こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。

寒い時期になると、体を冷やさないよう、毎日のコーディネートに悩む方も多いのではないでしょうか。

一般的に女性は男性よりも筋肉量が少ないため、体が冷えやすいといわれています。

しかし、40歳を迎えたあたりの年齢になると、さらに体の冷えを実感する女性が増えています。

「昔はこんなに寒がりではなかった」
「夏でも体が冷えやすくなった」
など、年齢を重ねるにつれ体の冷えを実感する女性も多いようです。

ゆらぎ世代における体の冷えは、ホルモンバランスの乱れによる更年期症状が原因といわれています。

今回は更年期に起こりやすい体が冷える原因と、その対策方法などについて詳しく紹介します。

1.女性はそもそも体が冷えやすい

更年期に限らず、女性は男性に比べて体が冷えやすいです。

よく夫婦間においてエアコンの設定温度で喧嘩になる、といった話もあります。

それは男性の方が体が冷えにくく暑がりなので、夏場のエアコンの温度は低く設定したいことが多いのです。

まずは、女性の体が男性よりも冷えやすい原因について見ていきましょう。

1-1.筋肉量が男性に比べて少ない

更年期の冷えの原因筋肉量が少ない

一般的な女性の身体は男性に比べ筋肉量が少なく、丸みを帯びて脂肪が多くなっています。

一見すると脂肪がある方が体は冷えにくいイメージもありますが、筋肉が少ないと熱を作る力が弱く、体が冷えやすいのです。

しかも、脂肪は一度冷えると温まりにくいという性質があります。

こうしたことから男性より筋肉が少なく脂肪が多い女性は、必然的に男性よりも体が冷えやすいのです。

1-2.月経も体が冷える原因になる

月経中はとくに体が冷えるといった女性も多いでしょう。

これは月経によって出血するため、鉄欠乏性貧血になりやすく、本来なら熱を伝える血液が体の末端まで届かなくなってしまうためです。

月経がある女性は体を冷やさないよう、腹部をしっかりと温め、普段よりも1枚多く羽織るといった工夫が必要です。

1-3.女性ならではのファッションが原因のことも

更年期の冷えの原因ファッション

女性はスカートを履く機会が多いです。

しかしスカートは足首を中心に体を冷やしてしまうことが多く、とくに寒い時期のスカートは体が冷える原因になります。

ストッキングやタイツを履かずに、素足のままスカートやパンプスを履くのも体が冷えてしまいます。

なるべくお腹を中心に、下半身を冷やさないようなコーディネートが大切です。

そして補正下着をはじめとした体を締め付ける衣類も、体の血流を悪くして体を冷やしてしまいます。

肌着はなるべく締め付けるものを避け、腰回りまでしっかりと温めてくれるものを選びましょう。

▼医師が教える温め食材と冷え予防の習慣

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1-4.ストレスや自律神経の乱れ

ストレスは万病のもとといいますが、体の冷えにも大きな影響があります。

人は大きなストレスを抱えると緊張状態になり、交感神経が働き続けることで自律神経のバランスが崩れてしまいます。

自律神経は体温調節機能と密接な関わりがあり、バランスが崩れることで体温調節機能が働かなくなってしまうのです。 

これにより体を温める機能が低下し、冷えを感じることにもつながります。

また自律神経が乱れるのはストレスだけが原因ではなく、現在の環境要因もあります。

例えば、現代社会では寒い冬でもエアコンをつけることにより、暖かい環境を作り出すことができます。

これにより外は寒いが、部屋は暖かいといった状況になり、自律神経はどちらにバランスを取って良いかわからなくなり、体温調節がうまくできないのです。

暑い寒いの感覚が不安定になることで自律神経が乱れ、体温調節機能がうまく働かず冷え性になってしまうこともあります。

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1-5.筋力低下による内臓下垂

筋力が少ないと、内臓を支える筋肉も低下してしまいます。
年齢と共にお腹がぽっこり出てきたという人は、お腹の筋肉が衰えて内臓が支えられなくなっている証拠です。

子宮や膀胱などの臓器を支える骨盤底筋群の筋力低下は、子宮脱などを引き起こすこともあります。
内臓が下垂すると、内臓型の冷え症を引き起こす可能性があります。

2.更年期にはさらに体が冷える! その理由は?

更年期の冷え

こうした理由により、女性は男性に比べて体が冷えやすいです。

しかし更年期を迎える年齢になると、さらに体が冷えることもあります。
それは更年期によってホルモンバランスが崩れ、自律神経の働きが乱れてしまうからです。

ここからは、更年期の女性が冷え性になりやすい理由について詳しく見てみましょう。

2-1.自律神経の乱れが大きな原因

更年期に体が冷えやすくなるのは、女性ホルモンの分泌低下によって自律神経の乱れが起きるからです。

1章でご説明した通り、自律神経は体の体温調節機能に大きな関わりがあり、乱れることによって体がうまく温まらず血行不良を起こしてしまいます。

更年期は卵巣からのホルモン分泌量が減少します。しかし脳の視床下部はこれを補おうとして、性腺刺激ホルモンが過剰に分泌されます。

これにより自律神経が影響を受けてうまく働かなくなり、血流の循環が悪くなるのです。

このように更年期に体が冷える女性は多く、冷えは更年期障害の一つとしてよくみられます。

2-2.ホットフラッシュは「冷えのぼせ」

更年期の冷えの原因ホットフラッシュ

更年期に多い症状として、急に頭が熱くなって一気に汗がでるような状態をホットフラッシュといいます。

ホットフラッシュは体が急に熱くなる症状として知られていますが、その一方で、下半身は冷えてしまいます。東洋医学では「冷えのぼせ」と呼ばれ、体を冷やす症状でもあるのです。

ホットフラッシュは更年期によってホルモン分泌量が減り、自律神経がうまく働かなくなることで起きます。

自律神経の機能が衰えると、血液を循環させる機能も悪くなります。

これにより血管の拡張や収縮する機能も妨げられ、急な発汗や高血圧、のぼせなどが生じたり、反対に手足や腰が冷たく感じられたりするのです。

ホットフラッシュは辛い更年期症状の一つです。

対策方法としては、冷えのぼせに効果的な漢方薬やホルモン補充療法などを行い、更年期症状を緩和することです。

3.更年期に起きる体の冷え…具体的な改善方法

更年期における体の冷えは、更年期症状を緩和することで解決できることも多いです。

一般的に更年期症状の治療は、体を温めることが目的ではありません。

しかし更年期症状を改善することは、乱れてしまった自律神経を整えることにもつながり、結果的に体温調節機能がうまく働くことにもなります。

ここからは、更年期に起こる冷えの具体的な改善方法について見ていきましょう。

3-1.ホルモン補充療法

更年期の冷えの改善ホルモン補充

ホルモン補充療法は、更年期障害においてもっとも有効な治療方法です。

更年期において減少する女性ホルモン、エストロゲンを人工的に補充することにより、辛い更年期症状を和らげることができます。

ホルモン補充療法は、直接体を温めるといった作用はないものの、間接的に自律神経を整える作用が期待できます。

これによりホットフラッシュなどの冷えのぼせを改善したり、体温調節機能を回復させたりして、冷えの症状を緩和できます。

ホルモン補充療法には飲み薬と貼り薬があり、エストロゲンを意図的に補充することで徐々に更年期の症状を和らげていきます。

ただし、乳がんの既往があったり、血栓症リスクが高まることから脳梗塞のリスクがある人にはできない治療なので、しっかりと医師に相談することが大切です。

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3-2.漢方薬

ホルモン補充療法に抵抗がある場合は、漢方薬での治療もおすすめです。

漢方薬は更年期症状を和らげる治療として古来から使用されています。

漢方薬は、症状をゆっくり緩和していく薬として評価されています。ピタリと体質に当てはまれば、比較的早く効果が出る場合もあります。

更年期症状を和らげる漢方薬はさまざまありますが、なかでも更年期における体の冷えを緩和してくれる薬は以下の3つです。

・五積散(ごしゃくさん)…冷えがある人の更年期障害や頭痛に有効。やや虚弱から中等度の人に向いている

・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…むくみや冷え性などの改善に期待できる。体力がなく、冷え性で貧血の傾向がある人にも飲みやすい

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…めまいやのぼせ、足腰の冷えに有効。比較的体力があり、肩こりや頭痛などの更年期に悩む人に向いている

そして漢方薬と同時に、ゆっくりリラックスできるハーブティーや薬膳茶もおすすめです。

更年期の冷えの改善ハーブティー

例えばミントティーは、イライラを軽減させ急に出てくる汗やホットフラッシュ症状を和らげる作用も期待できます。

自分に合ったハーブティーや薬膳茶を選び、リラックスタイムを作って自律神経を整えるのも良いでしょう。

4.日頃からできる冷え性の改善方法

更年期における体の冷えは、更年期症状を改善すれば完全に治る、というものではありません。

お伝えしている通り、そもそも女性の体は冷えやすく、日頃から筋肉をつけるなど、冷えを予防する習慣を身につけないと、すぐに体は冷えてしまうのです。

ここからは、日頃からできる体の冷えを予防する方法について紹介します。

4-1.意識して運動する

更年期の冷えの改善筋トレ

女性の体は男性に比べ筋肉量が低いため、体を温める力が弱く、冷えやすいです。

なるべく日常生活に筋トレを取り入れ、筋肉量を増やしていきましょう。

またウォーキングやストレッチといった簡単な運動も血液の流れを良くし、新陳代謝を促進してくれます。

体の冷えを感じると、厚着をして暖房器具の前から動かない人も多いでしょう。

しかし、体を動かして血流を良くすることも大切です。

例えばエスカレーターを使わず階段を上ったり、自転車や車を使わず歩いて買い物に行ったりするだけで、運動量はアップし、体が温まりやすくなります。

4-2.鉄分を補給する

鉄分不足は体が冷える原因にもなります。

まず鉄分が少ないと問題視されるのが鉄欠乏性貧血です。
貧血は、血液中の赤血球が少ない状態のことを指します。

そもそも赤血球は血液中の酸素を運搬する役目があり、その働きに機能するのが赤血球に含まれているヘモグロビンです。

しかしヘモグロビンは鉄とタンパク質が結合したものであり、鉄分が足りないとヘモグロビンは少なくなり、うまく機能することができません。

結果的に体中へ酸素を届けることが難しくなり、体力不足や貧血を起こし、手足が冷える原因にもなるのです。

とくに女性は毎月月経があることで血液の量が減ってしまい、貧血になりやすいです。

たとえヘモグロビンの値が正常値でも「隠れ貧血」といって鉄貯蔵における鉄分が少ないこともあります。

日頃から鉄分を意識した食事を摂り、冷え性を改善していきましょう。

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4-3.体を温める食べ物を食べる

更年期の冷えの改善食事

体の冷えに悩んでいる方は普段の食生活を見直すことも大切です。

食べ物には体を冷やすものと温めてくれるものがあります。
なるべく体を温めてくれる食材を選ぶことで、冷え性が改善されることもあります。

<体を温めてくれる食べ物>

・根菜類…生姜(※)、ネギ、ゴボウ、大根、にんにくなど
・黒い食材…ゴマ、黒豆、あずきなど
・タンパク質の多いもの…肉や魚、卵など
・塩気のある調味料…味噌・醤油・塩
・体を温めてくれる飲み物…紅茶、ほうじ茶、ココア、生姜湯など

反対に生野菜やフルーツのほとんど、砂糖は体を冷やす食べ物になります。

しかし、生野菜やフルーツは消化を改善する食物酵素や生の状態でしか得られない生理活性物質を含むため、積極的に食べた方が良い食材です。

日頃から体を温める食材を選びつつ、野菜や果物も取り入れてバランスの良い食事を心がけることが大切です。

(※)生姜を摂取する場合の注意点

生姜は、加熱させたものでないと体を温める作用を発揮しません。
生の生姜は逆に体を冷やすことがあるので注意が必要です。

それは、生姜の代表的な成分である「ジンゲロール」が関係しています。

「ジンゲロール」は、末端部の血管を拡張する働きがあり、一時的に手足を温める作用がありますが、その一方では、体の内部の熱を手先や足先の血管に送り出すため、内部の温度を低下させてしまうのです。

しかし「ジンゲロール」は、加熱すると一部が「ショウガオール」という成分に変化します。
「ショウガオール」は、胃や腸の壁を刺激し、血流を高め、体の内部から温める働きがあります。

冷え対策には、加熱した生姜を摂取するようにしましょう。
逆に生の生姜は、夏に摂取すると体温を下げることで暑気払いになるでしょう。

 

4-4.シャワーではなく入浴が大切

入浴時はシャワーだけでなく、しっかりと湯船に浸かることが大切です。

湯船に浸かると手足の血管が拡張して全身の血流が良くなり、自律神経のうち副交感神経が活発になって冷えをふせぐことができます。

熱いシャワーを浴びると、芯まで温まらないばかりか、交感神経を刺激し、手足の血管が収縮してしまい、さらに冷えを増長します。

冷えを予防するためには、入浴時にゆったりと湯船に浸かることが大切です。

▼医師が教える冷えないライフスタイル

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5.日頃から体を温める行動をしよう

更年期の冷え

更年期に起こる冷えの主な原因は、ホルモン分泌量が減ることで自律神経が乱れ、体温調節機能がうまく働かないことです。

そのためホルモン補充療法や漢方薬を利用し、更年期障害をコントロールすることで冷えが改善されることもあります。

しかし、女性の体はもともと冷えやすいため、日頃から運動をしたり、体を温める食材を摂ること、それからシャワーだけで済ませずしっかり入浴することも大切です。

また、ストレスも血管を収縮させて手足を冷やし、胃腸の動きを低下させますので、冷えの大敵です。

日頃からストレスリリースを心がけたり、ゆったりとした入浴の時間を取る、睡眠時間をしっかり確保するなどの対策が大切です。

女性の体は冷えやすいものだと認識し、まずは自分ができる温活から挑戦することが大切です。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

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