT型では、70%酵素活性が低下して、葉酸の利用効率が低下します。
日本人の多くは、CT型かTT型です。
次の記事はこちら
▼【医師が調査】アトピー性皮膚炎完治を目指す腸内環境改善|根治にコミットするクリニックに相談したvol.5
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-5/
「MTHFR遺伝子検査」「LOXインデックス」の検査結果(久徳さん)はこちら
▼「悪玉コレステロール」本当の危険度は遺伝子とLOXインデックスで判明
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-7/
ルークス芦屋クリニック
〒659-0092 兵庫県芦屋市大原町8-2むービル2F(JR芦屋駅から北へ徒歩4分)
ホームページ:https://lukesashiya.com/
電話番号:0797-23-6033
Email:lukesashiya@gmail.com
※メールで医療に関するご質問にはお答えできません。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか