「悪玉コレステロール」本当の危険度は遺伝子とLOXインデックスで判明
高コレステロール血症を指摘されている方は多いものの、単純に「悪玉コレステロール」が高いだけでは、本当のリスクはわかりません。
以前より、若年期からの高コレステロール血症があり、家族性を疑われていたWELLMETHODチームの久徳さん(30代、女性)の受診レポートを公開してきました。
これまで、食事指導とEPA・DHA製剤を処方されたところまでをお伝えしました。
そして、血液検査において、体を酸化させ、動脈硬化を引き起こす「ホモシステイン」が多いこと、そして若年期からの高コレステロール血症の本当の危険度をみるため、「MTHFR遺伝子検査」と「LOXインデックス」の検査を行いました。
前回までの様子はこちら
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▼片頭痛・脂質異常症|現代型栄養失調と不調の意外な関係がここまで分かる「分子栄養検査」vol.4
https://wellmethod.jp/lukes-ashiya-4/
今回は、その結果の解説です。
※LOX-indexとは、
コレステロールが高いと指摘された人の、真の動脈硬化リスクをみるために役立ちます。
動脈硬化を起こす原因となる「sLOX」と血液中の変性LDL「LAB」という数値を解析し、今後の脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する最新の血液検査です。
※MTHFR遺伝子検査とは
「ホモシステイン」が高い原因となる、葉酸代謝のカギとなる酵素であるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に存在する遺伝子多型をみる検査です。
CC型・CT型・TT型の3タイプがあります。
1.LOX-indexでコレステロールの悪玉度とリスクを判定
城谷先生:LOX-index(ロックスインデックス)からお話ししましょうね。
コレステロールが高かったけど、それが酸化して、本当に危険かどうかをみる検査です。
血液検査では、ホモシステインも高かったので、動脈硬化リスクがどうかも気になりますね。
結果は、こう。
(※実際の検査結果は、より細かな結果や解説も付いています)
城谷先生:低リスクと中リスクの間くらいですね。
中リスクだけど、限りなくて低リスクに近いところにいますね。
今のところ、そこまで心配しなくて良いが、少しリスクありというところでしょうか。
ただし放置すると悪い方に行く可能性もありますよ。
ホモシステインも高いので、若くして動脈硬化が起こりやすいタイプです。
今のうちに対処しておいた方が良いですね。
2.遺伝子検査は稀な高リスクタイプ
城谷先生:ホモシステインは、体を酸化させて動脈硬化を起こしやすいと伝えましたね。
なぜ、増えるか?というところが気になります。
それを、MTHFR遺伝子検査で確認したところです。
この検査では、ビタミンB群の一種である葉酸代謝を担う、遺伝子のタイプを見ています。
活性化された葉酸が細胞内で活躍するんですね。
それによって、メチオニン回路と呼ばれる歯車が上手に回るので、ホモシステインを上手に代謝してくれるんです。
これがうまく回らないと、体中を酸化させる。
ですからコレステロールを酸化させたりもします。単にコレステロールが高いだけでは直ちに問題にはならないのですが、そのコレステロールがホモシステインにより「酸化」することで動脈硬化のリスクを高めるんですね。
葉酸は、体内で活性型葉酸に変換されて、ようやく利用が可能です。
ホモシステインをメチオニンというアミノ酸に変換するメチオニン回路に重要な役割を果たします。
ホモシステインが増えると、体のあちこちを酸化させてしまい、動脈硬化、高血圧、認知症、骨折など様々な老化現象を引き起こします。
MTHFR遺伝子検査は、葉酸を活性型葉酸に変換しやすいタイプか、しづらいタイプかを3タイプで判定します。
葉酸だけでなく、ビタミンBは、B群として互いに助け合います。
城谷先生:久徳さんは、ホモシステインが12くらいありました。
理想は、8未満です。9や10でも高いと判断するので、12は、高いですね。
動脈硬化リスクがあります。
葉酸の活性化が問題かと疑ったため、遺伝子検査をしてみました。
久徳さん:どうだったでしょうか。
城谷先生:日本人では、実は、3割しか葉酸をしっかり活性化する「CC」タイプがいません。
「CT」タイプは、活性化できなくはないが、若干その働きが弱い。でも、まぁそこまで問題でないです。
そして、「TT」タイプは、16%です。これは葉酸が全く上手に代謝できないタイプです。
久徳さん:ドキドキ。
城谷先生:実は、今回「TT」タイプでした!
日本人の中でも、希少なタイプです。
これは、ご両親のどちらか。一つずつもらうので、やはり家族性のものですね。
どっちかと言うか、両方の可能性もあります。
遺伝子多形と言って、突然変異ではないのですが、遺伝子の塩基配列の変化があるんですね。
活性化していない葉酸を普通にとっても、活性化できないので、ホモシステインが代謝できないんです。
高コレステロールや動脈硬化に原因になります。
久徳さん:ホモシステインを減らすには、どうしたら良いでしょうか?
城谷先生:これを回すには、活性化葉酸をしっかり摂取することですよ。
天然の食品に含まれる葉酸は活性型なので、葉酸を含む天然の食品を摂ること。
ほうれん草・納豆・アボカド ・ブロッコリー・モロヘイヤ、海藻類などなど。
久徳さん:全部食べています!
城谷先生:ビタミンB6,B12と一緒に働くので、それらを含む動物性蛋白も一緒に食べることも必要ですね。
日本のサプリメントの多くは、活性型葉酸が入れられないので、活性型葉酸を含む輸入サプリメントを摂取することも手です。
毎日、活性型葉酸を摂取しましょう。
久徳さん:その辺りの動物性食品も食べていますし、葉酸を含む食べ物も日々しっかり食べていました。活性型葉酸を含むサプリメントは、以前から頂いていたので、こちらも継続が必要そうですね。
城谷先生:それから、動脈硬化予防には、オメガ3の油もしっかり摂取が必要ですね。
DHA/EPA製剤を継続的に処方しておきますね。
食事からも、オメガ3を意図的に摂取しましょう。
バランスも大事です。
久徳さん:オメガ3として、アマニ油も使っています。
城谷先生:アマニ油は、酸化しやすいから開封したら、すぐに食べましょうね。
遮光していない瓶もダメです。
久徳さん:ちなみに、遺伝子は改善できないんですか?
城谷先生:生まれた時から生涯、ずっと持っているものなので、残念ながら難しいですね。
でも、ホモシステインが下がれば、動脈硬化のリスクが大いに下がると思いますよ。
ご両親にも関係しますので、ご両親にもお話ししてみてくださいね。
久徳さん:ずっと気になっていたコレステロール。リスクも気になっていたのが、そこまで高リスクではなかったのでそこだけ少し安心しました。食事改善についても意識的に行ってきていたのになかなか体質改善とまでは至らず、打ち手に悩んでました。今回、葉酸の代謝ができづらいことがわかってスッキリしました。今まで一生懸命食べていたのに・・・・!でも、できないのであれば仕方ないですね。自分でできないなら初めから活性化してるものを飲んだらイイという合理的なアプローチで頑張りたいと思います。
自分は何が作れて、何が作れないか、何が足りてて、何が足りているか、強み弱みを知ることは健康に過ごすことにも大切なことなんだと思いました。
ルークス芦屋クリニック
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この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか