46万人も!? 更年期離職をどう防ぐ⁉︎ 3月は【女性史月間】
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
3月8日が「国際女性デー」であることを受け、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどでは、3月を「女性史月間(Woman’s History Month)」と定めて、歴史上、女性たちが社会や歴史上行った貢献にフォーカスし、女性の地位向上やエンパワーメントを応援する月間としています。
そんな国際的な動きがある中、世界経済フォーラムによって発表された「ジェンダー・ギャップ指数2021」で、156ヵ国中120位、政治分野では156ヵ国中147位という散々な現状の日本。
最近では「更年期離職」が社会問題になっているのをご存知でしょうか?
NHKの調査によると46万人に上ると推計されています。
更年期に襲う様々な症状と職場や家族の不理解などから離職せざるを得ない女性たちがいるのです。
目次
1.更年期女性の半数が昇進辞退
ホルモンケア推進プロジェクトによる調査(2014年)によると、更年期障害によって、3人に1人以上が仕事を辞めようと思ったことがあり、3人に2人以上(7割以上)が昇進辞退を検討した、2人に1人が辞退したことがあると回答しています(全国の女性n=659人、35~59歳の更年期やPMSを自覚している人)。
日本では、女性管理職を2030年までに30%に増やそうという目標が定められていますが、更年期はまさに女性がキャリアアップする年齢と重なっています。
2人に1人が辞退しなければならない現状とはかけ離れています。
同調査で、男性の6割が「女性ホルモンの話を聞く機会があれば聞いてみたい」と回答していますが、半数強が「更年期」という言葉は知っているが詳しくは分からないと回答しています(全国の男性n=332人、30〜50代)。
職場の理解や家族など周囲の人たちの支援を十分に得られず、「仕事を続けられない」「体調のせいで働くことができない」などと、更年期症状を抱えながらの仕事に悩む女性は多くいます。
2.更年期でも受診しない日本の女性
NHKが行った更年期と仕事に関する調査2021では、更年期症状を自覚した女性のうち、医療機関を受診しなかった人が約7割を占めていることがわかっています。
受診率は、40代〜50代で3割前後だったことがわかっています。
有給休暇をとって受診しづらい職場環境や休んだ場合の給与の保証が不確かだったり、休むことで職場から不利な扱いを受けないかという不安。
これらを支える体制が整っていないことも、受診に繋がらない一因のようです。
3.更年期離職46万人、更年期ロス75万人⁉
同調査で、更年期症状が原因で離職した40代〜50代の女性は、少なくとも20.2万人、多く見積もって45.9万人。
更に、非正規化や降格、昇進辞退などの雇用劣化を経験することを「更年期ロス」と呼びますが、40代〜50代女性は、少なくとも33.1万人、多く見積もって75.3万人が更年期ロスを経験しているとされています。
更年期症状で仕事が継続できなくなり一時休職し、戻ったら降格されていたり、更年期症状を持ちながら仕事の継続が困難として、異動を強いられたり。
更年期世代の女性がせっかく積んできたキャリアが、更年期症状に伴う自身の体調と職場環境の影響で崩れてしまうことが当たり前に起こっているのが現状です。
私自身の周りでも、更年期の看護師さんがホットフラッシュで大量の汗をかき、めまいを起こしながらも、人員不足で休むことはできないと休暇を取れない状況があるなど、更年期に理解がある人が多いはずの医療業界でも体制が整っていないことを実感しています。
ましてや、その他の業界では、もっと理解が進んでいないのだと思います。
一体何を変えたら良いのでしょうか?
4.平等に扱うという不公平
なかなか難しい問題ですが、一つは、「男女平等が不公平を起こしうる」ということです。
最近議論されているのは、「平等(Equality)」と「公平(Equity)」の違いです。
有名なこの図を見てください。
(“Interaction Institute for Social Change/Angus Maguire/Jan,13,2016)
左は、体格が違う大人も小児も幼児も、平等に扱っています。
でも、野球を観るという目的は、平等に扱っても達成できず、不公平が生じてしまいます。
左は、体格の違いに応じて、臨機応変に対応することで、公平に誰もが野球を観ることができています。
それぞれ人の性質や都合は個々で全く違いますから、それを一律に「平等に扱った!」と主張しても、そこには配慮や思いやりがありません。
個々の特性に応じて、希望する目的が達成できるように、多様な方法で対応していくことが、公平です。
ジェンダーの平等が叫ばれて久しいものの、心身の設定や機能がそもそも違う男女を平等に扱うことで、歪みが生じてしまうのは当然です。
毎月の月経や更年期は、特に女性において性ホルモンがダイナミックに乱高下します。
一般的に男性よりも女性の方が、性ホルモンのゆらぎで症状が出やすくなります。
さらに、女性であっても特に症状なく日常を過ごせる人、寝込んでしまうほどに症状が重い人と個人差があります。
それに、男性だから、女性だからと決めつけてしまうわけにもいきません。
男性であっても、男性更年期を経験する人もいます。
また、仕事やプライベートにおいて重視したいことは、人それぞれです。
つまりは、男性だから、女性だからこうすべき! というのも乱暴です。
個々人の希望や特性、状況などに応じて、多様な対応ができる柔軟な体制が必要だと言えますね。
5.注目が集まる「DEI」とは?
これまで、健全な社会や組織を語るとき、「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括性)」(DI)が一般的に使われていました。
最近では、これに、エクイティ(公平性)を加えて、「ダイバーシティ(多様性)&エクイティ(公平性)&インクルージョン(包括性)」(DEI)が進められるようになりました。
ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括性)とは、性別、年齢、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、多様な個性を尊重し、受容し合い、活かし合うことを意味しています。
さらに、エクイティ(公平性)を加えて、配慮や思いやりをもって、不平等なスタート地点を認識し、臨機応変に対応することで、機会や情報へのアクセスを公平にしていこうとしています。
元々、人は、生まれた時から不平等な前提に立たされています。
家庭環境や社会的環境、経済状況、体力や精神力など全く違います。
その一人一人違うキャラクターと現在地から、その人が向かいたいゴールにたどり着くためには、極めて柔軟な対応が求められます。
日本でも、こうした世界的な流れを受けて、国や企業の制度を整えようという動きがみられています。
まだまだ不十分ではありますが、無関心ではいられません。
より良い社会を築いていくには、たくさんの人たちが心を一つにすることが大切だと思います。
6.メノ期の女性にはエクオールを
更年期から閉経期のことを、メノポーズと言い、私たちはメノ期と呼んでいます。
メノ期の女性は特に、女性ホルモンが潤沢でリズム良く分泌されていた頃とは違った心身の変化に悩まされがちです。
そんなメノ期の女性の味方になってくれるのが、豆に含まれるイソフラボンの発酵によって生まれる「エクオール」という植物性の成分です。
腸内のエクオール産生菌がしっかりと働けば、腸内でもイソフラボンをエクオールに転換できます。だから、大豆や小豆などの豆類をしっかり食べましょう。
ただし、豆の摂取不足や腸内環境の乱れなどで、エクオールが作れない人も増加しています。
そんな時には、エクオール自体を補給することもできます。
毎日のセルフケアを欠かさずに、メノ期であっても自信を持って活躍する女性が増えて欲しいと思います。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか