更年期症状を疑ったら⁉ 失敗しない受診のコツを医師が伝授
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
更年期の症状が現れ、不調が続いても中々病院受診をする習慣がないとハードルが高いものですね。
症状が多岐にわたるので、関節が痛ければ、「整形外科?」頭痛やめまいがあれば、「内科?」など何科を受診したら良いのか迷ってしまったり、「婦人科」「産科」「レディースクリニック」「ウィメンズクリニック」など産婦人科の看板もさまざまです。
更年期症状かもしれないと思い当たる場合、まず最初に相談すべきは、「更年期症状」の治療に対応した婦人科・レディースクリニック・ウィメンズクリニックなどを掲げた医療機関です。
今回は、「更年期かも」と思い受診を検討する場合のポイントや受診前の準備などについてお話しします。
目次
1.更年期かも? 受診のヒント
1-1.事前のセルフチェック
更年期なのかな? と思う症状があっても、更年期なのか、その他の原因によるものなのか、見分けがつきにくいものです。
正確な診断には、受診が必要です。
その前にチェックリストを確認し、自分が更年期かどうか推測することができます。
簡略更年期指数(SMI)というチェックリストをご紹介しましょう。
全10項目に対し、強・中・弱・無など、症状に合わせて採点していきます。
50点以上の場合は積極的に婦人科への受診が勧められています。
それ以下であっても、正確に診断するには受診が必要になります。
2.更年期かな? 受診すべきはまずこの医療機関
更年期症状を疑う場合、まず、最初に受診すべきは、「更年期症状」の治療に対応した婦人科・レディースクリニック・ウィメンズクリニックなどを掲げた医療機関です。
産婦人科は、主に婦人科疾患に関わる婦人科と妊娠出産に関わる産科とに分かれています。
産科は、妊娠出産、また、その中でも最近では不妊治療に特化した不妊専門の医療機関や不妊外来などがあります。
更年期症状の場合は、産科よりも、婦人科の領域になります。
いずれも診察している医療機関もありますので、確認してみましょう。
3.更年期に強い医療機関を探す目安は
・「更年期外来」や更年期治療も含めた「女性外来」を掲げている
・医師が更年期の治療に対して経験が豊富である
・メノポーズカウンセラーやシニアメノポーズカウンセラーが勤務している
・医師が日本女性医学学会に所属している
などです。
日本女性医学学会のホームページの「近隣の専門医・専門資格者を探そう」では、全国の都道府県から近くの通いやすい医療機関を検索することができます。
その上で、各医療機関のホームページや医師が発信しているブログなどの情報から、更年期障害に対する治療の姿勢や方針を確認すると良いでしょう。
ホルモン補充療法であっても、一般的な合成薬ではなく、天然型の女性ホルモンを使用している場合。また、漢方薬やエクオールなど代替医療を積極的に取り入れている場合など、医師や医療機関の方針によって違いがあります。
それらを確認した上で自分のニーズに合うと感じた医療機関を受診してみると良いでしょう。
4.ここが盲点!受診時の注意
専門医が常勤でいても、曜日によっては経験が少ない非常勤医師が勤務している場合もありますので、外来表を確認してみましょう。
いざ、受診してみて、看板や資格は立派だが、「中々親身になって話を聞いてくれなかった」「一方的に上から目線で話をされ質問できなかった」などの声もよく耳にします。
また、キャラクターの合う合わないもあります。
治療方針を決めるにあたって、医師との信頼関係がなければ安心して治療に取り組むことができません。
ですから、自分自身が心から信頼できると感じる医師に主治医になってもらいましょう。
患者さんの立場で寄り添ってくれる医師は、決して頭ごなしに決めつけたり一方的に方針を決めたりせず、十分な対話をした上で、自分自身の状況や希望に応じて、最適な治療方針、もしくは治療せずに自己管理していくことを一緒に決めてくれるでしょう。
5.疑問や方針の違いはっきりと医師に伝える
もし、診断や治療方針などに疑問を感じたら、はっきりと伝えましょう。
心ない医師は怒り出すかもしれませんが、本来、そんな態度はあってはならないことです。
良心的な医師であれば、検査結果やこれまでの治療歴とともに、診療情報提供書(紹介状)を作成し、次の受診の助けになる情報を渡してくれます。
これをもらわないままに次の医師にかかったら、また同じ検査を1からやり直したり、次の医師がはっきりと状況をつかめずに明確な治療方針が立てられないなど、双方にデメリットが生じてしまいます。
6.検査前に準備しておきたい基礎データ
受診の際には、できるだけ状態や経過がわかるように、記録を持参すると良いでしょう。
問診で聞かれることも、あらかじめメモしておくとスムーズです。
医師が状況を把握しやすくなり、診断や方針決定に役立ちます。
・初経の年齢
・結婚歴
・性交歴
・妊娠出産歴
・婦人科を含む病気の治療歴
・家族歴
・現在の月経の期間や量や状態
・基礎体温
・症状やその頻度、時間帯など
7.実際に行う主な検査
受診をして問診や内診を含めた診察が終わると、検査を行います。
更年期障害は、すぐに診断がつきづらく、他の病気ではないことを確かめたのち、最終的に診断されます。
また、婦人科系の癌などの合併症の有無も確かめる必要があります。
・血液検査
ホルモン値:エストラジオール、LH、FSH、甲状腺ホルモンなど
一般採血:肝機能、腎機能、血糖値、コレステロール値、中性脂肪、貧血の有無など
・画像検査
経膣エコー(経腹エコー):子宮卵巣周りの状態を確かめます
・細胞診
子宮体がん、子宮頸がんなど悪性腫瘍の有無
これらに加え、乳がんの有無を確かめるための乳房の触診やマンモグラフィ、乳腺エコー。
骨粗鬆症を確かめるための骨量検査。
動脈硬化や心疾患の有無を確かめるための血圧測定や心電図測定。
など、医師の方針や症状によって検査が選択されます。
8.他科への受診
婦人科での検査の結果、更年期障害であると確定診断が出た場合は、婦人科で治療方針が決定できます。
ただ、その他の病気が疑われる場合は、関連する専門科を受診する必要があります。
その場合、通常は、婦人科の医師が紹介先の医師に診療情報提供書を作成します。
めまいや頭痛:耳鼻科や脳外科、神経内科
甲状腺疾患:内科(内分泌科)
関節痛:整形外科・内科(膠原病科)
など、疑わしい疾患によって受診する科が違います。
更年期障害に他の病気が合併している場合は、婦人科と同時にこれらの科を受診し、同時に治療していくこともあります。
9.更年期障害の主な治療
更年期障害も主な治療には、低用量ピル(OC)、ホルモン補充療法、漢方薬、エクオールなどがあります。
・低用量ピル(OC)
エストロゲンとプロゲステロンの合剤。
更年期障害自体というよりも、月経困難症や子宮内膜症の治療、避妊目的などに用います。
40歳以上は血栓のリスクが高まり使用不可。
40歳未満から服用の場合、閉経・50歳までは継続可能。
・ホルモン補充療法(HRT)
エストロゲンのみ、エストロゲンとプロゲステロンの合剤。
エストロゲンのみの場合は、子宮体がんのリスクのない子宮全摘症例のみに用います。
一般的には合成ホルモンですが、最近では副作用やリスクを低減した天然型女性ホルモンを扱うクリニックもあります。
閉経後も継続が可能。
・漢方薬
女性ホルモン剤との併用や軽度の場合や本人の希望で、漢方薬のみ投与する場合があります。
加味逍遙散、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散が3大婦人科系漢方で、これらの中から体質(証)をみて決めることが多いです。
・エクオール
エクオールは、豆に含まれるイソフラボンをエクオール産生菌が代謝してできる成分です。
豆製品を食事で摂取することで体内でつくられるのですが、エクオール産生菌を保有していない場合や、保有していても腸内環境が悪化している場合などはつくられないこともあります。女性ホルモン様の活性があり、更年期外来を有している医療機関での処方が増えています。その他の治療との併用も可能です。
一般購入も可能で、セルフケアにもよく使用されます。
10.まとめ
更年期症状を疑っても、実際には我慢したり受診しないケースも多いのが現状です。
でも、受診によって生活の質が向上したり、思わぬ病気が見つかることもあります。
受診したからといって、必ずしも治療が必要なわけではなく、セルフケアで十分ということもあります。
まずは、信頼できる婦人科を見つけて、診断を受けましょう。
その上で、医師と話し合い、治療方針、もしくはセルフケアで自己管理する方法を見つけていきましょう。
更年期は、現代女性にとってまだまだ現役で、寝込んではいられません。
一人で我慢しながら辛い時間を過ごさないためにも、まずは一歩をおすすめします。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか